交通事故では、まだ通院しているのに治療費の支払いを打ち切ると保険会社から言われて、相談にくる方がたくさんいらっしゃいます。
こうした状況になった際の対処法も含めて、今回は「保険会社からの治療費支払いの打ち切り」に関してご説明いたします。
ご参考にしていただければ幸いです。
※この記事は2017年3月30日に加筆・修正しました
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目次
1.治療費の打ち切りとはどういう状況か?
基本的に、治療費の支払いは被害者と病院の契約に基づき支払われます。
加害者側が立替えなくてはいけない法的な義務はありません(確定した損害額を後から支払います)。
しかし、交通事故被害の治療費は高額になってしまう場合も多く、モラルとして加害者側の保険会社が立替えて支払うことが一般的に行われています。
とはいえ、保険会社も営利企業です。
治療が長期にわたった場合、保険会社側の判断によって任意の立替払いを打ち切ると言われてしまうことがあります。
これが、いわゆる「治療費の打ち切り」といわれる状況です。
2.交通事故後の治療が終了するのはどのような場合?
このような治療費の打ち切りですが、保険会社側は単に打ち切るのではなく「治療は完了しているはずだ」という理由を述べることが多いです。
では、治療の完了(=終了)とはどのような場合を指すのかと言いますと、
- 完治
- 症状固定
の2つの場合を指します。
このうち、「完治」は言うまでもなく被害が完全に回復したことです。
他方、「症状固定」とは、症状の回復・改善が期待できなくなった状態、つまりこれ以上治療しても良くならない状態を言います。
ですので、保険会社に改めて考えさせるためには、本当に上記2つのどちらかに当てはまっているのかどうかがポイントです。
3.打ち切りされる状況別の対処法
(1)まだ治療中に打切りと言われた場合
①ケースの概要
例えば、事故後5か月程度で保険会社から「治療費の支払いを打ち切る」と言われましたが、入院や通院をしている病院の担当の医師が「治療がまだ終わっていない」と言っている場合です。
②対処法
まず、保険会社から治療費の支払いを打ち切ると言われたとしても、治療自体を止めなければいけないという訳ではないです。
打ち切られるのは費用の「支払い」であって、「治療」そのものではないのです。
ですので、医師から「治療は続けたほうが良い」と言われた場合は、自身の体のために治療は続けましょう。
とはいえ、現実問題として治療費をどうすれば良いのでしょうか。
その場合は、以下のような対応が考えられます。
・保険会社と交渉する
「立替え払いを継続してほしい」と保険会社に要望する、いわば正攻法とも言える方法です。
保険会社は、「完治」「症状固定」を理由にしています。
ですので、医師の意見を保険会社に伝えて治療をまだ続けなくてはならないと説くことが大切です。
保険会社と話をするときには、具体的な治療期間を伝えましょう。
具体的な治療期間を保険会社の担当に話すと、その担当も社内決裁でOKをもらいやすくなるからです。
また、可能であれば医師から直接話してもらうというのも一つの手でしょう。
・自腹で支払い、事後請求を行う
保険会社は「完治」又は「症状固定」したとの主張をしているのでしょうが、これはあくまでも保険会社の見解です。
したがって、裁判所等によって立替え払いの打ち切りから、完治又は症状固定(※)と認定された日までの期間の治療費は、後日、示談交渉又は訴訟により請求が出来ます。
ですが、現実的に考えて治療の費用負担を自分で負担することはむずかしいでしょう。
ですので、治療を行う際は健康保険を利用しましょう。
勿論、自身が費用を負担した分の治療費は、きちんと領収書を保管しておきましょう。
※症状固定については、一般に、医師の後遺障害診断書に基づき、損害保険料率算出機構が行う後遺障害等級認定によって認められる。
(2)医師も症状固定と判断したような場合
①ケースの概要
例えば、保険会社から「症状固定と思われるので治療費の支払いを打ち切る」と言われ、担当医師に相談したところ、医師も「このまま治療を続けても良くなる見込みがない」と言った場合です。
②対処法
対処法として、担当の医師に「後遺障害診断書」を作ってもらって、後遺障害等級認定の手続きをしましょう。
その上で、相手方保険会社に対して等級に応じた賠償の請求を行いましょう。
もっとも、自分自身として治療を継続したいというのであれば継続すること自体は可能です。
しかし、症状固定後の治療費は、一般に後遺症慰謝料の中に含まれるとされているため、これを請求することはかなり難しいでしょう(重症のときなどに、症状固定後も特に症状悪化を避けるために治療が必要といった事情が無ければ認められません)。
また、後遺障害等級認定について詳しくは、「交通事故に遭った際に後遺障害等級認定を受けるための全手順」をご参考にしてみてください。
4.治療が打ち切りされたら弁護士に依頼すべき?弁護士に依頼するメリットとデメリット
(1)弁護士依頼のメリット
基本的に、保険会社は交通事故後に約3~4か月で治療費の打ち切りを通告してくることが多いです。
こうした場合に、自分自身で交渉することも勿論出来ますが人の方では保険会社が意見をあまり聞いてくれないことも多いです。
他方、弁護士が交渉した場合は専門知識をバックに交渉することになるので、それだけで交渉がスムーズに行くこともあります。
また、交渉などを弁護士に代行してもらえるので自身は治療に専念できるのです。
(2)弁護士依頼のデメリット
弁護士を雇う際には費用が必要です。
ですので、今回は弁護士を雇う際に必要な金銭についてご説明いたします。
①任意保険に弁護士特約がある場合
基本的に任意保険には、「弁護士特約」が付いています。
弁護士特約とは、交通事故が原因で弁護士に必要な費用を最大で300万円まで補償してくれます。
ですので、基本的に自身で費用を負担することがないので、弁護士特約がある場合はデメリットになりません。
②弁護士特約がない場合
弁護士特約がない場合は全て実費です。
弁護士費用は、基本的に弁護士会の旧報酬規程が参考です。
下記の通りです。
経済的利益 | 着手金 | 報酬金 |
300万円以下の部分 | 8% | 16% |
300万円~3000万円の部分 | 5% | 10% |
3000万円~3億円の部分 | 3% | 6% |
3億円を超える部分 | 2% | 4% |
たとえば、後遺障害等級14級の認定に基づいて110万円の後遺症慰謝料請求を依頼するとしましょう。
この基準によれば、300万円以下の訴訟事件着手金(依頼時に支払う金額)は請求額の8%、報酬金(事件解決時に支払う金額)は得られた額の16%だから、着手金が8万8000円、報酬金が17万6000円になります(いずれも税抜)。
合計26万4000円です。
現在、弁護士の料金体系は自由化になっているので、事務所によって料金は上下します。
近頃は、着手金無料で完全成功報酬型も増えてきています。
相談料も無料の場所もあるので、相談してみましょう。
弁護士特約については「弁護士費用特約とは?弁護士費用特約を付けるべきか判断するために知っておきたい5つのこと」に詳しく記載いたしましたので、是非ご参考にしてください。
また、弊社では交通事故に強い弁護士をご紹介しておりますので、是非ご活用ください。
まとめ
以上、治療費の打ち切りについてご理解頂けましたでしょうか。
保険会社から突然通告されても、併せずこの記事をご参考にしていただき適切な対応をしていただければ幸いです。