夫の風俗通いが離婚の原因になる?その条件と別れる為の方法を解説

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夫婦の離婚の原因にはさまざまなものがありますが、配偶者の異性関係はいつの時代にも離婚原因の上位に位置付けられます。

配偶者が浮気をすれば当然離婚できると考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、何をもって浮気といえるのかは必ずしも明らかではありません。

たとえば、夫が風俗店に通っていたことを知った妻が、夫が浮気をしたという理由で離婚を求めた場合、夫は「お金を払って性処理をしているだけで単なる遊びだ」といって、浮気とは認めず、離婚には応じないということがほとんどでしょう。

そこで今回は、夫が風俗店に通っていた場合に離婚することができるのかについて解説します。

1.裁判上の離婚原因とは


協議離婚や調停離婚の場合、夫婦双方の合意により離婚が成立するため、とくに離婚原因に制限はなく、どのような理由であっても離婚することができます。

これに対し、裁判上の離婚は、一方当事者が離婚に応じない場合でも、裁判所が判決によって強制的に離婚を認めることができるという強力な制度であるため、どのような理由でもよいというわけにはいかず、法律で定められた離婚原因に該当しなければなりません。

法律上の離婚原因とは、

  • 配偶者に不貞な行為があったとき
  • 配偶者による悪意の遺棄
  • 配偶者の生死が3年以上不明
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない

(民法770条1項1号~5号)

配偶者の浮気は、一般的に1号の不貞行為に該当すると言われています。

2.不貞行為とは


それでは、不貞行為とは、具体的にどのような行為をさすのでしょうか。

この点について、最高裁判所の判例は、不貞行為とは「配偶者ある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」をいうとしています(最高裁昭和48年11月15日判決)。

配偶者のいる人が、配偶者以外の特定の人と2人だけで頻繁に食事や旅行に行ったり、キスをしたりしたというような場合、浮気と思う方も少なくないと思われますが、「不貞行為」といえるためには性的関係を結ぶことが必要ですから、このような関係では「不貞行為」には該当しないということになります。

3.夫の風俗通いは不貞行為に該当する?

(1)風俗店における性的関係も不貞行為に含まれるのか

最高裁の不貞行為の定義からすれば、不貞行為と言えるためには、「自由意思にもとづいて」「性的関係を結ぶ」ことだけが要件とされています。

性的関係を結んだことに対する金銭その他の対価の有無や、恋愛感情の有無などは要求されていません。

したがって、風俗店でお金を払って従業員と性的関係を結んだ場合でも、不貞行為に該当するといえます。

(2)どのような風俗店でも不貞行為になるのか

風俗店といっても、さまざまな業態があります。

日本の法律上、管理売春は違法であり、風俗店で性行為そのものをすることは本来的には許されないのですが、実際には性行為を前提とする風俗店(いわゆるソープランド)もあります。

他方で、女性従業員の接客で、お酒を飲みながら女性従業員の体を触ることができる風俗店(セクシーキャバクラなどと呼ばれたりします)もあります。

後者のような風俗店に通っただけでは、性的関係を結んだとまではいえないため、不貞行為には該当しないでしょう。

(3)1回限りでも不貞行為になるのか

この点については、弁護士でも見解が分かれるかもしれません。
中には、一度だけで離婚を認めた判例はないと言い切っているサイトもあります。

しかしながら、判例は、離婚協議や離婚調停で合意ができず、離婚訴訟が提起され、訴訟においても和解ができずに最終的に裁判所が下した判決の集積です。

夫が一度だけ風俗店に通ったことが判明した場合、夫が真摯に反省すれば妻が許すこともあるでしょうし、協議離婚や調停離婚、訴訟上の和解で解決することもあるでしょう。

このようにみると、一度だけの風俗通いで離婚訴訟の判決にまで至ることは極めてまれであるため、現時点で一度だけの風俗通いで離婚を認めた判例がないに過ぎないとも考えられます(現に、「一度だけの風俗通いであれば不貞行為に該当しない」と明言して妻の離婚請求を棄却した判例を紹介しているサイトは見当たりません)。

不貞行為についての最高裁の定義は「性的関係を結ぶこと」であり、回数を問題にしていませんし、条文の文言も「不貞な行為があったとき」として、不貞行為が反復継続されたことを要求していませんので、一度だけなら不貞行為にあたらないと決めつけることは早計ではないかと思われます。

(4)例外は認められないのか

法律上の離婚原因が存在する場合でも、例外的に離婚が認められないことがあります。

裁判所は、民法770条1項1~4号に該当する事由がある場合でも、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚請求を棄却することができます(民法7700条2項)。

ですから、配偶者に不貞な行為があった場合でも、裁判所が離婚の請求を認めないことが法律上はありえます。

もっとも、実務上は770条2項が適用されることはあまりありません。

過去の判例では、3号の「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」にあたるとしてなされた離婚請求について、配偶者の経済的事情などを考慮して、今後の療養、生活等についての具体的方策を講じ、ある程度前途に見込みがついたうえでなければ離婚を認めないとしたものが目に付く程度です。

3号の場合、精神病にかかった配偶者に落ち度があるとは必ずしもいえず、離婚を求める側が被害者であるとは一概には言えないため、価値判断として上記の結論の是認できるものと考えられます。

これに対して、1号の場合、不貞行為を行った者に落ち度があり、離婚を求める者が被害者であることは明らかです。

その被害者が離婚を請求した場合に、裁判所が離婚を認めないというのは本来ありうることではなく、770条2項の適用は極めて制限されるべきと考えられます。

したがって、不貞行為の場合には、裁判所の裁量で離婚請求が棄却されることはまずないといえるでしょう。

4.不貞行為に当たらない場合に離婚するためには


不貞行為にあたらない風俗通いの場合でも、絶対に離婚ができないというわけではありません。

民法770条1項5号が「その他婚姻を継続し難い重大な事由」を離婚原因としており、婚姻関係が破綻したと言える場合には、離婚を請求することができます。

どのような事情があれば「婚姻を継続し難い重大な事由」といえるかについては、個別の事案ごとに判断されることになりますが、過去の判例を参考にすると、次のような場合には、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると考えられます。

まず、不貞行為が離婚原因とされていることから、夫婦は互いに低層義務を負っており、その裏返しとして、正当な理由なく夫婦間の性行為を拒否することはできません。

したがって、夫が風俗通いをして妻との性行為を拒否しつづけるような場合、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。

また、夫婦は互いに扶助義務を負っており、婚姻費用を分担しなければならないと定められていることから、夫が風俗通いで浪費して妻に生活費を渡さないというような場合にも、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。

このように、風俗通いだけでは直ちに不貞行為に該当しない場合でも、風俗通いを他の離婚原因を基礎づける事情として位置づけることは可能です。

まとめ

風俗通いを理由に離婚できるかについて解説しました。

離婚問題は、離婚理由にあたるかどうかの判断が難しいことだけでなく、離婚理由がるとしてそれをどのように証明するか、どうすれば証拠を収集できるかといった課題があります。

ですから、離婚問題でお悩みの方は、離婚問題に詳しい弁護士に相談するようにしてください。

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