交通事故の被害に遭って怪我をしたけれども、加害者が何もしてくれない。
こういった相談は少なくありません。
しかし、こういった場合、被害者側から自賠責保険会社に保険金を請求することが出来ます。
そこで弊社記事では、自賠責保険の被害者請求について解説させていただきます。
ご参考になれば幸いです。
※この記事は2017年5月18日に加筆・修正しました。
- 交通事故
- 過払い
- 離婚問題
- 刑事事件
- 企業法務
- 遺産相続
- 労働問題
- B型肝炎
ホウツウがオススメする法律事務所が安心!
目次
1.自賠責保険支払いの流れ
(1)そもそも自賠責保険とは?
自賠責保険は、法律で加入することが義務付けられています。
交通事故などの被害者を助けるための制度で、最低限度の補償を自賠責保険から受けることが可能です。
保険の対象は人損(怪我など、人に生じた損害)のみであり、物損(物の損害)は含まれません。
(2)保険金支払いの流れ
事故発生後から、保険金が支払われるまでの手続きは下記に記します。
①保険金の請求
保険金の請求をする人が損害保険会社に自賠責保険の請求書類を提出します。
なお、請求者は、加害者である場合(加害者請求)と被害者である場合(被害者請求)の2通りがあります。
加害者の場合、最初に被害者に対して損賠賠償金を支払います。
次に、保険金を損害保険会社へ請求をする方法があります。
被害者の場合、被害にあったのに加害者から一向に賠償金を支払ってもらえない場合に、加害者の入っている保険会社に対して直接賠償金を請求する方法があります。
ちなみに、多くの場合には、加害者が自賠責保険のほかに任意に自動車保険にも加入しています。
上記のような手続きを取らずとも保険金を受け取ることが可能です。
任意保険の損害保険会社は加害者に代わり、自賠責保険の保険金を含めて支払うことがあります。
任意保険会社が一括で支払うので、「一括払制度」と呼ばれています。
実務上大半の交通事故は、この任意一括払い制度で処理されています。
なぜなら、この制度であれば被害者は面倒な手続に煩わされずに済むからです。
②調査依頼
損害保険会社から損害保険料率算出機構へ損害調査の依頼をします。
※損害保険料率算出機構とは
「損害保険料率算出団体に関する法律」に基づいて設立された団体で、自賠責保険の基準料率の算出を行うとともに、事業の一環として自賠責損害調査センターにおいて全国に自賠責損害調査事務所を設置し、損害調査を行っています。
③損害調査
調査事務所では、常に公平な立場で請求書類に基づいて交通事故の発生状況や支払う賠償金の額を調査します。
④損害報告
調査終了後、結果を損害保険会社へ連絡します。
⑤保険金支払い
損害調査の報告をもとに請求者へ支払う額を決定して支払いを行います。
2.被害者請求の方法
自賠責保険の被害者請求は、書面での請求となります。
その際に必要な書類は、おおよそ以下のとおりです。
基本的に交通事故の内容によって、必要になる書類は異なってきます。
ですので、保険会社に問い合わせをして必要な書類を揃えましょう。
(1)保険金請求書
保険会社から請求書を発行してもらい、請求者の住所・氏名・電話番号・振込先等を記入します。
加害者情報については、事故証明書の記載から分かる程度の記載で良いでしょう。
なお、被害者欄に職業記載欄がありますが、家事従事者は「無職」でなく「主婦(又は主夫)」と記載しましょう。
(2)交通事故証明書
交通事故証明書とは、交通事故が起きたことを証明する書類です。
警察署へ届け出をした後に、各都道府県の交通安全運転センターから発行してもらえます。
ちなみに、ウェブサイトやゆうちょ銀行からでも発行申請が可能です。
(3)事故発生状況報告書
保険会社から書式を取り寄せます。
交通事故が発生したことを証明するためのに、交通事故が発生した時の事故状況を図や文章で記します。
主に事故時の「運転速度・道路状況・道路幅・信号や標識」について記入します。
加害者側の過失の有無や、保険金支払いの対象となるかどうかの基本的な判断の材料となるので、正確に記載する必要があります。
なお、あくまで事実を伝える書面であるから、感情的な記載は避けた方がいいでしょう。
(4)診断書・診療報酬明細
医師に依頼して取得します。
なお、症状固定による通院打切りとなった場合は、後遺症慰謝料が請求できるので、更に医師に「後遺障害診断書」を書いてもらう必要があります。
(5)印鑑証明書
請求者本人の印鑑証明書を、市区町村役場で取得しましょう。
(6)その他
事故によって休業を余儀なくされた場合の「休業損害証明書」や通院時に交通費を要した場合の「通院交通費明細書」など、事故の内容等によって、その他必要な書類は異なる。
保険会社に問合せ、必要書類をきちんと確認することが大切です。
3.被害者請求のメリットとデメリットについて
(1)被害者請求のデメリット
上述したような書類を調える必要があるなど、手続が煩わしいです。
怪我の治療や仕事の合間に請求することについては、かなり面倒に感じるかもしれないです。
(2)被害者請求のメリット
被害者の過失割合が大きいケースや事故と損害の因果関係に疑義があるケースには、任意保険会社は過払いの可能性を考えて、一括払い制度の利用を躊躇うため保険金を受け取るためには被害者請求せざるを得ないでしょう。
また、以下のような場合には被害者請求を検討するべきであると言えるでしょう。
①適正な後遺障害認定を受けたい場合
後遺症について保険金を受け取るためには、後遺障害等級認定が必要です。
後遺障害等級認定は自賠責保険会社から受けることができます。
この認定の申請には下記の二種類があります。
事前認定
加害者が入っている保険会社を通じて後遺障害等級認定を申請することができます。
基本的に、交通事故だと相手方の保険会社が担当者を選任して被害者対応を行います。
後遺障害診断書を担当者に渡すだけで、あとは担当者が手続きをしてくれます。
被害者請求
被害者自身が後遺障害等の請求をする方法です。
こちらの方法は、必要書類を自ら揃える必要があるため煩雑です。
しかし、相手方の任意保険会社は必ずしも被害者にとって有利な書類のみを調査事務所に提出しているわけではありません。
ですので、しっかりと適正な後遺障害等級の認定が欲しいのであれば、被害者自身で請求する方法が良いでしょう。
②被害者が経済的に苦しい場合
上記、後遺障害等級認定について事前認定により等級が認定されても、ただちに自賠責保険金が支払われるわけではありません。
自賠責以外の支払部分も含め示談が成立した後に支払われることが通常です。
他方、被害者請求をした場合、等級が認定された時点で等級に対応する自賠責保険金の支払いを受けられます。
まとめ
以上、自賠責保険と被害者請求について理解していただけましたでしょうか。
被害者請求は煩雑ですが、メリットも多いです。
場合によっては、弁護士等の専門家に依頼して煩雑な手続を代行してもらうのも手です。
今回の内容が被害者請求の手続きを検討されている方のご参考になれば幸いです。