自転車と車との事故で被害者になった際の慰謝料計算方法と示談の進め方

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自転車は、子どもから大人まで乗ることができる便利なツールです。

それだけに車社会の今日、車と自転車の交通事故が増え問題になっています。

自転車で交通事故被害に遭った場合、保険会社との対応をどうしたらいいのか慰謝料はどのくらい認められるのかなど、車同士の事故以上に悩まれる方もいるのではないでしょうか。

今回は、自転車で交通事故の被害に遭った場合の慰謝料の計算方法や示談をどうやってすすめたらいいかについてご説明します。

1.自転車事故で慰謝料が認められるか


自転車で交通事故被害に巻き込まれてしまった場合でも、車対車の交通事故の場合と同じように、加害者に慰謝料などの損害賠償を請求することができます。

請求できる損害賠償の種類も自動車事故の場合とほとんど変わりません。

損害賠償の金額も自動車事故の場合と同様に、自動車の所有者や運転手に加入が義務付けられている自賠責保険による「自賠責基準」、任意保険による「任意保険基準」、裁判になった場合に認められうる「裁判所基準」という3つの基準に基づいて算定されます。

自転車だからといって自動車事故より慰謝料の金額が少なく算定されるといったこともありません。

ただし、自転車で交通事故に遭った場合、車同士の交通事故と異なり、過失割合の認定が難しかったり、示談交渉が難航しやすいといった特徴があります。

2.自転車事故で請求できる3つの慰謝料と目安とは

1)入通院慰謝料

①入通院慰謝料とは

入通院慰謝料とは、自転車で交通事故被害に遭い、ケガなどをした被害者が入院したり通院するために病院に通わざるを得なくなったために生じる、精神的な苦痛に対する慰謝料をいいます。

②入通院慰謝料の目安

入通院慰謝料の金額は、原則として入院や通院をした日数などをベースに算定します。

具体的な例としては、次のような金額が目安となります。

入通院期間 自賠責基準 裁判所基準
入院1ヶ月、通院3カ月(入院30日、実通院日数30日) 504,000円 1,150,000円
入院1ヶ月、通院6カ月(入院30日、実通院日数60日) 756,000円 1,490,000円
通院3カ月(実通院日数30日) 252,000円 730,000円
通院6カ月(実通院日数60日) 504,000円 1,160,000円

2)後遺障害慰謝料

①後遺障害慰謝料とは

後遺障害慰謝料とは、自転車で交通事故被害にあって後遺症が残り、その後遺症が一定の症状にあたるとして「後遺障害等級」の認定を受けた場合に、その等級に応じて支払われる慰謝料をいいます。

単に「後遺症が残った」というだけでは認められず、後遺障害等級認定の申請を行い、医師の診断と第三者機関の判断によって、重い1級から軽い14級までのいずれかの等級にあたると認定されなければ、慰謝料の対象にならないので注意が必要です。

②後遺障害慰謝料の目安

後遺障害慰謝料は、等級に応じて金額が決められています。

具体的には、以下のようになりますので、症状の例と合わせて一読してみてください。

等級 症状例 自賠責基準 裁判所基準
1級 両眼失明、咀嚼や言語機能の廃止、両上肢や両下肢機能の全廃など 1,100万円 2,800万円
2級 片目失明し他の視力も0.02以下、両上肢の手関節以上の喪失、両下肢の足関節以上の喪失など 958万円 2,370万円
3級 神経系統の機能又は精神、胸腹部臓器の機能に著しい障害が残り一生働けない、両手指喪失など 829万円 1,990万円
4級 咀嚼及び言語の機能に著しい障害、聴力喪失、片手の肘関節以上の喪失、片脚の膝関節以上の喪失など 712万円 1,670万円
5級 神経系統の機能又は精神、胸腹部臓器の機能に著しい障害が残り簡単な仕事しかできないなど 599万円 1,400万円
6級 両眼の視力が0.01以下、脊柱に著しい変形又は運動障害の残存、片手指の全部または4本喪失など 498万円 1,180万円
7級 両耳聴力が40cm以上の距離では聞こえない、両足足指全部の機能喪失、女子の外貌に著しい醜状など 409万円 1,000万円
8級 片目失明又は視力0.02以下、脊柱の運動障害、片脚が5cm以上短縮、片脚足指全部喪失など 324万円 830万円
9級 両目瞼に著しい欠損、鼻の欠損と著しい機能障害、片耳の聴力完全喪失、生殖器の著しい障害など 245万円 690万円
10級 片目の資力が0.1以下、片脚が3cm以上短縮、歯が14本以上欠損喪失など 187万円 550万円
11級 両目に著しい調整障害、脊柱変形、胸腹部臓器の機能に障害が残り仕事に相当支障が出るなど 135万円 420万円
12級 局部に頑固な神経症状、男子の外貌に著しい醜状、女子の外貌醜状、長管骨変形など 93万円 290万円
13級 片目の視力が0.6以下、胸腹部臓器の機能障害、片脚が1cm以上短縮、歯が5本欠損喪失など 57万円 180万円
14級 局部の神経痛、男子の外貌醜状、腕や脚の見える位置に掌サイズの跡、歯が3本欠損喪失など 32万円 110万円

3)死亡慰謝料

①死亡慰謝料とは

死亡慰謝料とは、自転車で交通事故に巻き込まれて被害者が亡くなった場合に、被害者本人と遺族に支払われる慰謝料をいいます。

被害者本人は死亡しているので被害者が有する慰謝料を請求する権利は、相続人に引き継がれるのが法律上のルールです。

②死亡慰謝料の目安

死亡慰謝料がいくらになるかという目安は、自賠責基準では一律にベースとなる金額が決められており、請求する遺族(被害者の父母、配偶者、子ども)の人数によって一定金額が加算されます。

裁判所基準の場合は、被害者が家族の中でどういう立場だったかによって違いがあります。

自賠責基準の死亡慰謝料
本人の慰謝料 350万円
請求権者1人の場合 本人分+550万円
請求権者2人の場合 本人分+650万円
請求権者3人以上の場合 本人分+750万円
被害者に被扶養者がいる場合 上記金額+200万円
裁判所基準の死亡慰謝料(遺族慰謝料を含む)
被害者が一家の支柱の場合 2,800万円
被害者が配偶者・母親の場合 2,500万円
その他(独身者、子ども、幼児など)の場合 2,000~2,500万円

3.自転車事故の慰謝料請求で気を付けるべき2つの問題点

1)自転車側に過失がある場合の慰謝料の計算方法

自転車で交通事故被害に遭った場合、必ずしも、上記のような慰謝料の目安の全額を請求できるとは限りません。

加害者である自動車の運転手だけでなく、自転車を運転していた被害者にも過失が認められることがあります。

このような場合は、上記のような慰謝料の目安をベースに、被害者の過失の大きさ(過失割合)が考慮されて、次のように慰謝料を計算することになります。

損害賠償額=【実際にかかった費用(積極損害)+将来的に得られなくなった費用(消極損害)+慰謝料】×相手側の過失割合

つまり、被害者である自転車側の過失割合が高くなるほど、相手側の過失割合は低くなるので、慰謝料などを含めてトータルで請求できる損害賠償の金額も少なくなるのです。

では、どういう場合に特に自転車の過失割合が問題になるのか見てみましょう。

2)自転車の過失割合が問題になるケース

自転車で被害に遭った場合を含め、交通事故の過失の程度や過失割合に応じた調整(過失相殺)については、過去の裁判例をもとに基準がまとめられています。

この基準をもとにすると、自転車事故の場合、「明らかな高速度進入」「酒気帯び運転」「無灯火」などの事情が、自転車側にあったかどうか、という点が考慮されることになります。

さらに、事故が「直前直後の横断」や「幹線道路」の事故だった場合には過失割合がプラスされ、反対に「住宅街・商店街等」の事故だったか「児童・老人等」だった場合には、過失割合がマイナスされることになります。

より具体的に、よく起こり得る、交差点での事故と巻込み事故のケースを見てみましょう。

①信号がある交差点で、自動車と自転車が直進して発生した事故

  • 自転車が青信号、自動車が赤信号の場合自転車:自動車=0:10
  • 自転車が赤信号、自動車が青信号の場合自転車:自動車=8:2
  • 自転車が赤信号、自動車が赤信号の場合自転車:自動車=3:7

こうした基本の過失割合に、夜間の場合は5パーセント、自転車側に著しい過失があった場合は5パーセント、自転車側に過失割合がプラスされることになります。

反対に、自転車を運転していた人が児童・老人の場合は5パーセント、自動車側に著しい過失があった場合は5~20パーセント、自転車側の過失割合がマイナスされるなど、調整が加えられることになります。

②自動車が自転車を巻込んで発生した事故

具体的には、交差点で左折する自動車が、自転車を巻込んで転倒させるなどのケースをイメージしていただければと思います。

この場合では、過失割合は、自転車:自動車=1:9とされるのが基本です。

この過失割合に、自転車に著しい過失があった場合はプラス5パーセント、自転車の運転者が児童・老人の場合は-5パーセント、自動車の合図がなかったり、大回りをした場合はマイナス10パーセント、などというように過失割合が調整されます。

このように、交通事故で自転車が被害に遭うケースでは、過失割合の認定は比較的自転車に有利になるように設定されています。

ただし、自転車も「車両」のひとつとして、道路交通法の適用をうけるので、無茶な運転をした場合には罰則の対象となることもあり得るので注意しましょう。

4.自転車事故の示談の流れと進め方


自転車で交通事故被害に遭った場合、相手方の保険会社と示談を進めていくことになります。

事故直後から順を追っていくと、次のような流れで示談に向けた対応をしていくことになります。

示談は、一度するとやり直しがきかないので、流れをしっかり踏まえて対応することが、適正な示談金を受け取るために重要になります。

1)事故直後に行うべきこと

自転車で交通事故被害に遭った場合、ご自身が無事なことが第一ですが、他に負傷者がいれば救護活動と警察への連絡を行いましょう。

また、状況を確認するために現場の写真を撮ったり、相手の連絡先を確認しておきましょう。
なお、事故直後に、加害者である自動車の運転手や、その保険会社が示談を持ちかけてくることが少なからずありますが、応じてはいけません。

きちんと症状を確定させたり、治療を受けなければ、適正な慰謝料が受け取れなくなる可能性があります。

2)治療を受ける際の注意点

自転車で交通事故被害に遭った場合は、まずはできるだけ早く病院で治療を受けましょう。

その際、健康保険を使って大丈夫です。

稀に、「交通事故では健康保険は使えず自由診療のみ」という病院もあるという話をききますが、それは自由診療の方が病院の利益が多いためです。

そのような不誠実な病院は変えることも検討して、安心して健康保険を使って構いません。
また、入院した日数や通院した日数が、後々の慰謝料の算定に大きく影響します。

自己判断で治療を辞めず、医師の指示に従って、最後まで治療を受けましょう。

3)症状固定・後遺障害認定の申請

自転車で交通事故にあってケガを負い、完治したり、治療を続けてもこれ以上の症状が改善することが見込めない状態に達することを症状固定といいます。

概ね、事故から6か月が症状固定に達する目安とされています。

治療を引き延ばすのは得策ではありませんが、もしまだ痛みが残るような場合は医師と相談しながら治療の継続を検討しましょう。
症状固定して後遺症が残った場合、医師の診断をもとに後遺障害の認定を申請します。

4)保険会社との示談交渉

症状固定して後遺障害の認定を受けると、保険会社との間で慰謝料がいくらになるかといった示談交渉がスタートするのが通常です。

示談に際しては、入通院等の治療に要した実費、事故で会社を休まざるを得なかった場合の休業損害、後遺障害による逸失利益や慰謝料を請求します。
保険会社が提示してくる保険金の金額は、本来裁判になれば認められるはずの金額より低いことが大半です。

納得いかない場合には、弁護士に相談して適正な損害賠償額の目安の提示を受けるなどして検討してみるとよいでしょう。

5)一度しかできない示談成立

保険会社は交渉のプロです。

そして、加害者の保険会社は加害者の味方であって、被害者側の立場ではありません。

金額に納得できない、保険会社との交渉に心身疲れたと言った場合は、弁護士に間に入ってもらい、交渉することをぜひ検討してみてください。

また、弁護士が交渉すれば、それだけで裁判所基準に近い金額まで増額されることもありますし、話し合いでは合意に達しない場合でも、ADRといった裁判外の和解に持ち込んで費用を抑えることもできます。

また、仮に裁判になったとしても、最終的に受け取る金額が当初の提示額よりかなり増えるケースもあります。

弁護士に頼むとなると、弁護士費用が心配という方も多いと思いますが、自転車事故でも、本人やご家族の任意保険に弁護士費用特約が付いていれば、契約内容によっては弁護士費用を保険金から賄って、実質無料で弁護士を頼めることもあります。

反対に、弁護士に頼んだら費用倒れになってしまってもいけないので、まずは弁護士に相談して、費用がどの程度かかるか、メリットはどの程度あるかなどをヒアリングして、信頼できる弁護士に依頼しましょう。

まとめ

いかがでしたか。

自転車で交通事故被害に遭った場合でも、自動車事故と変わらず、同様にきちんと補償をしてもらうことが可能です。

ただし、交渉のプロである保険会社との交渉は大変です。

特にご自身やご家族がケガをしたようなケースでは、治療への不安と、交渉の負担で、大きなストレスを抱えることにもなりかねません。

適正な金額の慰謝料を受け取るためにも、自転車で交通事故被害に巻き込まれてしまった場合には、交通事故に強い弁護士にまずは相談してみるとよいでしょう。

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