交通事故に遭う場合、必ずしも自動車事故とは限りません。
当事者の一方や双方が2輪車であるケースがあります。
いわゆるバイク事故の場合です。
バイク事故の被害者になってしまったら、どのように対処すればよいのでしょうか?
バイク事故の慰謝料や過失割合の考え方がどうなっているのかについて知っておく必要があります。
また、バイク事故と自動車事故との間に違いがあるのかどうかも知っておくと役立ちます。
そこで今回は、バイク事故に遭った場合の対処方法や自動車事故との違いについて解説します。
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目次
1.バイク事故とは
バイク事故とは、バイクが当事者となっている交通事故のことであり、単車事故とも呼ばれます。
ここで言うバイク(単車)とは、自動二輪車のことですが、原動機付き自転車も含まれます。
大型バイクの場合と原付の場合では、法定速度や排気量がかなり異なりますが、交通事故においては同じ単車扱いとなります。
バイク事故には、バイク同士の事故もありますし、バイクと自動車の事故、バイクと歩行者の事故があります。
バイク事故には自動車事故と異なる点があります。
それぞれのケースにおいて、損害賠償請求がどのようになるのか、以下で順番に見てみましょう。
2.バイク事故と自動車事故の違い
まずは、バイク事故と自動車事故の違いを見てみましょう。
(1)事故率、死傷率が高い
バイクは、自動車よりも事故率が高いです。
まずは、バイクと自動車の登録台数とそれぞれの事故での死傷者数を見てみましょう。
バイクと自動車の登録台数と死傷者数の表
車種 / 死傷者数(死者 / 重傷者 / 軽傷者 / 計) / 登録台数
自動車 / 1322名 / 1万784名 / 43万1533名 / 44万3641名 / 7706万4477台
原付(~125cc) / 230名 / 5612名 / 3万1598名 / 3万7440名 / 811万2886台
自動二輪車(126cc~) / 447名 / 5121名 / 2万7925名 / 3万349名 / 358万9551台
次に、バイクと自動車のそれぞれの事故率と死傷者数の割合を見てみましょう。
この表から、バイクの場合には自動車よりもかなり事故率が高くなっており、しかもその場合の死傷者数が多くなっていることがわかります。
車種 / 死傷者数(死者 / 重傷者 / 軽傷者 / 計)
自動車 / 0.0017% / 0.014% / 0.56% / 0.58%
原付(~125cc) / 0.0028% / 0.069% / 0.39% / 0.46%
自動二輪車(126cc~) / 0.012% / 0.14% / 0.78% / 0.85%
以上からすると、自動二輪車や原付などの単車に乗っている人は、自動車に乗っている人と比べるとかなり高い確率で重大な交通事故に遭っていることがわかります。
バイク事故の危険性を理解しやすくするため、自動車が事故を起こす危険性を1とした場合、原付が自動二輪車の事故の危険性を数値化した表があるので、見てみます。
車種 / 死傷者数(死者 / 重傷者 / 軽傷者 / 計)
自動車 / 1倍 / 1倍 / 1倍 / 1倍
原付(~125cc) / 1.64倍 / 4.93倍 / 0.7倍 / 0.82倍
自動二輪車(126cc~) / 7.06倍 / 10倍 / 1.39倍 / 1.46倍
このように、原付やバイクの場合、自動車と比べて死亡事故や重傷になる事故が非常に多いことがわかります。
原付の場合でも重傷になる危険性が自動車の5倍近くになりますし、自動二輪車の場合には、死亡事故につながる危険性が自動車事故の7倍以上、重傷になる危険性が自動車事故の10倍にもなっています。
バイク事故で死亡や重傷などの重大な結果が発生する場合、ヘルメットの脱落が起こることも多いです。
そこで、バイクを運転する場合には、必ずヘルメットをかぶり、ヘルメットの種類も半キャップのものではなくフルフェイスのものを選び、半袖や半ズボンなどの軽装を避けましょう。
これらの装備に注意することによって、バイク事故による死傷リスクを減らすことができる可能性が高まります。
(2)バイク事故の死亡原因と対策方法
バイク事故で多い死亡原因をご紹介します。
バイク事故の死亡原因は、最も多いのが頭部の負傷で、全体の42.8%にものぼります。
次いで胸部が27.8%です。
負傷の部位は、最も多いのが脚部で35.6%、次いで腕部の22.2%、3番目が顎部の16.1%です。
頭部の負傷は5.4%、胸部は7.1%となっています。
以上からすると、バイク事故では頭や胸の部分を負傷すると死亡や怪我などの重大事故につながりやすいことになります。
よって、バイクに乗車する場合には、やはりきちんとヘルメットをかぶり、できれば胸部のプロテクターなどを装着しておくと安全性を高めることができます。
(3)バイク事故は、通常の自動車保険が使えない
バイク事故が起こるととても危険ですが、保険の取り扱いについても通常の自動車とは異なります。
通常の四輪車用の自動車保険に加入していても、バイク事故の損害はカバーできません。
よって、バイク事故に備えるためには、特別にバイク用の保険に加入しておく必要があります。
最近は、バイク事故用のコースを設定している任意保険会社がたくさんあるので、これらを利用すると良いでしょう。
(4)バイク事故はひき逃げに遭いやすい
バイク事故の被害者になった場合の問題があります。
バイク事故では、ひき逃げが起こりやすいです。
身軽で小回りがききますし、運転者もお金のない若者であったりするので、簡単にその場から立ち去ってしまいます。
ひき逃げされてしまうと、被害者にとっては損害賠償請求ができなくなるおそれがあるので、大変な問題になります。
後日相手に損害賠償請求をするためには、相手の車両を特定する必要があります。
そこで、バイクに接触されたら、相手のナンバーを控えましょう。
バイクの色や車種も覚えます。
できれば、携帯電話などで写真を撮っておくことが望ましいです。
そして、大声で人を呼んで助けを求めたり、状況を周囲に伝えたりしましょう。
都市部など、近隣に監視カメラが設置されている場所での事故であれば、映っている映像から犯人を特定することができる可能性もあります。
このようにして犯人が特定できたら、相手に対して損害賠償請求をすることができます。
3.バイク事故の損害賠償請求方法は自動車事故の場合と同じ
バイク事故に遭った場合の慰謝料などの損害賠償請求の方法について、説明します。
(1)損害の計算方法は自動車事故と同じ
バイク事故に遭った場合の慰謝料などの損害賠償金の計算方法は、基本的に自動車事故の場合と同じです。
バイク事故でも、バイクの破損などの物損が発生したら、相手に対してその修理費などの支払い請求ができますし、交通事故でけがをしたら、その傷害結果(人身損害)についての損害賠償請求ができます。
具体的には、病院での治療費や交通費、付添看護費や休業損害、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料、逸失利益などの支払を請求できます。
これらの損害の計算方法もすべて自動車事故の場合と同じです。
自動車事故の場合と同様、損害賠償金の計算方法には自賠責基準と任意保険基準、弁護士・裁判基準の3種類があり、この中で弁護士・裁判基準が最も高額にあります。
そこで、バイク事故の場合であっても、慰謝料などの損害賠償請求をする場合には、弁護士・裁判基準を利用して請求すると、最も高額な損害賠償請求ができます。
(2)損害賠償請求の手続方法も自動車事故と同じ
バイク事故の場合、慰謝料などの請求方法も自動車事故の場合と同じです。
まずは、症状固定まで通院を継続します。
そして、相手方任意保険会社との間で示談交渉を開始します。
示談交渉においては、慰謝料などの各損害の項目を検討して、具体的にいくらの損害が発生しているかを明らかにします。
そして、過失相殺を行った上で、最終的に定まった損害賠償金の支払いを受けます。
もし当事者の意見が整わず、示談交渉が決裂した場合には、裁判所の調停や訴訟などを利用して損害賠償金を決定し、解決を目指すことになります。
最終的に損害賠償請求訴訟において裁判所が損害賠償額についての判決があれば、その内容に従って相手方任意保険会社から損害賠償金の支払いを受けることができます。
この手続の流れについては、自動車事故でもバイク事故でも同じです。
自動車とバイクの事故であっても、バイクとバイクの事故であっても、バイクと歩行者の事故であっても何ら変わりはありません。
4.バイク対自動車の事故の過失割合は、バイクが低くなる
バイク事故と自動車事故には、損害賠償金額の算定において、大きな違いがあります。
それは、過失相殺の考え方です。
以下では、バイク事故の過失割合を説明します。
(1)過失割合、過失相殺とは
交通事故が起こった場合、通常はどちらか一方が100%悪いということは少ないです。
そこで、当事者のそれぞれの過失割合に応じて損害賠償金額を過失相殺する必要があります。
過失割合とは、交通事故の当事者のどちらがどれだけ交通事故の結果に責任があるかという割合のことです。
過失相殺とは、当事者それぞれの過失割合に応じて損害賠償金額を減額することです。
たとえば、同じ100万円の損害が発生している場合において、自分の過失割合が20%であれば、相手には80万円の請求ができます。
これに対し、自分の過失割合が40%なら、相手に対しては60万円しか請求できなくなります。
過失割合については、ケースごとに基準が定められていて、保険会社や弁護士・裁判所などが過失割合を決める場合には、その基準を用いて具体的なケースにあてはめることにより、決定しています。
(2)自動車よりもバイクの過失割合が低くなる
バイク事故と自動車事故とでは、具体的な過失割合に差が生じます。
バイクは、運転手がむき出しの状態になっているので、周囲の金属に守られている自動車のケースよりも事故にあったときの危険性が高いです。
このことは先で説明した通り、事故率や事故に遭った場合の死傷率が、バイクの方が自動車よりもかなり高いことからもわかります。
交通事故の基本的な考え方として、弱者を強く保護しなければならないとする考えがあります。
ここで、バイクは自動車よりも弱い立場にあるのですから、保護する必要があるということになります。
その結果、バイクと自動車の事故の場合には、自動車同士の事故のケースよりもバイクの過失割合が小さくなることが多いです。
具体的には、バイクと自動車が事故を起こした場合、自動車同士の場合よりも、バイクの側の過失割合が10%~30%程度減算されます。
(3)具体的なバイクと自動車の事故の過失割合
バイクと自動車の事故での、具体的な過失割合を見てみましょう。
①信号機のある交差点での直進車同士の事故
信号機のある交差点での直進車同士のケースです。
この場合、バイクが青信号、車が赤信号の場合の過失割合は0:100となります。
バイクが赤信号、車が青信号の場合は100:0になります。
バイクが黄色、車が赤信号の場合は10:90となります。
バイクが赤信号、車が黄色の場合は70:30となります。
双方が赤信号の場合には、バイク:車が40:60となります。
②信号機のない交差点での直進車同士の事故
信号機のない交差点でバイクと自動車が衝突した場合、同じ程度の速度で遭った場合にはバイク:車が30:70となります。
バイクが減速していて車が減速していない場合には15:85となります。
バイクが減速せず、車が減速した場合には、45:55になります。
③車が一時停止義務違反した場合の交差点での事故
交差点で、車が一時停止義務違反した場合、バイクと車が同程度の速度であった場合には、それぞれの過失割合は15:85になります。
バイクが減速していて、車が減速していない場合には10:90となります。
バイクが減速せず、車が減速した場合には25:75となります。
なお、車が一時停止してから進入した場合には35:65となります。
④バイクが一時停止義務違反した場合の交差点での事故
交差点で、バイクが一時停止義務違反をした場合、バイクと車が同程度の速度で遭った場合には過失割合は65:35となります。
バイクが減速して、車が減速していないケースでは55:45となります。
バイクが減速せず、車が減速した場合には80:20になります。
なお、バイクが一時停止した後に交差点へ進入した場合には、45:55となります。
以上の4ケースを比較して見ても、自動車とバイクの事故の場合には、バイクが優遇されていることがわかります。
5.バイク対歩行者の事故の過失割合は、バイクが高くなる
次に、バイクと歩行者の事故の過失割合について解説します。
(1)歩行者はバイクより保護されている
バイクと歩行者が交通事故を起こした場合の過失割合の考え方は、自動車(四輪車)と歩行者が交通事故を起こした場合の過失割合の考え方と同じです。
バイクと歩行者がぶつかった場合、バイクはほとんど怪我をしなくても、歩行者は死亡したり重傷を負ったりする可能性が高いです。
交通事故では、弱者を保護しようという考え方がありますが、バイクと歩行者の事故の場合には、歩行者はバイクよりも弱い立場なので、バイクよりも保護されるのです。
具体的には、バイクと歩行者が事故を起こした場合には、歩行者の過失割合は大きく減らされて、多くの場合バイクの側の過失割合が100%に近くなります。
ただし、歩行者にも過失が認められるケースはあります。
たとえば、歩行者が信号無視をしたケースや、横断歩道ではない道路(車道)を渡っていた場合、歩行者が道路上で寝ていた場合などには、歩行者の方にも大きな過失割合が認められます。
(2)バイクと歩行者の事故の過失割合
以下では、具体的なバイクと歩行者の過失割合を見てみましょう。
①信号機のある横断歩道上の事故
歩行者が青信号でバイクが赤信号の場合は0:100です。
歩行者が黄色の状態で横断を開始してバイクが赤信号で進入した場合は10:90となります。
歩行者が赤信号で横断を開始し、バイクが赤信号で進入した場合は20:80となります。
歩行者が赤信号で横断を開始し、バイクが黄色で進入した場合は50:50となります。
歩行者が赤信号で横断を開始し、バイクが青信号で進入した場合は70:30となります。
歩行者が青信号で横断を開始したけれども、横断中に赤に変わって、バイクが赤信号で進入した場合は0:100となります。
歩行者が赤信号で横断を開始して、横断中に青信号に変わり、バイクが赤信号で進入した場合は10:90となります。
歩行者が青信号で横断を開始して、横断中に赤信号に変わり、バイクが青信号で進入した場合は20:80となります。
歩行者が黄色で横断し始めて、横断中に赤信号に変わり、バイクが青信号で進入した場合は30:70となります。
②横断歩道のない場所での事故
横断歩道がない場所で発生した事故の過失割合を見てみましょう。
歩行者が広い道路を横断していたケースです。
この場合、バイクが直進車の場合の過失割合は20:80です。
バイクが右左折する場合は10:90です。
歩行者が狭い道路を横断していたケースです。
この場合、歩行者:バイクは10:90となります。
③歩行者用道路、歩道上の事故
歩行者用の道路や歩道上で起こった交通事故については、バイクの過失割合が100%となります。
④歩行者の通行が許される車道上の事故
工事などの影響で、歩行者が車道を通行することが許される場所があります。
この場所で起こった交通事故の過失割合は、歩行者:バイクが10:90となります。
⑤歩行者が車道上で寝ていた場合の事故
歩行者が車道上で寝ていた場合、昼間の事故で事前発見がバイクから容易でない場合、過失割合は歩行者:バイクが30:70になります。
昼間の事故で、バイクから事前発見が容易であった場合には、過失割合は歩行者:バイクが20:80になります。
夜間事故の場合、歩行者:バイクが50:50になります。
6.バイクとバイクの事故の過失割合
バイク同士の事故の場合の過失割合を見てみましょう。
この場合、特にどちらを保護しなければならないわけではないので、両方に平等に過失割合が割り振られます。
具体的な過失割合の基準は、自動車(四輪車)同士の事故の場合と同じになります。
以上のように、バイク事故の場合には、通常の自動車の事故と異なる過失割合の基準があります。
具体的な過失割合を調べたい場合には、判例タイムズ社が出版している「別冊判例タイムズ 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」に詳しく事例が載っているので、参照すると良いでしょう。
まとめ
今回は、バイク事故の場合の損害賠償請求方法やバイク事故と自動車事故との違いを解説しました。
バイク事故は、自動車事故と比べて非常に死傷率が高く危険です。
バイク事故の場合、過失割合の考え方について、自動車事故と異なる場面があります。
自動車とバイクの事故の場合には、バイクが不利な立場になるので、過失割合はバイクに有利に修正されます。
バイクと歩行者の事故の場合には、歩行者が弱い立場になるので、過失割合はバイクに不利になります。
バイク同士の場合は自動車同士の場合と同じです。
バイク事故の場合であっても、基本的な損害賠償請求の方法は自動車事故の場合と同じです。
よって、バイク事故に遭ってなるべく高額な損害賠償金を請求するためには、高越事故に強い弁護士を探して請求手続を依頼すると良いでしょう。
参考サイトhttp://bikenosusume.com/bike-failure-rate