後遺障害の認定の可能性があるような障害を負ってしまうことは、肉体的にはもちろん精神的にも大きな負担ではないでしょうか。
今回は以下の目次の通り、後遺障害12級の認定を受けるために参考になる情報を書かせていただきました。
ショックはゼロにはならないと思いますが、少しでも精神的な負担が和らぐことに繋がれば幸いです。
- 交通事故
- 過払い
- 離婚問題
- 刑事事件
- 企業法務
- 遺産相続
- 労働問題
- B型肝炎
ホウツウがオススメする法律事務所が安心!
目次
1.後遺障害について
(1)後遺障害とは?
そもそも後遺障害とは何のことでしょう。
後遺障害とは、交通事故で受けた傷害が限界まで治癒した状態で身体に残された精神的、肉体的な毀損状態のことです。
交通事故では「身体のしびれが残ってしまう」といった、急性的な症状が治った後も、症状が残ってしまうことがあります。
以上が後遺症に該当する状態です。
そして、後遺症のうち、自動車損害賠償保障法(自賠法)施行令第2条並びに別表第1及び別表第2に定める等級に該当するものを、一般に「後遺障害」といいます。
(2)後遺障害等級認定とは?
次に、後遺障害等級の認定とは何のことでしょうか?
後遺障害等級認定とは、難しくいうと「被害者又は加害者側の請求に基づき、加害者側自賠責保険会社の依頼によって、損害保険料率算出機構という組織が、被害者の症状固定時に残存した症状を自賠責法に定められた等級(1~14級。数字が小さいほど重度)のいずれかに認定すること」をいいます。
つまり、後遺症を負った場合に、「あらかじめ決められた等級に該当する」という認定を受けることを後遺障害等級認定をいいます。
(3)なぜ後遺障害等級認定を受ける必要があるのでしょうか
後遺障害について、自賠責保険からの保険金等を受け取るためには、後遺障害の等級認定というものを受けなくてはいけません。
ちなみに、例えばむち打ちの場合、基本的には14級9号「局部に神経症状を残すもの」が認定されることが多いです。
ただ、ひどい場合は、12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」と認定される可能性があります。
2.後遺障害等級12級の認定を受けられる場合は?
(1)どのような場合に受けられるのか
次に、具体的に後遺障害等級12級の認定を受けられる場合としては以下の通りです。
- 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
- 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
- 七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
- 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
- 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
- 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
- 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
- 長管骨に変形を残すもの
- 一手のこ指を失つたもの
- 一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
- 一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの
- 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
- 局部に頑固な神経症状を残すもの(※)
- 外貌に醜状を残すもの
(2)「局部に頑固な神経症状を残すもの(12級13号)」とは?
例えばむちうちの場合で「局部に頑固な神経症状を残すもの」とは、被害者本人がむち打ちと訴える症状のうち、「症状が神経学的検査結果や画像所見などの他覚的所見により、医学的に証明できるもの」のことをいいます。
具体的には、症状が重篤で、そのことが
- MRIなどの画像所見
- 関節可動域測定などの神経学的検査の結果
等、「他覚的所見」によって、医学的に証明される場合をいいます。
(3)むち打ちで14級に該当する場合と12級に該当する場合の違いは?
このような12級の場合と比較して、14級の場合のむち打ち「局部に神経症状を残すもの」の内容は以下の通り、
- 被害者本人に自覚症状あり
- 被害者意識の誇張ではなく
- 医学的にも説明がつく症状
- 事故態様が当該症状を発生する程度
- 事故当初から病院への通院を継続している
- 事故当初からの症状の訴えが、連続・一貫している
- 症状がそれなりに重くて、常に発症しているような状態
であれば、おおよそ認められます。
(4)13号以外の12級の障害の内容について
次に、13号以外の12級の障害について説明します。
①眼の障害(1・2号)
外傷によって瞳孔が開いたままになって、片眼が光に対して反応出来なくなった場合のことをいいます。
②歯の障害(2号)
7本以上の歯を補てつ(歯が欠けたり、なくなった場合にクラウンや入れ歯などの人工物で補うこと)した場合のことをいいます。
③耳の障害(3号)
耳の軟骨部が半分以上無くなった場合のことをいいます。
④脊柱・体幹骨障害(5・8号)
鎖骨が奇形になってしまった場合のことをいいます。
⑤上肢の欠損・運動障害(6・9・10号)
肩関節の可動領域が4分の3以下になってしまった場合などのことをいいます。
⑥下肢の欠損・運動障害(7・11・12号)
股関節の可動領域が4分の3以下になったときなどのことをいいます。
⑦醜状障害(14号)
他人から見て醜いと思わせてしまう程度の外見になってしまった場合のことです。
3.後遺障害等級12級認定の場合に獲得できる損害賠償額について
いよいよ、後遺障害12級が認定された場合に獲得できる損害賠償額について説明します。
(1)交通事故に遭った場合に損害賠償として請求できるものは?
交通事故に遭った場合に損害賠償として請求できるもので主なものは以下の通りです。
- 12級に相当する慰謝料
- 12級に該当する障害によって失われた労働能力分の逸失利益(得られたはずの利益)
(2)慰謝料について
①慰謝料とは?
この場合の慰謝料とは、「交通事故で後遺障害を受けた時に生じた精神的なダメージに対しての賠償」を指します。
例えば、後遺障害12級に認定をされると、加害者側の自賠責保険から損害賠償として93万円の支払いをもらうことが可能。
②交通事故の慰謝料に関係する3つの基準があります
交通事故の慰謝料に関係する基準は以下の3種類があります。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 裁判所基準(弁護士基準)
③裁判所基準(弁護士基準)に基づいた後遺障害12級の慰謝料は?
弁護士が損害賠償請求したり、保険会社と示談交渉する際は基本的に裁判所基準を利用することになります。
後遺障害12級の慰謝料が裁判所基準で認められると290万円の慰謝料をもらえることになります。
(3)逸失利益について
①逸失利益とは
次に逸失利益についてです。
以下の図のとおり、各等級別に労働能力喪失率、つまり、健康体のときに比べて稼げなくなる割合が定められています。
例えば12級に認定されると、14%の労働能力喪失が認定されます。
これはつまり、健康体のときに比べて、14%稼げなくなったということを意味します。
だから、労働能力喪失期間(12級の場合、10年以下とされることが多い)分の逸失利益が認められます。
②労働能力喪失率の表について
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
第1級 | 100/100 |
第2級 | 100/100 |
第3級 | 100/100 |
第4級 | 92/100 |
第5級 | 79/100 |
第6級 | 67/100 |
第7級 | 56/100 |
第8級 | 45/100 |
第9級 | 35/100 |
第10級 | 27/100 |
第11級 | 20/100 |
第12級 | 14/100 |
第13級 | 9/100 |
第14級 | 5/100 |
③逸失利益の計算方法
逸失利益の計算式は以下の通りです。
逸失利益=年収×労働能力喪失率×10年のライプニッツ係数
④逸失利益の計算事例
年収600万円で12級の後遺障害等級認定を受けた場合の逸失利益は以下の通り「648万6228円」になります。
年収600万円×労働能力喪失率14%×10年のライプニッツ係数7.7217=648万6228円
4、後遺障害等級認定を受ける方法
次にどうすれば後遺障害等級認定を受けることができるかについて説明します。
(1)後遺障害等級認定の方法は2種類があります
以下の2種類があります。
①事前認定
②被害者請求
上記①〜②について具体的には以下の通りです。
①事前認定
事前認定とは、加害者側の任意保険会社を経由して申請する方法の事をいいます。
交通事故だと、相手方の任意保険会社の方で担当者を選任して被害者に対して適切な対応を行います。
この担当者等を通じて、後遺障害等級の認定申請をすることになります。
事前認定のメリットとしては、被害者がやるべき事が後遺障害診断書を送るだけなので、手続が楽です。
②被害者請求
それとは別に被害者請求とは、被害者が直接自賠責保険会社に対し、後遺障害等級認定の届け出をすることです。
こちらの方法は、必要書類を自ら揃える必要があるため手続きが手間だが、等級が認定された時点で等級に対応する自賠責保険金の支払いを受けられるといった点で、手続きが速く進むという良さがあります。
相手方の任意保険会社は、必ずしも被害者にとって条件の良い書類のみを調査事務所に提出しているわけではないので、より適正な後遺障害等級の認定を求めるならば、被害者請求を行った方が良い場合があります。
(2)後遺障害等級認定を受けるために重要なのは「後遺障害診断書」
上記いずれの方法を利用するにせよ、認定の要となる書面は「後遺障害診断書」だよ。
後遺障害診断書とは後遺障害等級認定の申し込みの時に必須となる書面です。
書式用紙は保険会社からもらう事が可能です。
具滝的に記載される内容は以下の通りです。
- 症状固定日
- 総通院期間及び総入院期間
- 実通院日数
- 自覚症状
- 各部位の後遺障害の内容
- 傷害内容の増悪・緩解の見通し
(3)「後遺障害診断書」を作成するのは誰?
後遺障害診断書は交通事故の被害者が作成する必要はなく、あくまで医師が作成してくれます(あくまで医師のみで整骨院や治療院では書いてもらえないから注意が必要)。
(4)医師に後遺障害診断書を作成してもらう上での注意点
後遺障害診断書の記載事項の一つの自覚症状は、後遺障害等級認定の可否を判断する上で重要なポイントなので、症状を正確に伝えることが大切になります。
ただ単に身体が痛い、というのではなくて、「首の付け根が痛む」など、部位や症状を詳細かつ正確に伝えましょう。
また、常に痛みがある中で、寒さで痛みが増すときに「寒いと痛むんです」と言うと、あたかも寒いときだけ痛むような記載になってしまうことがあります。
だから、「寒いと痛みが増す」などと、正確な表現を心がける必要があります。
5.交通事故に遭ってしまった場合に弁護士に依頼すべきか?
最後に、交通事故に遭った場合に弁護士に依頼すべきかについて書かせていただきます。
書く内容はメリット&デメリットについて書いていきますので、皆様のご参考になれば幸いです。
(1)弁護士に依頼するメリット
①手間な書面の準備をしなくて済む
自賠責の被害者請求をする時、もし個人で行うのであれば、書面等の準備に手間暇がかかってしまいます。
弁護士に依頼するとがほとんど全ての作業を、弁護士が代わりに行ってくれます。
②裁判所基準で和解交渉と裁判をしてくれます
加害者(又は加害者側の保険会社)との交渉や訴訟の提起も、弁護士が代理でやってくれます。
特に交通事故は、任意保険会社の基準と裁判所の基準で賠償額が異なるから、その意味で弁護士に依頼するメリットは大きいです。
(2)弁護士に依頼するデメリット
一方で弁護士に依頼するデメリットもあります。それは弁護士費用です。
①弁護士特約が付いている場合
被害者が自分の車に任意保険をかけている場合、弁護士特約が付いている可能性があります。
弁護士特約とは、保険会社が弁護士を雇う時にかかる費用を負担してくれる特約ですので、弁護士費用については基本的に考える必要はありません。
弁護士特約が付いている場合、デメリットはないと言ってよいです。
②弁護士特約が付いていない場合
弁護士費用は各法律事務所や各弁護士によって異なるが、例えば後遺障害等級12級の認定に基づいて、290万円の賠償請求を依頼するとします。
公式には無効にされた弁護士会の報酬規程(しかし、今でも多くの弁護士が目安にしている)によれば、300万円以下の訴訟事件着手金(依頼時に支払う金額)は請求額の8%、報酬金(事件が解決した時に支払う金額)は獲得した額の16%なので、着手金が23万2000円、報酬金が46万4000円になります(何れも税抜)。この場合、合計で69万6000円です。
最近では、弁護士費用は安くなってきていますから相場はこれより数万円〜十数万円安いのではないでしょうか。
着手金無料という場合もあるし、まずは見積もりを出してもらうといいでしょう。
(3)弁護士なら誰でもいい?
最後に、弁護士ならば誰でもいいかといいますと、そうとも限りません。
例えばお医者さんなら、「内科」や「外科」、「耳鼻科」や「皮膚科」など、専門が分かれています。
弁護士も似たようなところがあり、得意分野がそれぞれあります。
なので、交通事故に強い弁護士を探した方がいいです。
下記は当サイトが推薦する交通事故に強い弁護士一覧となっています。
お住いの都道府県を指定して探してみてはいかがでしょうか?
まとめ
今回は後遺障害等級12級について説明いたしましたがいかがだったでしょうか。
交通事故の際にみなさまの一助になれば幸いです。