小さいお子さまがいる方にとって、子どもの交通事故は日々心配なテーマの一つではないでしょうか。
昨今、通学中の列に自動車が突っ込んでくるという悲惨な事故も発生していますが、子どもの飛び出しによる交通事故も少なくありません。
実は、交通事故で死傷した人の世代で最も多いのが、小学1年生の世代である7歳児なのです。
そして、交通事故で子どもが死傷した理由で多いのが、飛び出しによるものです。
これは、運転手の前方不注意とほぼ同程度に多くなっており、全体の40%を占めるのが実情です。
子どもの交通事故では、親の監督責任が問われることもあり、過失割合の認定にも大きく影響するという特徴があります。
今回は、子どもの飛び出しで交通事故が発生した場合における状況別の過失割合の考え方と、いざという時に知っておきたい弁護士の頼み方を解説します。
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目次
1.子どもの過失割合を考える際に必要な3つの基準とは
(1)過失割合の基本ルールと子どもの事故の考え方
第一に、子どもの過失割合を考えるのに前提となる、過失割合の考え方についてみておきましょう。
交通事故では、どちらか一方が100%完全に悪いということは少なく、当事者のどちらにも過失、つまり不注意があるのが普通です。
そして、このミス、過失の割合を考慮して、事故の責任の程度を決める制度が「過失割合」です。
この「過失割合」は、交通事故の相手方に損害賠償請求をするする際に、非常に大きな問題となってきます。
過失割合をどうやって決めるかは、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(判例タイムズ社)という書籍に記載された基準をベースに検討するのが実務の運用です。
これには、自動車対自動車の事故か、自動車と歩行者の事故かなどの事故の状況に加え、夜間の事故か当事者の年齢はどうかといった修正要素が規定されており、個別の事故の状況に当てはめて過失割合を決めていくことになります。
しかし、子どもの事故の場合は、そもそも子どもに不注意という責任を負わせることができるのか、という問題が生じます。
子どもが道路に飛び出して交通事故にあったとしても、無意識のうちに行動したケースもあるのではないか、と言うことが問題になるのです。
(2)5~6歳から認められる子どもの過失割合
第二に、子どもの過失割合がいつからどのように認められるのかを見ていきましょう。
交通事故において、子どもの過失は必ず認められるわけではありません。
子どもが飛び出して事故にあった場合でも、子どもに過失があったと言えるのか、幼いのだから仕方がなかったとされるのかは、子どもに「物事の善し悪しを判断できる能力」があったかどうかが判断の基準になります。
この、能力のことを「事理弁識能力」と言い、最高裁判所が「未成年者の過失については、その未成年者に事理を弁識する知能(事理弁識能力)があれば足りる」とした考え方が基になっています。
この事理弁識能力を、子どもが何歳から有していると考えるかについては、5歳から6歳程度とするのが実務の考えです。
ただし、事理弁識能力の有無は、子どもに応じて個別に検討して判断するのが原則です。
また、一般的には事理弁識能力があるとされる、6歳から13歳未満くらいの児童についても、過失割合に大人の5%から20%のマイナスされる修正が加えられる運用になっています。
(3)事理弁識能力がない子どもの過失割合とは
第三に、事理弁識能力が認められない幼い子どもでも、過失割合が問題になりうることを知っておいていただく必要があります。
上記のように、子どもの過失割合は、その子どもに事理弁識能力が認められるかどうかが判断の基準になります。
しかし、事理弁識能力が備わる前、5歳未満のような幼い子どもは常に過失割合が認められないとは限らないのです。
それは、子どもの監督者の過失が問われる事があるということです。
具体的には、両親や祖父母など、幼い子どもを監督する義務がある立場にある人が、充分に子どもを監督せずに飛び出し事故などを起こした場合に、監督不十分について過失が認められて「被害者側の過失」とされることがあるのです。
実際に「被害者側の過失」が誰に認められるかについては、最高裁判所が一定の基準を示しています。
これによると、「被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失」をいい、具体的には、子どもの両親、祖父母、兄弟、叔母といった身内の関係者がこれに当たります。
また、「身分上・生活関係上一体の関係にある」として、両親に雇われたベビーシッターも、被害者側の過失の判断対象に含まれます。
反対に、保育園の保母や職場の同僚、短時間だけ子どもの子守りを引き受けた近くの主婦は、「身分上・生活関係上一体の関係」にないため、過失割合の判断対象には含まれません。
2.状況別にみる、子どもの飛び出し事故の過失割合とは
でじは、子どもの過失割合が認められるとして、事故の状況によってそれがどの程度の割合で認められるのでしょうか。
子どもの年齢などに応じて、修正が加えられることになりますが、まずは、事故の状況に応じて、歩行者と自動車との間で、基本的な過失割合がどの程度認められることになっているのかを見ていきましょう。
(1)信号機が設置されている横断歩道における事故の場合
- 歩行者側の信号が青、自動車側の信号が赤の場合・・・歩行者:自動車=0:100
- 歩行者側の信号が赤、自動車側の信号が青の場合・・・歩行者:自動車=70:30
- 歩行者側の信号が赤、自動車側の信号が黄の場合・・・歩行者:自動車=50:50
- 歩行者側の信号が赤、自動車側の信号が赤の場合・・・歩行者:自動車=20:80
- 歩行者側の信号が黄、自動車側の信号が赤の場合・・・歩行者:自動車=10:90
- 歩行者側の信号が青から赤に変わり、自動車が青の場合=歩行者:自動車=20:80
- 歩行者側の信号が青から赤に変わり、自動車が赤の場合=歩行者:自動車=10:90
このように、信号機がある横断歩道を青信号で横断中の事故については、横断歩道に入る以上、自動車側に高い過失割合が認められるのが原則です。
とはいえ、横断歩道近くの道路を横断したような場合や、信号が青でなかった場合には、子どもの側にも過失割合が認められるので注意が必要です。
(2)信号機のない横断歩道における事故の場合
- 横断歩道上で発生した事故の場合・・・歩行者:自動車=0:100
- 歩行者からは自動車が見えるが、自動車から歩行者が見えにくい場合・・・歩行者:自動車=10:90
- 横断歩道付近の事故の場合・・・歩行者:自動車=30:70
子どもは、自動車の陰から飛び出したり、信号機が設置されていない横断歩道で不意に飛び出して事故にあうケースも少なくありません。
基本的には自動車側の過失が大きく認められますが、子ども側にも過失割合が言っていて度認められることに注意しましょう。
(3)横断歩道や交差点がない道路での事故の場合
- 歩行者が赤信号の横断歩道近くの道路を横断、自動車が青の場合・・・歩行者:自動車=70:30
- 歩行者が片側1車線の道路を横断、自動車が直進の場合・・・歩行者:自動車=20:80
- 幹線道路や自動車側の道路が広い場合・・・歩行者:自動車=20:80
- 幹線道路や道路の幅員に差がない場合・・・歩行者:自動車=10:90
事理弁識能力が認められる子どもであっても、道路の幅員や交通量まで把握できるとは限りません。
幹線道路への飛び出しによる事故は、重大な結果を招きかねませんし、子ども側の過失も認められる類型となっています。
(4)対向車や同方向に走行中の自動車との事故の場合
- 歩道のある道路で、歩行者が車道を通行できる場合の事故・・・歩行者:自動車=10:90
- 歩道のある道路で、歩行者が車道を通行できない場合の事故・・・歩行者:自動車=20:80(車道中央寄りの場合は30:70)
- 路側帯のある道路で、歩行者が車道を通行できる場合の事故・・・歩行者:自動車=10:90
- 路側帯のある道路で、歩行者が車道を通行できない場合の事故・・・歩行者:自動車=10:90(車道中央寄りの場合は20:80)
- 幅員8メートル以下の車道だけの道路での事故・・・歩行者:自動車=10:90
- 幅員8メートルを超える車道だけの道路での事故・・・歩行者:自動車=20:80
対向による事故や、同方向での飛び出し事故は想定しにくいと思われる方もいるかもしれません。
しかし、例えば手をつないで歩行を歩いていた子どもが、手を振り払って突然横の道路に飛び出して事故にあうケースなど、対向や同方向の自動車との事故は決して少なくはありません。
3.子どもの飛び出し事故の場合の過失割合の修正要素とは
上記のように、子どもの飛び出し事故が想定されるような事故の場合でも、事故のケースによって、基本過失割合は様々に設定されています。
実際には、子どもの飛び出し事故の場合、上記の基本過失割合に、次のようなマイナスの修正が加えられることになります。
(1)子ども側の過失割合をマイナスする要素
上記の過失割合に対して、子どもの年齢によって、過失割合が次のように修正されます。
- 歩行者が6歳未満の幼児の場合・・・-10%
- 歩行者が6歳から13歳未満の児童の場合・・・-5%
このようにして子どもの側からマイナスされた過失割合は、自動車側にプラスされて勘案されることになります。
(2)子ども側の過失割合をプラスする要素
子どもが起こした事故が飛び出しだった場合、子ども側の過失割合がプラスされることになります。
プラスされる程度は、事故の状況によって異なりますが、例えば赤信号による飛び出し事故の場合、子ども側に70%の過失割合が認められる可能性があります。
(3)子どもの飛び出しによる過失割合の注意点
上記のように、子どもの飛び出し事故による交通事故の場合には、まず事故の状況に応じた基本過失割を算定し、子どもの年齢に応じて過失割合をマイナスし、さらに飛び出しによる事情によって過失割合を最終的にプラスして検討することになります。
また、事理弁識能力が認められないような小さい子どもの場合は、親などの監督責任が問われることがあります。
きちんと手をつないでいたか、飛び出しをしないように注意していたか、目を離していなかったかなど、個別の事情を基に、監督責任が検討されます。
幼い子どもが事故に会う不幸を避けなければいけないのが一番ですが、子どもが事故にあった上に子どもの過失や親自身の過失が追求されて苦しむ親御さんも少なくありません。
不幸な事故を避けるためにも、子どもは予想外の行動をとりうることを前提に、監督責任に注意しましょう。
4.子どもが飛び出し事故で被害にあった場合の弁護士の頼み方
子どもが飛び出したりして交通事故被害にあった場合、まずは十分な治療を受ける事、警察に人身事故の届け出をすることが大切です。
しかし、それから先の相談については、交通事故の問題に精通している弁護士にご相談されることがお勧めです。
というのも、子どもの過失割合の認定方法は、画一的に決められているわけではなく、子どもの能力などに応じて具体的に検討していく必要があること、事故の過失割合の認定についても詳細な分析を要する事が多いからです。
また、小さい子どもが事故にあった場合、その時は怪我が大したことが無くても、将来的に後遺症が出ないか、保険会社の言う事を聞いて示談に応じてもいいのか、悩む事もあると思います。
子ども自身が任意保険に入っているというケースは先ずありませんが、親などの同居の家族が自動車の任意保険に加入しており、さらに弁護士費用特約もプラスしている場合、子どもの事故の相談や保険会社との交渉、場合によっては裁判の対応を保険の特約で賄える事もあります。
まずは保険を確認するとともに、弁護士を探して連絡をしてみては如何でしょうか。
また、必要に応じて「交通事故の過失割合とは?不満がある場合の対処方法」も合わせて参照ください。
まとめ
いかがでしょうか。
幼い子どもであっても過失が認定されることに驚かれた方もいるかもしれません。
子どもの交通事故、中でも飛び出しの事故は非常に多いのが実情です。
特に、身体が成長しつつあり、興味の対象も広がる小学校入学時の児童は要注意です。
今回は、飛び出し事故による過失割合の考えかたをご説明しましたが、実際の算定は専門的な判断を要することも少なくありません。
万が一子供さんが飛び出し事故を起こしてしまった場合、交通事故被害にあった場合には、信頼できる交通事故に強い弁護士に是非ご相談ください。