B型肝炎は、B型肝炎ウイルスに感染することで発症する病気です。
肝炎ウイルスの中でも、A型肝炎やE型肝炎は飲み物や食べ物を介して感染するものですが、B型肝炎ウイルスは人の血液や体液を介して感染します。
そのため、正しい知識を持たないと、いつの間にかB型肝炎ウイルスに感染していたり、感染したことに気付かずに家族やパートナーにも感染させてしまったりする事態も十分にありえます。
そこで今回は、性交渉でB型肝炎ウイルスが感染する可能性があるのか、感染する可能性があるとすればどのように予防すればいいのか、感染した場合にはどのように対処すればいいのかなどについて、詳しく解説したいと思います。
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目次
1.B型肝炎ウイルスはどのように感染するのか?
(1)以前の主な感染経路
以前は、母子感染と言って出産の際に母親から子どもに感染する事例がもっとも多く、それ以外には予防接種の際の注射器のつかいまわしや、医療機関における針刺し事故による感染などがありました。
しかしながら、今日では母親へのワクチンの接種など母子感染防止の対策がとられ、予防接種で注射器のつかいまわしもされなくなったことなどから、これらの原因によるB型肝炎ウイルスの感染の危険性はほぼなくなったとされています。
(2)最近の主な感染経路
母子感染等にかわる最近の主な感染経路としては、ピアスやタトゥーの器具の消毒が不十分であった場合、違法薬物の使用の際の注射器のつかいまわしなどのほか、性交渉による感染が考えられます。
これらのうち、ピアスやタトゥーについては、そもそもピアスもタトゥーもしないという方も大勢いらっしゃいますし、ピアスやタトゥーをしている方でもピアスの穴あけやタトゥーを彫る機会はそれほど頻繁にはないでしょうから、器具を適切に消毒することで感染を防止することができると考えられます。
したがって、現在、多くの人にとってもっともB型肝炎ウイルス感染の可能性が高い、あるいは感染する機会が多いのは、性交渉による感染といえるでしょう。
2.性交渉で感染する確率は?
それでは、性交渉によりB型肝炎ウイルスに感染する確率はどのぐらいあるのでしょうか。
B型肝炎ウイルス感染者と性交渉をした場合、概ね1~10%の確率で感染すると言われています。
ひとくちにB型肝炎感染者といっても、血液や体液の中に含まれるウイルスの量には大きな個人差があることや、目に見えない小さな傷があると感染する確率が高くなる(B型肝炎ウイルスは血液や組織液に多く含まれるため)ことなどが原因で、正確な数字を算出するのは困難であるため、このような幅のある数字になってしまうのです。
10%というと、見ず知らずの人と1度限りの性交渉で感染してもおかしくない確率ですから、決して軽く考えることはできません。
3.感染の予防法は?
それでは、性交渉による感染を防ぐには、どうすればいいのでしょうか。
主な予防法としては、次の3つが考えられます。
(1)素性のよくわからない人との性交渉は避ける
もっとも簡易な予防策としては、自ら危険には近づかないことがあげられます。
B型肝炎ウイルスは、感染していても自覚症状がない場合も多いため、素性のよくわからない人との性交渉、不特定多数の人との性交渉はできる限り避ける方がいいといえます。
(2)避妊具を着用する
避妊具を着用することで、ウイルスに感染する確率を大きく下げることができます。
肛門は粘膜が弱く傷つきやすいことから出血のおそれがあり、感染の危険が高いといえるので、妊娠の心配のないアナルセックスでも避妊具を着用するべきでしょう。
B型肝炎ウイルスは唾液にも含まれていますが、血液や組織液よりもウイルスの量が少ないため、普通のキス程度で感染する危険性はまずありません。
もっとも、濃厚なキスや、口の中に傷がある場合などは、感染の可能性がないとは言い切れません。
このようにみると、避妊具の着用だけでは100%感染を防ぐことまではできないといえます。
(3)B型肝炎ワクチンを接種する
もし特定のパートナーがいて、そのパートナーがB型肝炎ウイルスに感染していることが判明している方、あるいは不特定の人と性交渉をする機会が多いという方は、あらかじめB型肝炎ワクチンを接種しておくといいでしょう。
B型肝炎ワクチンは、年齢が低いうちに受けるほど効果が高く、逆に40歳を過ぎると免疫の生着率が約80%に低下すると言われています。
B型肝炎ワクチンは、副反応もほとんどないことから(痛みや腫れ、発熱などの副反応が出ることもありますが、数日で収まる程度のものです)、B型肝炎の安全な予防策と言えるでしょう。
なお、平成28年10月1日からB型肝炎ワクチンが定期接種化されました。
これにより、平成28年4月1日以降に生まれた赤ちゃんは無料でB型肝炎ワクチンを接種することができるようになりました。
それ以前に生まれた方は任意の接種のままですが、念のために接種する、あるいはお子さんに接種させておくことを検討するといいでしょう。
任意接種の場合、1回あたり5000円~8000円程度の費用がかかり、これを6ヶ月の間に3回受ける必要がありますので、参考にしてください。
4.万が一、感染してしまったら
(1)検査を受ける
成人の場合、B型肝炎ウイルスに感染しても、たいていは症状が出ることなくそのまま治ります。
しかしながら、一部の人は急性肝炎になり、数か月間の潜伏期間のあと、症状があらわれます。
最初は熱や全身のだるさなど風邪とよく似た症状があらわれ、しばらくその症状が続いた後、黄疸など風邪には見られない症状もあらわれるようになります。
初期の症状は風邪に似ているため、自分ではなかなかB型肝炎かもしれないという可能性に思い至らないと思いますが、上のような症状が出た場合で、去に素性のわからない人と性交渉をしたなど何らかの心当たりがあるときは、念のために医療機関でB型肝炎の検査(血液検査など)を受けることをお勧めします。
(2)B型肝炎の治療方法
急性肝炎の場合、通常は投薬は行われず、症状に応じて点滴で水分、栄養補給をする程度で、自然に治癒するのを待つことになります。
これに対し、症状が進んで劇症肝炎を発症した場合、抵ウイルス薬などの投与が行われます。
まとめ
以上、B型肝炎ウイルスと性交渉との関係や予防法、感染してしまった場合の対応などをご紹介しました。
B型肝炎は、肝硬変や肝がんの原因となる場合もありますので、今回の記事を参考に適切な予防策を講じていただければ幸いです。