離婚原因で最も多い理由はなんだと思いますか?
それは、「性格の不一致」によるものです。
2位以下の離婚原因は、男性の場合は異性関係、女性の場合は配偶者からの暴力などと、性別によって変わってきます。
しかし、性格の不一致による離婚は男女ともに例年離婚原因の1位となり、離婚理由の約半数を占めるものとなっています。
とはいえ、「性格の不一致」による離婚は、法律で認められた離婚原因ではありません。
また、明確な離婚理由はないけれど別れたいといったケースや配偶者のDVや浮気といった離婚理由を知られたくないケースで、離婚理由として持ち出されることもあるなど、曖昧な概念です。
そのため、「性格の不一致」による離婚は法的には認められにくいこともあるのです。
今回は、性格の不一致で離婚を検討する場合の注意点について解説します。
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1.性格の不一致だけでは離婚できない理由とは
(1)法定離婚事由に含まれない性格の不一致
離婚の方法には、夫婦の話し合いで離婚する「協議離婚」当事者の話し合いでは合意できない場合に第三者が間に入って交渉する「調停離婚」交渉でも合意できない場合に裁判で離婚を決める「裁判離婚」の3つの種類があります。
この、協議離婚をする場合は、夫婦がお互いに納得して離婚届に名前を書き、押印して提出すれば離婚は成立するので離婚の理由は問いません。
夫婦の双方が「結婚してみたら性格が合わなかったので離婚したい」と合意したのであれば、性格の不一致による離婚も認められます。
しかし、夫婦のどちらかだけが性格の不一致による離婚を希望し、他方が離婚に合意していない場合、話し合いで離婚に至るのは困難です。
とすると、裁判に持ち込んで離婚をすることになりますが、裁判離婚では原則として性格の不一致による離婚は認められません。
なぜなら、「性格の不一致」は、法律で決められた「法定離婚事由」に含まれていないため、裁判では原則として認められないからです。
(2)裁判で離婚する場合に必要な法定離婚事由とは
先に述べたように、当事者間の話し合いで離婚に合意するならば、離婚の理由は何でも構いませんが、離婚で裁判を起こす際には、離婚の理由が法律の定めに該当することが必要です。
この法律で決められた離婚の理由のことを「法定離婚事由」といいます。
具体的には、次のどれかに当てはまっていることが必要になります。
①不貞行為
不貞行為とは、配偶者が自由な意思で配偶者以外の人と男女の関係になることを言います。
夫婦は、婚姻中に同居・協力・扶助しあわなければならないという義務をお互いに負い、この中に夫婦相互の貞操義務も含まれます。
そこで、配偶者以外の相手と不貞行為、つまり浮気をした場合には、浮気された側は不貞行為を理由として離婚を請求できます。
②悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、正当な理由がないのに、同居・協力・扶助の義務を行わないことを言います。
正当な理由があるかどうかは、別居の目的や期間、相手方配偶者の生活や生活費の仕送りの有無などから判断されます。
③3年以上の生死不明
配偶者が生きているか亡くなっているか3年以上不明のときは、残された配偶者は離婚を請求することができます。
生死不明の理由などは問われませんが、客観的に生死不明であることが条件となります。
本人から連絡はないが、他人が生存を確認したという場合には悪意の遺棄など他の理由による離婚を請求することになるでしょう。
④回復の見込みのない強度の精神病
回復の見込みのない強度の精神病とは、夫婦の協力義務を果たせない程度に重大な状況を言い専門医の鑑定を受けて法的な面から判断されます。
ただし、精神病に罹患した夫または妻の離婚後の生活が困難になる可能性が高いため、生活の確保ができなければ裁判所に認められることは難しいと言われています。
⑤婚姻を継続しがたい重大な事由
上記4つの理由に該当しないけれど、婚姻関係が破綻したといえるような状況で夫婦の共同生活を再び送る見込みがないと判断された場合には離婚の請求が認められます。
具体的には、相手方配偶者も離婚意思があるけれど嫌がらせのために応じていないだけの場合や配偶者のDVがある場合、配偶者が宗教活動にのめり込んでいる場合、また性交渉の拒否などがあります。
(3)それでも「性格の不一致」で離婚したいなら
この様に「性格の不一致」は、法律で認められた離婚事由ではありません。
それでも、「性格の不一致」で離婚したい場合には「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると認めてもらうことが必要になります。
具体的には、性格の不一致が大きいために精神的苦痛を感じていること、性格の不一致が原因で生じた問題によって「婚姻関係が実質的に破綻」しており、将来的に関係修復の可能性がないことを、しっかり主張していくことが重要です。
とはいえ、どちらかが性格の不一致を認めていない状況で裁判に持ち込むのは、かなりの労力を要します。
裁判を行う期日は平日に設定されるため、仕事をしている人の場合は弁護人をたてない限り、その都度会社を休んで出廷しなければいけません。
「性格の不一致」を理由に離婚したい場合は、できる限り当事者間の話し合いで解決するか調停で合意に至ることができるように努力することをお勧めします。
2.知っておくべき「性格の不一致」による離婚のデメリット
(1)性格の不一致による離婚の場合慰謝料がもらえない
「結婚して相手と性格が合わないことに気づいた」
「いろいろイヤな思いもしたし、離婚して慰謝料をもらいたい」
この様に考える方もいるかもしれませんが、性格の不一致による離婚の場合、原則として慰謝料を請求することができません。
なぜならば、慰謝料とは、相手方の一方の行為によって精神的損害を受けた場合に、その損害を賠償するためのお金のことをいうからです。
たとえば、夫が浮気して夫婦の貞操義務に違反したことによる損害賠償、精神的苦痛を受けたことによる損害賠償などが慰謝料の内容になります。
つまり、損害賠償を請求できるのは、相手方配偶者が離婚原因をつくった有責配偶者の場合ということになります。
一方で、性格の不一致による離婚の場合はどちらが悪いとはいいきれません。
「相手の性格が悪い」と言っても、法的に判断すると性格の不一致は双方に問題ありと考えられるため、そもそも慰謝料を請求できる条件を満たしていないと考えられます。
したがって、相手の性格と合わないから離婚するといっても、原則として慰謝料の請求はできないのです。
これが、性格の不一致による離婚をする場合の大きなデメリットになると言えるでしょう。
ただし、婚姻関係を破たんさせる原因になるほど、性格の不一致が重大なものであったようなケースでは慰謝料の請求が認容される可能性も否定できません。
しかし、慰謝料が認められたとしても、不貞行為やDVなどの法定離婚事由に比べると低額になることは否めません。
(2)それでも金銭を請求したい場合には
上記のように、性格の不一致を理由に離婚する場合、慰謝料を請求できないというのが原則です。
しかし、相手の性格のせいで辛い思いをしたとか、相手との経済力のバランスを考えると離婚後に備えて少しでもお金が欲しいという場合もあるかもしれません。
そのような場合に実務でよく利用されるのが、次の2つの方法です。
①解決金
解決金とは、慰謝料の本質である損害賠償のように法律的な規定があるわけではありません。
しかし、慰謝料の代わりに離婚問題解決のためのお金として「解決金」が支払われることが多くあります。
解決金は、慰謝料と異なり、配偶者の一方に離婚原因がない場合でも利用できるというメリットがあります。
性格の不一致のように双方に原因があると考えられるケースや相手方配偶者が「慰謝料」という名目で金員を支払うことに抵抗があるケースでも利用できるので、調停などの場でも用いられることが多い方法です。
もう一つ、解決金が良く利用される理由として、離婚に関する金銭的な問題を一挙に解決できるというメリットがあります。
離婚する場合、夫婦で築いた財産を分け合う財産分与、精神的苦痛に対する損害賠償の性質をもつ慰謝料、子どもがいる場合の養育費、というように多くの名目の金銭の支払いが問題になります。
離婚の際は、後日、紛争を蒸し返されることを防ぐために「離婚協議書」を作成し、離婚に際して合意した内容を記載しておくことが望ましいのですが離婚協議書を作る場合は金銭の支払いについてもそれぞれ記載するのが通常です。
具体的には、夫から妻に財産分与として何円をいつまでに支払う、養育費として毎月何円をいつからいつまで支払うというように名目ごとに記載されます。
支払名目を明らかにすることで、後になって同じ名目でお金を請求されるトラブルを防ぐことが可能になるのですが、反面、慰謝料が発生しない性格の不一致による離婚のケースでは、この厳格さがかえって相手方の支払意欲を削いでしまう可能性もあります。
そこで、「解決金」という名目で、金銭の支払いに関する費用一切を含めて記載することで、夫婦双方のお金に関する心理的な壁をなくし、合意に至りやすくすることが期待できるのです。
解決金の中に、財産分与、離婚後の生活費、性格の不一致によって嫌な思いをさせられたこと、といった離婚に関する金銭の支払いのすべて含めることができるので、お金の問題を一挙に解決することが可能です。
ただし、解決金は、このように利用しやすい反面、ファジーさゆえに後から別名目をたてて追加でお金を請求される恐れがぬぐえません。
そこで、解決金を払った場合には、離婚協議書などに「精算条項」として、解決金の支払いによって全て解決した旨を記し、今後の請求を防ぐ手段を講じておきましょう。
なお、解決金は一括で支払われることが多いですが合意して分割払いにすることもできますが、その場合は、協議書に支払期間や金額も記載しておきましょう。
また、解決金には具体的な支払基準がありません。
夫婦双方の話し合いで金額が決まるものなので、そもそも解決金の額で揉めるような場合では離婚自体の解決にも至らないこともあります。
そのような場合には、調停を利用して第三者に間に入ってもらうなどして合意の形成を図っていくとよいでしょう。
②扶養的財産分与
財産分与とは、夫婦が婚姻生活中に協力して築いた財産を、離婚する際に夫婦が財産形成に貢献した割合に応じて分けあうことです。
「扶養的財産分与」とは、婚姻生活中に収入を得ていた配偶者が離婚後の生活が立ち行かなくなる恐れがある他の配偶者に一定の期間経済的支援を行うもので、離婚原因の有無にかかわらず支払いが認められます。
通常、毎月一定額を相手に払うことで行われます。
3.本当に性格の不一致か-離婚原因を見直しておくべき理由とは
(1)性格の不一致と思っていても他の原因がないか考える
前述のように、性格の不一致の場合、原則として慰謝料をもらえません。
また、当事者間の話し合いで協議離婚に至らず裁判になった場合は、性格の不一致が「婚姻を継続し難い重大な理由」と言えるまでの証拠積み重ねて裁判官を説得しなければならず、離婚裁判に多くの時間と負担がかかります。
実際は、性格の不一致と思っていても他の理由があることは少なくありません。
具体的には、生活費を渡してくれないことを単なるケチな性格だと思っていたのが、実際は「悪意の遺棄」にあたるケースや性格が悪いと思っていたのが言葉での暴力にあたるケースなどです。
このような場合には、法定離婚事由に当たるため慰謝料請求が認められたり、離婚自体も認められやすくなる可能性が高まります。
生活費が途絶えたことを示す通帳や家計簿の記録、精神的DVが原因で通院したような場合はその記録などは離婚の際の証拠として有効なので、きちんと記録したり保存しておきましょう。
性格の不一致と思って我慢していたことが、実は法定離婚事由にあたらないか、相手方に離婚に有責性が認められないか、一度見直してみることをお勧めします。
(2)性格の不一致による離婚の場合は再度関係の見直しを図る
性格の不一致による離婚は、双方合意しない限り平行線をたどりがちです。
かといって、一時の喧嘩で「性格があわない」と離婚に簡単に合意したのでは、後から大きなトラブルになりかねません。
財産分与などのお金の問題、子どもがいる場合は親権者の決定や養育費の問題、夫婦の一方が専業主婦・主夫だった場合は離婚後の生活費の確保の問題など、離婚前あるいは離婚時に決めなければならないことは膨大です。
また、法定離婚事由がある場合と異なり、慰謝料の請求が問題になりにくいだけに、お金をどのように払うのかでも揉める可能性があります。
性格の不一致だけなら修復可能だった関係が離婚の話し合いを進めるうちにさらにこじれ、もはや修復不可能な状況に陥ってしまう恐れもあります。
もし本当に性格の不一致を理由に離婚を目指す場合は、協議離婚・調停離婚で解決できるように十分話し合うことが重要ですが、その前に一度、離婚後に必要な諸手続きの煩雑さや生活の維持を含めて、検討してみることも意味があると言えるでしょう。
まとめ
今回は、性格の不一致で離婚する場合の注意点について解説しました。
そもそも裁判で離婚理由として認められないことや慰謝料が発生しないことに驚かれた方もいるかもしれません。
性格の不一致で離婚を検討される場合、お金の問題も含めてできるだけ話し合いで解決できるように、今後を踏まえて財産状況などを調べるなど、十分に準備をすることが重要です。
準備に必要な法的知識はもちろん、当事者の話し合いだけで揉めそうな場合には弁護人が代理人として立つなど、問題の解決に役立つ場合があります。
冷静に離婚を検討するためにも、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。