遺留分とは? 相続に備えて知っておきたい6つのこと

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誰もが一生のうちで一度は経験するのが相続です。
相続に際して、被相続人が特に遺言等を残さずに死亡した場合には、被相続人に属していた財産は民法の規定に従って、相続人に分けられることになります。

しかし、被相続人は遺言によって、自己の財産のうち何を誰にどの程度あげるということを自由に決めることができます。
そのため、たとえ相続人であっても相続財産を一切もらえなくなってしまう者も出てきそうですが、この場合であっても一定の相続人は自己の「遺留分」に基づいて相続財産を享受することができます。

そこで、今回は遺留分について説明したいと思します。ご参考になれば幸いです。

なお、今回の話はやや抽象的で分かりづらいことから、適宜具体的に説明していきます。
そして、その際に登場することとなる人物関係は、父(被相続人とする)を「甲」とし、母及び2人の子供を相続人とし、それぞれ「乙」、「丙」、「丁」とすることとし、甲が自らの財産を全て丁に相続させるとの内容の遺言があったものとして話を進めます。

1、遺留分とは?

まずは、遺留分について説明していきます。

遺留分とは、一定の相続人に対して留保された相続財産の割合のことを言います。
簡単に言えば、一定の相続人に認められた遺言によっても犯せない利益のことです。

冒頭で述べた通り、たとえ被相続人が遺言によって相続人の誰かに全ての相続財産を相続させるとしても、相続人である限り、相続財産について一定の割合をもらうことができます。
これが、遺留分制度です。
この遺留分制度は、相続人の生活保障・財産の公平な分担という考え方に基づいているのです。

2、遺留分の割合って?

(1)遺留分があるのは誰?

前述のように、遺留分は一定の相続人について認められていますが、一定の相続人とはどのような者をいうのでしょうか。
遺留分権を有する相続人を遺留分権利者と言いますが、以下の者が遺留分権利者にあたります。

  • 被相続人の配偶者
  • 被相続人の子供
  • 被相続人の両親など(場合によっては、祖父母、はたまた曽祖父母)

なお、もし子供が既に亡くなっていた場合には、その子供、つまり孫も遺留分を同じ割合で有します。

(2)遺留分の割合はどうやって決まっている?

では、遺留分の割合は具体的にどのように定められているのでしょうか。
民法には、以下の通り定められています。

  1. 基本的には被相続人の財産の2分の1
  2. ただし、相続人が被相続人の両親の場合(場合によっては、祖父母、はたまた曽祖父母)には、被相続人の財産の3分の1

そして、注意しなければならないのは各相続人の具体的な遺留分は、上記遺留分割合に対してそれぞれの相続分を乗じたものとなります。

今回の事例でいえば、相続人は、乙・丙・丁であり、

  • 乙の遺留分は相続財産の4分の1(1/2×1/2)
  • 丙の遺留分は相続財産の8分の1(1/4×1/2)

ということになります。

3、遺留分額の算定方法は?

(1)遺留分の計算方法は?

では、具体的な遺留分額はどのように算定するのでしょうか。
まずは、遺留分算定の基礎となる財産額を以下の計算式に則って算出することになります。

財産額=被相続人が死亡時に有していた財産+贈与財産の価額-被相続人の借金の金額

なお、贈与とは、財産を一方的にあげることをいい、上記計算式の贈与財産は以下の3つの合計になります。

  • 死亡前の1年間にされた贈与
  • 遺留分を有する者に損害を加えることを知って行った贈与
  • 贈与ではなく財産を渡して得るものがあるが、得たものが渡した財産に比較して明らかに低額であるもの

(2)遺留分の金額はどのくらい?

抽象的に説明しても分かりにくいため、具体的に考えてみましょう。

そこで、今回の事例をもとに、甲が死亡時に有していた財産が1億円で、甲が死亡する半年前に丁に1,000万円を贈与し、さらに借金が3,000万円あったとします。
この時に、丙が有する遺留分について以下で考えてみましょう。

①遺留分算定の基礎となる財産額は?

まずは、遺留分算定の基礎となる財産額を計算することになります。そうすると、

1億円+1,000万円-3,000万円=8,000万円

となります。

②個別的遺留分は?

そして、個別的遺留分については、前述のように8分の1であるため、

8,000万円×1/8=1,000万円

よって、1,000万円が遺留分額となります。

4、遺留分減殺請求の方法

では、実際に遺留分をもらうためにはどのようにしたらよいのでしょうか。
裁判を経る必要があるのでしょうか。

遺留分をもらう権利を遺留分減殺請求権と言いますが、この請求をするためには必ずしも裁判を経る必要はなく、遺留分減殺請求の意思表示をすれば良いのです。
なお、意思表示とは一定の法律効果の発生を意図する「意思」を表示する行為のことを言います。

そして、遺留分減殺請求の意思表示は、具体的には内容証明郵便を送るのが一般的です。

先程の場合であれば、以下のような内容証明郵便となります。

スクリーンショット 2014-11-19 08.13.39

なお、内容証明のテンプレートを用意したので、ぜひ活用してください。

遺留分減殺請求の通知書のテンプレートはこちら

5、遺留分減殺請求の効果

では、次に遺留分減殺請求の効果を見ていきましょう。

(1)内容証明郵便を送るとどうなる?

内容証明郵便を相手方に送り、遺留分減殺請求権を行使すると、遺贈は遺留分を侵害する限度で失効することになります。

先程の事例に即して言えば、受遺者たる丁が取得した権利は、その限度で当然に減殺請求をした遺留分権利者たる丙に帰属することになります。
なお、この場合における当該権利の帰属状態は、共有状態として扱われます。

しかし、これはあくまで観念的な話であるため、その後は、話し合いや場合によっては調停や訴訟で遺留分に見合う財産を現実に取り戻す必要があります。

(2)取戻し方法

相続財産が現金だけならば話はそこまで難しくないです。
先程の事例に即して言えば、丙は丁から1,000万円を受け取ればいいだけなので、話し合いで解決できる可能性が高いといえます。

しかし、相続財産が不動産である場合には、話が難しくなります。
遺留分減殺請求によって共有状態になった物は、共有物分割の手続きをしなければなりません。
合意によって分割することができればよいですが、不動産はそう簡単には分割できません。

まして不動産が建物であった場合には、物理的に分割することは難しいでしょう。
確かに、当該不動産を売ってお金に替えて分けるという手段もありますが、不動産に思い入れのある相続人がいれば売却するのも難しくなります。

そこで、他に採り得る手段としては価額弁償という方法があります。

これは、例えば、共有物を一人の共有者の単独所有にする代わりに、他の共有者には共有持分相当分の金銭を支払って、共有物を分割することをいいます。

(3)話し合いで解決ができない場合

話し合いで解決できない場合は、いきなり訴訟はできないため、まずは家庭裁判所に調停を申立てる必要があります。

しかし、調停はあくまで話し合いの手続きであるため、お互いの合意が形成できなければ調停は不成立となってしまします。
その時には、訴訟で解決することになります。

なお、当事者間だけでの話し合いをせずに、いきなり家庭裁判所に調停を申立てることは可能ですが、調停を申立てただけでは相手方に対する意思表示にならないことには注意が必要です。

そのため、調停の申立てとは別に、内容証明郵便等によって意思表示を行う必要があります。

6、その他注意点

(1)遺留分請求はいつまでもできる?

遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年で時効により消滅してしまいます。

また、相続開始時、つまり被相続人が死亡した時から10年を経過しても時効によって消滅します。

そのため、なるべく早く権利を行使することをお勧めします。

(2)遺留分を被相続人が死亡する前に放棄することは可能?

例えば、長男だけに財産を残す場合などに、長男以外の相続人が遺留分を放り出す場合もあります。

しかし、遺留分を放り出すことを無制限に認めてしまうと、親の権威で相続人自身の意思を無理やり取上げる結果になってしまうため、受け継ぐ前の放棄について、家庭裁判所の許可が必要となっています。

他方、相続開始後は、家庭裁判所の許可なく自由に放棄することができます。

まとめ

今回は、遺留分について説明しましたがいかがでしょうか。今回の話が参考になれば幸いです。

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