車を運転中に後ろから追突されて、首を痛めました。
いわゆる「むち打ち」の症状です。
この場合、後遺障害14級の認定を受けて慰謝料を請求することが可能です。
しかし、そもそも後遺障害等級14級の認定を受けた場合、慰謝料の金額の計算方法や相場についてよくご存じない方もいらっしゃるのではないだろうか。
そこで今回は、後遺障害の中でも「14級」に焦点を当てて、慰謝料請求するために知っておくべき事柄についてご説明いたします。
ご参考になれば幸いです。
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目次
1.後遺障害14級の認定を受けることができる場合と認定を受ける方法は?
(1)後遺障害14級の認定を受けることができる場合
後遺障害14級の認定を受けることができるのは、以下の表の症状に該当する場合です。
等級 | 後遺障害 |
14級 | 1. 一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの |
2. 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | |
3. 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの | |
4. 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの | |
5. 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの | |
6. 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの | |
7. 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの | |
8. 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの | |
9. 局部に神経症状を残すもの |
(2)後遺障害14級の認定を受ける方法
後遺障害14級の認定を受けるには、下記の方法があります。
①事前認定
加害者側の保険会社を通して申請する方法です。
一般的な交通事故の場合、相手方の任意保険会社が担当者を選任して被害者対応を行うことになります。
そして、この担当者等を通じて後遺障害等級の認定申請をすることになります。
被害者としては、後遺障害診断書を渡すだけで済むため手続きが楽です。
②被害者請求
被害者が直接自賠責保険会社に、後遺障害等級認定を申請することです。
被害者請求は、必要書類を自ら揃える必要があるために手間がかかるが、等級が認定された時点で等級に対応する自賠責保険金の支払いを受けられることから、事前認定より早いです。
さらに、相手方の保険会社は、被害者に有利な書類だけを提出するわけがありません。
ですので、適正な後遺障害等級の認定を要求するなら、「被害者請求」を行いましょう。
2.交通事故の際にもらえる慰謝料の2つの種類と3つの基準とは?
(1)交通事故の慰謝料の種類は2つ!
実際に交通事故に遭われてしまった際に被害者が受け取ることのできる金銭としては、以下の2種類があります。
①入通院慰謝料
交通事故が原因で入院や通院をせざるおえなくなった場合、この入院や通院で被害者が被った精神的な苦痛に対して支払う金銭です。
金額に関しては、入院や通院した「期間」や「怪我の部位」、「程度」等で決定します。
②後遺障害慰謝料
交通事故が原因で後遺障害を負ってしまい、さらに残ってしまった場合の精神的な損害に対する金銭です。
基本的に、14等級ある自賠責の後遺障害別等級表で計算されて、それぞれの等級ごとに金額が決まっています。
なお、後遺障害に関しては、「交通事故が原因で受傷した症状が固定後身体に残ったり身体や精神上の毀損状態で、労働能力がなくなる」などです。
ですので、治療を続けていても一向に良くならず、完治することがない障害が残った場合です。
(2)交通事故の慰謝料の基準は3つ!
基本的に、各被害者別に算定する必要があります。
ですが、被害者別に算出することは非常に困難です。
同条件の被害者同士で金銭の差が大きく違うのは不公平です。
ですので、下記の基準があります。
①自賠責保険基準
人身事故に対して、最低限の保障を目的としています。
ですので、算出基準は非常に低く設定されています。
②任意保険基準
各保険会社の独自基準で金額が算出されます。
ですので、基準は非公開です。
③弁護士基準(裁判所基準)
基本的に、過去の判例を参考に算出されます。
上記の算定基準の中で一番高い計算基準です。
なお、ここで押さえておいて欲しいのは「③弁護士基準(裁判所基準)」で算出される慰謝料が一番高いということです。
ちなみに、基本的にご自身で保険会社とやり取りすると①の基準になってしまうことが多いが、弁護士に依頼すると③の基準で保険会社と交渉することになります。
3.後遺障害14級の場合に獲得できる慰謝料の計算方法と相場は?
慰謝料の相場はどのくらいなのでしょうか。
前述のように、任意保険基準は非公開であるためその詳細は不明だが、裁判所基準及び自賠責基準については慰謝料の金額が決まっています。
(1)入通院慰謝料
①自賠責基準の場合
「日額4,200円」×「日数」で計算されます。
日数に関しては「入通院日数」など、治療期間の日数です。
治療期間に対して実際の通院日数が少ない場合、「実通院日数」×「2」される場合もあります。
②裁判所基準の場合
基本的に、「赤い本」(「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部)に記載されている下記の表で算定します。
(2)後遺障害慰謝料
①自賠責基準の場合
加害者側の自賠責保険から慰謝料として、32万円の支払いを受けることができます。
②裁判所基準の場合
裁判所基準によれば、110万円の慰謝料が認められることになります(「赤い本」による)。
なお、入通院慰謝料及び後遺障害慰謝料の相場については、「交通事故の慰謝料を計算するために知っておきたい6つのこと」でより詳しく説明しているので、こちらを参考にして頂きたいです。
4.慰謝料の請求方法は?
(1)慰謝料請求のために事故後必ずしておくべきこと
慰謝料を請求するための前段階として、交通事故時の対応が大切です。
絶対に警察を呼びましょう。
保険会社から支払いを受けるには、原則として交通事故証明書が必要です。
ですので、警察へ届出を出さないと証明書が発行されません。
また、事故状況をカメラで撮影したり目撃者に連絡先を聞いておきましょう。
もちろん、事故相手のナンバープレートや連絡先は必ず控える必要があります。
ケガで入通院をした場合は、領収書等の記録も必ず保管したいです。
物損に関して急いで修理や処分をせずに、事故が原因でどう損害が発生したのかしっかりと把握しましょう。
(2)任意保険に加入していれば保険会社が示談交渉をしてくれる
自動車同士の事故の場合、自分が任意保険に入っているいる場合、完全な被害事故でなければ任意保険会社が示談交渉を代行してくれます。
もっとも、完全な被害事故の場合、法律上、示談交渉を代行できるのは弁護士のみですので、任意保険会社は示談交渉を代行することができません。
(3)任意保険に加入していない場合は?
基本的に、保険会社に示談交渉を任せることはできません。
ですので、自身で相手や保険会社と示談交渉をしなくてはいけません。
その際には、事故相手の慰謝料額提示と自分の入通院の状況や障害の程度などで適正な額となるように交渉することになります。
基本的に、一人での解決には困難が伴うと思っていた方が良いかもしれません。
(4)弁護士に依頼する場合は?
弁護士に依頼した場合には、交通事故を巡る様々な状況を聞いた上で適切な慰謝料額等を計算して、相手方に支払いを求める交渉が行われることになります。
また、示談交渉だけで解決が困難である場合には、訴訟による解決も可能です。
詳しくは、「6、弁護士に依頼した方がいい?依頼する場合のメリット・デメリット」でご説明します。
5.慰謝料以外に交通事故の際にもらえるお金は?
交通事故に遭ってしまった場合には、慰謝料以外にも逸失利益をもらうことができます。
(1)逸失利益とは?
逸失利益とは、簡単にいうと「将来得られたはずの利益」です。
交通事故で後遺症が残ってしまった場合、そのせいで労働能力が一部失われてしまいます。
ですので、交通事故がなかったら得られた収入が得られなくなることを、「後遺症逸失利益」と呼びます。
(2)いくらもらえる?
後遺障害14級に認定されると5%の労働能力喪失が認定されて、労働能力喪失期間(5年以下とされることが多い)分の逸失利益が認められることになります。
事例としては以下の通りです。
年収が600万円の人の場合には、600万円×労働能力喪失率5%×5年のライプニッツ係数4.3295=129万8,850円が、逸失利益となる
なお、逸失利益については、「交通事故時の逸失利益に関して知っておきたい4つのこと」でより詳しくご説明しているので、こちらをご参考ください。
6.弁護士に依頼した方がいい?依頼する場合のメリット・デメリット
(1)弁護士に依頼するメリット
①手間な書面の準備をやらなくて済む
自賠責の被害者請求をする場合、もし自分でやるのであれば、書面の準備等に手間と時間がかかってしまう。
この点、弁護士に依頼する場合には、ほとんど全ての作業を弁護士が本人に代わって行ってくれます。
②裁判所基準で和解交渉と裁判をしてくれる
加害者(又は加害者側の保険会社)との交渉や訴訟の提起も、弁護士が本人に代わってで行ってくれます。
交通事故は、任意保険会社の基準と裁判所の基準で賠償額が異なるので、弁護士に依頼するメリットが大きいと言えます。
③適切な後遺障害等級認定を受けられる可能性が高くなる
事故後早急に準備することがとても大切です。
弁護士の豊富な経験や知識から適切なフォローをしてもらえるので、本来受けられるべき後遺障害等級認定を受けられる可能性がとても高いです。
(2)弁護士に依頼するデメリット
①弁護士費用
弁護士に依頼する最大のデメリットは、弁護士費用がかかることです。
弁護士費用特約が付いている場合
弁護士特約がある場合、保険会社が弁護士費用を負担してくれるので、基本的に弁護士費用を考えずに弁護士に依頼することが可能です。
弁護士費用特約が付いていない場合
仮に弁護士特約が付いていない場合には、実際にかかる弁護士費用を高いと考えるか安いと考えるかによることになります。
例えば、後遺障害等級14級の認定に基づいて、110万円の慰謝料請求を依頼するとします。
公式には廃止された弁護士会の報酬規程(とはいえ、現在でも多くの弁護士が基準にしている)によれば、300万円以下の訴訟事件着手金(依頼時に支払う金額)は請求額の8%、報酬金(事件解決時に支払う金額)は得られた額の16%であるため、着手金が8万8,000円、報酬金が17万6,000円になります(いずれも税抜)。
つまり合計で、26万4,000円かかることになります。
この金額が高いと考えるか安いと考えるかは、人それぞれです。
ただし、あくまでもこれは参考であって、弁護士ごとに値段設定は異なります。
しかし、インターネット上でよく目につく法律事務所の多くは交通事故の案件の相談料を無料にしているし、事務所によっては着手金も無料というところもあるようです。
そこで、まずは見積もりを出してもらうと良いでしょう。
②紛争の長期化
弁護士に依頼すると争いが、長期化する可能性があります。
保険会社としては、弁護士が介入することで当初、任意保険基準額で示談しようとしていたものが、それよりもかなり高い裁判所基準額の示談を求められことになるので、結果として、示談交渉が長期化する可能性があります。
まとめ
今回は、後遺障害14級の場合に焦点を当てて慰謝料請求するために知っておきたい事柄についてご説明致しました。
今回の話をお読みになって、慰謝料請求をするのが複雑そうだなと思われた方も少なくないでしょう。
そう思われた方は、まずは弁護士に相談されるのも一つの手です。