3組に1組が離婚をすると言われている昨今。
実際に離婚しようとお悩みの方の中には経済的不安を抱えている方も少なくないでしょう。
離婚しても経済的不安が全くない、という方は少ないと思われますが、特に経済的不安を抱えているのは専業主婦の方ではないでしょうか。
実際、収入がないために離婚後の生活が不安で離婚するかどうか迷われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、離婚時に夫から回収できるお金や、それとは別に補助金・助成金などがあることを知ることで専業主婦の経済的な面での不安を軽減することができます。
そこで今回は、離婚をしたいと考えている専業主婦の方に知っておいてもらいたいことについて説明していきます。
ご参考になれば幸いです。
※この記事は2017年4月27日に加筆・修正しました。
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目次
1.専業主婦が離婚するリスク
まずは、専業主婦が離婚した場合のリスクについて説明します。
専業主婦の離婚で一番大きなリスクは、やはり生活ができるかどうかです。
自分では収入がない上に、更に子供まで育てなければいけなくなるとなおさらリスクは大きいです。
したがって、離婚後の経済的な不安をいかに減らすかと言うことが大事です。
2.離婚するために事前にどのような準備をしておけばよいか?
では、離婚を切り出す前にどのような準備が必要なのでしょうか。
(1)離婚にかかる費用を把握
まずは離婚をするのに必要なお金を把握する必要があります。
話し合いで離婚ができれば一番いいですが、相手方が納得できない場合には調停、それでも決まらなければ裁判をしなければなりません。
裁判になれば裁判所に納める費用がかかるし、弁護士に依頼した場合には弁護士費用もかかります。
また、離婚をするとなれば、家をどうするかも決める必要があります。
今の家に住み続けて、相手方が出て行くのか、それとも自分が出て行くのか。
もし自分が出て行くのであれば、新居への引越費用も必要です。
また、離婚後の生活費がどれくらい必要になるかも考えておく必要があります。
子供がいる場合には子供の分の費用もです。
したがって、離婚をするのにはある程度の資金を貯めておく必要があります。
(2)財産分与を意識
財産分与とは、結婚した後に夫婦で築いたお金などの財産を相手に分けることを言います。
そして、この「財産分与」で不利にならないためにも、結婚前に貯めていたお金や、自分の親からもらった財産などは、自分の「特有財産」として家計ときちんと分けなければなりません。
また、離婚で「財産分与」ができるのは、あくまでも夫婦で築き上げた「共有財産」だけになります。
注意しておきたいのは、夫婦それぞれの特有財産はそれぞれの財産となるため、分与の対象にはならないということです。
(3)財産分与以外で相手方に請求できる費用も確認しておく
離婚の原因が相手方の不倫にあるならば、相手方に「慰謝料」を請求することができます。
もし、ご自身が親権を持つのであれば、相手方から養育費も貰うことができます。
加えて、離婚前に別居することになった場合には、婚姻費用の分担も考えられます。
そのため、事前に相手方の財産を把握しておくことが大切です。
財産を把握しておかないと、万が一、約束したのに支払いがないときに強制執行ができないことになってしまいます。
3.離婚の切り出し方はどのようにしたらいい?
では、離婚の準備が整ったら、どのようにして離婚を切り出したら良いのでしょうか。
口頭で伝えるのであれば、「大事な話がある」と言って、自分の感情をむき出しにせず、相手の気持ちも考えながら話を持っていくのが良いでしょう。
もし、相手が激昂しやすい人ならば、あえて外で、他人の目があるところで言うのも手です。
4.婚姻費用分担請求
離婚をする前に別居をする場合には、ぜひ婚姻費用の分担をすることを勧めます。
婚姻費用とは、別居中の夫婦の日常生活費のことを言います。
具体的に、居住費や生活費、医療費、交際費、子どもの生活費や学費などを指します。
民法上、夫婦は生活していく上で必要な費用を分担するとされています。
よって、例え別居中であっても夫婦である以上は、お互いが同等のレベルで生活できるように婚姻費用をもらう権利があります。
婚姻費用の額については、話し合いで「毎月いくら」という約束ができればいいですが、できなければ家庭裁判所の調停、つまり話し合いの手続を行う必要があります。
それでも決まらなければ、審判という手続に移行して、裁判官に決めてもらうこともできます。
そして、裁判官は、夫婦の収入、子供の人数、子供の年齢等を総合的に考慮して額を決めることになります。
その際には、「婚姻費用算定表」を参考にすることが多いです。
5.離婚のタイミングで請求できるものは?
(1)財産分与
財産分与は、当事者間の話し合いで決めることができますし、離婚調停の中で取り決めることもできます。
また、離婚訴訟とともに裁判所へ申立てることも可能です。
繰り返しになりますが、財産分与の対象は夫婦の協力によって得た「共有財産」だけであるので注意しましょう。
なお、専業主婦の場合、家庭の財産はほとんど夫の名義になっていることが多いため、全く分与されないのではないかという不安を持たれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この点については、財産分与では、一方の内助の功を勘案して、夫婦の財産を名義にかかわらず、実質的に清算することになっています。
そのため、専業主婦であっても、きちんと財産分与がなされることになります。
(2)不倫の場合の慰謝料
相手方の有責行為によって離婚を余儀なくされた場合には、精神的な苦痛を与えたとして、それに対する慰謝料を請求することができます。
分かりやすく言うと、不倫をされて心に傷を負わされたことに対して支払わるお金のことです。
請求方法は、離婚の際の話し合いで取り決めることが可能です。
また、離婚調停や訴訟の中で請求することも可能です。
6.専業主婦でも親権はとれる?
では、専業主婦でも親権はとれるのでしょうか。
もちろん、夫婦の話し合いで合意に至れば親権をとれます。
しかし、当事者間で決まらないのであれば家庭裁判所で調停をし、それでも決まらないならば審判か訴訟によって裁判所に決めてもらうことになります。
では、裁判所はどのように判断するのでしょうか。
親権は親の権利である一方、社会的に未熟な子供の精神的・肉体的な成長を図るという親の義務という側面もあります。
そのため、裁判所は、親権者は子供を十分に養育していけるか、子供の成長のためには父母のどちらがふさわしいか、という子供の利益を主に考えて判断することになります。
したがって、収入の面では夫の方が有利だったとしても、裁判所は子どもに対する愛情や収入などの経済力、子供本人の意思などを総合的に考慮するため、専業主婦であっても親権を取れる可能性は高いです。
そして、シングルマザーとなっても子育てに祖父母の助けが借りられるといった事情があれば、親権を取れる可能性はより高まります。
7.養育費
たとえ親権を取れたとしても、収入がないために子供をきちんと育てていけるのでしょうか。
この点については、親権を取れなかった方の親にも、子供に対して「生活保持義務」(自分と同程度の生活を送らせる義務)があるために、養育費の支払い義務が生じるので問題ありません。
なお、養育費の算定方法は、話し合いで「毎月いくら」と決めることができます。
また、審判や訴訟で裁判所が判断する場合には、支払う側、もらう側の収入、子供の人数、年齢等を総合考慮した「養育費算定表」を使って判断されることになります。
8.離婚協議書
(1)形式
話し合いで離婚が決まった場合、取り決め内容のうち、お金に関わる部分は書面で残しておくことが大事です。
財産分与をどうする、慰謝料はどうするといった点を書き込んだ離婚協議書を作る必要があり、できれば「公正証書」にしておくことを勧めます。
公正証書とは、法務大臣が任命する公証人が作成する公文書のことです。
公証人は、多くが元裁判官や元検察官です。
また、原本が公証役場に保存されるため安心できます。
もし強制執行ができる旨の条項を入れておけば、相手方がお金の支払いを怠ったときに普通は裁判をして勝訴しなければ強制執行ができないところ、いきなり強制執行の手続ができるのです。
(2)内容
本などを参考にしてご自身で案を作ることも可能ですが、弁護士などの専門家に頼んだ方が良いでしょう。
ただし、弁護士に依頼した場合には費用がかかることになるので、この点はご自身の判断になります。
9.裁判所での手続き
相手方との話し合いで解決ができなかった場合には、調停を申立てて、家庭裁判所で話し合いをすることになります。
それでも離婚に応じてくれない場合は、離婚裁判をすることもできます。
(1)離婚調停
離婚調停の申立先は、相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者(夫婦)が合意で定める家庭裁判所になります。
申立書は裁判所に備え付けられているし、インターネットで裁判所のHPからダウンロードすることも可能です。
申立書ができたら、収入印紙や郵便切手、添付書類とともに家庭裁判所に提出することになります。
戸籍謄本は必ず必要ですが、事案によって必要書類が異なるため詳しくは家庭裁判所に問い合わせてみることをお勧めします。
(2)離婚訴訟
離婚訴訟は、原則として調停を経なければ提起することができません。
これを調停前置主義といいます。
そのため、調停が不成立となった後に、訴状を提出して訴えを提起することになります。
訴訟の申立てにも、郵便切手や収入印紙が必要になります。
しかし、訴状の作成は素人ではなかなか難しいため専門家である弁護士に依頼することを勧めます。
10.手当や再就職について
離婚の時に養育費等が貰えるからと言って、離婚後シングルマザーとなることには大きな不安があるはずです。
しかし、最近では母子家庭に対する手当が充実しています。
以下で詳しくみてみましょう。
(1)生活保護
憲法で保障された健康で文化的な最低限度の生活を送るために支給されるお金のことです。
相談・申請先は住んでいる地域を管轄する福祉事務所の生活保護担当になります。
(2)児童手当
0歳から中学卒業までの児童を持つ家庭に支払われる手当のことです。
3歳未満の子は月額1万円、3歳以上だと第1子と第2子は月額5千円、第3子以降は月額1万円が支給されます。
各市区町村の役所から申請することができます。
(3)児童扶養手当
離婚などの理由によって父母のいずれかからしか養育を受けられない子供に対して支払われると手当です。
各市区町村の役所が申請先になっています。
受給者の所得や児童の人数によって支払われる手当の金額が変わるため、お問い合わせください。
(4)児童育成手当
18歳の3月31日までの子供を養育する一人親を対象とする手当のことです。
児童一人に対して、月額13,500円が支払われます。
ただし、一定の所得を超える場合には支払われません。
(5)母子家庭の住宅手当
20歳未満の子供を養育している母子家庭で、1万円以上の家賃がある場合に支払われる手当です。
申請先は各市区町村の役所です。
(6)その他
その他にも、医療費の助成、年金や保険、税金の控除、公共交通機関の割引制度などもあるため、一度調べたり問い合わせしてみると良いでしょう。
なお、最近では母子家庭の母親を、経済的な自立の支援として正社員雇用することで、事業主に対して支給される助成金の制度もあります。
よって母子家庭の母親を雇用することに積極的な企業も増えてきています。
専業主婦の離婚に関するまとめ
今回は専業主婦の離婚について説明しましたが、いかがでしょうか。
今回の話を参考にして、自己に不利な離婚にならないよう事前に準備をされるにあたり、ご参考になれば幸いです。