過去に国が実施した集団予防接種やツベルクリン反応検査を受けた場合、そのことが原因でB型肝炎に感染しているケースがあります。
この場合、国に対してB型肝炎の給付金を請求することができます。
B型肝炎給付金を申請するためには、たくさんの必要書類がありますが、その内容は、ケースごとに異なります。
B型肝炎給付金の対象者にはいくつかのパターンがあり、それぞれのケースによって必要となる書類も異なってくるからです。
B型肝炎給付金の対象者となっていても、具体的に必要な書類がないと請求手続きをとることができません。
そこで今回は、B型肝炎給付金申請のための必要書類について、それぞれのケースごとに解説します。
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1.B型肝炎給付金とは
B型肝炎給付金の必要書類を解説する前提として、簡単にB型肝炎の集団感染とその給付金について確認しておきましょう。
B型肝炎とは、HBVウイルスという肝炎ウイルスに感染することによって発症する肝炎です。
ウイルスが潜伏している状態では無症状ですが、発症すると肝臓ガンや肝硬変などの重大な病気につながります。
通常は、輸血や性交渉、母子感染などの感染経路をたどって感染します。
ところが、過去、昭和23年~昭和63年までに国が実施した子どもの集団予防接種時において、注射器をきちんと処理せずに使い回したことによって(このことを注射器の「連続使用」と言います)多くの子どもがB型肝炎に感染しました。
そのままその子ども達が成長してB型肝炎キャリアとなり、発症して亡くなった人もいますし肝炎の症状に苦しむ人もいます。
また、B型肝炎の母親が妊娠出産した場合、高い確率で乳幼児がB型肝炎に感染します。
乳幼児への感染率はほぼ100%ですし、その後その子どもがB型肝炎ウイルスキャリアとなる確率も90%以上と言われています。
そこで集団感染した母親から生まれた子ども達もB型肝炎に感染し、多くの二次感染者が生まれました。
このように、国の施策ミスによって、多くのB型肝炎患者が生み出されました。
そこで、国は、これらの患者に対して、その症状に応じて給付金を支給することとしました。
これがB型肝炎の給付金です。
B型肝炎給付金を請求するためには、たくさんの書類が必要となります。
必要書類の種類や内容は、B型肝炎の給付金対象者の種類によっても異なります。
2.B型肝炎の給付金対象者の種類
B型肝炎の給付金対象者には、いくつかパターンがあります。
B型肝炎の給付金請求の必要書類は、それぞれのB型肝炎の給付金対象者によって異なりますので、以下では、B型肝炎の給付金対象者とその要件について簡単に確認します。
(1)一次感染者
B型肝炎給付金対象者には、一次感染者が該当します。
一次感染者とは、幼少期に集団予防接種やツベルクリン反応検査を受けて、そこで直接B型肝炎に感染した人のことです。
この場合
- B型肝炎に持続感染していること
- 満7歳になるまでに集団予防接種等を受けていること
- 集団予防接種等において、注射器の連続使用があったこと
- 母子感染ではないこと
その他集団予防接種等以外の感染経路がないことの5つの要件を満たす必要がありますので、上記のそれぞれの要件を満たすための書類が必要になります。
(2)二次感染者
B型肝炎給付金の対象者には、二次感染者も該当します。
二次感染者とは、一次感染者を母親とする人のことで、母子感染した人です。
この場合には、
- 患者の母親が一次感染者の要件を満たすこと
- 患者本人が持続感染していること
- 母子感染であること
上記3つの要件を満たす必要があるので、そのことを示す書類が必要になります。
(3)相続人
B型肝炎の給付金は、一次感染者や二次感染者の相続人も請求することができます。
この場合、被相続人が一次感染者または二次感染者であること及び、当人が被相続人の相続人であることを証明するための書類が必要です。
3.B型肝炎給付金請求の必要書類
以下では、具体的に、上記の3つの給付金請求のケースでどのような書類が必要になるのかを解説します。
(1)一次感染者のケース
まずは、一次感染者が給付金を請求するための必要書類を見てみましょう。
①要件1「B型肝炎ウイルスに持続感染していること」
要件1の「B型肝炎ウイルスに持続感染していること」の証明が必要です。
給付金は、持続感染している人を給付の対象としているので、一過性の感染があっただけでは給付金の支給はありません。
持続感染していることの証明のためには、以下のⅰまたはⅱのいずれかの書類が必要です。
ⅰ. 6か月以上の間隔をあけた連続した2つの時点での、以下のいずれかの検査結果
- HBs抗原陽性
- HBV-DNA陽性
- HBe抗原陽性
ⅱ.HBc抗体陽性(高力価)
その他、医学的知見を前提とした個別の判断によって、B型肝炎ウイルスの持続感染が認められる場合もあります。
B型肝炎に感染しているかどうかを検査したい場合には、市町村で検診を受けたり、居住している都道府県の保健所で肝炎ウイルス検査を受けたりすると良いでしょう。
②要件2「満7歳になるまでに集団予防接種等を受けていること」
要件2の「満7歳になるまでに集団予防接種等を受けていること」の証明書類を解説します。
このことの証明のために、以下のⅰ.からⅲ.のいずれかの資料が必要になります。
ⅰ.母子健康手帳
ⅱ.予防接種台帳(市町村が保存している場合)
※ 各市区町村の予防接種大腸の保存状況については、厚生労働省ホームページで公表されています。
ⅲ .母子健康手帳または予防接種台帳を提出できない場合は、以下の書類が必要です。
- 母子健康手帳または予防接種台帳を提出できない事情を説明した陳述書(親、本人等が作成する)
- 接種痕が確認できる旨の医師の意見書(医療機関において作成する)
- 住民票または戸籍の附票(市区町村において発行してもらう)
③要件3「集団予防接種等における注射器の連続使用があったこと」
3つ目の要件である、集団予防接種等における注射器の連続使用があったことについての必要書類を見てみます。
B型肝炎訴訟では、昭和23年7月1日から昭和63年1月27日までの間に注射器の連続使用があったと考えるので、この期間に集団予防接種等を受けていれば、特段の事情がない限りは注射器の連続使用があったものと認められます。
このことは、母子健康手帳や予防接種台帳の記載から確認できます。
もし母子健康手帳や予防接種台帳がない場合には、昭和16年7月2日から昭和63年1月27日までの間に出生していることを確認するための資料が必要です。
この場合、満7歳になるまでの間に集団予防接種を受けたことが推認されるからです。
④要件4「母子感染でないこと」
要件4の母子感染でないことの証明書類を見てみましょう。
このことの証明資料としては、以下のⅰからⅲのいずれかの資料が必要です。
ⅰ.母親のHBs抗原が陰性かつHBc抗体が陰性(または低力価陽性)である検査結果
※ 母親が死亡している場合は、母親が80歳未満の時点のHBs抗原陰性の検査結果
のみで良い。80歳以上の時点の検査の場合は、HBc抗体も併せて確認することが必要となる。
ⅱ.年長のきょうだいのうち一人でも持続感染者でない者がいること(母親が死亡している場合に限る)
ⅲ.その他、医学的知見を踏まえた個別判断により、母子感染によるものではないことが認められる場合には、母子感染でないことを推認する。
⑤要件5「その他集団予防接種等以外の感染原因がないこと」
要件5の、その他集団予防接種等以外の感染原因がないことの証明資料を説明します。
この場合、以下の3つの書類が必要になります。
ⅰ.カルテ等の医療記録
集団予防接種等とは異なる原因が存在する疑いがないことを確認するためのものです。
カルテ等の医療記録については、以下の医療記録のうち現存するものが必要です。
- 直近の1年分の医療記録
- 持続感染の判明から1年分の医療記録
- 最初の発症から1年分の医療記録(発症者のみ)
- 入院歴がある場合には、入院中のすべての医療記録または退院時要約[サマリー]
ⅱ.父親がB型肝炎ウイルスの持続感染者である場合には、父親からの感染ではないことを証明するために、以下の書類が必要です。
患者と父親のB型肝炎ウイルスの塩基配列を比較した血液検査(HBV分子系統解析検査結果)
ⅲ.患者のB型肝炎ウイルスがジェノタイプAeではないことを証明する検査結果。ただし、ジェノタイプ検査は、成人期における感染でないことを証明するために必要なものなので、平成7年以前に持続感染が判明(初診)した場合には不要です。
(2)二次感染者のケース
次に、二次感染者がB型肝炎給付金を請求する場合の必要書類を解説します。
①要件1「患者の母親が一次感染者の要件を満たすこと」
要件1の、患者の母親が一次感染者の要件を満たすことの証明のためには、患者の母親が、一次感染者として認定される要件を全て満たしていることを証明できる資料((1)で説明したのと同じ資料)が必要になります。
②要件2「患者本人が持続感染していること」
要件2の、患者本人が持続感染していることの証明資料も必要です。
B型肝炎の給付金を受けるためには、母親がB型肝炎に感染しているだけではなく、対象者としての本人もB型肝炎に感染している必要があるからです。
そのためには、患者本人について、一次感染者と同じように、B型肝炎ウイルスに持続感染していることを示す資料が必要です。
確認方法は一次感染者と同様で、次のⅰまたはⅱのいずれかの書類が必要です。
ⅰ.6か月以上の間隔をあけた連続した2時点での、以下のいずれかの検査結果
- HBs抗原陽性
- HBV-DNA陽性
- HBe抗原陽性
ⅱ.HBc抗体陽性(高力価)
その他、医学的知見を前提とした個別の判断によって、B型肝炎ウイルスの持続感染が認められる場合もあります。
③要件3「母子感染であること」
要件3の母子感染であることの証明資料を確認します。
これについては、以下のⅰまたはⅱの資料が必要となります。
ⅰ.請求者が出生直後に既にB型肝炎ウイルスに持続感染していたことを示す資料
ⅱ.請求者と母親のB型肝炎ウイルスの塩基配列を比較した血液検査(HBV分子系統解析検査)結果
※ 上記ⅰ又はⅱの方法以外に、母子感染とは異なる原因の存在が確認されないことを立証する方法も認められています。
そのためには、以下の条件をすべて満たすことが必要です。
- 請求者の出生前、母親のHBe抗原が陰性であったことが確認されない
- 請求者が昭和60年12月31日以前に出生している
- 医療記録等に母子感染とは異なる原因の存在をうかがわせる具体的な記載がない
- 父親が持続感染者でないか、又は父親が持続感染者の場合であっても、請求者と父親のB型肝炎ウイルスの塩基配列が異なる
- 原告のB型肝炎ウイルスがジェノタイプAeではない
(3)相続人のケース
一次感染者や二次感染者の相続人が給付金を請求する場合でも、基本的に用意する書類は上記の(1)または(2)と同様です。
これに足して、戸籍謄本など、自分が一次感染者、二次感染者の相続人であることを証明できる資料の提出が必要になります。
(4)診断書について
B型肝炎訴訟では、病態によって受けられる給付金の金額が大きく異なります。
病態が重ければ重いほど給付金の金額は高くなりますし、病態が軽ければ給付金は低いです。
B型肝炎訴訟では、訴訟手続き内で病態についての判断をする必要がありますが、これについては、基本的には、上記の必要書類でご紹介したようなカルテや各種の検査結果などの医療記録にもとづいて行われます。
ただし、請求者が、定まった様式の診断書を医療機関に作成してもらって提出した場合には、その診断書を病態の判断のために用いることができます。
B型肝炎訴訟の病態判断のための診断書は、肝疾患診療連携拠点病院、肝疾患専門医療機関で作成してもらう必要があります。
それ以外の機関で診断書を作成してもらっても、B型肝炎訴訟には使えないので注意が必要です。
4.必要書類について、弁護士にアドバイスをもらうことも可能
B型肝炎の給付金を受け取るためには、いろいろな検査なども必要になりますし、古い書類や記録を調査して取り寄せないといけないので、必要書類を集めるだけでも一苦労です。
このようにして書類をそろえることができたら、今度は国を相手取って、B型肝炎訴訟を起こす必要があります。
B型肝炎の給付金は、単純に自治体などの窓口に請求したら受け取れるというものではないので、大変です。
B型肝炎の給付金請求をする場合、裁判所で訴訟手続きを利用しないといけないので、弁護士の力を借りると手続きがスムーズに進みます。
また、弁護士に相談するなら、必要書類を集める前に相談することをおすすめします。
自分一人では、どのような書類をどこで取り寄せれば良いのかわからないことがあります。
自分のケースでどのような検査が必要になるのか、書類がそろったとしても、本当にそれで足りているのかの判断もできません。
B型肝炎訴訟に精力的に取り組んでいる弁護士であれば、どのようなケースでどのような書類が必要になるのか、よく知っています。
また、書類の取り寄せ方法などについても詳しいですし、代わりに書類の収集手続きや各種の調査などをしてくれることもあります。
さらに、最近は多くの法律事務所でこれらの調査については無料で対応してくれます。
よって、必要書類を集める前に弁護士に相談に行って、必要書類の収集手続きから弁護士に手伝ってもらう方が、メリットがあります。
自分ではどのような必要書類をどこで集めればよいか判断できない場合や、B型肝炎訴訟について将来的に弁護士に依頼しようと考えているケースでは、必要書類の収集前の段階で弁護士に相談・依頼してしまう方が、結果的に手続き全体がスムーズに進みますし、手間もかけずに済みます。
5.必要書類は裁判で利用する
弁護士に依頼してB型肝炎訴訟を提起してもらったら、事前に集めておいた必要書類を裁判所に提出します。
集めた必要書類は、裁判の証拠となるのです。
このように、事前にしっかりと書類を集めておけば、裁判でもスムーズに給付金の受給権が認められて、早期に和解が成立して給付金を受け取ることができます。
もし必要書類がそろっていなければ裁判も長引きますし、その間追加で検査を受けたり資料を収集しないといけないので大変です。
裁判をスムーズにすすめて早期に給付金を受け取るためにも、事前の必要書類収集は重要です。
手間はかかりますが、後に裁判を有利にすすめるためには必須のステップですので、弁護士の力も借りながら、がんばって必要書類を集めましょう。
まとめ
今回は、B型肝炎の給付金請求に必要な書類について解説しました。
過去に国が実施した集団予防接種が原因でB型肝炎に感染した場合には、B型肝炎の給付金の請求ができます。
B型肝炎の給付金の支給対象者には、一次感染者と二次感染者、その相続人がいますが、それぞれについて必要書類があります。
必要書類の収集は大変ですが、その後に予定されているB型肝炎訴訟に必要な証拠となるので、がんばって集めましょう。
B型肝炎の必要書類は、弁護士にアドバイスをもらいながら進めるとスムーズで楽になります。
B型肝炎訴訟の依頼をするなら、必要書類を集める前に弁護士に相談して、その力を借りることがおすすめです。
今回の記事を参考にして、必要書類を上手に集めてB型肝炎給付金を請求しましょう。