交通事故で傷害を負い、その治療や療養のために仕事を休んだことで収入が下がってしまった場合、加害者に休業損害を請求することが可能です。
その際に必要になるのが、「休業損害証明書」です。
保険会社は休業損害証明書の記載をもとに休業損害の額を計算しますから、休業損害証明書は正確に作成する必要があります。
そこで今回は、休業損害証明書の書き方や休業損害証明書を書く上での注意事項をご説明します。
※この記事は2017年4月5日に加筆・修正しました。
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目次
1. 休業損害証明書とは?
(1)休業損害の請求に必須
交通事故の被害者は交通事故によって被った損害の賠償を請求することができますが、損害が発生したことは被害者自身が証明しなければなりません。
ですから、休業損害を請求する場合には仕事を休んだことや収入が減少したことについての証拠が必要になります。
そのために作成されるのが、休業損害証明書です。
(2)休業損害証明書には決まった書式がある
休業損害証明書には決まった書式があります。
インターネット上で書式が公開されており簡単に入手することができますが、一般的には加害者の保険会社から書式が送られてきます。
弊社でも「休業損害証明書」の雛形を用意したので、ぜひダウンロードして活用してください。
※クリックすると別でタブが開きます。
(3)休業損害証明書を作成するのは勤務先
被害者自身が書いたのでは証拠になりませんから、勤務先に休業損害証明書を書いてもらわなければなりません。
とはいえ、保険会社は書式を送ってくれますが、書き方まで懇切丁寧に説明してくれるわけではありません。
従業員の多い大企業であれば、人事担当者は過去に休業損害証明書を作成した経験があるでしょうから、それほど苦労なく作成してもらえるでしょうが、それほど規模が大きくない会社や設立間もない会社などでは担当者に経験がなく、書き方がわからないため時間がかかってしまうケースも珍しくないようです。
休業損害証明書の書き方のことでお困りの方がいらっしゃったら、次にご紹介する休業損害証明書の書き方をぜひ参考にしてください。
2. 休業損害証明書の正しい書き方
(1)休業損害証明書の書式
こちらが休業損害証明書の書式になります。
以下、書式を参照しながらお読みください。
(2)前年度の源泉徴収票を貼付する
収入を証明するために、前年度の源泉徴収票を貼り付ける必要があります。
就職して間がないため前年度の源泉徴収票がないというような場合には、代わりに過去3ヶ月分の賃金台帳の写しを用意する必要があります。
(3)職種・役職 氏名 採用日の記載
事実のとおり記載すれば問題ありませんので、さほど難しいものではないでしょう。
(4)仕事を休んだ期間の記載
1.に仕事を休んだ期間を記載します。
治療が終わった後(症状固定した後)にまとめて休業損害を請求する場合には、事故日(またはその翌日)から症状固定の日までの期間を記載すればいいでしょう。
もっとも、治療期間が長期にわたる場合や生活費などが必要な場合には、治療中であっても休業損害を支払ってほしいと思われる方も多いでしょう。
その場合には、期間を区切って(たとえば1ヶ月分に限定して)記載し、その期間の休業損害を請求することが可能です。
この場合、その後も仕事を休んだために休業損害を請求したいときは、改めて勤務先に休業損害証明書を作成してもらう必要があります。
(5)欠勤日数、年次有給休暇取得日数、遅刻回数及び早退回数を記載
対象期間中の欠勤日数、年次有給休暇取得日数、遅刻回数及び早退回数を記載します。
なお、年次有給休暇を取得すれば収入は減少しませんが、年次有給は労働者の権利であり事故がなければ自由に使えたのに事故に遭ったために使わざるを得なくなったのであれば、休業損害として認めるという運用が定着しています。
(6)仕事を休んだ日の記載
仕事を休んだ日(年次有給休暇を含む)には○を、勤務先のもともとの休日には×を、それぞれ記入します。
遅刻の場合には、△と記入し、あわせて遅刻した時間を記入します。
早退の場合には、▽と記入し、あわせて早退した時間を記入します。
(7)休んだ期間の給与について
休んだ期間の給与について、アからウのうち該当するものに○を付けます。
たとえば、休んだ日がすべて年次有給休暇の場合には、給与を全額支給することになりますから、アに○を付けることになります。
一部支給(減給)した場合には、支給した額とその額の計算根拠を明らかにする必要があります。
(8)事故前3ヶ月に支給された給与額の記載
事故前3ヶ月に支給された給与の額を記載します。
ここでいう「事故前3ヶ月」とは、事故日の前月、前々月、前々前月のことで、事故日の月は含まれないことに注意が必要です。
休業損害は自賠責保険の場合、基本的に1日あたりいくらという定額があるのですが任意保険や裁判で請求する場合には、ここに記載された給与の合計額を90で割って1日あたりの収入(基礎収入)を算定し、それに休業日数を掛けるというのが一般的な計算方法です。
したがって、この部分の記載は休業損害を計算するうえで極めて重要ですから、特に間違いのないように記入する必要があります。
とはいえ、あまり難しく考える必要はありません。
本給と付加給を分けて書くことになっていますが、その合計額を基礎に計算しますので、あまり厳密に考える必要はなく、「本給」に基本給を、「付加給」に基本給以外の手当などの合計額を記載すれば問題ないでしょう。
なお、ここに記載する額は賞与を含まないものです。
長期にわたり休業したために賞与が減額されたり支給されなかったりした場合、その補償を求めるには別途、賞与の減額についての証明書が必要になります。
パートやアルバイトの場合は、所定の労働時間、日給・時給を記入します。
(9)社会保険の名称と連絡先の記載
社会保険(労災保険や健康保険など)から休業補償などを受けている場合には、社会保険の名称と連絡先を記入する必要があります。
たとえば仕事中に事故に遭ったような場合、加害者に対する損害賠償請求のほか、労災保険から給付を受けることも可能です。
もっとも、休業損害は、事故により減少した収入を補てんするものですから、仕事中の事故かそれ以外の事故かによって被害者が受け取ることのできる額が変わるようなものではありません。
したがって、加害者と労災保険から重複して休業損害をもらうことはできません。
そのため、労災保険などから休業補償の給付を受けているような場合には、そのことを記載しなければならないのです。
(10)その他
作成年月日、勤務先の所在地、名称、代表者名、電話番号、担当者名、担当者連絡先を記入し、勤務先の社印を押します。
以上のとおり、休業損害証明書の書き方をご説明してきました。
休業損害は、休業損害証明書の記載をもとに計算されますので、本来支払われるはずの休業損害が支払ってもらえないということのないよう正確に作成する必要があります。
人事担当などで休業損害証明書を書かなければならなくなった方は、今回の記事を参考に正確な休業損害証明書を作成してください。
また、交通事故の被害に遭い勤務先に休業損害証明書を書いてもらう必要がある方も、今回の記事を参考に書いてもらったり書いてもらった休業損害証明書の内容に不備がないかを確認するといいでしょう。