交通事故の被害者になると身体のさまざまな部位に後遺障害が残る可能性があります。
頭部や顔面を負傷した場合、目や耳に後遺障害が残り仕事や日常生活に大きな支障を生じることもあります。
今回は、目や耳についてどのような症状が後遺障害に該当するのか、該当する場合の慰謝料の相場はどの程度か、目や耳に後遺障害が残った場合どのように対処すればいいのかなどについて解説します。
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目次
1.目の後遺障害
(1)目の後遺障害の分類
目の後遺障害は、次のように分類することができます。
- 視力障害
- 視野障害
- 運動障害
- 調節障害
- まぶたの欠損障害
- まぶたの運動障害
(2)視力障害と慰謝料の相場
視力障害の後遺障害等級と等級に対応する慰謝料は次のようになります。
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
1級1号 | 両眼が失明したもの | 1100万円 | 2800万円 |
2級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの | 958万円 | 2370万円 |
2級2号 | 両眼の視力が0.02以下になったもの | 958万円 | 2370万円 |
3級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの | 829万円 | 1990万円 |
4級1号 | 両眼の視力が0.06以下になったもの | 712万円 | 1670万円 |
5級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの | 599万円 | 1400万円 |
6級1号 | 両岸の視力が0.1かになったもの | 498万円 | 1180万円 |
7級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの | 409万円 | 1000万円 |
8級1号 | 1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの | 324万円 | 830万円 |
9級1号 | 両眼の視力が0.6以下になったもの | 245万円 | 690万円 |
9級2号 | 1眼の視力が0.06以下になったもの | 245万円 | 690万円 |
10級1号 | 1眼の視力が0.1以下になったもの | 187万円 | 550万円 |
13級1号 | 1眼の視力が0.6以下になったもの | 57万円 | 180万円 |
(3)視野障害と慰謝料の相場
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
9級3号 | 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの | 245万円 | 690万円 |
13級3号 | 1眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの | 57万円 | 180万円 |
視野が狭くなったことについての後遺障害です。
半盲症とは、両眼の視野の右半分または左半分が見えなくなることをいいます。
視野狭窄とは、視野が周辺から中心に向かって狭くなる(求心狭窄)、あるいは視野の一部が不規則に、狭くなる(不規則狭窄)ことをいいます。
視野変状とは、半盲症、視野狭窄のほか、視野の欠損や暗点が発生することをいいます。
(4)運動障害と慰謝料の相場
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
10級2号 | 正面を見た場合に複視の症状を残すもの | 187万円 | 550万円 |
11級1号 | 両眼の眼球に著しい調節機能障害または運動障害を残すもの | 135万円 | 420万円 |
12級1号 | 1眼の眼球に著しい調節機能障害または運動障害を残すもの | 93万円 | 290万円 |
13級2号 | 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの | 57万円 | 180万円 |
複視とは、物が二重にみえることをいいます。
著しい運動障害とは、注視野(眼球の動きで見ることのできる範囲)が通常の2分の1以下になった場合をいいます。
(5)調節障害と慰謝料の相場
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
11級1号 | 両眼の眼球に著しい調節機能障害または運動障害を残すもの | 135万円 | 420万円 |
12級1号 | 1眼の眼球に著しい調節機能障害または運動障害を残すもの | 93万円 | 290万円 |
眼には、カメラのレンズのように、対象の距離に応じて網膜上に焦点を合わせる調節機能が備わっています。
著しい調節機能障害とは、この調節機能が通常の2分の1以下になることをいいます。
(6)まぶたの欠損障害と慰謝料の相場
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
9級4号 | 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの | 245万円 | 690万円 |
11級3号 | 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの | 135万円 | 420万円 |
13級4号 | 両眼のまぶたの一部に欠損を残しまたはまつげはげを残すもの | 57万円 | 180万円 |
14級1号 | 1眼のまぶたの一部に欠損を残しまたはまつげはげを残すもの | 32万円 | 110万円 |
まぶたの著しい欠損とは、まぶたをとじた場合に角膜を完全に覆うことができないことをいいます。
まぶたの一部の欠損とは、まぶたをとじた場合に角膜を覆うことはできるが、しろめが露出することをいいます。
まつげはげとは、まつげの2分の1以上がはげてしまうことをいいます。
(7)まぶたの運動障害と慰謝料の相場
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
11級2号 | 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの | 135万円 | 420万円 |
12級2号 | 1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの | 93万円 | 290万円 |
まぶたの著しい運動障害とは、まぶたを開いた場合に瞳孔を完全に覆ってしまうものまたはまぶたを閉じた場合に角膜を完全に覆うことができないものをいいます。
2.耳の後遺障害
(1)耳の後遺障害の分類
耳の後遺障害は、次のように分類することができます。
- 耳殻(耳のうち、外側に飛び出している部分全体)の欠損障害
- 聴力障害
- 耳漏
- 耳鳴り
(2)耳殻の欠損障害と慰謝料の相場
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
12級4号 | 1耳の耳殻の大部分を欠損したもの | 93万円 | 290万円 |
大部分の欠損とは、2分の1以上を失うことをいいます。
(3)聴力障害と慰謝料の相場
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
4級3号 | 両耳の聴力を全く失ったもの | 712万円 | 1670万円 |
6級3号 | 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの | 498万円 | 1180万円 |
6級4号 | 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | 498万円 | 1180万円 |
7級2号 | 両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | 409万円 | 1000万円 |
7級3号 | 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | 409万円 | 1000万円 |
9級7号 | 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | 245万円 | 690万円 |
9級8号 | 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | 245万円 | 690万円 |
9級9号 | 1耳の聴力を全く失ったもの | 245万円 | 690万円 |
10級5号 | 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの | 187万円 | 550万円 |
10級6号 | 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの | 245万円 | 690万円 |
11級5号 | 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの | 135万円 | 420万円 |
11級6号 | 13耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | 135万円 | 420万円 |
14級3号 | 1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの | 32万円 | 110万円 |
(4)耳漏と慰謝料の相場
耳漏とは、鼓膜に空いた穴から分泌液が流れ出ることをいいます。
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
12級相当 | 30dB以上の難聴で常時耳漏を残すもの | 93万円 | 290万円 |
14級相当 | 30dB以上の難聴で耳漏を残すもの | 32万円 | 110万円 |
(5)耳鳴りと慰謝料の相場
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
12級相当 | 30dB以上の難聴に伴い、検査によって著しい耳鳴りが常時残ると確認できるもの | 93万円 | 290万円 |
14級相当 | 30dB以上の難聴に伴い、常時耳鳴りがあることが合理的に説明できるもの | 32万円 | 110万円 |
3.後遺障害が残った場合の対処法
目や耳の後遺障害については、非常に細かく等級が定められています。
該当する等級によって慰謝料の額が大きく変わるだけでなく、逸失利益(将来得られるはずだった利益が得られなくなったこと)も等級が高いほど高額になります。
少しでも高い等級の認定を受けるためには、後遺障害認定の申請を加害者の保険会社任せにせず、被害者側で積極的に資料の収集を行ったうえで申請すべきです(被害者請求といいます)が、専門的知識がないとなかなか難しいでしょうし、後遺障害の程度によっては独力で行うことは不可能という場合もあるでしょう。
ですから、目や耳に後遺障害がある場合には、早期に交通事故に詳しい弁護士に相談するといいでしょう。
弁護士費用が心配という方もいらっしゃるでしょうが、通常、保険会社は、弁護士を依頼していない被害者には任意保険基準による慰謝料(自賠責基準と裁判所基準の間の金額になります)を提示するのに対し弁護士が代理人になった場合には裁判所基準に近い水準まで増額に応じることが多いので、費用倒れになるおそれはほとんどありません。
まとめ
目や耳の後遺障害について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
後遺障害が残ると現在の生活に支障が生じるだけでなく、将来の不安など大きな精神的ストレスを抱えることになります。
その負担を少しでも和らげるためにも、弁護士に示談交渉を依頼することが望ましいでしょう。