交通事故はどれだけ注意をしていたとしても誰の身にも起こりうるものです。
突然交通事故に巻き込まれると、気が動転してどうしていいかわからなくなったり、冷静な判断ができなくなったりすることも珍しくありません。
そこで今回は、万一交通事故の当事者になってしまった場合に備えて、交通事故の手続きの流れを詳しく解説したいと思います。
※この記事は2017年3月7日に加筆・修正しました。
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目次
1.交通事故加害者の場合
(1)事故直後に行うべきこと
交通事故の当事者には、負傷者を救護する義務(救護義務)と、事故の発生日時や場所などを警察に報告する義務(報告義務)があります。
救護義務に違反した場合、「ひき逃げ」になり、重い刑罰が科される可能性があります。
ひき逃げの被害者になった場合は「ひき逃げ事故の被害者が泣き寝入りしないために知っておきたい国の保障」で詳しく解説しています。
また、二次災害を防止するために、車両を安全な位置に移動させたり、停止表示板を置くなどの措置を講じる必要があります。
現場に到着した警察は、当事者双方の主張を聞いて実況見分調書などを作成し現場の状況や事故の状況などを記録します。
もし余裕があれば警察が到着するまでの間に事故状況を写真におさめておくことをおすすめします。
さらに、被害者への賠償に対応するため、加入する保険会社に連絡することが必要です。
(2)加害者に対する処分
交通事故の加害者には次の3つの処分が科されることがあります。
それぞれ別の手続ですが、まったく無関係というわけではなく、たとえば民事上の示談が成立したことが刑罰を決めるうえで考慮されるというような関係があります。
①行政処分
交通事故の加害者に対しては、事故の原因となった交通違反の内容、被害者の死傷の程度に応じて違反点数が加算され、免許取消、免許停止などの処分を受ける可能性があります。
②民事上の責任
交通事故の加害者は、被害者に対し、被害者に生じた損害を賠償する義務があります。
任意保険に加入していれば、保険会社が示談交渉を代行してくれますが、交渉がまとまらなければ、被害者から裁判を起こされることもあります。
裁判には、保険会社の顧問弁護士が対応することになります。
③刑事処分
交通事故で被害者が死傷した場合、加害者は事故の内容に応じて、「罰金」「懲役」「禁固」の刑が科せられる可能性があります。
たとえば、自動車の運転上必要な注意を怠ったことで人を死傷させた場合、7年以下の懲役か禁固または100万円以下の罰金と定められており(過失運転致死傷)、アルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状況で自動車を運転して人を死傷させたときは、さらに重い刑罰が科されます(危険運転致死傷)。
2.交通事故被害者の場合
(1)事故直後に行うべきこと
加害者が警察に通報しないときは、自分で警察に連絡をしましょう。
警察が来るまでの間、できる限り現場の状況の保存、記録化をしておきましょう。
加害者に運転免許証を呈示してもらい「氏名」「住所」を確認し、「電話番号」「加入している保険会社」などを聞き、加害者の車のナンバープレートも控えておきましょう。
また、現場や車両の写真を撮ったり、加害者との会話を録音したりすることも考えられます。
目撃者などがいる場合には、念のために氏名、連絡先などを教えてもらうようにしましょう。
自分の加入している保険会社への連絡も必要です。
人身傷害補償保険に入っていれば、示談前に自分の保険会社から補償を受けることができるので、保険契約の内容をきちんと確認しておきましょう。
警察が到着したら、事故の発生状況などを正確に伝える必要があります。
また、物損事故と人身事故では警察の処理が異なりますし、後の損害賠償にも影響しますので、少しでもけがをしている場合は、必ず人身事故扱いにしてもらいましょう。
物損事故と人身事故の違いと人身事故への切り替え方法はこちらで詳しく解説しています。
(2)事故後、症状固定までの流れ
①治療費関係
被害者としては、なによりもまず治療に専念する必要があります。
治療費については、被害者が病院に立て替え払いをし、後に加害者に請求することもありますが、加害者の過失が大きい場合には、加害者の保険会社が直接病院に支払ってくれる(一括対応といいます)こともあります。
なお、被害者の過失も大きい場合や加害者が任意保険に加入していない場合には、健康保険の利用を考えるといいでしょう。
病院によっては、交通事故の治療には健康保険は使えないと言われることもありますが、制度上は第三者行為による傷病届を提出すれば、健康保険を利用することが可能です。
②後遺障害診断書を作成してもらう
ある程度治療を継続すると、それ以上治療をしても症状が改善しないという状況になります。
これを症状固定と呼んでいます。
完治を意味するのではなく、機能障害や痛み、しびれがこれ以上よくならないという意味で、残された症状、痛みなどは後遺障害に該当するかという問題になります。
後遺障害の認定を受けるには、医師の後遺障害診断書が必要になりますので、症状固定したら主治医に後遺障害診断書を書いてもらいましょう。
(3)症状固定後
①後遺障害がない場合
治療を終えて後遺障害が残らなかった場合、以後は治療費もかかりませんし、仕事にも復帰しているでしょうから、通常はその時点で損害額全体の計算が可能になります。
加害者が任意保険に加入している場合には、保険会社との間で示談交渉をすることになります。
保険会社から慰謝料を含めた示談案が提示されるのが一般的ですが、保険会社も営利を目的とする会社ですから、できるだけ賠償額を少なくしようとすることは否定できません。
ですから、保険会社からの提示を鵜呑みにしてはいけません。
保険会社からの提示が相当な額か不安があるようでしたら、弁護士に相談することを検討してもいいでしょう。
当サイトでは交通事故に強い弁護士を紹介しております。是非こちらも合わせてご確認ください。
示談交渉がまとまらない場合には、訴訟など裁判所の手続をとることが必要になります。
②後遺障害がある場合
後遺障害がある場合には、逸失利益と慰謝料の請求が可能になります。
後遺障害と認められるためには、第三者機関に後遺障害等級を認定してもらう必要があります。
後遺障害等級認定の申請は、法律上は加害者、被害者の双方が行うことができます。
ただし、加害者にとって、被害者が後遺障害等級の認定を受けることが利益になるわけではありませんので、加害者が行う場合(加害者保険会社が行う場合を事前認定といいます)、加害者は後遺障害診断書など、必要最低限の書類を提出するだけです。
これに対し、被害者請求の場合、被害者は後遺障害が認定されやすくなるよう、積極的に資料を集め提出することができます。
したがって、被害者請求の方がより有利な結果につながりやすいと言えます。
後遺障害認定の審査の結果に不服があるときは、異議申立をすることができます。
後遺障害等級の認定が終われば、等級に応じた慰謝料、逸失利益を計算することができるので、損害額を確定することができます。
その後の交渉の流れについては後遺障害がない場合と同様です。
後遺障害がある場合は、ない場合に比べて請求できる金額が大きくなりますので、保険会社の示談案と裁判をした場合に認められる賠償額との差も大きくなります。
ですから、弁護士への相談を考えてもいいでしょう。
3.まとめ
交通事故の加害者と被害者に分けて、手続の流れをご紹介しました。
事故に遭ってしまった場合の予備知識として役立てていただければ幸いです。
また、交通事故は加害者であっても被害者であっても難しい問題がたくさんありますので、交通事故でお困りの場合は一人で悩まず、弁護士に相談することも考えてください。