交通事故の被害にあうとさまざまな傷害を負う可能性があります。
場合によっては、治療の甲斐なく後遺障害が残ってしまうこともあります。
手や足を負傷すると治療中に不自由な思いをするのはもちろんですが、万が一、後遺障害が残ってしまった場合、就労や日常生活で大きな支障を生じることになります。
そこで今回は、手や足についてどのような症状があれば後遺障害と認められるのか、後遺障害に対する慰謝料の相場はどの程度のものか、後遺障害が残った場合にはどのように対処すればいいかについて解説します。
- 交通事故
- 過払い
- 離婚問題
- 刑事事件
- 企業法務
- 遺産相続
- 労働問題
- B型肝炎
ホウツウがオススメする法律事務所が安心!
目次
1.手の後遺障害とは
(1)後遺障害の分類
手の後遺障害は、次のように整理することができます。
手の後遺障害 | 上肢の後遺障害(肩から先の腕の部分) | 欠損障害(上肢の全部または一部を失うこと) |
機能障害(上肢は残ったが、関節の機能を喪失または制限されること) | ||
変形障害(不正癒合によって骨が変形すること) | ||
手指の後遺障害 | 欠損障害(指の全部または一部を失うこと) | |
機能障害(指の関節の機能を喪失または制限されること) |
ただし、ひとくちに欠損障害、機能障害、変形障害といっても、その症状に応じて就労や日常生活で受ける影響の程度は異なります。
たとえば、同じ指の欠損でも、すべての指を失った場合と1本の指の一部を失った場合とでは、前者の方が就労の面でも日常生活でもより大きな負担となることは明らかです。
そのため、手の後遺障害については症状に応じて細かく等級が分けられています。
以下で、上の分類ごとに症状に応じた後遺障害の等級と等級ごとの慰謝料の相場をご紹介しましょう。
(2)上肢の欠損障害と慰謝料の相場
上肢の欠損障害の後遺障害等級と、等級に対応する慰謝料は次のようになります。
慰謝料の算定基準には、自賠責基準、任意保険基準、裁判所基準(弁護士基準)の3つがあり、この順に金額が高くなるといわれていますが、任意保険基準は各保険会社が独自に作成するもので、公表されていませんから、ここでは自賠責基準と裁判所基準(弁護士基準)を掲載します。
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
1級3号 | 両上肢をひじ関節以上で失ったもの | 1100万円 | 2800万円 |
2級3号 | 両上肢を手関節以上で失ったもの | 958万円 | 2370万円 |
4級4号 | 1肢をひじ関節以上で失ったもの | 712万円 | 1670万円 |
5級4号 | 1肢を手関節以上で失ったもの | 599万円 | 1400万円 |
(3)上肢の機能障害と慰謝料の相場
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
1級4号 | 両上肢の用を廃したもの | 1100万円 | 2800万円 |
5級6号 | 1上肢の用を廃したもの | 599万円 | 1400万円 |
6級6号 | 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの | 498万円 | 1180万円 |
8級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの | 324万円 | 830万円 |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの | 187万円 | 550万円 |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの | 93万円 | 290万円 |
(4)上肢の変形障害と慰謝料の相場
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
7級9号 | 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの | 409万円 | 1000万円 |
8級8号 | 1上肢に偽関節を残すもの | 324万円 | 830万円 |
12級8号 | 長管骨に変形を残すもの | 93万円 | 290万円 |
偽関節とは、折れた骨が完全に癒合せず、本来は関節ではない部分が関節のように動いてしまうことをいいます。
長管骨とは、骨の分類の一つで、上肢や下肢を構成する細長い管状の骨のことで、上腕骨、橈骨、尺骨がこれにあたります。
(5)手指の欠損障害と慰謝料の相場
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
3級5号 | 両手の手指の全部を失ったもの | 829万円 | 1990万円 |
6級8号 | 1手の5の手指またはおや指を含み4の手指を失ったもの | 498万円 | 1180万円 |
7級6号 | 1手のおや指を含み3の手指を失ったものまたはおや指以外の4の手指を失ったもの | 409万円 | 1000万円 |
8級3号 | 1手のおや指を含み2の手指を失ったものまたはおや指以外の3の手指を失ったもの | 324万円 | 830万円 |
9級12号 | 1手のおや指またはおや指以外の2の手指を失ったもの | 245万円 | 690万円 |
11級8号 | 1手のひとさし指、なか指またはくすり指を失ったもの | 135万円 | 420万円 |
12級9号 | 1手の小指を失ったもの | 93万円 | 290万円 |
13級7号 | 1手のおや指の指骨の一部を失ったもの | 57万円 | 180万円 |
14級6号 | 1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの | 32万円 | 110万円 |
(6)手指の機能障害と慰謝料の相場
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
4級6号 | 両手の手指の全部の用を廃したもの | 712万円 | 1670万円 |
7級7号 | 1手の5の手指またはおや指を含み4の手指の用を廃したもの | 409万円 | 1000万円 |
8級4号 | 1手おや指を含み3の手指の用を廃したものまたはおや指以外の4の手指の用を廃したもの | 324万円 | 830万円 |
9級13号 | 1手おや指を含み2の手指の用を廃したものまたはおや指以外の3の手指の用を廃したもの | 245万円 | 690万円 |
10級7号 | 1手のおや指またはおや指以外の2の手指の用を廃したもの | 187万円 | 550万円 |
12級10号 | 1手のひとさし指、なか指またはくすり指の用を廃したもの | 93万円 | 290万円 |
13級6号 | 1手のこ指の用を廃したもの | 57万円 | 180万円 |
14級7号 | 1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの | 32万円 | 110万円 |
遠位指節間関節とは、指の第一関節(関節のうち指先に近い方)のことをいいます。
2.足の後遺障害とは
(1)後遺障害の分類
次に、足の後遺障害について解説します。
まず、手の場合と同様、後遺障害の種類を整理しましょう。
足の後遺障害 | 下肢の後遺障害 | 欠損障害 |
機能障害 | ||
変形障害 | ||
短縮障害(下肢が短くなったもの) | ||
足指の後遺障害 | 欠損障害 | |
機能障害 |
足の後遺障害についても、手の場合と同様、症状に応じて細かく等級が分けられています。
(2)下肢の欠損障害と慰謝料の相場
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
1級5号 | 両下肢をひざ関節以上で失ったもの | 1100万円 | 2800万円 |
2級4号 | 両下肢を足関節以上で失ったもの | 958万円 | 2370万円 |
4級5号 | 1下肢をひざ関節以上で失ったもの | 712万円 | 1670万円 |
4級7号 | 両足をリスフラン関節以上で失ったもの | 712万円 | 1670万円 |
5級5号 | 1下肢を足関節以上で失ったもの | 599万円 | 550万円 |
7級8号 | 1足をリスフラン関節以上で失ったもの | 409万円 | 1000万円 |
リスフラン関節とは、足根中足関節ともいい、足の甲にある関節です。
(3)下肢の機能障害と慰謝料の相場
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
1級6号 | 両下肢の用を廃したもの | 1100万円 | 2800万円 |
5級7号 | 1下肢の用を廃したもの | 599万円 | 1400万円 |
6級7号 | 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの | 498万円 | 1180万円 |
8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの | 324万円 | 830万円 |
10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの | 187万円 | 550万円 |
12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの | 93万円 | 290万円 |
(4)下肢の変形障害と慰謝料の相場
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
7級10号 | 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの | 409万円 | 1000万円 |
8級9号 | 1下肢に偽関節を残すもの | 324万円 | 830万円 |
12級8号 | 長管骨に変形を残すもの | 93万円 | 290万円 |
下肢の長管骨には、大腿骨、脛骨、腓骨があります。
(5)下肢の短縮障害と慰謝料の相場
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
8級5号 | 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの | 324万円 | 830万円 |
10級8号 | 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの | 187万円 | 550万円 |
13級8号 | 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの | 57万円 | 180万円 |
(6)足指の欠損障害と慰謝料の相場
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
5級8号 | 両足の足指の全部を失ったもの | 599万円 | 1400万円 |
8級10号 | 1足の足指の全部を失ったもの | 324万円 | 830万円 |
9級14号 | 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの | 245万円 | 690万円 |
10級9号 | 1足の第1の足指または他の4の足指を失ったもの | 187万円 | 550万円 |
12級11号 | 1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったものまたは第3の足指以下の3の足指を失ったもの | 93万円 | 290万円 |
13級9号 | 1足の第3の足指以下の1または2の足指を失ったもの | 57万円 | 180万円 |
(7)足指の機能障害と慰謝料の相場
後遺障害 | 慰謝料 | ||
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
7級11号 | 両足の足指の全部の用を廃したもの | 409万円 | 1000万円 |
9級15号 | 1足の足指の全部の用を廃したもの | 245万円 | 690万円 |
11級9号 | 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの | 135万円 | 420万円 |
12級12号 | 1足の第1の足指または他の4の足指の用を廃したもの | 93万円 | 290万円 |
13級10号 | 1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したものまたは第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの | 57万円 | 180万円 |
14級8号 | 1足の第3の足指以下の1または2の足指の用を廃したもの | 32万円 | 110万円 |
3.後遺障害が残った場合の対処法
1.~2.で解説したとおり、どのような症状が後遺障害に該当するかは詳細に定められています。
後遺障害の認定は、医師が作成する後遺障害診断書等をもとに損害保険料算出機構が審査します。
通常は加害者の加入する保険会社が申請しますが被害者が申請することも可能で、その場合には後遺障害診断書以外に様々な書類を提出することができます。
また、後遺障害が認定されなかった場合や認定された等級に納得ができない場合、不服申立てをすることもできます。
もっとも、どのような書類を提出すれば後遺障害の認定に有利になるか、不服申立てではどのように反論すればいいかなどについては高度に専門的な知識が必要になり被害者ご自身で対応するのは難しいでしょう。
また、慰謝料について自賠責基準と裁判所基準(弁護士基準)の双方の金額を紹介しましたが、大きな差があることがお分かり頂けると思います。
裁判所基準は、過去の裁判で認容された額をもとに算出されたもので、被害者自身が示談交渉で裁判所基準の額を要求しても加害者側は容易に応じません。
ですから、後遺障害が残る可能性がある場合には、できれば症状固定前に弁護士に相談し後遺障害の等級の見込み、慰謝料の相場などについて確認し相談結果次第で依頼することを検討するのが望ましいでしょう。
まとめ
今回は、手や足の後遺障害について解説しました。
交通事故の被害に遭ってお悩みの方に少しでも参考にしていただければ幸いです。