「家族が交通事故被害に巻き込まれ、脊髄損傷で後遺症が残った…」
「交通事故で脊髄損傷した場合の慰謝料額の目安が知りたい…」
脊髄損傷の怪我を負う、一番多い理由が交通事故と言われています。
脊髄損傷すると損傷の程度や箇所によっては手足の麻痺や運動に制限が生じるなど、重大な症状が残る場合もあります。
ただ、一言で脊髄損傷と言っても症状は多岐にわたり、後遺症が残った場合で後遺障害等級の認定を受ける状況もさまざまです。
また、後遺障害等級の何級に認定されるかによって、受け取る慰謝料の額も変わってくる関係にあります。
今回は、交通事故で脊髄損傷した場合の症状に応じた後遺障害等級や認められる慰謝料額についてご説明していきます。
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目次
1.脊髄損傷の症状とは
(1)脊髄損傷の理由と影響
「脊髄損傷」は、26個の背骨(脊柱)内部の脊柱管の中を通っている「脊髄」という神経系が交通事故などによって、傷ついたり切れることによって生じます。
脊髄は、脳から発せられる信号を全身に伝える経路の役割があるため、脊髄が損傷すると損傷の程度や場所によっては、知覚・運動系統に障害が生じ、手足の麻痺や呼吸困難、排泄困難など重大な症状をもたらすことがあるのです。
特に、損傷の場所が脳に近いほど、全身に送られる信号が途絶えることになるため麻痺の箇所が多くなるなど、症状が重くなりやすい特徴があります。
また、中枢神経は一度損傷すると現代医学では再生が不可能とされていることから、脊髄損傷すると完治は見込めないと考えられています。
さらに、脊髄損傷は他の合併症を引き起こしやすいため間接的な症状が出ることも少なくありません。
(2)脊髄損傷の程度別の分類
①完全型の脊髄損傷(完全損傷)
完全型の脊髄損傷とは、脊髄が損傷して中枢神経の伝達機能が完全に遮断された状況を言います。
完全損傷すると、遮断された部分より脳から遠い場所は完全に麻痺して動かしたり感覚を得ることができなくなります。
完全損傷の場合は、現代の医療では完治させることは難しいとされています。
②不完全型の脊髄損傷(不完全損傷)
不完全型の脊髄損傷とは、中枢神経に損傷を受けてはいるけれども、伝達機能は完全には遮断されていない状況を言います。
不完全損傷すると、損傷した部分より脳から遠い場所は、感覚は残っているけれども自分の意思では動かせないと言った症状が発生することがあります。
不完全損傷の場合は、治療やリハビリによって感覚や運動を取り戻せる可能性があるとされています。
(3)脊髄損傷の場所別の分類
①部位別の分類
脊髄損傷は、損傷した場所によって、以下のような表記で分類されます。
- 頸部 C(Cervical)
- 胸部 T(Thoracic)
- 腰部 L(Lumbar)
- 仙骨・骨盤 S(Sacral)
更に、各部位の骨を上から数字で表し、C2、T5と言うように表記して具体的な損傷部位を示していきます。
②麻痺別の分類
脊髄損傷によって麻痺が生じた場所によって、以下のように分類されることもあります。
四肢麻痺 | 頚髄損傷により両腕両脚や骨盤臓器に麻痺や機能障害が残ること |
対麻痺 | 胸髄、腰髄、仙髄等の損傷により両脚や骨盤臓器に麻痺や機能障害が残ること |
片麻痺 | 脊髄損傷により片腕や片脚に麻痺や機能障害が残ること |
単麻痺 | 脊髄損傷により腕や脚のひとつの場所に麻痺や機能障害が残ること |
(4)脊髄損傷の診断方法
脊髄損傷を診断する際は、まず麻痺や痺れの状況を確認し、次にMRIやCT、レントゲンで脊髄や脊柱が損傷した場所を明らかにしていきます。
診断の際は、脊髄損傷の箇所を診断する「高位診断」という観点と、どのような症状が出ているかを診断する「横断位診断」の観点から見ていくことが必要です。
具体的には、以下のような方法が診断で用いられます。
①画像診断
交通事故で骨折や脱臼をした場合は、まずX線レントゲン検査で診断し、脊髄損傷の疑いがあるケースではCTやMRI検査で脊髄損傷の箇所を特定していきます。
画像診断は、脊髄損傷の診断をする際に最も重要な証拠になります。
事故直後にCTやMRIまできちんと診断を受けておくことが後々後遺障害の認定を受けたり、慰謝料の金額を確定させる際に重要な証拠になります。
②神経学的検査
画像診断では脊髄損傷が判断できない場合、四肢や体幹の知覚障害や筋力・腱反射の状況などを検査する神経学的検査を行います。
実際の動きや感覚の有無などを確認することで、脊髄損傷の箇所や程度を特定していきます。
③電気生理学的検査
画像診断で脊髄損傷が判断できない場合に、神経学的検査と同様に電気生理学的検査の方法がとられることがあります。
具体的には、脳・脊髄誘発電位や筋電図検査といった方法を用いて神経刺激を行い、脊髄損傷の箇所や程度などを確認します。
これらの検査に、医師が実際に診断をした臨床所見等を合わせて、脊髄損傷の診断をしていくことになります。
脊髄損傷の診断をきちんと受けておくことは、交通事故で被った損害の補償を受けていくために必要不可欠です。
手続や診断の費用が不安な場合は、ご自身が加入している保険の弁護士費用特約が使える場合もあるので、弁護士に相談しながら手続きを進めていきましょう。
2.脊髄損傷で認定される後遺障害等級の目安とは
(1)後遺症と後遺障害等級の仕組み
交通事故で脊髄損傷した場合、後遺症がケースは少なくありません。
しかし、後遺症が残ったというだけでは、慰謝料などの保険金を受け取ることは原則としてできないのをご存知でしょうか。
慰謝料などの保険金を受け取るためには、後遺症の程度に応じた後遺障害等級の認定を受けなければならないのです。
後遺障害等級は、重い1級から軽い14級まで14段階に分かれており、症状に応じて等級が決まっています。
後遺障害等級の認定は、医師の判断を受けた上で第三者機関が判断します。
後遺障害の等級に応じて慰謝料金額が決められているため、ご自身の症状に応じた等級の認定を受けられるように症状をしっかりと医師に伝えたり、証拠となる画像診断の結果などを揃えることが重要です。
認定に異議や疑問が認められるケースでは、弁護士が間に入って主張することで、当所認められなかった障害について後遺障害等級が認定される可能性もあります。
後遺障害等級の認定について不明点や不安点がある場合には弁護士を頼ることをお勧めします。
(2)脊髄損傷の場合の後遺障害等級の目安
①症状別の後遺障害等級
交通事故による脊髄損傷では、1級から12級までの後遺障害等級が自賠責保険によって定められています。
実際に認定される可能性がある後遺障害等級としては、脊髄損傷によって生じる症状に応じて以下の7つがあります。
1級 | 神経系統の機能や精神に著しい障害が残り、生命を維持するために必要な身のまわり処理の動作に常時介護が必要なもの |
2級 | 神経系統の機能や精神に著しい障害が残り、生命を維持するために必要な身のまわり処理の動作に随時介護が必要なもの |
3級 | 神経系統の機能や精神に著しい障害が残り、生命を維持するために必要な身の回りの処理の動作はできるが労務に服することができないもの |
5級 | 神経系統の機能や精神に著しい障害が残り、特に軽易な労務にしか服せないもの |
7級 | 神経系統の機能や精神に障害が残り、軽易な労務にしか服することができないもの |
9級 | 神経系統の機能や精神に障害が残り、就労可能な職種が相当な程度に限られるもの |
12級 | 局部に頑固な神経症状が残り、通常の労務に服することは可能で、職種制限もないが、時には労務に支障が生じる場合があるもの |
なお、上記にない等級には脊髄損傷の症状の規定がないため該当しません。
②厚労省の定める脊髄損傷の麻痺の程度
脊髄損傷による麻痺の程度については、厚労省の通達でより詳しい基準が定められています。
具体的には、該当箇所が完全硬直するなど運動性・支持性の大半が損失し基本動作ができない「高度の麻痺」、杖などがないと歩行できないなど該当箇所の運動性・支持性がかなり損失し、基本動作に相当の制限がある「中等度の麻痺」、早く歩けないなど該当箇所の運動性・持続性が多少損失し基本動作に制限がある「軽度の麻痺」の三段階です。
後遺障害等級の認定をする際には、この厚労省の基準も参考にして決定されることになります。
3.脊髄損傷の場合の慰謝料の目安とは
(1)後遺障害等級別の慰謝料の目安
交通事故の被害にあった場合の慰謝料は、後遺障害等級に応じて目安が決められています。
また、「慰謝料」と言っても加害者が入っている保険が自賠責保険基準によるか任意保険基準によるか、又裁判で争った場合に認められる金額によるかによって認められる金額の基準が異なることに注意が必要です。
1級
自賠責保険基準 | 1,600万円 |
裁判所基準 | 2,800万円 |
2級
自賠責保険基準 | 1,163万円 |
裁判所基準 | 2,370万円 |
3級
自賠責保険基準 | 829万円 |
裁判所基準 | 1,990万円 |
5級
自賠責保険基準 | 599万円 |
裁判所基準 | 1,400万円 |
7級
自賠責保険基準 | 409万円 |
裁判所基準 | 1,000万円 |
9級
自賠責保険基準 | 245万円 |
裁判所基準 | 690万円 |
12級
自賠責保険基準 | 93万円 |
裁判所基準 | 290万円 |
なお、任意保険の基準については、各保険会社が定める独自の基準により明らかにされていません。
ただし、自賠責保険よりは高いものの、裁判所基準よりは少ない金額に設定されています。
(2)自賠責保険基準と裁判所基準で慰謝料額が異なる理由とは
上記のように、自賠責保険基準と裁判所基準の慰謝料額に差があることに疑問を持たれた方もいるかもしれません。
これは、保険の性質によるものです。
自賠責保険は、交通事故を起こした加害者に資力がなくても被害者が最低限度の補償は受けられるように国が定めた強制保険です。
そのため、慰謝料額も最低限度しか認められません。
これを上回る慰謝料額については加害者個人に求めていくことになりますが、よほど加害者の資力がない限り残念ながら全額を補填するのは難しいのが実情です。
任意保険は、万が一交通事故を起こした場合に莫大な慰謝料を払うリスクを回避するために、運転者が任意で加入する保険です。
そのために、自賠責保険よりかは高い慰謝料が被害者に支払われることになります。
しかし、任意保険会社は自社の利益を確保した上で保険金を支払うので、本来認められるべき保険金額より少ないことが多くなっています。
裁判所基準というのは、慰謝料を巡って裁判になった場合に、裁判所が認めるであろう金額の目安です。
通称「赤い本」「青い本」と言われる慰謝料額を定めた本があり、後遺障害等級などに応じて定められています。
実際は、弁護士が交渉することによって、裁判になる前に保険会社が裁判所基準に近い金額を受け入れて払うことが少なくありません。
交通事故で脊髄損傷を負い、後遺障害等級の認定を受けて慰謝料を請求する場合には、保険会社から示された保険金の額が妥当か見極めたうえで示談するようにしましょう。
必要な場合には、交通事故問題を扱う弁護士に相談し、保険会社との交渉にあたってもらうことをお勧めします。
障害の程度や事故の状況などによっては裁判でも増額が見込めず、弁護士を頼んでも費用倒れになる可能性もありますし、他方、被害者側が任意保険で弁護士費用特約を付加していれば、弁護士費用を保険で填補できる場合もあります。
まとめ
今回は、交通事故で脊髄損傷を負った場合の症状や、後遺障害等級の認定基準、慰謝料の目安について述べてきました。
交通事故の被害の中でも脊髄損傷は、状況によっては重篤な症状が一生続くこともあります。
それだけに、認められるべき後遺障害等級が認定され、もらうべき慰謝料をきちんと受け取ることが今後の生活を支える上でも大きな意味を持ちます。
脊髄損傷の認定には高度な専門知識を要することも多いので交通事故で脊髄損傷になった場合は、医師や弁護士など専門家のアドバイスを受けながら対応することをお勧めします。