離婚したいが、夫の収入に頼っていたのでこれからの生活が心配・・・
収入がないので、離婚したらお金に困るし子どもを育てられないかもしれない・・・
離婚をしたいけれど、家計を夫の稼ぎに頼っていたのでお金に困ってしまう、離婚後にお金がなくて生活できるか心配といった女性も多いのではないでしょうか。
昔は勤めていたけれど、結婚して退職したため職場復帰が難しかったり、パートやアルバイトができたとしても日々の生活のお金に困るという現実に突き当たっている方もいるかもしれません。
このように夫婦の収入に差があって、離婚した後の生活するお金に困るような場合には、離婚するときに離婚後の生活を考慮して結婚中に築いた財産を分けるという方法を取ることができます。
これを「扶養的財産分与」といいます。
今回は、離婚後の生活に困窮しないために知っておきたい、この扶養的財産分与とは何かについて説明します。
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目次
1.専業主婦でも「内助の功」が認められる財産分与の性質とは
離婚するときに、結婚してから夫婦で築いて守ってきた財産を2人で分けることを財産分与と言います。
このような通常の財産分与のことを清算的財産分与(せいさんてきざいさんぶんよ)と言います。
財産分与は、夫婦で財産を半分ずつ分けるというのが原則です。
夫が会社員として稼いでいて、妻が家庭に入って専業主婦をしていて収入がないというケースでも妻のサポートがあったからこそ夫が稼げたという「内助の功」が評価され、半分ずつ財産を分けるというのが基本的な考え方です。
ただし、夫婦の一方が特殊な才能や資格によって高い収入を得ていたような場合には、財産分与の割合に差が付けられることもあります。
過去には、約4億円の資産を持つ医師の夫との離婚で、妻が2億円の財産分与を請求したけれど妻が資産をためることに貢献した割合は少ないとして2,000万円しか認められなかった裁判例があります。
財産分与の対象になる財産としては家・土地などの不動産、自動車、預貯金、株式、年金などが含まれます。
結婚中に、夫婦が協力して築いたり守ってきた財産ならば夫婦どちらの名義になっていても構いません。
借金がある場合には、それが夫のギャンブル癖で生じたようなものでなく、夫婦で一緒に生活するために生じたものであれば、プラスの財産からマイナスの財産(借金)を引いて残った財産を分けることになります。
ただし、結婚前から夫婦の一方が持っていた財産(独身中の貯金)や夫婦が協力して築いたとは言えないお金(結婚中に親が亡くなって相続した財産など)は、財産分割の対象になりません。
2.お金がない夫婦の一方をサポートする「扶養的財産分与」の意味と条件
(1)扶養的財産分与とは
夫婦のなかには、サラリーマンや自営業の夫が稼ぎ、妻が専業主婦の場合や収入がパート収入だけというように夫婦間で収入に差があることがあります。
結婚している間は、家で家事を行う妻に収入がなくても、夫の収入によって生活することができますが離婚すると夫の収入を頼れないため生活するお金に困る可能性があります。
このように、経済的に弱い立場にある夫婦の一方が、離婚した後にきちんと生活ができるようになるまで援助する意味で支払われる財産分与のことを「扶養的財産分与」と言います。
逆に言えば「1.」で説明した通常の離婚時の財産分与(清算的財産分与)は、家や自動車などの財産がいくらになるか計算し、原則として半分ずつ1回で分けるのが通常ですが、扶養的財産分与の場合は財産分与といいつつ一定期間サポートをするのが原則となっています。
(2)扶養的財産分与をもらえる条件とは
扶養的財産分与がもらえる人の条件は、法律で決められているわけではありません。
扶養的財産分与は、通常の半分ずつ財産をわける清算的財産分与だけではお金が足りず生活ができないという特別な理由や状況がある場合にだけ請求できるとされています。
この特殊な事情とは、具体的には次のようなものがあります。
- 通常の財産分与の金額が少なく、離婚後に生活するお金に困る
- 病気やけがなどが理由で働いて稼ぐことが難しい事情がある
- 収入が年金しかなく、年齢的にも外で働くことが難しい
- 小さい子どもがいて、子育てのために働くことができない
- 親兄弟などに、金銭的に頼れる人がいない
- 自分で生活したくてもできない特別な事情がある
実際の裁判などでは、結婚している夫婦の収入に差がある状態が続いていたようなケースで、扶養的財産分与が認められやすくなっています。
夫婦共働きの場合でも認められる場合がありますが専業主婦の場合特に認められやすいと言えるでしょう。
ただし、働いての収入源がなくても自立するだけの十分な資産がある場合や扶養的財産分与を請求された側に相手を養えるだけの経済的な余裕がない場合には、扶養的財産分与は認められません。
また、離婚直後は収入がないなどの事情があっても、再婚したり、働き口が見つかって給料をもらえるようになったり、生活保護を受けるようになるなどして収入を得たり生活に困らなくなったばあいには扶養的財産分与はストップします。
このように、扶養的財産分与は永久に続くものではなく、きちんと生活できるようになれば終了するという特徴があります。
3.扶養的財産分与の金額の目安とは
扶養的財産分与でもらえる金額の目安は、離婚後に住む家があるか、子どもがいるかといった事情によって変わり様々です。
夫婦間で話し合って納得すれば金額や期間にも制限はありません。
ただ、一つの目安となるのが「婚姻費用分担金(こんいんひようぶんたんきん)」というお金です。
これは、離婚はしていないけれど別居している夫婦の生活費を計算するのに裁判官が利用している目安で「婚姻費用算定表」という表をもとに算出するものです。
子どもの人数や年齢に応じた表があり、支払う側の年収と、もらう側の年収を表に当てはめることによって、婚姻費用分担金の目安が分かるようになっています。
たとえば、支払う夫側の年収が500万円で、もらう妻側の年収が100万円、1歳と3歳のふたりの子どもがいるケースでは、婚姻費用の相場は10万~12万円となっています。
婚姻費用分担金は、離婚する前の夫婦が別居中にいくら生活費が必要かを計算するためのものなので、扶養的財産分与とイコールではありません。
ただ、もし裁判になった場合には、裁判所でいくらくらいの生活費を認めてくれるか、という点では、とても参考になるのではないでしょうか。
婚姻費用算定表は、インターネットで調べてみるとフリーで利用できるサイトが多くありますので、興味がある方は一度検索してみてください。
また、「婚姻費用の相場、計算方法は?婚姻費用分担請求をする方法」と「婚姻費用分担請求調停の申立書の書き方と調停の流れについて」も併せてご参照ください。
4.扶養的財産分与はいつからいつまでもらえるか
上記のように、扶養的財産分与はずっと続くものではありません。
離婚後は、それぞれ自立して生活し相手を養う義務はないというのが原則のため、扶養的財産分与を受けられるのは自立するための準備に必要な最低限の期間だけというのが決まりです。
とはいえ、結婚生活の間、夫の収入に頼ってきた妻がある日突然、一人で働いて家賃も生活費も自分で払えと言われてもすぐに実現できるわけではありません。
就職活動の期間や仕事が落ち着いて一人で生活ができるようになるまで、だいたい2~3年はかかるのではないでしょうか。
このような事情を踏まえて、扶養的財産分与をもらえる期間は半年から3年間が一般的な目安とされています。
ただし、特殊な事情があると上記の目安の期間と大きく異なることもあります。
たとえば、長期間収入を得ることが難しいと考えられる事情がある場合には、扶養的財産分与の期間が長くなり、それと同時に金額も高くなりがちです。
実際の裁判では、60歳を超える夫婦が離婚したケースで平均余命まで一生分の期間続くとされた事例もあります。
5.一括でも分割でももらえる、扶養的財産分与の受け取り方と注意点
扶養的財産分与は、夫婦の一方の生活のサポートという意味を持つので、毎月月払いでもらいたいと考える人も多いと思いますが実際は分割払いでも、一括払いでも、どちらでも受け取ることができます。
(1)分割払いの場合
分割払いの場合、離婚後のお金に困った状態が解消されるまで支払いが続くことになります。
具体的には、妻の方が収入が少なくて生活に困っており、夫が妻に扶養的財産分与をするケースでは妻が亡くなるまで、または妻が再婚したり復職するなどして経済的に厳しい状態が解消されるまで続きます。
(2)一括払いの場合
一括払いの場合、夫婦で毎月の扶養額と期間を決めた場合、その合計額を通常の財産分与に上乗せして支払うケースが多いです。
具体的には、毎月10万円、1年間の扶養的財産分与をすると夫婦間で決めた場合、10万円×12か月=120万円を財産分与に上乗せして夫が妻に支払うことになります。
ただし、一括払いの扶養的財産分与の金額が高い場合は、税務署のチェックが入って贈与税を払わなくてはいけなくなることがあります。
通常、扶養をするお金に税金はかかりませんが、多額の扶養的財産分与をすると贈与にあたると捉えられる場合があるのです。
贈与税を支払うのは、渡した側ではなくもらった側なので一括払いで受け取る時には贈与税がかからないか、専門家に確認するなどして注意しておきましょう。
6.扶養的財産分与の請求方法とは
扶養的財産分与は、夫婦の収入が多い方に請求する形で行います。
(1)話し合いで決められる場合
協議離婚と言って、夫婦の話し合いで離婚する場合は財産分与について決めなければいけないという期限はなく、二人で決めることができます。
ただ、後になってトラブルになる可能性があるので、離婚前に決めておいて「離婚協議書」などの書類にしておきましょう。
このとき、夫婦同士の書面のやり取りだけだと、もし後になって別れた夫がお金をくれなくなった場合にどうすることもできません。
そこで、話し合って納得した内容を「強制執行認諾文(きょうせいしっこうにんだくぶん)付きの公正証書」にしておくことがお勧めです。
難しく聞こえるかもしれませんが、これは「相手が支払わなくなったら、強制的に財産を売るなどしてでも払ってもらいますよ」という効力があるものです。
離婚して暫くすると支払いが止まったというケースはよくあるので、いざというときに備えておきましょう。
(2)話し合いがまとまらず調停や裁判になる場合
扶養的財産分与が夫婦で話し合ってもまとまらない場合は、そもそも離婚についてももめていることが大半です。
そこで、このような場合には、第三者を入れて話し合う離婚調停や離婚裁判で一緒に決めるのが一般的です。
もし、離婚するときに財産分与について決めていなかったとしても、諦めてはいけません。
財産分与は、離婚した時から2年以内であれば支払うように請求できます。
ただ、もともとあった財産が2年で減ってしまうという可能性もあるので、出来るだけ早く請求するようにしましょう。
扶養的財産分与の請求は、離婚後に生活するお金に困ることをきちんと主張し相手が払えるだけのお金があることなどを証拠を揃えてきちんと主張しなくてはいけません。
いつからいつまで、いくら払うか、という話し合いは、離婚を前にした夫婦だけでは揉めることも多いので、離婚後の生活でお金が心配な場合は、弁護士などの専門家に相談してみることがお勧めです。
まとめ
いかがでしょうか。
専業主婦として家庭を支えてきた方や扶養を考慮してパート収入を押さえてきた方は、離婚後の生活でお金に困るのではないかと不安になる方もいるかと思います。
扶養的財産分与は、離婚後の新たな自立した生活をスタートさせるためにとても有効な方法です。
離婚を考えているけれど、お金がなくて踏み切れない離婚後の生活費が心配という方は、まずは弁護士に気軽に相談してみてください。