「交通事故の被害に遭ったら弁護士に相談を」
最近、そういったテレビ・ラジオのCMやインターネット上の広告を目にすることが増えました。
とはいえ、弁護士に依頼をすれば本当に賠償額が上がるのか、なぜ弁護士に依頼をすれば上がるのか半信半疑の方が多いというのが実情ではないでしょうか。
なぜ弁護士への相談を勧めるかと言えば、弁護士に依頼をすると慰謝料の増額や被害者に有利な後遺障害等級・過失割合の認定を受けることなど、様々なメリットが期待できるからです。
逆にいえば、弁護士に依頼をしないままでいると慰謝料が低い額に抑えられたり、適正な後遺障害等級や過失割合が認定されなかったりで、支払われる賠償額が少なくなってしまう可能性があるといえます。
今回は、交通事故に遭ったらなぜ弁護士に相談をした方がいいのか、どのようなメリットがあるのかなどについて詳しくご紹介しましょう。
※この記事は2017年9月20日に加筆・修正しました。
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目次
- 1.弁護士の敷居はアナタが思っているほど高くない
- 2.事故直後から解決までのやることリスト
- 3.どのような状況だと弁護士に相談すべき?
- 4.交通事故で弁護士に依頼した場合の解決事例
- 5.弁護士に相談すると慰謝料が増額するシンプルな理由は「弁護士基準(裁判基準)」での計算によるもの
- 6.交通事故慰謝料をできるだけ早く受け取る方法
- 7.交通事故被害者になった際に弁護士に相談すべき理由はたくさんあります
- 8.加入している自動車保険に弁護士費用特約が付いている場合の利用方法
- 9.注意!加害者が任意保険未加入の場合は増額できない可能性があります
- 10.今後の人生に関わる「後遺障害の可能性がある場合」は弁護士に相談すべき
- 11.多くの弁護士が交通事故問題で「無料相談」を設けている理由
- 12.交通事故相談の弁護士費用の相場と内訳
- 13.弁護士費用を抑える方法とは
- 14.交通事故に強い弁護士事務所はどう探すのか
- 15.交通事故被害を弁護士に相談する際の流れと期間、必要書類など
- 16.弁護士に相談するのは本人以外でも可能?
- まとめ
1.弁護士の敷居はアナタが思っているほど高くない
弁護士に相談をと言われても、これまで法律事務所になど行ったことがないという方が多いと思います。
なかには、弁護士は敷居が高いと感じている方もいらっしゃることでしょう。
しかしながら、そのようなイメージは誤解だといっていいでしょう。
確かに、以前は弁護士の数が少なく広告なども禁止されていたため、弁護士が身近な存在ではなく料金もいくらかかるかわからないといった不安もあり、気軽に相談に行くことが難しい事情があったことは否定できません。
しかしながら、現在では弁護士の数が増加したことで以前にはなかった地域にも法律事務所ができており、弁護士が身近な存在になったといえます。
また、それにともない弁護士の意識も変わってきており、法律論を習得するだけでなく顧客に対する接し方など、全般的なサービスの質の向上に取り組む法律事務所が増えてきました。
ですから、思い切って相談をしてみると弁護士が予想していたよりもずっと親身になって相談を聞いてくれるということが多いでしょう。
とはいえ、どの法律事務所に相談すればいいのかわからないという方も少なくないでしょう。
そのような場合には、次のような方法をとられることをお勧めします。
法律事務所の広告が解禁されたことで、ホームページを開設する法律事務所が増えてきました。
ホームページには、所属する弁護士に関する情報と、弁護士費用に関する情報が記載されています。
交通事故被害者の場合、無料で法律相談を引き受けてくれる事務所もあります。
そこでまず、無料相談を受け付けている事務所を探して相談に行くといいでしょう。
候補となる事務所が複数ある場合には、法律相談の予約を取る際の電話の対応などから自分に合いそうな事務所を選べばいいでしょう。
もちろん、一つの事務所に相談に行って対応が自分に合わないと感じることや回答の内容に疑問があってセカンドオピニオンを聞きたいと思うこともあるでしょう。
そのような場合には改めて別の事務所に相談に行き、自分に合った弁護士を探すといいでしょう。
また、弊社では交通事故問題に強い弁護士をご紹介しておりますので、是非ご活用ください。
2.事故直後から解決までのやることリスト
(1)事故直後
①警察への報告
まず、警察に事故が発生したことを報告しなければなりません。
これを怠ると交通事故の当事者、事故が発生した日時や場所、事故態様についての基本的資料である交通事故証明書を入手することができなくなるので注意が必要です。
②証拠の収集・保全
次に、可能な限り現場において証拠の収集、保全をすることが重要です。
証拠の収集、保全は警察も行いますが警察が現場に到着するまでには一定の時間がかかりますので、それまでに自分でできることはしておくといいでしょう。
加害者の氏名、連絡先等の確認はもちろんですが目撃者がいる場合には、その場を離れる前に連絡先などを教えてもらうようにしましょう。
③早期の受診
さらに、少しでも痛みがある場合には、できればその日のうちに病院で診察を受けることが重要です。
時間がたってから受診したのでは事故と負傷との因果関係が争われる可能性があります。
診察を受けた後は、警察に診断書を提出し人身事故扱いにしてもらう必要があります。
(2)事故数日後から数ヶ月後
①通院治療
自賠責保険及び任意保険の慰謝料の算定は通院の頻度によって結果が異なります。
仕事が忙しいなどの理由で痛みを我慢して治療を受けないでいると慰謝料が低くなるおそれがあるので、適切な頻度で通院する必要があります。
②いつ症状固定するか
症状に応じて保険会社から治療費の支払いの打ち切りを宣告されるおそれがあります。
ただし、治療を終えるかどうかは保険会社が判断するものではなく、医師が医学的見地から判断すべきものですから主治医とよく相談して治療を打ち切るか治療を継続するかを慎重に検討するようにしましょう。
③後遺障害診断書の作成
後遺障害の認定に際して、医師が作成する後遺障害診断書は決定的に重要な役割を果たします。
医師に適正な後遺障害診断書を作成してもらうためには、事前に主治医との折衝を行い、該当する可能性のある後遺障害について適切な検査を行うなどの要望を伝えておくことが重要です。
(3)症状固定後
①後遺症診断書の精査
後遺症診断書の内容を精査します。
内容に疑義があれば、主治医に確認することが必要です。
②後遺障害等級の申請手続
後遺障害等級の申請は加害者の保険会社が行うのが一般的ですが、被害者が申請することもできます。
被害者が請求する場合には、後遺障害診断書だけでなく後遺障害についての資料を被害者が積極的に作成・収集し、提出することができるので有利な結果につながることがあります。
③不服申立て
後遺障害の該当・非該当、または該当する等級について納得ができない場合には、異議申し立てをすることができます。
(4)示談書が送られてきたタイミング
①示談案の検討
保険会社の提示する示談案が妥当なものか検討する必要があります。
②弁護士への相談・依頼
弁護士への相談はより早期にすることも考えられますが、遅くとも示談するかどうかを決断する前に弁護士に相談するといいでしょう。
保険会社の提示する示談金は低い水準にとどまっているはずですから、弁護士に妥当な示談金の額や弁護士に依頼した場合の費用などを確認し、自分で交渉を続けるか弁護士に依頼するかを決めればいいでしょう。
(5)示談が完了した後に後遺障害の疑いがある場合
①弁護士に相談する
示談が成立した後は、示談書で合意した内容を除いて、原則として相手方には何らの請求もできなくなります。
もっとも、後遺障害の発生する可能性があることを想定せずに低額で示談した後で後遺障害が発生した場合などは、例外的に別途後遺障害についての損害賠償を請求することができることもあります。
どのような場合に請求できるか難しい問題ですので、弁護士に相談するといいでしょう。
3.どのような状況だと弁護士に相談すべき?
(1)保険会社からの慰謝料額や回答など
慰謝料額がどう考えても安い、車の修理費用が足りない、怪我が治ってないのに症状固定を言い渡された…etc
まず考えられるのが、保険会社への対応に苦慮している場合です。
具体的には、
・まだ痛みが残っているのに、治療費の支払いを打ち切ると言われた
・修理費用の見積もりを取ったが、保険会社が全額の支払いを認めない
・保険会社から示談の提示があったが、示談金が低すぎるように感じる、計算の根拠がわからない
・保険会社の担当者の態度が高圧的で、話を聞いてもらえない
などの場合が考えられます。
(2)交通事故状況
そもそも人身事故扱いになっていない…etc
負傷したにもかかわらず、人身事故ではなく物損事故扱いになっている場合が考えられます。
物損事故扱いの場合、警察は物件事故報告書という書類を作成するだけで、実況見分などは行わないため、交通事故の発生状況を証明する資料を集めるのが難しくなります。
また、物損事故扱いでは、保険会社が人身についての賠償に応じないおそれがあります。
ですから、早急に弁護士に相談し人身事故への切り替えなど早急な対応策を講じる必要があります。
(3)過失割合
過失割合に不満がある…etc
相手方と過失割合について争いになっている場合も弁護士に相談すべきといえます。
弁護士に依頼をすれば、警察が作成した実況見分調書を取り寄せるなどの資料を収集し、有利な過失割合を認めさせることができることもあります。
また、過失割合は、基本となる割合にさまざまな事情による修正を加えて決めるものですから、本人では気付けなかった修正要素を弁護士が発見し有利な過失割合を認めさせることができることもあります。
(4)後遺障害
後遺障害の疑いがある…etc
後遺障害が認定されなかったこと、あるいは認定されたが等級に不満があるといった場合、不服申し立てをすることができますが、専門的な知識がないと難しいので弁護士に依頼すべきといえます。
また、症状固定後に後遺障害が残ることが予想される場合には、症状固定前に早めに弁護士に依頼し、症状固定後すみやかに弁護士に後遺障害の申請手続をしてもらうことが望ましいといえます。
4.交通事故で弁護士に依頼した場合の解決事例
(1)事故直後からのサポートで物損・人身ともにスムーズに解決した事例
事故直後に弁護士に依頼し、物損について評価損(修理歴があることで自動車の価値が低下することによる損害)を認めてもらい、人身損害についても通院や後遺障害診断書の作成に関するアドバイスを行い、後遺障害等級の認定を獲得した
参考:事故直後からのサポートで物損・人身ともにスムーズに解決した事例
(2)弁護士介入で後遺症認定!示談金500万円以上増額
保険会社から示談の提示があったが、あまりに低額であったため弁護士に依頼したところ、弁護士が必要書類を集めて後遺障害認定申請を行い(被害者請求)、後遺障害が認定されて後遺障害についての慰謝料、逸失利益を獲得した
(3)過失割合について丁寧に検討・立証し、約1000万円の和解が成立
過失割合について保険会社と争いになり、弁護士に依頼したところ、弁護士が警察の作成した実況見分調書など交通事故の発生状況に関する資料を収集、精査して、最終的に有利な内容で和解が成立した
参考:過失割合について丁寧に検討・立証し、約1000万円の和解が成立
5.弁護士に相談すると慰謝料が増額するシンプルな理由は「弁護士基準(裁判基準)」での計算によるもの
冒頭で、弁護士に相談・依頼をすれば慰謝料の増額が期待できると紹介しました。
ここでは、弁護士に相談するとなぜ慰謝料が上がるのか、その理由をご説明します。
(1)慰謝料とは
損害賠償には、大きく分けて財産的損害に対する賠償と精神的損害に対する賠償の2種類があります。
後者がいわゆる慰謝料で交通事故の場合には、事故で負傷したことに対する傷害慰謝料(入院や通院で治療を受けた期間を基礎とするため、入通院慰謝料ともいいます)、後遺障害がある場合の後遺障害慰謝料、被害者が死亡した場合の死亡慰謝料といったものがあります。
(2)慰謝料の特徴
財産的損害には、被害者が実際に経済的な支出をした積極損害(治療費や車両の修理費用など)と被害者が得られるはずの利益を得られなくなった消極損害(休業損害など)に分けられますが、積極損害は基本的に実費ですし消極損害もある程度計算方法が確立されています。
他方、慰謝料は精神的苦痛に対して支払われるもの、精神的苦痛をどのように金銭に換算するかについては明確な基準、あるいは万人が納得する基準を設けることは困難です。
そのため、慰謝料の算定基準は一つではなく三つの基準が存在します。
(3)慰謝料を算定する三つの基準とは
慰謝料の算定基準には、
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士(裁判基準)
という三つの基準が存在します。
これらの基準について簡単に説明しますと、まず自賠責基準は自賠責保険から支給される慰謝料の基準で1日あたり4200円とし、この金額に治療期間か実治療日数を2倍したもののいずれか少ない方をかけて算定します。
次に、任意保険基準は、それぞれの保険会社が独自に作成している慰謝料の基準で非公開のため詳細は不明ですが、一般に自賠責基準よりは高く弁護士(裁判)基準より低い額となっています。
最後に弁護士(裁判所)基準は、過去の交通事故に関する裁判で認められた慰謝料の額をもとに作成された基準で三つの基準の中で最も高い金額です。
(4)保険会社から提示される慰謝料とは
加害者の保険会社から提示される慰謝料は、通常、自賠責基準または任意保険基準により算定された額になっています。
保険会社も営利企業の一種ですから被害者に支払う保険金は可能な限り少なくしたいと考えるためです。
(5)弁護士に依頼をして弁護士基準による慰謝料を獲得!
慰謝料に三つの基準があること、保険会社からの提示が低い基準によるものだということはお分かりいただけたと思います。
そうなると被害者としては当然、弁護士(裁判)基準による慰謝料の請求を考えることでしょう。
しかしながら、弁護士(裁判)基準は過去の裁判例から作られたものですから被害者が裁判をせずに弁護士(裁判)基準による算定を要求しても、保険会社は簡単には認めてくれません。
そこで、慰謝料を増額させるために最も効果的なのが弁護士に依頼をするということです。
被害者が費用を負担してまで弁護士に依頼をしたということは被害者が保険会社の提示が不当であると考えているということであり、場合によっては訴訟も辞さないという決意の表れともいえます。
そのため、弁護士から慰謝料を請求すれば、通常、保険会社は弁護士(裁判)基準による金額かそれに近い額まで慰謝料の増額に応じてくれるのです。
結果的に訴訟まで発展せずに弁護士(裁判)基準かそれに近い水準の額で示談できることも多いので、早期解決という意味でも弁護士に依頼するメリットは大きいといえます。
(6)具体例
それでは、基準によって慰謝料の額がどの程度変わってくるのか、具体例をご紹介しましょう。
ただし、任意保険基準は非公開のため旧任意保険統一支払基準(以前に存在した統一の基準。独禁法との関係等で廃止)の額を参考にあげています。
通院 | 旧任意保険基準 | 弁護士(裁判)基準 |
1ヶ月 | 126,000 | 280,000 |
2ヶ月 | 252,000 | 520,000 |
3ヶ月 | 378,000 | 730,000 |
3ヶ月 | 378,000 | 730,000 |
4か月 | 479,000 | 900,000 |
5か月 | 567,000 | 1,050,000 |
6ヶ月 | 643,000 | 1,160,000 |
後遺障害 | 旧任意保険基準 | 弁護士(裁判)基準 |
1級 | 13,000,000 | 28,000,000 |
2級 | 11,200,000 | 23,700,000 |
3級 | 9,500,000 | 19,900,000 |
4級 | 8,000,000 | 16,700,000 |
5級 | 7,000,000 | 14,000,000 |
6級 | 6,000,000 | 11,800,000 |
旧任意保険基準 | 弁護士(裁判)基準 | |
死亡 | 12,500,000~17,000,000 | 20,000,000~28,000,000 |
このように、(旧)任意保険基準と弁護士(裁判)基準では大きな差があります。
6.交通事故慰謝料をできるだけ早く受け取る方法
治療費や休業損害等は一定期間(通常1ヶ月)ごとに支払われることが多いのですが、慰謝料については示談成立後に支払われます。
また、示談が成立しない場合には、訴訟などの法的手続を経て支払われるため、さらに時間がかかってしまいます。
ですから、慰謝料をできるだけ早く受け取るには速やかに示談を成立させる必要があるのです。
とはいえ、交通事故の被害者のほとんどは示談交渉など初めてであり、加害者側とどのように交渉していいかといったことや、加害者の保険会社の提示する示談金が妥当なものかといったことがわからないことが多いでしょう。
また、仮に加害者の提示が低すぎると考え、増額を要求したとしても、保険会社が簡単に応じるとは限りません。
ずるずると交渉が長引いた末、結局あきらめて当初の提示に応じるということも少なくありません。
このような事態を避けるには、早めに弁護士に依頼をすることが肝要です。
弁護士に依頼し、弁護士から加害者に請求すれば、保険会社は駆け引きのようなことはせず、裁判外で可能な範囲で慰謝料の増額に応じるのが一般的です。
これによって被害者は、増額された示談案に応じるか、さらに時間をかけて裁判をして慰謝料の増額を目指すかを選択することができるようになるのです。
なお、弁護士に依頼をした後で資料の収集に着手するのでは時間がかかってしまいます。
ですから、依頼をする前に、診断書、診療報酬明細書、後遺障害診断書など、慰謝料の計算に必要な客観的な資料を可能な限り収集、整理しておくといいでしょう。
7.交通事故被害者になった際に弁護士に相談すべき理由はたくさんあります
慰謝料の増額以外にも、弁護士に相談・依頼することは様々なメリットがあります。
(1)後遺障害が認定されやすくなる
後遺障害の認定の申請は、通常は加害者の保険会社が行っています(これを事前認定といいます)。
ただし、加害者の保険会社は被害者が後遺障害認定を受けられなくても不利益はないので、後遺障害が認定されるように積極的に資料を収集するなどの努力をしてくれることは期待できません。
もっとも、後遺障害の認定の申請は被害者からもすることができます(被害者請求といいます)。
被害者請求をすれば、被害者自身が後遺障害の認定に繋がる資料を作成、収集し、提出することができます。
そのため、加害者による申請よりも有利な結果になることもあります。
とはいえ、申請の方法やどのような資料を用意すればいいかとわからないという方も多いのでしょう。
弁護士に依頼をすれば、申請の代理をしてもらえますし、資料の収集、作成についても助言してもらえるので、後遺障害の認定の申請が必要な場合には、弁護士に相談するといいでしょう。
(2)適正な過失割合を主張できる
また、加害者の保険会社から過失相殺を主張されることがありますが、保険会社の言い分が必ずしも正しいとは限りません。
被害者に有利な事情や加害者に不利な事情が考慮されていないなど、適正な過失割合になっていない可能性もあるのです。
過失割合は、事故類型により定められる基本割合と個別の事情による修正要素により定められるもので、非常に複雑ですから、被害者自身が適正な過失割合を主張することは難しいと言わざるを得ません。
その点、弁護士に依頼をすれば、加害者の保険会社が触れていない被害者に有利な事情を見つけ出すなどして、有利な過失割合を導くことができる場合があります。
(3)その他のメリット
そのほかにも、専門知識のない被害者にとっては、専門家である加害者の保険会社と示談交渉することや示談書などの文書を作成することは難しいと思われますが専門家である弁護士に依頼をすれば、手続きの一切を任せることができます。
(4)弁護士に相談するデメリットはある?
このように、弁護士に相談・依頼をする理由、メリットは数多くあります。
逆に、弁護士に相談するデメリットは、まず考えられません。
あえて言えば、弁護士費用が掛かるということがあげられますが、この点については無料法律相談や、弁護士費用特約の利用により実質的な自己負担なしで弁護士に相談・依頼をする方法もあります。
8.加入している自動車保険に弁護士費用特約が付いている場合の利用方法
(1)弁護士費用特約はどのように利用すればいい?
被害者や被害者の家族が加入している任意保険に弁護士費用特約が付いている場合、弁護士費用特約を利用すれば、被害者側の保険会社が弁護士費用を立て替えてくれるので経済的な負担なしで弁護士に相談・依頼することが可能です。
具体的な利用方法ですが、弁護士費用特約で依頼できる弁護士に制限はありません。
したがって、相談・依頼をしたいと考えている弁護士や法律事務所が決まっているような場合には、まずその法律事務所に連絡して弁護士費用特約を利用できるか確認するようにしましょう。
弁護士費用特約を利用することのできる法律事務所であれば、弁護士費用特約の利用手続きを弁護士の方で進めてくれるので特に難しいことはありません。
また、特に弁護士に心当たりがないというような場合には、保険会社に弁護士を紹介してもらったり弁護士会(日本弁護士連合会)のリーガルアクセスセンターを経由して弁護士を紹介してもらったりすることができます。
この場合には、担当弁護士は保険会社や弁護士会から弁護士費用特約を利用する案件であることをあらかじめ聞いていますから、問題なく弁護士費用特約を利用することができますし、保険会社への報告等も弁護士が行ってくれます。
以前は損害が少額のために弁護士費用を支払うと費用倒れになってしまうことから被害者が泣き寝入りしたような事案でも、弁護士費用特約により被害者が弁護士費用を気にせずに弁護士に依頼することができるようになったことで、被害者の救済につながっています。
(2)弁護士費用特約にデメリットはある?
もっとも、弁護士費用特約には注意しなければならない点もあります。
まず、一般的に弁護士費用特約では、1つの案件ごとに相談料や着手金・報酬の上限が定められているということに注意が必要です。
通常、相談料10万円まで、着手金・報酬等300万円までと定められていることが多いようです。
物損や人身でも軽微な事故の場合には弁護士費用がこの範囲を超えることはありませんが、重大な後遺障害がある場合や死亡事故の場合など、請求額が多額になるときは弁護士の費用が上記の上限を超えてしまう可能性があります。
このような場合には、300万円を超える部分は被害者が自己負担しなければなりません。
次に、当然のことといえますが弁護士費用特約を付けた場合には、その分だけ保険料が上がります。
もっとも、値上げは年間で1000~2000円程度ですし、弁護士費用特約を利用してもそのことで保険料が上がることはないので、経済的な負担はそれほど大きくはありません。
経済的に可能であるなら弁護士費用特約を付けておいた方が安心でしょう。
(3)弁護士費用特約が付いていない場合、どうすればいい?
これに対し、弁護士費用特約を付けていない場合には、弁護士費用は被害者自身が負担しなければなりません。
可能な限り費用の負担を抑えるには、無料相談を受けてくれる法律事務所を探す、着手金なしの完全成功報酬型の法律事務所を探すといった工夫が必要になります。
9.注意!加害者が任意保険未加入の場合は増額できない可能性があります
加害者が任意保険に未加入の場合、被害者は強制保険である自賠責保険からの給付を受けるほかは加害者側に直接賠償を請求するしかありません。
この場合にも、理論的には自賠責基準を上回る慰謝料の請求などをすることは可能ですし、訴訟を提起すれば弁護士(裁判)基準による慰謝料が認定されるでしょう。
問題は加害者に支払能力があるか否かです。
加害者に支払能力がない場合には、たとえ訴訟をして勝訴判決を得ても回収することはできません。
そのため、加害者に支払能力がない場合には、弁護士に依頼をしても結果的に受け取ることのできる賠償額は変わらないという可能性もあります。
もっとも、加害者に支払能力があるか否かは請求額にもよります。
被害者の被った損害が比較的軽微な場合には、自賠責保険の給付を超える部分を加害者が自己負担することは不可能ではないでしょう。
他方、重度の後遺障害がある場合や死亡事故の場合には請求額は加害者の支払能力を超えることが多いでしょう。
ただし、これは一括での支払いは期待できないということです。
加害者の職業などによっては一括での支払いは困難でも、長期の分割払いが期待できる場合もあります。
したがって、加害者が任意保険に加入していない場合でも、必ずしも泣き寝入りになるとは限りません。
まずは弁護士に相談して、自賠責保険から理論的にはどの程度の増額が可能か回収の可能性がどの程度あるかを確認するといいでしょう。
10.今後の人生に関わる「後遺障害の可能性がある場合」は弁護士に相談すべき
(1)後遺障害による損害とは
後遺障害が認定されると、等級に応じた慰謝料と逸失利益を請求することができます。
後遺障害による慰謝料については、2.(6)で一部ご紹介しましたが等級に応じて金額が定められています。
次に、逸失利益とは、将来得られたはずであるのに事故によって死亡したり、後遺障害が残ったりすることで得られなくなった利益のことをいいます。
後遺障害がある場合、労働能力の全部または一部を失ったと評価して、原則として事故前の収入を基礎として、逸失利益を算定します。
どの程度労働能力を失ったとみるかについては、等級ごとに次のとおり割合が定められています。
等級 | 割合 |
1級~3級 | 100% |
4級 | 92% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 35% |
10級 | 27% |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
つまり、後遺障害が認定されるか否か、認定されたとしてもどの等級に該当するかで、慰謝料や逸失利益の額が大きく変わってしまうのです。
(2)後遺障害の有無、等級による賠償額の違いの具体例
例えば、追突事故に遭ってむちうちを発症し、治療を受けたが痛みが残ったという事例を想定してください。
この場合、もし後遺障害に該当しないとすると後遺障害による慰謝料や逸失利益は一切認められないということになります。
これに対し、後遺障害等級14級9号「局部に神経症状を残すもの」に該当すると認定された場合、自賠責基準によれば32万円、弁護士(裁判)基準によれば110万円の後遺障害慰謝料を請求することができ、また、労働能力喪失率を5%として逸失利益を請求することもできます。
さらに、後遺障害が画像所見など医学的見地から証明できる場合には、後遺障害等級12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当すると認定されます。
この場合、自賠責基準によれば93万円、弁護士(裁判)基準によれば290万円の後遺障害慰謝料を請求することができ、また、労働能力喪失率を14%として逸失利益を請求することができます。
このように、後遺障害等級12級の場合、14級の倍以上の賠償額を請求することができるのです。
(3)後遺障害の可能性がある場合には弁護士に相談を!
後遺障害が認定されるか否か、認定されるとしても何級に該当するかによって得られる賠償額が大きく変わることはご理解いただけたと思います。
では、後遺障害はどのように認定されるのでしょうか。
後遺障害は、医師の作成する後遺障害診断書その他の資料をもとに判断されることになっています。
しかしながら、被害者が医師に自身の症状を適切に説明しなかったことなどが原因で正しい後遺障害診断書が作成されないおそれがあります。
また、3.でも触れたとおり、加害者の保険会社は後遺障害が認定されるよう積極的に動いてくれるわけではありません。
そのため、常に適正な後遺障害の認定がなされるとは限らないのです。
したがって、後遺障害の可能性がある場合には保険会社任せにしてはいけません。
症状固定前に弁護士に相談をしていれば、後遺障害診断書を作成してもらう上での注意点をアドバイスしたり、後遺障害についての資料を積極的に作成・収集して被害者請求をしたりして適正な後遺障害が認定されるように力を貸してもらえます。
ですから、後遺障害の可能性がある場合には弁護士に相談すべきといえます。
11.多くの弁護士が交通事故問題で「無料相談」を設けている理由
(1)一般的な事件の場合
弁護士は、通常、事件の依頼を受けたときに着手金を事件処理が終了したときに報酬(いわゆる成功報酬)を依頼者から支払ってもらいます。
着手金も報酬も依頼者の経済的利益を基礎に算定することになっており、たとえば金銭の支払いを請求する訴訟の場合には請求額に応じて着手金が定められ、判決で認容された額に応じて報酬が定められます。
ところで、先ほども説明したとおり、裁判で勝訴して「○○○万円を支払え」との判決を獲得しても相手方に資力がなければ実際に回収することはできません。
極端なケースですが、相手方が破産してしまったのでどうしようもないということもあります。
このような場合、依頼者としては相手方から1円もとれなかったのに報酬まで支払わなければならないのかと不満に思う方もいるでしょう。
他方、弁護士としてはやるべき仕事はきちんとしたのであり、資力があるかないかといった相手方の事情によって報酬が左右されるのはおかしいと思う方もいるでしょう。
したがって、とくに個人対個人のような事件の場合、事前に委任契約書で報酬の取り決めをしていたとしても報酬の支払いがスムーズにいかないおそれがあり、トラブルになりかねません。
弁護士としては、このような依頼者とのトラブルは避けたいことはいうまでもありません。
そのため、弁護士は依頼を受けるに先立ち、依頼者から相手方の財産状態の聴き取りをして回収の可能性を確認したり、回収できない可能性もあることを依頼者に説明したりするなど、細心の注意を払っています。
(2)交通事故の場合
これに対し、交通事故の被害者からの依頼の場合、基本的に賠償金は加害者の加入する保険会社が支払います。
保険会社の場合、個人対個人のような場合と違い、資力がないとか破産されるおそれがあるといったことがほぼ考えられませんので、きちんと保険金が支払われます。
通常、保険金は弁護士の預り金口座に送金され、弁護士は報酬や実費等を差し引いた残額を依頼者に交付して清算します。
実際に保険金が支払われるので、委任契約通りの報酬となることについて異議を述べる依頼者はまずいません。
したがって、交通事故の被害者の依頼は弁護士から見れば、回収のリスクのない案件、言い換えれば、きちんと仕事をすればきちんと報酬がもらえる案件ということになります。
また、通常の事件の場合、全面敗訴すれば報酬は発生しませんが、交通事故の場合は2.で紹介したように、弁護士(裁判)基準による慰謝料の増額が期待できるので、報酬がゼロになるということもまずありません。
そのため、無料相談を実施してでも、交通事故被害者の案件を精力的に取り扱おうと考える弁護士が増えてきたのです。
12.交通事故相談の弁護士費用の相場と内訳
(1)弁護士費用の相場
以前は日本弁護士連合会(日弁連)が統一の報酬基準を定めていたのですが、平成16年に廃止されたため、現在では弁護士費用は自由化されており、各法律事務所で報酬基準を作成することになっています。
もっとも、旧報酬基準どおりの、あるいは旧報酬基準を参考にした報酬基準を採用する法律事務所が多いので、旧報酬基準が弁護士費用の一応の目安と考えてよいでしょう。
旧報酬基準では、弁護士費用は基本的に、依頼を受けた際に事件処理の対価として請求する着手金と事件終了時に解決内容に応じて請求する報酬(いわゆる成功報酬)の二本立てとなっており、その額は、依頼者の受ける経済的利益をもとに算定すると定められていました。
金銭を請求する事件を例にすると、基本的に着手金は相手方に請求する額が報酬は請求が認められた額が、それぞれ依頼者の経済的利益と考えることができます。
具体的には、次のようになります。
着手金
依頼者の経済的利益 | 着手金 |
300万円以下の場合 | 経済的利益の8% |
300万円を超え3000万円以下の場合 | 経済的利益の5%+9万円 |
3000万円を超え3億円以下の場合 | 経済的利益の3%+69万円 |
3億円を超える場合 | 経済的利益の2%+369万円 |
※着手金の最低額は10万円
報酬
依頼者の経済的利益 | 報酬 |
300万円以下の場合 | 経済的利益の16% |
300万円を超え3000万円以下の場合 | 経済的利益の10%+18万円 |
3000万円を超え3億円以下の場合 | 経済的利益の6%+138万円 |
3億円を超える場合 | 経済的利益の4%+738万円 |
たとえば、弁護士に依頼をして相手方に1000万円を請求し、800万円で示談が成立したというケースを例に、着手金と報酬を計算してみましょう。
となります。
(2)保険会社から示談を提案された後に依頼した場合の弁護士費用例
交通事故の場合、加害者の保険会社から示談の提案をされた後で弁護士に依頼をされる方が少なくありません。
そのような場合、一定の賠償義務があることは保険会社も認めており、弁護士はそこから弁護士(裁判)基準による慰謝料の獲得などの増額を目指すことになります。
したがって、すでに保険会社から示談の提示を受けている場合の依頼者の経済的利益は、着手金については弁護士の請求額と保険会社の提示してきた額との差額、報酬については回収額と保険会社が当初提示してきた額との差額(弁護士の活動により増加した額)と考えることができます。
たとえば、保険会社から200万円での示談の提示があったが、弁護士に依頼をして異議申立てにより後遺障害が認定され、弁護士(裁判)基準による慰謝料の増額などを含めて700万円を請求し、600万円で示談をした場合を例に弁護士費用を計算してみましょう。
となります。
(3)完全成功報酬型
7.で説明したとおり、交通事故の被害者からの依頼は報酬が支払われないというリスクがまずないため、最近では交通事故については依頼時の着手金は不要とする完全成功報酬型の報酬基準を採用する法律事務所も出てきました。
最初にまとまったお金を用意する必要がないので、被害者にとってはありがたい制度といえます。
もっとも、完全成功報酬型の事務所の中には回収額に対する報酬の割合が高い(割合そのものが高かったり、賠償額が多額になっても割合が下がらなかったりする)ところもありますので、トータルの弁護士費用の負担が少なくなるとは限りません。
ですから、弁護士費用を抑えたい場合には、複数の事務所に相談して、費用の見込みを確認し、着手金を支払う方がいいのか完全報酬型の事務所に依頼する方がいいのか検討してもいいでしょう。
13.弁護士費用を抑える方法とは
弁護士費用を少しでも抑えるためには、次のような方法が考えられます。
(1)相談料無料の法律事務所をさがすこと
従来、弁護士の法律相談は30分5000円が一般的でしたが、弁護士の増加などの理由により、無料で法律相談を受け付ける事務所が増えてきました。
交通事故が弁護士にとっても魅力のある分野ということもあり、交通事故については無料で法律相談を実施するという事務所もあります。
まずは最寄りの事務所で無料相談を受けてくれるところを探し、法律相談を受けてみるといいでしょう。
(2)弁護士費用特約を利用する
任意保険に加入する際に弁護士費用特約に加入していれば、万一の場合、自分が加入する保険会社が弁護士費用を立て替えてくれるので、弁護士費用を抑えることができます(多くの場合、自己負担なしで弁護士に依頼することができます)。
(3)民事法律扶助を利用する
収入、資産についての一定の条件を満たした場合、日本司法支援センター(通称:法テラス)の民事法律扶助を利用することが可能です。
民事法律扶助は、法テラスが弁護士に弁護士費用を一括払いし、利用者が法テラスに分その費用を分割で返済していくという制度です(利息などはありません)。
法テラスが支払う弁護士費用は、事件の種類や請求する金額に応じて明確な基準が定められており、しかもその基準は一般的な弁護士の報酬基準と比べると低く設定されているため、弁護士費用を抑えることができます。
(4)示談提示後に依頼する
弁護士費用を抑えるという観点からは、加害者側から示談案が提示された後に弁護士に依頼するという方法が考えられます。
弁護士費用は、依頼者の受ける経済的利益を基礎として、その○○%という方法で計算されるのが一般的です。
たとえば、加害者の保険会社から300万円の示談案が提示された後に弁護士に依頼し、450万円で示談が成立した場合、弁護士の活動によって依頼者が得た経済的利益は差額の150万円といえます。
ところが、加害者から示談案が提示される前に弁護士に依頼し、弁護士が示談金としては450万円が相当であると計算し、450万円で保険会社と示談した場合、経済的利益は450万円を基礎として算定されることになり、結果的には示談提示後に依頼した場合より弁護士費用が高くなってしまうのです。
なお、ここで解説したことは、あくまで弁護士費用を抑えるという目的に限定したものであることに注意が必要です。
早期に弁護士に依頼することで、通院中に気を付けることや後遺障害診断書作成にあたっての助言を得ることができ、結果的に賠償額が増額されることもありますので、必ずしも示談後に依頼する方がいいとは言い切れないのです。
14.交通事故に強い弁護士事務所はどう探すのか
それでは、どのようにして交通事故に強い弁護士を探せばいいのでしょうか。
まず、これまで紹介してきた弁護士に相談すべき理由のうち慰謝料の増額については、参考文献(いわゆる赤い本や青い本)に慰謝料の基準が掲載されており、それをもとに計算するため弁護士による差はほとんど生じません。
しかしながら、示談で解決せずに訴訟になった場合には、交渉能力や書面・尋問の技術などに差があることもあります。
また、後遺障害の有無や等級が争いになるような事案の場合、法律的な知識だけでなく医学的な知識も必要になるため、専門知識のある弁護士とそうでない弁護士とで差が出ることが考えられます。
したがって、軽微な被害で慰謝料だけが問題になるような事案を除いて、交通事故を専門に扱っている法律事務所を探す方がいいでしょう。
相談や依頼後の打ち合わせなどの利便性を考えれば、まずは地元で交通事故を専門に扱っている法律事務所を探すようにしましょう。
また、最近では法人化して全国展開する法律事務所も増えてきました。
そういった法律事務所では本店支店間でノウハウを共有しているので、弁護活動に一定の質が保たれていることが期待できます。
もし地元に交通事故を専門に扱っている法律事務所がない場合には、全国展開している事務所の支店を探してもいいでしょう。
また、弊社でも交通事故問題に強い弁護士をご紹介しておりますので、是非ご活用ください。
15.交通事故被害を弁護士に相談する際の流れと期間、必要書類など
(1)解決までの流れ
相談したい弁護士または法律事務所が決まったら電話やメールなど、その事務所の指定する方法で法律相談の予約を取りましょう。
相談の結果、弁護士に依頼することになった場合には弁護士との間で委任契約を結びます。
その後、弁護士から保険会社に対し、依頼を受けたことを通知し、弁護士の計算による賠償額の支払いを請求して、保険会社との示談交渉が始まります。
交渉がまとまれば、示談書または免責証書という書面を取り交わし、事件は終結します。
交渉がまとまらない場合には、訴訟などの法的手続きをとることになります。
(2)解決までに要する期間の目安
どのタイミングで弁護士に相談するかによります。
よくあるのは、保険会社から示談の提案が送られてきた後、保険会社の提示が妥当なのかと相談に来られるパターンです。
この場合、すでに症状固定しており、後遺障害の認定も終わっているので(後遺障害の認定に不満がない場合には)後述する資料がそろっていれば、弁護士による損害の計算にそれほど時間はかかりません。
そのため、早ければ2週間程度で示談がまとまることもあります。
他方で、まだ後遺障害の認定が終わっていない場合や、後遺障害の認定に対し異議申立てをしたいような場合には、より時間がかかることになります。
また、示談交渉がまとまらず、訴訟を提起する場合には終結まで1年近くかかることもあります。
(3)法律相談に必要な書類
法律相談を受ける前に、可能な限り次のような資料を準備しておきましょう。
資料が不十分だとせっかく相談をしても十分な回答ができないおそれがあるので、相談の予約を取る際に持参すべき書類をよく確認しておきましょう。
①事故に関するもの
交通事故証明書、事故発生状況報告書、現場周辺の写真など
②損害に関するもの
- 治療費関係:診断書、診療報酬明細書など
- 通院交通費:タクシーのレシートなど
- 休業損害:休業損害証明書、源泉徴収票、確定申告書(自営業の場合)など
- 後遺障害関係:後遺障害診断書など
- 葬儀関係:葬儀費用の領収書など
- 修理費:見積など
③保険会社から文書で示談案が提示されている場合には、その文書
(4)電話やメール相談
また、最近では交通事故について電話相談やメール相談を受けてくれる法律事務所も出てきました。
法律事務所に行く時間がとられずにすむ点が便利といえますが、面談による相談と異なる注意点もあります。
まず電話相談ですが、電話相談といっても法律相談である以上、弁護士が必要とする情報は面談の場合と基本的に異なりません。
したがって、(3)であげた資料を手元に用意して電話をするといいでしょう。
ただし、電話相談の場合、弁護士は資料を見ずに回答しなければなりませんので、より丁寧に事情を説明する必要があるでしょう。
また、たとえば過失相殺が争いになっており、現場周辺の状況を見取り図や写真等で確認する必要があるような事案は電話相談には向かないといえます。
また、メール(あるいはホームページ上のフォームによる)相談の場合、事務所ごとにホームページに必要な記載事項が掲載されていますので、その指示に従い、必要な情報を提供しましょう。
メール相談は、24時間いつでも送信できるメリットがありますが、やりとりにどうしても時間がかかってしまいますし、文章の意図が十分に伝わらないおそれなどもあります。
このように、電話相談やメール相談には一定の限界があります。
したがって、面談による相談が必要かどうかを判断するために、まずは電話やメールで相談するという程度の意識で利用されるのがいいと思われます。
16.弁護士に相談するのは本人以外でも可能?
通常、事実関係をもっとも正確に把握しているのはご本人であり、ご本人から事情を聴いた第三者が相談に来られた場合には、その方が弁護士の知りたい情報を聴き取っているとは限らず、せっかく相談に来ていただいても十分な回答ができないおそれがあります。
また、仮にその方が十分な情報を持っており、弁護士が相談についての回答をすることができたとしても、その回答がその方からご本人に正確に伝わらない可能性も否定できません。
ですから、交通事故に限らず、一般的にはご本人に弁護士の法律相談を受けていただくのが望ましいといえます。
もっとも、交通事故の場合には、ご本人はまだ入院中であるが早めに弁護士に相談しておきたいとか、ご本人が意識不明でありご本人が相談に行くのが不可能であるとか、あるいは相談に行きたいが後遺障害のために外出に大変な困難が伴うといった様々な事情がありめます。
そのような場合には、ご本人に代わってまずはご家族に法律相談に来ていただくことも可能です。
その相談の結果次第で、弁護士に依頼をするかも含めた今後の方針を決めればいいでしょう。
まとめ
交通事故の被害に遭った場合に弁護士に相談すべき理由をご説明しましたが、ご理解いただけたでしょうか。
本文で詳しく紹介したとおり、弁護士に相談・依頼をすれば、弁護士(裁判)基準による慰謝料の算定をはじめとして賠償額の増額がかなりの確率で期待できます。
他方、デメリットとしては弁護士費用が掛かるということぐらいですが、弁護士費用特約や無料法律相談、完全報酬型の事務所の利用などの方法により、経済的負担を軽減することが可能です。
もし、交通事故の被害にあったが弁護士に相談しようか迷っているという方がいらっしゃったら、本稿を参考にまずは交通事故に強い弁護士・法律事務所を探してみてはいかがでしょうか。