交通事故の過失割合に不満があるんだけどどのように対応したらいいだろう・・・
この記事をお読みの方にはそのようにお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
交通事故に遭って被害を受けた場合には、事故の相手方に対して損害賠償請求ができます。
たとえば車が壊れるなどの物損があれば車の修理費を請求できますし、怪我をしたら傷害の程度に応じて慰謝料などを請求することができます。
しかし、この場合、必ずしも全額の賠償請求ができるわけではありません。
交通事故には過失相殺という考え方があり、自分の過失分は、請求できる損害賠償金額から減額されてしまうのです。
過失割合は、交通事故事件で争いになることがとても多いです。
このような過失割合は、どのようにして決定されるのでしょうか。
また、保険会社から提示を受けた過失割合に不満がある場合の対処方法も知っておきたいところです。
今回は、交通事故の過失割合に不満がある場合の対処方法についてご説明致します。
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目次
1.交通事故における過失割合とは
交通事故に遭った場合には、相手方との間で慰謝料などの損害賠償金額について、交渉して決定しなければなりません。
このとき、基本的には自分の側に発生した損害の内容をすべて合計して、相手方に請求することになります。
しかし、必ずしもその合計額の全額の支払いが受けられるわけではありません。
交通事故の損害賠償をする場合には、賠償請求金額について「過失相殺」をされてしまいます。
過失相殺とは、請求出来る損害賠償金額から、自分の過失割合分を差し引くことです。
過失割合は、たとえば、自分対相手方が、5:5とか、6:4などとなります。
たとえば、自分と相手方の過失割合が2:8の場合で、賠償金額全体が100万円のケースを考えてみます。
この場合、相手方に請求出来る損害賠償金額は、本来100万円のはずですが、過失割合に応じて過失相殺をしなければなりません。
すると、自分の過失割合を差し引くので、請求出来る金額は
100万円×(1-0.2)=80万円
となります。
もし自分の過失割合が6割なら
100万円×(1-0.6)=40万円
しか請求出来ないことになります。
このように、過失割合は、交通事故で相手方に請求できる賠償金額に非常に大きな影響を与えます。
2.過失割合の決まり方
交通事故の過失割合は、どのようにして決定されるのでしょうか。
以下で具体的に見てみましょう。
(1)基本の決まり方
過失割合について決定する際には、事故の態様によって定まった相場があります。
それは、判例タイムズという法律雑誌の「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という基準です。
この基準は、弁護士や保険会社が示談交渉する場合に用いられていますし、裁判所が判決を出す際にも用いられている法律的な基準です。
過失相殺率の基準においては、たとえば、直進車同士の事故、信号のある交差点の事故、信号のない交差点の事故、右折車と直進車の事故などのように、細かく場合分けされて、それぞれの場合における過失割合の基準が示されています。
また、事故の当事者の種類によっても過失割合の基準は異なります。
上記の判例タイムズの認定基準でも、自動車同士の事故、歩行者と自動車・バイクとの事故、バイクと自動車との事故、自転車と自動車・バイクの事故、高速道路上の事故など、場合分けがされて、それぞれについての過失割合が定められています。
よって、交通事故の過失割合を決定する場合には、通常はこの判例タイムズ記載の過失相殺率認定基準に従って定めることになります。
(2)修正要素
過失割合を定める場合には、事故の態様に応じて、上記の過失相殺率認定基準にあてはめて決定しますが、その場合、基本の過失割合だけではなく修正要素があります。
修正要素とは、一方当事者に著しい過失がある場合などに、その当事者の過失割合を大きくすることです。
たとえば、同じ交差点上の自動車同士の事故でも、一方当事者が著しい前方不注視をしていたり信号無視をしていたり、飲酒運転をしていたような場合には、そのような過失があった方の当事者の過失割合が増やされます。
過失割合の修正要素としては、たとえば著しい過失として、酒気帯び運転や時速15キロメートル以上30キロメートル未満のスピード違反や、著しいハンドル・ブレーキの操作ミスなどがあります。
著しい過失よりもさらに重い重過失として、居眠り運転や無免許運転、時速30キロメートル以上のスピード違反、酒酔い運転、故意による嫌がらせ運転などがあります。
これらの過失割合についての修正要素が適用される場合には、その内容に応じて過失割合が5%~20%程度増加されます。
2.過失割合はよく争いの原因になる
交通事故では、過失割合は争いの原因になることが多いです。
その理由は、どうしてなのでしょうか。以下でご説明します。
(1)過失割合によって大きく賠償額が変わる
そもそも、過失割合によって、大きく賠償金額が変わります。
よって、交通事故の当事者は、どちらの自分の過失割合を低くして、相手方の過失割合を大きくしたいと考えています。
保険会社は、支払を少なくするために、事故の被害者の過失割合を大きく主張してくることも多いです。
そうすると、被害者側としては、当然納得できないことになります。
また、過失割合を決定する際には、事故の状況が問題になります。
実際にその事故がどのようなシチュエーションで起こったのかによって、上記の判例タイムズの認定基準の中でも、あてはめるべき過失相殺率が異なってくることもあります。
すると、交通事故の態様でお互いの言い分が異なっている場合には、適用すべき過失相殺基準が定められないことになります。
この場合には、どちらの言い分が正しいのかを判断しなければなりませんが、お互いに譲らないことが多いので、どうしても争いになってしまいます。
(2)過失割合によって賠償額が変わる具体例
過失割合によって、どのくらい賠償金額が変わるのか、その具体例を見てみましょう。
たとえば交通事故で慰謝料や治療費など、合計で200万円の損害が発生している場合を考えてみます。
この場合、もし自分の過失割合が0であれば、200万円全額の請求ができます。
ところが、自分の過失割合が20%となると、請求出来る金額は
200万円×(1-0.2)=160万円
となります。
自分の過失割合が40%とされてしまった場合には、請求できる金額は
200万円×(1-0.4)=120万円
にまで減額されてしまいます。
よって、同じ損害が発生している場合でも、具体的に請求できる損害賠償金額は過失割合によって大きく異なってくるのです。
どれだけ細かく損害賠償金額を計算して、なるべく多くの損害賠償をしようと思っても、結局最後のところで過失相殺が大きく認められると、請求出来る金額が大きく減ってしまいます。
3.過失割合に不満がある場合の対処方法
交通事故で相手方保険会社と交渉をしている場合、相手方保険会社から賠償金額の提示があります。
このとき、相手方保険会社からは、過失割合についても提示されます。
相手方保険会社から提示を受けた過失割合に不満がある場合には、そのまま受け入れなければならないわけではありません。この場合、いくつかの対処方法があります。
そこで、以下では相手方保険会社が提示してきた過失割合が不当である可能性があることの説明と、その内容に不満がある場合の対処方法を解説します。
(1)保険会社は不当なレベルの過失割合を主張してくる
交通事故の示談交渉では、相手方保険会社が過失割合を提示してきます。
このときの提示内容は、かなり被害者側にとって厳しい内容になっていることが多いです。
先ほど2の項目で説明したとおり、交通事故の過失割合については、事故の態様によって判例タイムズの基準で決められるのが基本です。しかし、このようなことは、一般の素人はあまりよく知りません。
よって、保険会社は、示談の相手が一般素人の場合には、上記の判例タイムズの基準によらず、不当なレベルの過失割合を押しつけてくることがあります。
たとえば、判例タイムズの基準にあてはめると、本来なら被害者側の過失割合が2割程度にすべき場合であっても、保険会社が4割以上の過失割合を主張してくることなども普通にあります。
このような提示を受けた場合に被害者が不満に感じるのは当然です。
反対に、不満に感じることもないまま、その内容が不当であることに気づかないまま保険会社の提示してきた過失割合によって示談してしまうと、事故の被害者が受け取る賠償金の金額が減らされて、被害者は大変な損をしてしまうことになります。
よって、交通事故の示談交渉では、相手方保険会社の主張する過失割合は、必ずしも基準に従ったものではなく、不当に低くなっている可能性があることに注意が必要です。
(2)自分で調査する方法
相手方保険会社が提示してきた過失割合に不満がある場合には、まずは、自分で適切な過失割合を調査することが可能です。
そのためには、上記で紹介した法律雑誌の判例タイムズ「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」を参照すると良いでしょう。
これ以外にも、弁護士向けの交通事故の赤い本や青い本などの書籍もあり、これらにも過失割合の認定基準が掲載されています。
一般人でも購入できるので、入手して、本当に自分の場合に相手方保険会社が言っている過失割合が妥当なのかどうかを調べましょう。そして、その内容が不当であれば、相手方保険会社に対して、判例タイムズの基準を示し、適用すべき正しい過失割合を提示して、交渉しましょう。
(3)弁護士に依頼すると効果的に過失割合を有利にできる
相手方保険会社が提示してきた過失割合に不満がある場合には、弁護士に対応を依頼する方法が有効です。
弁護士は、法律のプロなので、当然正しい過失割合の基準のことを熟知しています。
よって、相手方保険会社が不当な過失割合を主張してきている場合には、きちんと基準にあてはめた正当な基準で過失割合を計算してくれます。
保険会社も、弁護士が出てきた以上は、それに従わざるを得ないので、正当な基準を適用することを受け入れます。
また、事故状況に争いがある場合などにも、弁護士に依頼すると効果的に自分の主張ができます。
弁護士は、実況見分調書を取り寄せるなどして、事故状況を調査して、依頼者に有利な資料を探してくれます。
相手方の著しい過失や重過失なども、弁護士であれば適切に主張してくれます。
これらによって、さらに自分にとって有利に過失割合が計算されることがあります。
よって、過失割合に不満がある場合には、まずは弁護士に相談することが最も効果的です。
今は多くの弁護士事務所で無料相談などもしているので、利用してみると良いでしょう。
まとめ
今回は、交通事故の過失割合についてご説明致しました。
過失割合とは、交通事故が起こった場合に当事者双方にそれぞれどのくらいの過失があるかということです。
自分の過失割合が大きくなると、請求出来る損害賠償金額が減ってしまいますので、過失割合はとても重大な問題になります。
交通事故の過失割合の算定には、判例タイムズの民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準という基準が利用されています。
この認定基準には、著しい過失や重過失があった場合の修正要素もあります。
相手方保険会社が主張してきた過失割合に不満がある場合には、自分で判例タイムズの基準を調べて事故状況をあてはめてみて、正当な過失割合を計算して相手方保険会社に提示する方法がありますが、弁護士に相談して対応を依頼する方法が最も効果的です。
交通事故に遭って過失割合のことで悩んでいる場合には、今回の記事を参考にして、賢く損害賠償金を請求しましょう。