交通事故の被害に遭ったとき、加害者が無免許のケースがあります。
この場合、相手からどのような補償を受けることができるのでしょうか?
賠償金の計算方法や示談交渉において、通常の事故と異なる点があるのか?
と言う疑問があるかと思います。
そこで今回は、事故加害者が無免許だったときに被害者が受けられる補償や賠償、示談交渉の進め方について解説します。
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目次
1.無免許運転の解説
交通事故で加害者が無免許運転だった場合、通常の事故の解決方法とどのような点が異なるのでしょうか?
無免許運転とひと言で言っても、いくつかの種類があります。
まずは、無免許運転とその種類を確認しましょう。
(1)無免許運転とは
無免許運転とは、免許による運転許可を受けていないのに自動車を運転することです。
つまり、免許がない状態で自動車を運転することです。
無免許運転は、免許証不携帯や免許条件違反とよく混同されるので注意が必要です。
免許証不携帯とは、免許を受けているけれども免許証を所持せずに運転した場合です。
免許条件違反とは、免許をもらっているけれども、その条件に違反した場合です。
たとえば、AT限定の免許でMT車を運転したり、眼鏡着用と義務づけられているのに眼鏡をつけずに運転したりした場合などです。
これらに対し無免許運転では、免許をそもそももらっていないのに運転をしているので危険性が高く責任も重くなります。
(2)無免許運転の種類
次に、無免許運転の種類を確認しましょう。
1つ目は、純無免許です。
これは、1回も運転免許をもらったことがないのに自動車の運転をすることです。
次に、取消無免という類型があります。
これは、いったん免許をもらったけれども取消を受けた人が自動車を運転するケースです。
3つ目が停止中無免です。
これは、免許停止処分を受けているのに、自動車を運転したケースです。
その他、偽造した免許や他人の免許をもって運転した場合も無免許ですし、免許試験は受かっていても、正式に免許証をもらう前に運転する場合も無免許です。
外国で免許をもらっていても日本国内で有効な免許がないなら、やはり無免許運転になります。
(3)無免許運転の事故の件数
このような無免許運転者による事故は、平成23年の時点においても2500件以上起こっており、高い水準で発生しているため、交通事故に遭ったとき、相手が無免許である可能性はそれなりに高いと言えます。
(4)無免許運転では相手が未成年のことが多い
交通事故で相手が無免許の場合には、相手が未成年者であることが多いのも特徴的です。
未成年者が相手でも損害賠償請求はできますし、示談金を支払ってもらうこともできますが、その場合、相手に支払能力が無い場合があります。
また、未成年者が相手の場合、相手に適用される刑事罰は大人の場合とは異なります。
2.無免許運転でも保険が適用される
それでは、相手が無免許の場合、どのような補償を受けることができるのでしょうか?
この場合、通常の事故と同様、相手の対人賠償責任保険や対物賠償責任保険が適用されて、保険会社から賠償金の支払いを受けることができます。
相手が無免許だからといって、被害者の賠償金が減額されることもありません。
そこで、相手が保険に加入している限りは補償を受けられなくなる心配はありません。
無免許の場合、加害者(無免許運転していた本人)は保険による支払いを受けられませんが、被害者にとってはそのような加害者側の事情は無関係なので、全額の支払いを受けられるのです。
これに対し、相手が無保険の場合には、相手本人から支払いを受けなければならないので注意が必要です。
ただ、この問題は、相手が無免許という理由によるものではなく、相手が免許を持っていたとしても無保険の場合には相手本人と交渉するしかなくなります。
3.無免許運転の刑事罰
次に、無免許運転の罰則を確認しましょう。
この場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金刑が科される可能性があります(道路交通法117条の2の2)。
相手が人身事故を起こして被害者にけがをさせたり死亡事故を起こしたりした場合には、危険運転致死傷罪が適用されて、1年以上20年以下の懲役刑が科される可能性も高くなります(自動車運転処罰法2条)し、無免許運転による刑の加重もあります(自動車運転処罰法6条)。
さらに、無免許運転を助けた人も処罰される可能性があります。
無免許運転した人に車両を提供した人には、運転車と同様3年以下の懲役または50万円以下の罰金刑となりますし、同乗者には2年以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科される可能性があります。
このように、無免許運転が行われたとき運転車のみならず、車両の提供者や同乗者にも責任が発生するので、これらの人への損害賠償請求も検討できます。
4.無免許運転の示談交渉の進め方
それでは、相手が無免許運転の場合、どのようにして示談交渉を進めたら良いのでしょうか?
(1)相手が保険会社に入っている場合
まず、相手が保険会社に加入している場合(保険が適用される場合)には、通常通り相手と示談交渉を進めます。
ただ、相手が無免許運転で刑事事件になっている場合、相手は示談交渉を急かしてくることがあります。
刑事事件では、相手は被害者と示談を成立させたら刑事罰を軽くしてもらうことができるためです。
ただ、被害者にしてみると、そのような事情は無関係なものなので、基本的には症状固定まで通院治療を継続して、その時点までにかかった治療費と入通院慰謝料、後遺障害が残ったら後遺障害慰謝料や逸失利益などを請求すべきです。
また、相手が保険会社の場合、示談金を低く計算されることも多いです。
そこで、正当な金額の支払いを受けるためには、適切な示談金の相場を知って、弁護士に示談交渉を依頼することが重要です。
(2)相手が未成年の場合
相手が無免許の場合、未成年の場合があります。
相手が保険に加入していたら保険会社と示談交渉をして支払いを受けることができますが、相手が保険に入っていない場合、本人から支払いを受けなければなりません。
未成年でも賠償金が少なくなることはありませんが、未成年の場合、支払能力がないことが多いため相手の親に請求ができるかどうかが問題となります。
未成年が運転車の場合、12歳~13歳以下の子供であれば、相手の親が監督者責任を負いますが子供がそれより大きい場合には、当然に親に賠償金の請求をすることができません。
その場合、法的には子供に請求するしかなくなります。
実際には、このようなケースにおいて、子供に責任が発生した責任については親が支払ってくれることが多いのですが親が「知らない」と言い出した場合、支払いを受けられなくなることがあります。
(3)同乗者に請求できる場合もある
相手が無保険で十分な損害賠償金を支払ってもらえない場合、相手の同乗者や車両を提供した人に対しても損害賠償金の請求ができることがあります。
上記のように、車両提供者や同乗者にも責任が認められ刑事罰も適用されますが、民事的にもこれらの人において損害の発生について責任があると考えられるからです。
そこで、相手が保険に加入しておらず、未成年で親も支払をしない、というケースなどでは、同乗者や車両の提供者と示談交渉をして補償をしてもらう方法が有効です。
5.相手が無保険のケースでの示談交渉
最後に、相手が無保険の場合の示談交渉の進め方を説明します。
この場合、まずは相手に対し、内容証明郵便により損害賠償金の請求書を送ります。
相手になるのは運転車本人や親、同乗者や車両の提供者などの賠償義務を負う人です。
このとき、賠償金の金額を計算して、いくらの支払をするのか、またその支払期限、支払方法、振込先の口座などについて記載しましょう。
相手がこれを受けとると、その後示談交渉が始まります。
電話や面談、メールなどの方法で話をすすめ、合意ができたらその内容で合意書を作成します。
そして、相手から合意内容にしたがって、賠償金の支払いを受けることができます。
示談では解決できない場合には、訴訟等の手段が必要になることもあります。
まとめ
以上が加害者が無免許運転だった場合の対処方法です。
相手が保険に加入しているか?
未成年か?
等がポイントとなりますが、諦めずに交渉してみてください。
また、どうしてもうまく示談交渉が進まない場合は交通事故に強い弁護士に相談する方法もあります。
スムーズに、また適正な賠償金・慰謝料を支払ってもらう為には専門家のアドバイスを受けるのも1つの手です。