毎年20万組以上の夫婦が離婚していますが、もっとも多い離婚原因が性格の不一致です。
はっきりと性格の不一致とまではいかなくても、なんとなく配偶者と合わないと感じている方はさらに多いでしょう。
なかには離婚をお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
とはいえ「夫が好きになれない」「なんとなく嫌い」という理由では離婚するのは難しく、仮に離婚できたとしてもデメリットも少なくありません。
今回は、このような理由で離婚ができるか、離婚した場合にどのようなデメリットがあるか、関係を修復するにはどうすればいいかといったことを解説します。
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目次
1.一般的な離婚までの流れ
(1)協議
離婚をしたい場合、通常は相手方配偶者と話し合い(協議離婚)をします。
話し合いで離婚についての合意が成立し、離婚届を役所に提出すれば離婚が成立します。
この場合、離婚の理由は一切問われないためどのような理由でもかまいません。
ですから、「夫が好きになれない」「なんとなく嫌い」という理由でも問題なく離婚ができます。
また、「離婚することが決まったら!離婚協議書の書き方と公正証書にする方法」も併せてご参照ください。
(2)離婚調停
とはいえ「好きになれない」「なんとなく嫌い」というような漠然とした理由では、配偶者はそう簡単には納得しないことが多いでしょう。
話し合いで離婚の合意ができない場合に、それでも離婚したいのであれば家庭裁判所に離婚調停を利用することになります。
離婚調停は、家庭裁判所において夫婦の双方が調停委員を介して離婚や離婚条件について話し合いを行うものです。
調停で離婚についての合意が成立すれば、離婚をすることができます。
この場合も、協議離婚と同様、最終的には双方が納得したうえで離婚をすることになるので離婚理由に制限はありません。
他方、離婚についての合意が成立しなかった場合には、調停は不成立となり手続が打ち切りとなります。
また、必要に応じて「【無料ダウンロードOK】離婚調停に必要な夫婦関係調整申立書の雛形と書き方」と「離婚調停が不成立となった場合の対処法まとめ」も一緒にご参照ください。
(3)離婚訴訟
離婚調停によっても離婚についての合意ができなかった場合、家庭裁判所に対して離婚を求める訴訟を提起することが可能になります。
離婚訴訟は、裁判所が相手方の同意がなくても判決により強制的に離婚を成立させることができるもので、それゆえにどのような理由でも離婚が認められるわけではありません。
離婚訴訟で離婚を認められるのは、法律で定められた離婚原因に該当する場合に限られます。
また、「離婚裁判の流れや期間、費用などを分かりやすく解説」も併せてご参照ください。
2.訴訟で離婚が認められる理由とは?
(1)法定離婚事由
民法770条1項は、次の5つの離婚原因を定めています(法定離婚事由)。
これら5つのいずれかに該当する場合に、訴訟で離婚が認められるのです。
- 不貞行為
- 配偶者からの悪意の遺棄
- 配偶者の生死が3年以上不明
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
(2)「好きになれない」「なんとなく嫌い」では離婚原因にならない
「好きになれない」「なんとなく嫌い」という理由が、先ほどの「1.」~「4.」に当たらないことは明らかです。
ですから、訴訟で離婚が認められるには、このような理由が「5.」の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するといえなければなりません。
「婚姻を継続し難い重大な事由」と言われても抽象的でわかりにくいかもしれませんが、配偶者からの暴力、正当な理由のない性交渉の許否などが典型例とされており「好きになれない」「なんとなく嫌い」という程度では婚姻を継続し難いとはいえないでしょう。
したがって、離婚訴訟を提起しても「好きになれない」「なんとなく嫌い」という理由では離婚は認められません。
3.無理に離婚した場合のデメリット
「好きになれない」「なんとなく嫌い」という理由でも、協議離婚や調停離婚は可能です。
いいかえれば、配偶者が離婚に応じてくれれば離婚することはできます。
ただし、無理に離婚しようとすると、次のようなデメリットがあります。
(1)心理的なデメリット
まず、「好きになれない」「なんとなく嫌い」といった漠然とした理由で離婚した場合、後日、離婚したことを後悔することが考えられます。
もともと浮気や暴力などのような確固たる理由ではないだけに、いざ一人になると寂しさを感じてしまう方が少なくないのです。
(2)経済的なデメリット
①慰謝料がもらえない
慰謝料とは、不法行為により精神的な苦痛を与えたことに対する賠償です。
離婚の場面における慰謝料は浮気や暴力など、離婚に至る原因を作った者(有責配偶者)が相手方に支払うものです。
これに対し「好きになれない」「なんとなく嫌い」という理由は、どちらに責任があると一概には言えません。
そのため、このような理由では相手方が有責配偶者とはいえず慰謝料を請求することができないのです。
②財産分与やその他の離婚条件でも不利になるおそれがある
離婚をする際には、離婚自体のほかにいろいろな取り決めをすることがあります。
未成年の子どもがいる場合にはどちらか一方を親権者として指定する必要がありますし、夫婦の共有財産がある場合には財産分与が問題になります。
これらの離婚に付随して生じる問題は、離婚原因とは一応は別問題です。
ですから、親権や財産分与を求めることは可能です。
しかしながら、ここで問題になるのが法定離婚事由がないということです。
法定離婚事由がない場合、離婚訴訟により相手方の意思に反してでも離婚するという手段がありません。
相手方が離婚に同意してくれる必要があるのですが、相手方には離婚に応じる義務はありません。
そうなると、離婚に応じてもらうこと自体が相手方からの譲歩ということがいえます。
それに加えて親権や財産分与を要求することは「法律で定められた理由はないけど離婚はしたい。親権や財産分与などの権利は、法律で定められたとおり要求する」ということです。
ただでさえ「好きになれない」「なんとなく嫌い」という理由では相手方の納得が得られにくいうえに、親権や財産分与などを要求されてやすやすと承諾してくれる配偶者はなかなかいないでしょう。
ですから、どうしても離婚したい場合には、離婚することについては相手方に譲歩してもらい親権や財産分与などについてはこちらが何らかの譲歩(親権や財産分与をあきらめる、財産分与を2分の1から減額するなど)をするといった交渉が必要になる場合があります。
そうなると離婚後の生活にも支障が出るでしょう。
4.夫婦関係を修復するには
このように、無理に離婚した場合のデメリットが大きいので「好きになれない」「なんとなく嫌い」という理由であるのなら、離婚を思いとどまった方がいい場合が多いでしょう。
それでは、どのようにして夫婦関係を修復すればいいでしょうか。
夫婦の問題といっても千差万別ですから、こうすれば必ず解決できるといえるようなものは残念ながらないでしょう。
もっとも、コミュニケーションを増やす努力をする必要があることは確かです。
夫婦関係を修復するためには、問題に応じて相手に何かを変えてもらうことや時には自分が変わることも必要になります。
「好きになれない」「なんとなく嫌い」というだけでは、相手に何かを変えてもらうことはできませんし自分が変わるための努力をすることもできません。
ですから、まずはなぜ自分が好きになれない、嫌いなのかを知る必要があるのです。
また、そのうえで性格の不一致と感じるようになったとしても、あまり大きくとらえるべきではありません。
夫婦と言っても、結婚するまではそれぞれ異なる環境で育った別人格です。
その二人が全く同じ性格であるはずはなく、一致しない点があるのが当然です。
一致しないことがあるとして、それを配偶者の個性として理解し認めあえるかが重要なのです。
まとめ
このように「夫が好きになれない」「なんとなく嫌い」というだけでは離婚は難しいので、まずは関係修復に向けた努力をするようにしましょう。
それでも離婚したい場合には、離婚に際して思わぬ不利益を受けないようあらかじめ弁護士に相談しておくといいでしょう。