自動車を運転する場合には、強制加入の自賠責保険以外に自分で任意保険に加入することが普通です。
自賠責保険だけでは保険金の限度額が低いので、賠償金額が高額になった場合には足りなくなるおそれがあるからです。
また、自賠責では相手方の人損しか保証されないので、物損や自分の側の損害は補填されません。
ただ、一口に任意保険とは言ってもその種類はさまざまです。
どの保険に加入するかによって、受けられる保障内容も異なってきます。
そこで、任意保険の種類や保障内容を知っておくことは重要です。
また、任意保険で弁護士特約をつけておくととても役立ちます。
そこで今回は、任意保険の種類や保障内容、弁護士特約について詳しく解説します。
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目次
1.任意保険の種類は主に7つ
自動車を運転する場合には、通常任意保険に加入します。
任意保険に入っておかないと、重大な事故が起こった場合などに相手方に支払う賠償金を用意出来なくなって、大変な目に遭うおそれがあるからです。
いくら注意して運転していても交通事故に遭うリスクはありますので、その場合に備えて任意保険に加入しておく必要性は高いです。
任意保険の種類には、主に7つあります。
それは、対人賠償責任保険、対物賠償責任保険、人身傷害補償保険、搭乗者傷害保険、車両保険、自損事故保険、無保険車保険です。
以下で、それぞれの意義と保障内容について個別に説明します。
2.各保険の解説
(1)対人賠償責任保険
①対人賠償責任保険とは
任意保険の種類の1つに、対人賠償責任保険があります。
対人賠償責任保険は、任意保険の中でも最も重要と言ってもよい保険です。
対人賠償責任保険とは、事故の相手方が傷害を負ったり死亡した場合の人身損害について賠償金の支払いを受けられる保険です。
たとえば、相手方の病院治療費や入通院慰謝料、後遺障害が発生した場合には後遺障害慰謝料や逸失利益、死亡した場合には死亡慰謝料などが支払われます。これらの人身損害の金額は高額になることが多いです。
また、重大な後遺障害が残った場合や死亡事故の場合には、人身損害の金額だけでも数千万円や1億円以上になることが普通です。
このような金額を自分で払うように言われても、支払ができないことがほとんどでしょう。
よって、自動車を運転するなら対人責任賠償保険に加入しておく必要姓は極めて高いです。
②限度額
対人賠償責任保険に加入する場合、賠償金の限度額はどのくらいにしておくべきかという問題があります。
保険の限度額とは、その金額までであれば保険金が支払われる可能性がある限度となる金額です。
たとえば限度額が1億円なら、1億円までの損害であれば保険から補填されることになります。
人身損害が発生する場合、その金額は高額になります。
よって、対人賠償責任保険に加入する場合、その限度額は無制限にしておくと安心です。
限度額を無制限にしておくと、どれだけ多額の人身損害が発生しても、全額保険から支払をしてもらうことができます。
③賠償される範囲
対人賠償責任保険で賠償を受けられる範囲は、事故の相手方の人身損害のみです。
自分の側が障害を負ったとしても、それについての賠償金の支払いを受けることはできません。
よって、交通事故で自分の側に発生した損害についても保険金を受け取りたい場合には、人身傷害補償保険などの別の保険に加入しておく必要があります。
また、対人賠償責任保険では物損についての補償も受けられません。
交通事故では相手方の自動車が毀損するなど物損が発生することもありますが、これについては対人賠償責任保険では補填されないので、別途対物賠償責任保険に加入しておく必要があります。
(2)対物賠償責任保険
①対物賠償責任保険とは
任意保険の種類で重要なものの1つに対物賠償責任保険があります。
これは、交通事故の相手方に発生した物損についての賠償金の支払いを受けられる保険です。
自賠責では物損については一切補償されないので、相手方の物損への対策としては、対物賠償責任保険に加入しておく必要性が高いです。
物損とは言っても、相手方が高級車であったり、商店に突っ込んでしまった場合などには高額な損害賠償金が発生することもあります。
よって、対物賠償責任保険も手厚くしておく必要があります。
②補償される範囲
対物賠償責任保険によって補償される範囲は、意外と広いです。
相手方の車が毀損した場合の修理費用が典型例ですが、それ以外にも、自動車が電柱にぶつかったり建物に衝突したり商店につっこんだりして損害を与えてしまった場合にも保険金が降ります。
また、相手がタクシーである場合の休業損害についても補償されますし、代車費用やレッカー代なども補填されます。
ただし、自分の側に発生した物損については支払いを受けることができません。
自分の車の修理費用などについては、別途車両保険などに加入しておく必要があります。
③限度額
対物賠償責任保険に加入する場合、限度額はどのくらいにしておくのが良いのでしょうか? 相手方の物損の金額は、人身損害と比べると低いことが多いですが、相手方が高級車の場合などは高額になる可能性がありますし、建物につっこんで毀損した場合などにも高額な賠償が必要になることがあります。
このようなリスクを考えると、対物賠償責任保険の限度額もそれなりに高めに設定しておくべきです、できれば無制限にしておくと安心感があります。
(3)人身傷害補償保険
①人身傷害補償保険とは
任意保険の種類として、人身傷害補償保険もあります。
これは、自分の側に人身損害が発生した場合に損害を補填してくれるタイプの保険です。
自賠責保険や任意保険の対人賠償責任保険では、自分の側の人身損害は補償されないので、自分が怪我をした場合などに備えて加入しておくと役立ちます。
人身傷害補償保険に加入していると、相手方と示談交渉が成立していなくても保険金を受け取ることができるので、助かります。
また、人身傷害補償保険では過失割合は問題にならないので、自分の側に過失があっても計算にもとづいて保険金を受け取ることができることもメリットの1つです。
②補償範囲
人身傷害補償保険の補償範囲はどのくらいになっているのでしょうか? まず、契約車両を運転していた自分はもちろん対象になります。
また、契約車両に同乗していた家族なども全員が補償の対象になります。
さらに、被保険者やその家族の場合には、契約車両に乗車していないときに起こった交通事故についても保険金が降りることもあります。
たとえば、契約車両以外の車両に乗車していた場合や、歩行中にあった事故などです。
このように、人身傷害補償保険の補償範囲はとても広いので、加入しておくと安心です。
(4)搭乗者傷害保険
①搭乗者傷害保険とは
任意保険の種類には、搭乗者傷害保険があります。
これは、契約車両に乗車していた人が交通事故で受けた人身損害について補償される保険です。
人身傷害補償保険ととてもよく似ており、保険会社によってはどちらかにしか加入できないことも多いです。
②補償範囲
搭乗者傷害保険の補償範囲は、人身傷害補償保険とほとんど同じです。
契約車両を運転していた人やその同乗者の被った人身損害が補償の対象になります。
また、被保険車やその家族などが契約車両以外の車に乗っていた場合にも補償の対象になることが多いです。
ときどき、搭乗者傷害保険は運転者自身の人身損害が補償されないという誤解がありますが、そのようなことはありません。
運転者の損害も搭乗者傷害保険の対象になります。
③人身傷害補償保険との違い
搭乗者傷害保険も人身傷害補償保険も、同じように契約者側の人身損害を補填するための保険であり、適用される場面もほとんど同じです。
この2つには、どのような違いがあるのでしょうか? 1番の違いは、保険金の計算方法です。
搭乗者傷害保険の場合には、実際にかかった金額ではなくどのような損害が発生したかによって一定の金額の保険金がおります。
たとえば、死亡した場合に満額の保険金がおりるとすれば、後遺障害が残ったケースでは認定を受けた等級によって異なる金額の保険金が支払われます。
入通院に関しても、「1日分の定額×入通院日数」分の保険金が支払われたりします。
腕の骨折の場合に30万円など、傷害の内容によって定額になっているケースもあります。
このように、搭乗者傷害保険では、具体的な事例にかかわらず定額の支払い基準が採用されています。
これに対して人身傷害補償保険では、実際にかかった金額が基準になります。
たとえば通院治療費や慰謝料、逸失利益などを計算して補償を受けることになります。
搭乗者傷害保険と人身傷害補償保険は、どちらか1つにしか加入できないことも多いですが、両方に加入できることもあります。
2つに加入していると、自分や家族が怪我をした場合に手厚い補償が受けられるのでいざというときに安心です。
(5)車両保険
①車両保険とは
任意保険の種類には車両保険があります。
これは、契約車両が交通事故で損害を受けたり盗難被害に遭った場合などに補償を受けられる保険のことです。
たとえば交通事故で車が毀損してしまった場合が典型ですが、火災や盗難事故の場合にも車両保険によって保険金支払いを受けられます。
自賠責保険では物損や自分の側の損害についての補償はありませんし、任意保険でも対物賠償責任保険では相手方の物損にしか補償がありません。
自分の側の物損に備えるためには、車両保険に入っておく必要があります。
②車両保険の2種類
車両保険には、2種類があります。
1つは限定型で、もう1つが一般型です。
限定型の場合には、補償の対象が限定されますが、保険金が安くなります。
一般型は補償範囲が広くなる代わりに保険金が高くなります。
たとえば、限定型の場合には交通事故で相手方車両と衝突した場合や火災被害、水害被害、盗難被害などによる損害のみが補償の対象になります。
当て逃げに遭った場合や自損事故の場合には補償の対象になりません。
これに対して一般型の場合には、当て逃げ被害や自損事故などもすべて補償の対象になります。
③免責金額に注意
車両保険に加入する場合には、免責金額に注意する必要があります。
免責金額とは、その金額までは保険金がおりないという金額のことです。
交通事故で自分の車両に被害が発生しても、免責金額までは自己負担になってしまいます。
免責金額は5万円や10万円などの設定がありますが、免責金額が低くなると保険料は上がっていきます。
免責金額を0にしておくと自己負担額がなくなるので安心ですが、反面自動車保険料が上がってしまうので、加入の際に免責金額をいくらにするのかについては、慎重に検討しましょう。
(6)自損事故保険
①自損事故保険とは
任意保険には自損事故保険もあります。
これは、相手方のない単独事故や自分の過失が100%の場合の交通事故で、自分の側に発生した損害を補填するための保険です。
たとえば、運転中に電信柱に衝突してしまった場合などです。相手方がある交通事故のケースでも、自分の過失割合が100%の場合には相手方の保険会社から保険金を受け取ることはできなくなりますが、このような場合に自損事故保険が適用されます。
また、相手方がある交通事故であっても、自分の側に100%過失がある場合には相手方の任意保険から支払いを受けることはできませんが、自損事故保険に入っておくと、このような場合にも保険金を受け取ることができるので助かります。
このように、自損事故保険は自分の過失が高い場合や自分で勝手に事故を起こした場合に適用される保険なので、交通事故の被害者となる場合にはあまり問題になりません。
また、自損事故保険に加入する場合、任意保険会社に対してわざわざ加入すると言わなくても、対人賠償責任保険加入すると同時に加入することになることが多いです。
②補償範囲
自損事故保険と人身傷害補償保険は重なる部分が多いです。
よって、この両方に加入している場合には、重なっている部分についてはどちらか一方からしか支払いを受けることができません。
搭乗者傷害保険の場合には、保険金の計算方法が違うので、自損事故保険と搭乗者傷害保険の両方を受け取ることができることが多いです。
自損事故保険の補償内容は、たとえば以下のようなものになっています。
死亡事故の場合に1500万円、後遺障害が残った場合には等級に応じて50万円~2000万円、入院した場合には入院日数1日について6000円、通院があれば通院日数1日について4000円などです。
③等級との関係
自損事故保険を利用すると、保険の等級が一気に3級も下がります。
このことによって、次年度からの自動車保険の金額がかなり上がってしまいます。
よって、小さな損害であればわざわざ自損事故保険の保険料を請求しない方が良いこともあります。
(7)無保険者傷害保険
①無保険車傷害保険とは
任意保険には無保険車傷害保険もあります。
これは、交通事故の相手方が任意保険に加入していない場合に補償を受けられる保険のことです。
自動車を運転しているドライバーの中でも、任意保険に加入していない人は3割程度いると言われており、そのような車を相手に事故に遭った場合には十分な補償を受けられない可能性が高まります。
よって、足りない部分について無保険車傷害保険によって保険金の支払を受けることができます。
②無保険車傷害保険が適用される場面
無保険車傷害保険が適用される場面はどのようなケースなのか、以下で具体的に見てみましょう。
まず、交通事故の相手方が対人賠償責任保険(任意保険)に加入していないケースです。
次に、相手方が対人賠償責任保険に加入していても、条件が満たされず保険金が降りないケースでも無保険車傷害保険が適用されます。
相手方が対人賠償責任保険に加入していても、その限度額が低いなどで賠償金額全体の支払いに足りない場合に適用の対象になります。
ひき逃げや当て逃げ被害に遭って、事故の相手方が特定出来ないケースも対象になります。
③補償範囲
無保険車傷害保険の補償範囲や金額は、自分が加入している任意保険の対人賠償責任保険と同じ基準で計算されます。
ただ、限度額については異なります。
自分の対人責任賠償保険の限度額を無制限にしていても、無保険車傷害保険の限度額は2億円になります。
無保険車傷害保険の補償対象は後遺障害と死亡事案であり、傷害は補償の対象外になります。
3.弁護士特約が便利!
交通事故の自動車保険には、弁護士特約という特約があります。
弁護士特約とは、交通事故に関してかかった弁護士費用を保険金から支払ってもらえる特約のことです。
交通事故に遭うと、相手方保険会社と示談交渉などが必要になり、自分では対処できなくなることがあります。
また、交通事故では損害賠償計算方法に自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準があります。
弁護士に示談交渉を依頼すると、この中で最も高い弁護士基準で損害賠償金を計算してもらえるので、自分で交渉する場合よりも大幅に高額な損害賠償金を請求できることが多いです。
弁護士に依頼すると、相手方保険会社から言いくるめられて不利な条件で示談してしまうおそれもありませんし、裁判になった場合も安心です。
このように、弁護士に交通事故の対応を依頼するとさまざまなメリットがあります。
しかし、弁護士に事件対応を依頼すると高額な弁護士費用がかかります。
ここで、弁護士特約をつけておくと、かかる弁護士費用を保険会社に支払ってもらえるので大変助かります。
弁護士費用の負担がないので、気軽に弁護士に相談したり対応を依頼することができます。
弁護士特約をつける場合、300万円までの弁護士費用を保険金からまかなえることが多いです。
交通事故に遭った場合には大変心強いので、保険加入の際にはぜひともつけておくと安心です。
まとめ
今回は、交通事故の任意保険の種類と内容について解説しました。
任意保険には対人賠償責任保険、対物賠償責任保険、人身傷害補償保険、搭乗者傷害保険、車両保険、自損事故保険、無保険車傷害保険の7種類があって、それぞれによって補償内容が異なります。
任意保険に加入する場合には、ニーズに合った適切な保険に加入することが大切です。
また、弁護士特約をつけておくと、交通事故に遭った場合に弁護士費用のことを気にせず弁護士に対応を依頼できるので役立ちますし、心強いです。
今回の記事を参考にして、賢く任意保険を利用して交通事故に備えましょう。