遺産相続の弁護士費用の相場と種類を分かりやすく解説

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誰もが直面する問題、「遺産相続」。
遺言作成、遺産分割や調停等々、悩みは多岐にわたります。

こうした問題の強い味方が弁護士です。
ただ、弁護士を雇う場合には費用がかかります。

その点が心配でためらってしまう方がたくさんいるかと思います。
そこで今回は、相続に関する弁護士費用についてご説明いたします。

※この記事は2017年5月18日に加筆・修正しました。

1.遺産相続の弁護士費用は一律に決まっている?

遺産相続の弁護士費用は、各場所によって違います。
したがって、一律に決まっているわけではありません。

かつては、弁護士会が「報酬規程」という報酬基準を設けていたが、現在、公式には廃止され弁護士費用は自由化しています。

2.遺産相続事件を弁護士に依頼した際にかかる費用の種類は?

(1)弁護士費用の種類って?

弁護士費用は、大きくは①着手金と②報酬金に分かれます。
詳細は下記になります。

①着手金

弁護士を雇う段階で必要になる金銭です。
基本的に返金されません。

②報酬金

他方、報酬金は、事件の解決時に発生する費用で、仕事の成果について、例えば「回収金額の何%」というような形で生じます。
したがって、全面敗訴の場合などは、基本的に発生しません。

その他にも、③日当や、④手数料等の名目で弁護士費用も存在します。

③日当

日当とは、弁護士が遠方へ出張した際に生じる費用のことです。

④手数料

手数料とは、例えば、書面を1通作成したり、調査をしたりといった、事件処理というよりは単発の仕事に関して生じる費用のことです。

別途で必要な実費があります。
「郵便費用や戸籍等の資料取得費用、印紙代」などがあります。

(2)相続事件時に必要な弁護士費用

それでは、遺産相続に関しては、どのような名目の費用が必要になるのでしょうか。
以下、主だったところをご紹介いたします。

①遺言書作成

亡くなる前に、予め遺言作成を弁護士に依頼する場合、遺言作成手数料が必要になります。
なお、公正証書遺言を作成する際は、公証人に依頼する際に別途金銭が必須です。

②遺言執行

遺言書を作成した本人が亡くなった際は、弁護士が遺言の執行者として相続人へ遺産を分配します。
この時も遺言執行手数料が必須です。

③遺産分割協議

被相続人(相続される側)の死亡後、相続人間で遺産分割協議を行う際の代理人を依頼する場合、事件着手時に着手金、事件解決(遺産分割終了)時に報酬金が生じます。

なお、遺産分割については、いきなり家庭裁判所の調停からスタートする場合と、手続外の示談交渉からスタートする場合があるが、示談交渉からスタートした場合で、その後調停に移行する場合は、別件として繰り返し着手金が必要になる可能性が高いです。

④相続放棄

亡くなった方が生前していた借金などの財産がたくさんあり、相続を拒否したい時に、相続放棄を家庭裁判所に申述(申立てる)する必要があり、この手続きを弁護士に依頼する際に申立手数料として必要になります。

⑤遺留分減殺請求

本来遺留分は、遺言によっても侵せない最低限の権利ですので、遺留分が遺言により侵害された際は遺留分減殺請求をしなくてはいけません。

もし、意思を伝えるだけなら内容証明郵便を送る際の手数料で済みますが、根本的な解決には繋がりません。

そこで、遺留分減殺請求の調停や訴訟を依頼することになろうが、その場合は、着手金や報酬金が生じることになります。

3.遺産相続の弁護士費用の相場は?

それでは、以上のような弁護士費用は、具体的にいくらぐらいかかるのでしょうか。
上述したように、現在、弁護士費用は自由化されています。

とはいえ、ある程度の相場は存在します。

以下、各種事件について相場を紹介するので、参考にしていただきたいです(ただし、事件の難度等によっても異なるので、あくまでも一つの目安程度に思って頂きたい)。

(1)遺言書作成

遺言書を作成するために必要な金銭は、約10〜20万円の場合が多いです。

しかし、場合によっては増額したりもします。
遺言の内容がややこしかったり、残された遺産の総額が多額の場合などです。

(2)遺言執行

遺産額や、相続人の数にもよるので、一概には言えません。

ちなみに、かつての弁護士会報酬規程(現在でも参考にされていることが多い)によれば、300万円以下であれば30万円、300万円~3000万円の部分については遺産の2%、3000万円~3億円の部分は1%、それ以上の部分は0.5%とされていました。

(3)遺産分割協議

これも遺産の額によるので一概には言えないが、示談交渉、調停共に最低着手金額を20~30万円としていることが多いです。

報酬金は、確保した利益に応じるとされます。

ちなみに、かつての弁護士会報酬規程では、300万円以下の部分が16%、300~3000万円の部分が10%、3000万円~3億円の部分が6%、それ以上の部分が4%について報酬が生じるとされていました(なお、計算の基礎となる利益については、分割の対象となる財産の範囲及び相続分について争いのない部分について、その相続分の時価相当額の3分の1として算出されます)。

(4)相続放棄

相続放棄の申立手数料は、約10万円です。

(5)遺留分減殺請求

内容証明を作成するだけでしたら、約3〜5万円で作成が可能です。

実際に調停や訴訟で請求する場合は、請求額や確保した額によって着手金や報酬金が定められることになります。
旧弁護士会報酬規程を参考にすると、下記の通りになります。

経済的利益の額 着手金(税別) 報酬金(税別)
300万円以下の場合 8% 16%
300万円を超え3000万円以下の場合 5%+9万円 10%+18万円
3000万円を超え3億円以下の場合 3%+69万円 6%+138万円
3億円を超える場合 2%+369万円 4%+738万円

4.遺産相続の際の弁護士費用シミュレーション

(1)遺産分割協議

被相続人が3000万円の遺産を遺して死亡し、自分の相続分は2分の1と仮定しましょう(なお、遺産の範囲に争いはないので、経済的利益は時価の3分の1で計算される)。

その場合の、かつての弁護士会報酬規程に従った弁護士費用は以下の通りです。

①着手金

30,000,000×1/2×1/3×5%+90,000=340,000(税抜)

②報酬金

30,000,000×1/2×1/3×10%+180,000=680,000(税抜)

③合計

①+②=1,020,000(税抜)

(2)遺留分減殺請求

被相続人が8000万円の遺産を遺して死亡したが、すべての財産を他の相続人に相続させるとの内容があったと仮定します。

そして、自分の遺留分割合は8分の1と仮定しましょう。
その場合の、かつての弁護士会報酬規程に従った弁護士費用は以下の通りです。

①着手金

80,000,000×1/8×5%+90,000=590,000(税抜)

②報酬金

80,000,000×1/8×10%+180,000=1,180,000(税抜)

③合計

①+②=1,770,000(税抜)

5.弁護士費用は分割でも支払える?

以上を読んだ読者の方には、「高くて払えない」と思われた方がいるかもしれません。
ただ、法律事務所や弁護士によっては、着手金の分割払いに応じているところもあります。

また、着手金無料や遺産額に関わらず一律を謳っている事務所も存在します。
まずは、事務所に見積もりの提示や支払方法の相談をされてはいかがでしょうか。

※ただし、着手金無料や一律にしている事務所は、報酬金が他の事務所に比べて高額という場合もあります。

初期費用を安く済ませるのがよいか総額を抑えるのがよいかは、それぞれの判断だと思うが、いずれにせよ、目先の費用ばかりにとらわれないことが肝要です。

まとめ

以上、相続に関する弁護士費用についてイメージは持っていただけたでしょうか。
これを参考に、良い弁護士に巡り会って頂ければ幸いです。

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