「離婚するなら早い方がいい」「離婚するにも勢いが必要だ」などと考えている方はいませんか?
夫婦間の不和や配偶者からの暴力などが原因で今すぐにでも離婚したいという方もいるかもしれませんが、勢いで離婚をすることは決しておすすめできることではありません。
きちんと準備をして、離婚後の生活プランも検討しておくことで財産分与や慰謝料の請求についてより有利に進めることができる可能性が高まるからです。
また、未成年の子どもを持つ夫婦の方が離婚を検討しているケースでは、親権をどうするかという問題は必ず考慮して決めておかなければいけないテーマです。
今回は、配偶者の状況別に離婚をする最善のタイミングはいつかについてご説明いたします。
※この記事は2017年3月30日に加筆・修正しました。
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目次
1.配偶者の状況別にみる離婚すべきタイミングとは
夫婦の話し合いで離婚をする場合は、理由の内容に関わらず離婚をすることができます。
しかし、夫婦間の話し合いでは離婚の合意に至らない場合には、調停を経て裁判の場で離婚することになります。
ここでは、法律で離婚が可能な理由として定められている4つの具体的な理由と、1つの抽象的な理由の中でもよくみられる理由について、配偶者の状況に応じた離婚のタイミングについて見ていきたいと思います(民法770条1項)。
(1)不貞行為が判明した場合の離婚のタイミング
①不貞行為が実際にあったとしても離婚の原因にならない場合とは
配偶者が、配偶者ではない相手と性交渉をした場合、夫婦がお互いに負っている貞操義務に違反したとして離婚を請求することが可能です。
とはいえ、不貞行為があったとしてもすでに配偶者との関係が破綻していたような場合には、不貞行為を理由とした離婚は認められないことになります。
具体的には、別居中であるとか同居中でも会話が全くないなど家庭内別居と言えるような状況では、すでに婚姻関係が破綻していると判断されることがあります。
また裁判では、1回限りの不貞行為では離婚の理由として認められるのは難しいというのが実務です。
②不貞行為を理由に離婚する場合に準備しておくべきこととは
不貞行為があったことを原因に離婚をするケースでは、離婚を請求する側が配偶者と相手方との間に不貞行為があっという「性行為を確認ないし推認できる証拠」を集めて証明する必要があります。
詐欺を防ぐために、裁判ではこういった証拠を厳しくチェックして制約を加えています。
具体的には、配偶者と不貞行為との相手がホテルなどに出入りしている写真やビデオ画像、メールなどのやり取り、会話の録音データ(文字に起こしたもの)などが不貞行為の証拠となり得ます。
ただし、配偶者が不貞行為を認めていない場合は特に、一つの証拠だけでは不貞行為を立証する証拠としては弱いと判断される場合もあります。
心配な場合には、専門家に調査を依頼するなどして証拠を収集することも検討してみるとよいでしょう。
また、前述のように、1回限りの不貞行為では、裁判では離婚の理由として認められるのは難しいのが通常です。
もちろん1回でも不貞行為に当たるのは事実なので、その場合には、この一度だけの不貞行為が「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるということを、離婚を請求する側で立証していかなくてはいけません。
③配偶者の不貞行為で離婚する場合のタイミングとは
配偶者の不貞行為が発覚して離婚を検討する場合には、次のタイミングに注意しましょう。
- 夫婦関係が破綻していないか
- 配偶者の不貞行為を立証できる証拠はそろっているか
- 不貞行為が一度の場合、離婚理由にあたる主張がきちんとできるか
(2)悪意の遺棄をされた場合の離婚のタイミング
①悪意の遺棄とは
夫婦には、同居して夫婦生活を送る上で助け合わなければいけないという義務があります。
配偶者の一方が、夫婦の共同生活を送れなくなることを分かりつつ、わざと放っておき、同居義務や相互扶助といった夫婦間の義務を行わないことを悪意の遺棄と言います。
具体的には、理由も無く家を出て帰らない、健康なのに理由もなく働かない、収入があるのに生活費を渡さないなどのケースがあります。
②同居していなくても悪意の遺棄にあたらない場合とは
悪意の遺棄は、夫婦の同居義務に違反することを指すので別居も悪意の遺棄にあたります。
ただし、次のようなケースでは遺棄する意思があるとはいうことができず、悪意の遺棄には当たらないと評価されます。
- 仕事で単身赴任したり、長期出張を理由とする別居のケース
- 婚姻関係を修復するために別居しているケース
- 妻の妊娠・出産のための別居や、病気の治療をするために別居しているケース
- 配偶者からの暴力を避けるために別居しているケース
- すでに婚姻関係が破綻した後に別居しているケース
つまり、婚姻を継続する意思がなく、相手を遺棄する意思がある場合の別居が悪意の遺棄にあたるということになります。
③悪意の遺棄で離婚する場合のタイミングとは
配偶者に悪意の遺棄をされて離婚を検討する場合には、次のタイミングに注意しましょう。
- 婚姻関係を続ける意思がない別居と言えるか
- 生活費を渡されていないか、生活レベルが同等と言えないレベルか
- 別居中に配偶者が夫婦の共有財産を勝手に持ち出していないか
- 配偶者に離婚届を勝手に出されそうな場合は、予め本籍地や住所地の役場に離婚届の不受理申出を提出したか
(3)配偶者が生死不明の場合の離婚のタイミング
①離婚理由になる生死不明の状況とは
離婚理由になる「生死不明」とは、生存の証明も死亡の証明もできない状態を指します。
どこにいるかが分からなくても、生存が確認される状況であれば生死不明にあたりません。
②離婚が認められる生死不明の期間とは
配偶者がある日突然いなくなった場合、残された配偶者は将来に大きな不安を持つことになります。
離婚をしようにも配偶者の合意が得られる状況になく、再婚しようにも離婚できていない以上重婚状態になる、という後にも先にも進めない状況に追い込まれかねません。
そこで、法律では配偶者が行方不明になり、3年以上の間、生死が不明の場合は、婚姻関係が破綻したとして離婚できると定めています。
生死不明をカウントする起算点は、最後の音信があった時とするのが通常です。
蒸発して行方不明になった後は、直ちに警察に届出を提出しましょう。
③3年以上の生死不明で離婚するタイミングとは
配偶者が3年以上生死不明でも、自動的に離婚になるわけではありません。
この場合、もう一方の配偶者が裁判を起こして、裁判で離婚を認めてもらわなければいけません。
また、離婚が認められれば、配偶者に財産分与の請求も可能になるので、財産を把握しておくと後の流れがスムーズです。
配偶者の生死不明が3年以上に亘り、離婚を検討する場合には、次のタイミングに注意しましょう。
- 最後の音信があったときがいつか証明できるか
- 失踪届、行方不明届は警察に出しているか
- 配偶者の財産を把握できているか
(4)回復の見込みがない精神病で離婚するタイミング
①離婚の理由となる「回復の見込みがない精神病」の状況とは
夫婦には同居義務と相互に扶助する義務があるので、配偶者が病気のときには助け合う義務があるといえます。
しかし、配偶者が重い精神病に罹患している場合には、精神的・経済的な負担のために夫婦共倒れとなる恐れも否定できません。
そこで、法律では、配偶者の一方が重い精神病で回復する見込みがないケースでは、離婚理由となることを定めています。
具体的には、偏執病、躁鬱病、初老期精神病、早期性痴呆、麻痺性痴呆などがあります。
反対に、アルツハイマーやアルコール中毒、神経衰弱やノイローゼ、ヒステリーといった症状は精神病にあたらないというのが法律的な解釈です。
②配偶者の強度の精神病で離婚を認めてもらうには
上述のように、夫婦には相互に扶助して協力し合う義務があるため、配偶者の片方が精神病になったというだけでは離婚は認められません。
離婚理由として認めてもらうためには、精神的な繋がりがないこと、夫婦間の協力扶助義務を維持できないことなど、配偶者の精神病が回復の見込みがない程度に重いことが専門的に認められることが必要になります。
実際には、専門医の診断を参考に、裁判官が婚姻生活の継続が可能かどうかを個別の事情を踏まえて判断します。
③回復の見込みがない精神病で離婚するタイミングとは
配偶者の強度の精神病が離婚理由として認められるには、これまでの経緯と今後のフォローが必要です。
配偶者が回復の見込みのない精神病であることを理由に離婚を請求する場合には、次のタイミングに注意しましょう。
- 配偶者の精神病について長期間治療が続いていることを証明できるか
- 離婚を請求する配偶者が誠実に看病してきたことを証明できるか
- 精神病に罹患した配偶者を離婚後に看病する人がいるか
- 精神病に罹患した配偶者の、離婚後の治療費は確保できるか
(5)配偶者に暴力を振るわれた場合の離婚のタイミング
①婚姻を継続し難い重大な理由とは
法律では、上記の4つの具体的な離婚理由の他に「婚姻を継続し難い重大な事由」による離婚を認めています。
どのような事情が婚姻を継続し難い重大な事由にあたるかは、裁判官が様々な事情を考慮して判断することになりますが、ここでは昨今増加している配偶者の暴力(DV)について解説します。
②離婚の理由になる配偶者の暴力とは
配偶者の暴力は、婚姻を継続し難い重大な事由にあたります。
しかし、喧嘩のはずみといった程度では離婚理由として認められるのは困難です。
具体的には、身体の痣が絶えない暴行を振るわれているとか普段から酒癖が悪く恒常的に暴力を振るう、子どもにも手を上げるといった事情が離婚原因として挙げられます。
また、1回の暴力でも流血する、顔が腫れあがる、骨折するなどけがの程度が重大な場合は離婚原因となり得ます。
さらに、暴力は、身体的な暴力だけでなく言葉・精神的・性的なものも含みます。
具体的には、脅迫的、威嚇的な言動や侮辱的な発言、思いやりや配慮に欠ける振る舞いなども離婚原因として考慮されます。
ただし、一時的な喧嘩でのやりとりでは離婚原因として認められないので、婚姻関係が破綻したような場合に認められることになります。
③配偶者の暴力で離婚する場合のタイミングとは
配偶者の暴力行為については、裁判でも厳しい判断が下されがちです。
ただ、きちんと状況を伝え離婚するために、次のような準備をおこない離婚の請求のタイミングに留意しましょう。
- 配偶者の暴力でケガをした場合、医師の診断を受けているか
- 配偶者の暴力を証明する、壊れた物や破れた服などの証拠を写真などに残しているか
- 配偶者の暴力を相談した第三者はいるか
- 言葉や態度による暴力の場合、録音テープなどの証拠はあるか
なお、家庭内暴力は「民事不介入」として警察はノータッチと長く言われていましたが現在はDV法によって警察に保護を求めることが可能になっています。
配偶者から酷い暴力を受けたような場合には、警察や支援センターなどに相談してください。
配偶者から暴力(DV)をされた場合に知っておくべきことはこちらで詳しく解説しています。
2.家庭の状況で注意すべき離婚のタイミングとは
上記のような配偶者の状況に加え、家庭の状況によっても離婚のタイミングは変わってきます。
(1)未成年の子どもがいる場合の離婚のタイミング
未成年の子どもがいる場合、親権をどちらが持つかは離婚届けを役所に提出するまでに決めておかなければならない事項です。
親の離婚で子どもの環境が変わるかどうかは、考慮する際に重視される要素です。
「子の福祉」の観点から子どもの環境や将来に悪い影響がないように配慮をすることが求められます。
親権に加えて、監護権をどうするか、子どもの姓の変更や転校が必要かどうかなど、子供の年齢や意見も踏まえて検討しておきましょう。
また、養育費についても毎月の支払額の決定に加え、万が一支払が滞った場合に備えて強制的に回収できるような公正証書にしておくなどの準備をしておきましょう。
親権を確実に得る方法はこちらで詳しく解説しています。
(2)高齢夫婦の場合の離婚のタイミング
高齢の夫婦が離婚する際に重視すべきタイミングのひとつに、配偶者の退職(定年退職)があります。
特に、退職金があるかどうかによって、財産分与の金額が大きく変わってきます。
配偶者が専業主婦として内助の功を発揮してきた反面、自身の蓄えはあまりないというような場合、離婚後の生活をどうするかも、十分に検討しておく必要があります。
慰謝料や財産分与は専門的な計算や判断を要する場合もあるので、弁護士などの専門家に相談しておくとよいでしょう。
また、熟年離婚を有利に進める方法はこちらで詳しく解説しています。
(3)若者夫婦の場合の離婚のタイミング
昨今、一般の方でも結婚後短期間で離婚するケースも少なくありません。
婚姻関係が長く続いた場合に比べると、財産分与や慰謝料でも大きな争いに発展するケースは多くはないといえますが、事情や配偶者双方の資産の状況などはきちんと把握しておく必要があります。
離婚の紛争が長引いたり法的な知識不足で後から紛争を蒸し返されたといったトラブルを防ぐためにも、もめそうな場合には専門家を間にたてて交渉することをお勧めします。
まとめ
今回は、配偶者の状況別の離婚のタイミングについてご説明しました。
状況によって、行っておくべき準備やタイミングは異なります。
離婚後の生活や受け取るべき財産分与や慰謝料を踏まえて、最適なタイミングで離婚を検討している方は今回の記事を参考にしてください。
また、弊社では離婚問題に強い弁護士をご紹介しておりますので、是非ご活用ください。