アルバイトやパートをしている人が交通事故に遭ったとき、加害者に対して休業損害を請求できるのでしょうか?
また、その際、どのような計算方法になるのかについても、押さえておきましょう。
今回は、アルバイトやパートの人が交通事故の休業損害を請求する方法について解説します。
- 交通事故
- 過払い
- 離婚問題
- 刑事事件
- 企業法務
- 遺産相続
- 労働問題
- B型肝炎
ホウツウがオススメする法律事務所が安心!
目次
1.アルバイトやパートでも、休業損害を請求できる
休業損害とは、交通事故によって仕事ができなくなったときに収入が得られなくなったことについて発生する損害です。
交通事故に遭うと入院が必要になったり通院や自宅療養が必要になったりして、仕事ができない期間が発生することが多いです。
すると、その間の収入を得ることができなくなります。
そこで、その失われた収入を加害者に支払い請求することができるのです。
そこで、休業損害は基本的に事故前に実際に働いていた人について認められます。
働いていなかった人の場合、事故が原因で休んでいても収入が失われることがないためです。
アルバイトやパートタイマーでも、実際に働いて収入があるわけですから当然に休業損害が認められます。
2.休業損害の計算方法
次に、休業損害の計算方法を確認します。
(1)自賠責基準と歳晩基準
休業損害の計算方法には、自賠責基準による計算方法と裁判基準による計算方法があります。
自賠責基準による計算方法とは、自賠責保険が保険金を計算するときに使う基準です。
裁判基準は、裁判所が損害賠償金を認定するときに採用する法的な根拠をもった基準です。
(2)自賠責基準による休業損害の計算方法
自賠責基準の場合の休業損害は、以下の通りの計算方法となります。
休業損害=5700円×休業日数
ただし、実際の収入が上記を超えることを証明できるなら、実収入を基準とします。
その場合、1日19000円を限度とします。
(3)裁判基準による休業損害の計算方法
裁判基準によって休業損害を計算するときには実収入を基準とします。
また、1日19000円という上限はありません。
そこで、実収入の証明が難しい人や実収入が高額な人の場合には、裁判基準によって計算する方が得になります。
裁判基準による休業損害の計算始期は、以下のとおりです。
休業損害=1日あたりの基礎収入(実収入ベース)×休業日数
3.アルバイト・パートの場合の計算方法
次に、アルバイトやパートの方が休業損害を計算する方法をご説明します。
アルバイトやパートの人は、毎月給料を受けとっているので「給与所得者」です。
給与所得者の場合、基本的に基礎収入を事故前の給与額を基準にして計算します。
また、給与所得者の場合、源泉徴収によって所得税が控除されていますし社会保険料なども引かれていますが、休業損害を計算するときには、これらの控除は考慮しません。
考慮前の収入が基礎収入となります。
(1)休業損害計算の具体例
休業損害の計算例として、1つ具体例を挙げます。
たとえば、事故が起こったのが1月で事故前の3ヶ月(10月~12月)におけるそれぞれの収入が、30万、35万、33万円だった被害者がいたとします。
この場合、事故前3ヶ月の収入の合計は98万円であり、事故前の3ヶ月の日数は92日です。
そこで、1日あたりの基礎収入は10652円となります。
この被害者が、事故によって10日休業したら休業損害の金額は、以下の通り計算されます。
休業損害=10652円(1日あたりの基礎収入)×10日=106520円
(2)給与額に変動があるケース
また、毎月の給与額の変動が大きい人や賞与を受けとっている人などの場合には、事故前3ヶ月分の収入ではなく、前年度の年収額を基準に基礎収入を算定することもあります。
その場合、事故の前年度の源泉徴収票が必要となります。
源泉徴収票が手元になければ、市民税県民税の証明書によって収入を証明します。
年によって収入額が異なる人の場合には、事故前数年分の年収の資料が必要になることもあります。
4.主婦がパートをしている場合の休業損害
(1)パートの主婦は、家事労働を行っている
アルバイトやパートをしている方の中には主婦も多いです。
主婦の場合、一般のアルバイトやパートの人とは異なる方法で基礎収入を算定することとなります。
主婦はパート意外に自宅で家事労働も行っているためです。
家事労働は、実際に誰かから給料をもらっていませんが経済的な価値がある労働として認められています。
このことは、もし、主婦が働けなくなって家政婦を雇ったら費用がかかることからも当然と言えます。
(2)主婦の基本的な休業損害計算方法
主婦の基礎収入を算定するときには、賃金センサスの「全年齢の学歴計の女性の平均賃金」を使って計算します。
賃金センサスとは、国が調査している国民の賃金の統計資料です。
これによると、全年齢の学歴計の女性の平均賃金はだいたい1日1万円となっています。
たとえば、平成28年の場合、376万2300円ですから1日10307円です。
そこで、主婦が休業損害を請求するときには、基本的に1日1万円程度として休業日数分の請求ができることになります。
(3)パートの主婦の休業損害計算方法
以上のように、主婦の場合、基本的に全年齢の女性の平均賃金を使って計算するので、1日1万円程度の基礎収入が認められるのですがパートの主婦の場合問題が発生します。
パートの主婦には、パートによる「実際の収入」があるためです。
実際の収入がある以上、これを基準にして計算すべきではないかとも思えます。
しかし、パートの主婦の実収入は、全年齢の女性の平均賃金より非常に低いことが多いです。
たとえば、多く見積もって月収15万円としても年収は180万円です。
これを1日あたりの基礎収入に直すと、1日4931円となり自賠責基準である5700円にも及びません。
これでは、専業で主婦業を行っている専業主婦と比べて不公平になります。
そこで、パートの兼業主婦の場合にも、基本的には「全年齢の女性の平均賃金」を使って基礎収入を算定します。
そして、実際の収入が「全年齢の女性の平均賃金」を超える場合にのみ、実収入を使って基礎収入を計算することとなります。
実際に、年収376万2300円(平成28年の全年齢の女性の平均賃金)を超えるパートの主婦はあまりいないでしょうから、パートの主婦の場合、平均賃金を使って1日1万円程度の休業損害が認められることが多いことになります。
(4)自賠責基準の場合
パートの主婦が休業損害を計算するとき、自賠責基準が適用されるとどうなるのかについても押さえておきましょう。
先にも説明しましたが自賠責基準の場合、基本的に1日5700円となります。
そして、実収入がそれを超えることを証明できる場合にのみ、実収入が基準となります。
主婦の場合、家事労働による「実収入」を証明することは困難ですから1日5700円として計算されてしまいます。
そこで、自賠責基準を使うとパートの主婦の休業損害は大きく減額されてしまいます。
休業損害を計算するときには裁判基準を使う必要があります。
5.アルバイトやパートのケースで、休業損害を請求する方法
次に、休業損害の請求方法を説明します。
(1)休業損害証明書を入手する
アルバイトやパートのような給与所得者が休業損害を請求するためには「休業損害証明書」を入手することが必要です。
休業損害証明書とは、事故により仕事を休んだ日数と給与額について勤務先に証明してもらうための書類です。
休業損害証明書は、被害者本人ではなく勤務先が作成します。
保険会社に書式があるので、保険会社から書式を取り寄せるかネット上で書式をダウンロードするなどして勤務先に渡し作成を依頼します。
勤務先が作成を終えたら返してもらい、記載内容に間違いがないか確認しましょう。
また、複数の勤務先でアルバイトをしている場合には、すべての勤務先で休業損害証明書の作成を依頼する必要があります。
また、「休業損害証明書とは?書き方と注意点を徹底解説!」も併せてご参照ください。
(2)収入の資料を入手する
休業損害を請求するためには、給与の金額を証明することが必要です。
通常は事故前3ヶ月分の給与額を基準とするので、事故前3ヶ月分の給与明細書を用意しましょう。
複数の勤務先でアルバイトをしている場合には、すべての勤務先での給与明細書が必要です。
また、年収の証明が必要な場合には、源泉徴収票が必要ですし場合によっては市民税県民税の証明書が必要です。
市民税県民税の証明書は、市町村役場において取得することができます。
(3)相手の保険会社へ送付する
休業損害証明書と給与明細書等の資料が揃ったら保険会社に送付しましょう。
すると、相手の方で休業損害の金額が計算されます。
また、休業損害については示談が成立したときに、まとめて支払を受けることになります。
早めに資料を用意したとしても「示談成立前に休業損害だけを先に受けとる」ということは、基本的にできないので注意が必要です。
(4)自分で請求する場合の問題点
アルバイトやパートの方が休業損害を請求すると相手の保険会社から、さまざまな理由で減額を主張されることがあります。
たとえば、事故前に転職を繰り返していて、失業していた期間があったり収入が不安定だったりすると基礎収入を下げられてしまうことがあります。
また、パートの主婦が休業損害を請求するときには、自賠責基準を適用することにより基礎収入を1日5700円とされてしまうことも多いです。
そういったとき、保険会社の主張や説明を鵜呑みにしないことが大切です。
6.弁護士に依頼するメリット
アルバイトやパートの主婦などの方が適切な金額の休業損害を請求するためには、弁護士に依頼するとメリットが大きいです。
まず、弁護士に依頼すると「裁判基準」で休業損害を計算することができます。
裁判基準は、裁判所が損害賠償金を計算するときの法的な基準ですが、弁護士が示談交渉を代行するときにも当然適用されるものだからです。
そこで、パートの主婦の方や実収入が高いアルバイトの方などは弁護士に依頼することで、休業損害の額が大きく上がることがあります。
また、弁護士が就いていると加害者の保険会社がさまざまな理由で休業損害を減額してきても適切に反論することが可能です。
たとえば、アルバイト生活をしていると事故前に、たまたま失業中や転職活動中だったということもありますが、そういったケースでも、弁護士に依頼すると休業損害を請求できる可能性があります。
そこで、なるべく高額な休業損害を請求するためには、弁護士に依頼することが必要です。
まとめ
アルバイトやパートの方で交通事故に遭ってお困りの場合には、まずは交通事故に積極的に取り組んでいる法律事務所を探してアドバイスを受けてみましょう。