日本人のおよそ3人に1人はがんで亡くなると言われており、その中でも肝がんが原因で亡くなる方が大勢いらっしゃいます。
その肝がんの原因の一つとして、B型、あるいはC型肝炎が挙げられます。
B型肝炎については、予防接種によりB型肝炎に感染した方などが国の責任を追及して集団訴訟を提起し、国との和解が成立したことで国による給付金支給の制度ができました。
一連の経緯が大きく報道されたので、耳にされた方も多いと思います。
しかしながら、B型肝炎はこの訴訟によって解決された過去の問題ではなく、現在でも新規の感染者がいる大変危険な病気です。
そこで今回は、B型肝炎の感染経路を詳しくご説明したいと思います。
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目次
1.B型肝炎の基礎知識
(1)B型肝炎とは何か?
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染することにより生じる肝臓の炎症のことをいいます。
日本におけるB型肝炎ウイルスの感染者感染者は約130~150万人といわれており、現在も年間1万人程度の新規感染者がいると言われています。
(2)感染するとどのような症状が出るのか?
乳幼児期にB型肝炎ウイルスに感染した場合、免疫機能が未発達であるためB型肝炎ウイルスを異物として認識できないことから免疫反応が起きません。
そのため、肝炎を起こすことはなく、無症候性キャリア(B型肝炎ウイルスに感染しているが免疫機能が働かないため体内にウイルスが残っている状態)となります。
無症候性キャリアのうち約90%の人は、成人になって免疫機能が発達すると、ウイルスを体内から除去しようとして肝炎を起こし、しばらく肝炎の症状が続いた後、肝炎沈静期へと移行します。
無症候性キャリアのうち残る約10%は、慢性肝炎(肝臓の炎症が6か月以上続く)に移行します。
肝炎が持続すると、肝臓の組織が線維化し、肝硬変や肝がんの原因となる可能性があります。
これに対して、成人になってB型肝炎ウイルスに感染すると、約70~80%の人は肝炎を発症せずに自然に治癒するのですが、残る約20~30%の人は急性肝炎を発症します。
急性肝炎を発症した場合、B型肝炎ウイルス感染から1~6ヶ月の潜伏期間を経て、全身の倦怠感(だるさ)、発熱、食欲不振、吐き気などの初期症状が出ます。
これだけですと風邪の症状と勘違いしてしまいがちですが、さらに症状が悪化すると、黄疸(おうだん、皮膚や白目が黄色くなる)や濃い褐色の尿が出るなど、外面にも特徴があらわれるようになります。
急性肝炎を発症した場合でも大半は2~3か月で治癒しますが、ごく一部の人は劇症肝炎に移行することがあります。
劇症肝炎は、急激に広範囲な肝臓壊死を起こし、肝機能が低下するもので、死亡の危険もあります。
2.B型肝炎の感染経路はどのようなものか
(1)垂直感染と水平感染の二つがある
B型肝炎は、感染している人の血液や体液を介して感染します。
B型肝炎ウイルスの感染経路は、B型肝炎ウイルスに感染している母親から子どもに感染するもの(垂直感染といいます)と、垂直感染以外の感染(水平感染といいます)に分けられます。
(2)垂直感染
垂直感染(母子感染ともいいます)は、B型肝炎に感染している母親が出産する際、子どもが産道を通るときに母親の血液を介して感染するというものです。
日本におけるB型肝炎ウイルス感染者の多くは垂直感染によるものといわれています。
しかしながら、1986年にHBV母子感染防止事業が始まり、妊娠がわかった段階でのB型肝炎ウイルスの検査、母子感染の可能性がある場合のワクチンの投与などが行われるようになったことで、現在では垂直感染の可能性はほとんどありません。
(3)水平感染
水平感染とは、垂直感染以外で、他者の血液や体液を介して感染することをいいます。
以前は予防接種の際の注射器の使い回しや針刺し事故、輸血による感染(輸血された血液にB型肝炎ウイルスが含まれていた場合)などがその原因といわれていましたが、医療機関の衛生管理や献血された血液の検査などが徹底されるようになったので、現在はこれらの医療機関における感染の可能性はほぼなくなりました。
現在、水平感染原因として考えられるのは、性行為による感染、医療機関以外の注射器の使い回し(違法薬物の使用など)、ピアスや刺青・タトゥーなどの器具の消毒が不十分であった場合などです。
これらのうち、特に多いのが性行為による感染です。
B型肝炎ウイルスは体液を介して感染するため、不特定多数の人との性行為はなるべく避ける方がよく、性行為をする場合には避妊具を着用するなどといった予防対策を心がける必要があります。
3.水平感染の具体的な例
次に、具体的にどのような行為でB型肝炎ウイルスに感染する可能性があるのか、あるいはどの程度の行為であれば感染のおそれはないのか、代表的な例をご紹介しましょう。
(1)感染者と一緒に食事をする
B型肝炎ウイルスは汗や唾液などの体液にも含まれます。
もっとも、同じ鍋や大皿料理を一緒に食べたり、飲み物を回し飲みしたりといった程度であれば、感染することはまずありません。
(2)感染者と握手、ハグをする
B型肝炎ウイルスは血液、体液を介して感染するものですが、通常、握手やハグでは相手の体液が体内に入ることは考えられないので、感染することはありません。
(3)感染者とキスをする
B型肝炎ウイルスは唾液にも含まれますが、ウイルスの量は血液などより少ないため、軽いキス程度であればまず感染するおそれはないと言われています。
(4)感染者と一緒に入浴する、同じ湯船につかる
B型肝炎ウイルスは汗などの体液にも含まれますが、一緒に入浴するとか、感染者の家族が使用した後の湯船につかるといった程度では感染することはないと言われています。
(5)感染者と歯ブラシやかみそりなどを共用する
歯ブラシやかみそりは血液が付着する可能性があります。
(3)でも触れたとおり、血液は唾液などと比べると含まれるウイルスの量が多いため、注意が必要です。
共用は避けた方がいいでしょう。
(6)性行為
B型肝炎ウイルスは精液や膣分泌液にも含まれているため、性行為により感染するおそれがあります。
ここでいう性行為は、セックスだけでなくオーラルセックス、アナルセックスなども含まれます。
まとめ
このように、ごく普通の日常生活を送るだけであれば、B型肝炎ウイルスに人から感染する可能性はほとんどありません。
また、感染の危険性のある性行為については、不特定多数の人との性行為を避ける、避妊具を着用する、特定のパートナーがB型肝炎に感染している場合にはあらかじめワクチンを接種しておくなど、ご自身で予防策を講じることが可能です。
これらの注意を守れば、知らない間にB型肝炎ウイルスに感染していたという事態を避けることができるでしょう。