B型肝炎訴訟とはどのようなものかご存じでしょうか?
集団予防接種等を原因にB型肝炎等の病気になってしまった場合に、国に対して裁判を起こし給付金をもらうための訴訟です。
しかし、実際に給付金を支給された方は実に少ないのが現状です。
その理由は、B型肝炎訴訟に関する情報が一般的に知られていないことにあります。
この記事では、B型肝炎訴訟について説明していきます。
ご参考になれば幸いです。
※この記事は2017年4月28日に加筆・修正しました。
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目次
1.B型肝炎訴訟とは?
(1)B型肝炎とは
そもそもB型肝炎とは、どのような病気のことを言うのでしょうか。
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染によって引き起こされる肝臓の病気です。
(2)B型肝炎訴訟を実際に提起できる人とは
B型肝炎に感染したからといって、誰でもB型肝炎訴訟ができるわけではありません。
そもそも「B型肝炎訴訟」とは、小さい頃に集団予防接種等をした時に注射器を連続使用されたことが原因でB型肝炎ウイルスに感染した人、またその人から母子感染された人に対して国が認め、それらの人々の相続人も含めて救済する制度です。
つまり、感染原因に該当しないと訴訟はできないのです。
(3)給付金支給の現状
給付金を受けるためには原則、訴訟を提起する必要があります。
しかし、B型肝炎といってもウイルスに感染する原因は様々で給付金を支給するかどうかを判断するには、国が本当に集団予防接種等で感染したのかを裁判で審議する必要があります。
ところが、国が注射器の連続使用による感染ではないことを証明することは難しいため、実際には給付金が支給されるケースが多いのが実情です。
実際に給付される額については病態によって異なりますが、以下の通り一番低い金額は50万円、一番高いのは3,600万円となります。
病態等 | 金額 |
死亡・肝がん・肝硬変(重度) | 3,600万円 |
20年の除斥期間が経過した死亡・肝がん・肝硬変(重度) | 900万円 |
肝硬変(軽度) | 2,500万円 |
20年の除斥期間が経過した肝硬変(軽度) | |
(1)現在、肝硬変(軽度)にり患している方 など | 600万円 |
(2)(1)以外の方 | 300万円 |
慢性B型肝炎 | 1,250万円 |
20年の除斥期間が経過した慢性B型肝炎 | |
(1)現在、慢性B型肝炎にり患している方 など | 300万円 |
(2)(1)以外の方 | 150万円 |
無症候性キャリア | 600万円 |
20年の除斥期間が経過した無症候性キャリア(特定無症候性持続感染者) | 50万円 |
出典:厚生労働省
なお、集団予防接種等による感染被害者は45万人程と推定されていますが、現時点で訴訟手続きをしたのは1万5千人程度であり非常に少ないです。
この仕組みは世間には広く知れ渡っておらず、自分自身がB型肝炎ウイルスに感染しているという自覚がない被害者の方も多くいるので、この制度を利用する人は少ないのです。
2.B型肝炎訴訟で給付金をもらう条件は?
B型肝炎訴訟を提起するには、どのような条件が必要なのでしょうか。
これは、訴訟を提起する対象者によって異なります。
(1)B型肝炎の給付金をもらえる対象者は?
対象者は以下のように、一次感染者と二次感染者があります。
①一次感染者とは
一次感染者とは、集団予防接種等でB型肝炎ウイルスに感染した人のことを言います。
②二次感染者とは
二次感染者とは、一次感染者である母親から母子感染で感染した人のことを言います。
以下、それぞれの条件について説明していきます。
(2)一次感染者が給付金をもらう条件
一次感染者が給付金をもらう条件は以下の通りです。
- B型肝炎ウイルスに持続感染していること
- 満7歳になるまでに集団予防接種等を受けていたこと
- 集団予防接種等における注射器が連続使用されたこと
- 母子感染でないこと
- その他集団予防接種等以外の感染原因がないこと
また、これらの条件を満たしている証明を提出する必要があります。
(3)二次感染者が給付金をもらう条件
二次感染者が給付金をもらう条件は以下の通りです。
- 二次感染者の母親が一次感染者の要件のすべてを満たすこと
- 二次感染者がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
- 母子感染であること
また、一次感染者と同様、上記条件を満たしている証明を提出する必要があります。
3.B型肝炎訴訟は弁護士に依頼しないとできない?
B型肝炎訴訟を提起する場合、弁護士に依頼する必要があるのでしょうか。
実は、個人でB型肝炎訴訟をすることは可能です。
ちなみに、弁護士に依頼するメリットとデメリットは以下の通りです。
(1)弁護士に依頼した場合のメリット
弁護士に依頼した場合のメリットとしては、自分では作成困難な裁判所に提出する書面作成や裁判所への出頭などをしてもらえることが挙げられます。
(2)弁護士に依頼した場合のデメリット
他方、デメリットとしては、弁護士費用がかかるということです。
4.B型肝炎訴訟の弁護士費用はどのくらいかかる?
では、弁護士に依頼した場合にかかる弁護士費用はどのくらいかかるのでしょうか。
弁護士費用は、2004年の1月から各弁護士事務所で自由に決めることができるようになったため、一律には決まっていません。
ただ、相場としては獲得した給付金の12%ほどです。
なお、B型肝炎訴訟の場合、国からの給付金とは別に、給付金額の4%が弁護士費用として補助してもらえるので、両方が負担する金額が軽減されます。
例:法律事務所の報酬額が給付金の12%の場合、自己負担額は8%です。
5.B型肝炎訴訟の進め方
(1)B型肝炎訴訟を提起する手順
次はB型肝炎訴訟を提起する手順について説明していきます。
具体的には以下の通りです。
①必要書類の準備
まずは、訴訟を提起するための必要な書類を用意する必要があります。
- 対象者が一次感染者の場合、肝炎の検査結果や、母子健康手帳、カルテなど
- 二次感染者の場合は、母親が一次感染していることを証明する証拠に加えて、自分の肝炎の検査結果など
なお、B型肝炎給付金請求の必要書類についてはこちらで詳しく解説しています。
②裁判所に提出
上記の書類の準備ができたら、次は裁判所に提出する訴状を作成して、書類と合わせて裁判所に提出します。
書類及び訴状を提出する裁判所は、集団予防接種等が行われた場所を管轄する地方裁判所又は東京地方裁判所になります。
(2)裁判にかかる費用
弁護士に依頼する場合の弁護士費用以外に、自分で訴訟をした場合にも大きく以下の2つの実費が発生します。
①印紙代
印紙代は、病状によって金額が異なるため、正確な金額は下記の表を参考にしてください。
病状 | 印紙の金額 |
死亡・肝がん・肝硬変(重度) | 12万8000円 |
肝硬変(軽度) | 9万5000円 |
慢性B型肝炎(発症後20年経過していない方) | 5万9000円 |
慢性B型肝炎(発症後20年経過、現在も慢性B型肝炎の状態にある方等) | 2万円 |
慢性B型肝炎(発症後20年経過、現在は治癒している方) | 1万3000円 |
無症候性キャリア(感染後20年経過していない方) | 3万4000円 |
無症候性キャリア(感染後20年経過した方) | 5000円~ |
②郵券代
印紙代に加えて郵券代が必要となります。
裁判所によって異なりますが、大体6,000円程度です。
6.B型肝炎訴訟の提訴から和解成立までにかかる期間は?
B型肝炎訴訟の裁判では、国との間で「予防接種等でB型肝炎に感染したのか否か」が争われるため、和解まで1年程だと言われています。
もっとも、早ければ半年程で終わる場合もあります。
ただ、最近は提訴件数が増えていることもあり、増加傾向だと言われています。
7.社会保険診療報酬支払基金からの入金で無事完了!
では、和解が成立した場合にはどのようにして給付金がもらえるのでしょうか。
給付金は、和解成立後に社会保険診療基金に必要書類を提出して指定の口座に振り込まれることになっています。
和解が成立したら、まずは下記の社会保険診療基金に直接連絡してみてください。
- 電話:フリーダイヤル 0120-918-027
- 受付時間:9時から17時まで(土曜日・日曜日・祝日及び年末年始(12月29日から1月3日)を除く。)
なお、弁護士に依頼した場合には、給付金は一旦依頼している弁護士事務所に入金され、そこから本人に戻されることになっているため、注意してください。
B型肝炎訴訟に関するまとめ
今回はB型肝炎訴訟について説明しましたが、いかがでしたでしょうか。
現状ではB型肝炎訴訟をするか悩まれる方々がとても多くなっています。
その理由として、給付金の請求は正当な権利にも関わらず、手続きが面倒かつ専門的な知識を要する為です。
今回説明したことがB型肝炎訴訟を進めるにあたっての参考になれば幸いです。