「交通事故の後遺症で、はっきりした病名はないが頭痛や吐き気が治らない…」
「事故の後遺症でめまいが続くが、後遺障害に認定されるのだろうか…」
交通事故の後遺症で頭痛や吐き気、めまいといった症状がある方は少なくありません。
しかし、明確な病名の診断が出ないことから後遺障害認定を受けられず、結果として慰謝料が受け取れないという事態にもつながりやすい症状でもあります。
交通事故で頭痛や吐き気、眩暈といった後遺症が残った場合に、後遺障害の認定を受けて適正な慰謝料を受け取るためにはどうしたらよいのかというポイントを解説したいと思います。
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1.眩暈・頭痛・吐き気で後遺障害認定を受けるために知っておくべき原因
(1)後遺障害認定と慰謝料の関係とは
交通事故で頭や首に衝撃を受けるなどしたことが原因となり、眩暈、頭痛、吐き気などの症状が続くといった症状が残ることがあります。
しかし、これらの症状が残ったというだけでは後遺障害の認定を受けることはできません。
後遺障害の認定が受けられないということは、保険金の慰謝料をもらえないということにつながります。
つまり、どんなに頭痛やめまいといった症状が辛くても後遺障害等級の認定を受けられなければ、相手方の保険会社からの保険金を受け取ることはできないというのが原則なのです。
交通事故の被害に遭って頭痛・めまい・吐き気などの症状が続くのは辛いものですが、適切な後遺障害等級認定を受けて慰謝料を受け取るために、これらの症状の原因を知っておくことが大切です。
(2)交通事故で頭痛・めまい・吐き気が生じる原因とは
これらの原因として考えられるのが、次の6つの症状です。
①良性発作性頭位めまい症
良性発作性頭位めまい症は、内耳の中の耳石が事故の衝撃で半規管ないに入ることによって生じると言われています。
多くの場合、自然に治癒しますが、最近は耳石を取り出す治療法が考案されて治療期間の短縮に役立っています。
②外リンパ瘻
外リンパ瘻は、交通事故の衝撃で内耳の外リンパが中耳に漏れることによって発生します。
外リンパが漏れる穴が自然に閉じるのを待つという安静治療が一般的ですが、重篤な場合は外リンパが漏れる穴を塞ぐ手術が必要なこともあります。
③むちうち症
むちうちは、外傷性頸部症候群と言われる症状で頸椎の靭帯や椎間板、関節包、その周囲の筋肉や筋膜が損傷することによって症状が出ます。
④バレー・リュー症状
原因は明らかではありませんが交通事故によって主に首に衝撃を受けて頸部の神経の緊張や自律神経が刺激を受けることで、頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気、記憶障害、倦怠感など様々な症状が表れるとされています。
むちうち(頸椎捻挫)によって発生するほかに、神経や脊髄を損傷することによって生じる場合もあります。
⑤軽度外傷性脳損傷(MTBI)
交通事故で頭部に直接衝撃を受け、硬膜外、くも膜下血腫、脳挫傷などの傷害を脳に負ったことで症状が生じることがあります。
重傷の場合は場合、昏睡状態が6時間以上続いたりCTやMRIで確認できることが多いですが、MTBIの場合は画像に写らないこともあります。
⑥脳脊髄液減少症
交通事故で、頭や体に強い衝撃を被ったことが原因となり脳と脊髄を覆う髄液が漏れることによって、頭痛、眩暈、耳鳴りなど様々な症状が発生します。
損傷した部分の自然治癒を目指すことが第一の治療法になりますが、改善しない場合は脳脊髄液が漏れた部分に自身の血液を注入する治療を行うこともあります。
2.頭痛・めまい・吐き気などで後遺障害認定を受ける際の注意点
(1)頭痛・めまい・吐き気だけでは後遺障害認定を受けることは難しい
交通事故で頭痛やめまい、吐き気の症状が生じることは少なくありませんが、それだけで後遺障害を認めることはまずありません。
通常、上記で挙げたような、むちうちなどの症状によって後遺障害の認定を受けていくことになります。
また、脳に外傷があるという画像所見がCTやMRIで出た場合には、頭痛などの症状も脳外傷による症状の一つとして考えられることになります。
(2)頭痛・めまい・吐き気などで後遺障害認定を受けるために気を付けるべきこと
交通事故によって生じた頭痛・めまい・吐き気などの症状は、外見からは分かりにくく被害者本人の主観的な症状であることがほとんどです。
そのため、これらの症状で後遺障害の認定を受けるためには、医師に順を追って症状や経緯を説明して記録に残してもらうこと、適切な検査を受けて症状の発生を他覚的に立証していくことが重要になります。
具体的には、以下の3つに気を付けて、事故後の治療を進めていきましょう。
- 症状が発生したら直ちに医師にかかり、症状を伝えること
- 服用した薬の種類を記録しておくこと
- 頭部や頸部などに衝撃を受けた場合はレントゲン、CT、MRI等の画像診断を受けること
なお、頭痛、眩暈、吐き気といった症状は、衝撃を受けた場所によってはすぐに発生しないこともあるので、諦めず治療を続けることが大切です。
3.頭痛・めまいの症状別後遺障害認定のポイントとは
(1)頭痛の場合
①頭痛で後遺障害認定を受けるために押えておくべきポイントとは
交通事故で頭痛が残った場合、次の5つのどの原因によるものかを具体的に証明していくことが必要になります。
具体的には、いつ、どこに、どの程度の頭痛が発生し、どのくらいの期間続いているのかを記録することに加え画像所見も残しておくことが必要です。
- 頭部に傷を負った場所に生じる疼痛
- 動脈が拡張することが原因で発生する血管性頭痛
- 頭部や頚部の筋を痛めたことで生じる筋攣縮性頭痛
- 交感神経が刺激されたことで生じる頚性頭痛(バレ・リュー症状)
- 神経痛や後頭部から顔面などに痛みが生じる三叉神経痛
②頭痛で認定される後遺障害等級とは
頭痛の症状によって認定される可能性がある後遺障害等級は、症状によって以下の3つがあります。
後遺障害9級
通常の労務に服することはできるが、激しい頭痛によって時には労務に服することができなくなる場合があるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限される状態
後遺障害12級
通常の労務に服することはできるが、時には労働に差し支える程度の強い頭痛が起こる状態
後遺障害14級
通常の労務に服することはできるが、頭痛が頻繁に発現しやすくなった状態
(2)めまいの場合
①めまいで後遺障害認定を受けるために押えておくべきポイントとは
めまいは、平衡機能に障害が生じた症状です。
めまいには2つの症状があり、めまいが事故によって生じたものであることを証明するために、次のどの症状に該当するかを判断していく必要があります。
具体的には、どのような症状なのか、めまいが続く時間や反復があるか、耳鳴りがしたり難聴になった、吐き気がするといった他の症状も生じているか、起立など頭の位置が変わることで症状が変わるかなどを医師に伝えます。
加えて、眼振検査、迷路刺激検査、平衡機能検査などで診断を受けることになります。
定型性めまい(末梢性障害)
回転感が特徴の症状で、周囲がぐるぐる回ったり、床や壁が傾く等の感覚が出ます。
眼球が意図しない動きをする不随意運動は軽いものの長く続きます。
非定型性めまい(中枢性障害)
身体の不安定感が特徴で ふらついたり視界が暗くなるなどの感覚、宙にういた感じがします。
眼振の方向が決まっている、頭の位置を変えるとめまいが悪化することが多いという特徴があります。
また、眩暈の症状が重く、耳鳴りや難聴を伴うことが多いのもよくみられる症状です。
②めまいで認定される後遺障害等級とは
めまいの症状によって認定される可能性がある後遺障害等級は、以下の6つがあります
後遺障害3級
生命の維持に必要な身のまわり処理の動作はできるが、高度のめまい等のために労務に服することができない状態
後遺障害5級
著しいめまいの症状のために、労働能力が平均の4分の1程度しか残っていない状態
後遺障害7級
中程度のめまい等のために、労働能力が平均の2分の1程度しか残っていない状態
後遺障害9級
めまいの自覚症状が強く、検査結果でも明らかな異常所見があり、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限される状態
後遺障害12級
通常の労働をすることに差し支えはないが、検査結果で異常所見が認められる状態
後遺障害14級
検査結果に異常はないが、眩暈の自覚症状があることが医学的にも推測できる状態
まとめ
今回は、交通事故被害に遭い、頭痛やめまいの後遺症が残った場合に、後遺障害等級認定を受けるために必要なこと、知っておきたい症状などについてお話ししました。
頭痛などの症状は発生しやすく辛い症状である一方で、後遺障害の認定を受けにくい一面もあります。
慰謝料をきちんと受け取るためにも頭痛やめまいで後遺障害の認定を受ける際には、医師にしっかり伝えることと心配な場合は交通事故に強い弁護士に相談することも検討するとよいでしょう。