交通事故の場合には健康保険は使えない?健康保険を使うために知っておきたい4つのこと

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
shutterstock_144026353

巷では、交通事故の場合には健康保険は使えないということを聞いたりします。これをお読みの方の中にも、もしかしたらそのようなことを聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

では、本当に交通事故の場合には健康保険は使えないのでしょうか。

今回はそのような疑問に応えるべく、交通事故の場合に健康保険が使えないのかどうかについて説明します。ご参考になれば幸いです。

 

1、交通事故で健康保険は使える?

交通事故に遭ってしまって治療を受けようとした場合、交通事故では健康保険は使えないということを聞くことがあります。

しかし、これは誤解です。交通事故が原因の治療の場合でも健康保険証を使って治療を受けることができます。

ただ、健康保険を使う場合には、ご自身が加入している公的医療保険制度に「第三者行為による傷病届」などの書類の提出が必要になります。この点は、「5、被害者が保険証を用いて治療を受ける手続きの流れは?」で後述します。

2、健康保険が使えない2つの場合

「1、交通事故で健康保険は使える?」で説明したように、交通事故の場合でも健康保険を使って治療を受けることができます。
しかし、なかには健康保険が使えない場合もあります。以下では、健康保険が使えない場合について説明します。

(1)病院が自由診療の場合

病院はボランティアではありません。
そのため、病院の経営という観点から、自由診療にしている病院もあります。

どういうことかと言うと、健康保険での診療報酬は点数で計算しており、1点につき10円と決まっていますが、自由診療の場合には1点あたり20円や30円といったように病院側が自由に値段を決めることができます。

もっとも、交通事故の場合には、自賠責保険診療費算定基準(いわゆる日医基準)がありますので、保険診療に比べ大幅な報酬設定にはなっていません。
具体的には、自動車保険の診療費については、現行労災保険診療費算定基準に準拠し、薬剤等「モノ」についてはその単価を12円とし、その他の技術料についてはこれに20%を加算した額を上限とすることになっています。

すなわち、自由診療の方が保険治療よりも2割から4割ほど高く設定されていることになります。
つまり、病院が保険診療ではなく自由診療にすることで病院の利益を少しでも多くしたいと考える結果、健康保険が使えないということになります。

(2)保険診療では対応できない場合

保険診療では、治療できる範囲に限界があります。これに対して、自由診療では、保険診療の枠に捉われずに治療ができます。
そのため、きちんと治療してあげたいという気持ちを持って治療してくれる病院や質の高い治療を心がけている病院では、おのずと自由診療が選択肢になり、結果として健康保険が使えないことになります。

(3)健康保険を使うメリット・デメリット

交通事故の場合でも、健康保険が使えることは前述したとおりです。
では、交通事故の場合に健康保険を使うメリットはどこにあるのでしょうか。また、デメリットはあるのでしょうか。以下では、健康保険を使うメリット・デメリットについて説明します。

(1)メリット

①治療費が安くなる

「2、健康保険が使えない2つの場合」で説明したように、健康保険での診療報酬は点数制で、1点について10円ですが、自由診療の場合は病院側が自由に決めることができます。自由診療の場合には、相場としては、1点あたり20円から25円程度が多いでしょう。

例えば、医療点数が10万点の場合、保険診療では100万円(10万点×10円)となり、多くの場合3割負担ですので、30万円の治療費になります。他方、自由診療の場合、200万円(10万点×20点(20点にした場合))となり、負担割合は全額ですので、200万円となります。

したがって、健康保険を利用すれば、全体の治療費を半額程度に抑えることができ、負担割合も考慮すれば大幅に治療費を節約することができます。
また、被害者に過失があり、過失相殺される場合には、治療費を抑えることができ、被害者の経済的な負担の軽減に繋がります。

 

②保険会社からの治療費打ち切りを先延ばしにできる

交通事故の被害者に支払われる治療費(賠償金)は、加害者が加入する自賠責保険と任意保険の両方から支払われます。
この際、まずは自賠責保険から使われ、限度額の120万円を超えると任意保険が使われることになります。
そうすると、保険会社としては、会社からの出捐を伴わないよう、自賠責保険の範囲で示談できるようにしたいと考えるのが通常です。
健康保険を利用すれば、前述のように治療費を抑えるができ、その結果として自賠責保険からの支払いを長期にわたって受けることができます。
そのため、自賠責保険の限度内での治療費の支払いが長く続けば長く続くほど、保険会社からの支払いは先延ばしになります。そうすると、保険会社からの治療費打ち切りも結果として先延ばしにすることができます。

(2)デメリット

①医師のやる気が低下する可能性がある

前述した健康保険を使うメリットは、簡単に言えば、治療費を節約できることにありました。

しかし、このことは医師のやる気を下げてしまうおそれがあり、この点が健康保険を使うデメリットになります。
やはり、健康保険を使うことによって病院側の利益が減ってしまうことから、保険診療を嫌がる病院もあるようです。そして、このことが、医師のやる気の低下につながる可能性があります。

②治療の範囲に限界がある

「2、健康保険が使えない2つの場合」でも説明しましたが、保険診療では治療できる範囲に限界がありますが、自由診療では保険診療の枠に捉われずに治療ができます。
そのため、保険診療にこだわる場合には、治療の範囲が制限される可能性があります。

4、健康保険を使った方がいい場合とそうでない場合は?

「3、健康保険を使うメリット・デメリット」で説明したことからもお分かり頂けたと思いますが、基本的には交通事故の場合でも健康保険を使った方が良いでしょう。
もっとも、健康保険を使った方がいい場合と使わなくても問題ない場合があります。ここでは、この点についてご説明します。

(1)健康保険を使った方がいい場合

健康保険を使った方がいい場合とは、具体的には以下のような場合です。

・加害者が自賠責保険にしか入っていない(任意保険に入っていない)場合

・自分の過失割合の方が大きい場合

・そもそも過失割合でもめている場合

・治療・入院が長引きそうな場合

・人身傷害補償保険に入ってない場合

(2)健康保険を使わなくてもいい場合

自分の過失割合がゼロで、相手が任意保険に加入している場合には、ご自身の健康保険を使わなくてもいいでしょう。
過失割合がゼロであれば、過失相殺されることもなく、すべて相手側の負担になります。この点は、保険診療ではもちろんのこと、自由診療でも同じです。

5、被害者が保険証を用いて治療を受ける手続きの流れは?

最後に、保険診療を受ける場合に保険証を用いて治療を受ける手続きの流れについて説明します。

(1)病院側に健康保険を使用したい旨伝える

交通事故後、健康保険を使って治療を受けようとする場合には、まず受診する病院側に対して、健康保険を使用して治療を受けたい旨を明確に伝えるようにしましょう。
というのは、ある損害保険協議会では、健康保険証の提示だけでは単なる氏名を確認する程度の意味しかないと考えているからです。
もし、初診時に保険証を提示できない場合でも、初診から保険診療を認めてくれる医療機関もありますので、できるだけ早く保険証を提示するようにしましょう。

(2)保険者への届出を必ずする

これは交通事故の場合に限られませんが、交通事故のように第三者の行為によって受傷した場合で、被害者が健康保険を使用して診療を受けようとする場合には、被害者の加入している健康保険の保険者に対して、「第三者行為による傷病届」などの保険者所定の書類を提出する必要があります。
この保険者所定の書類とは、第三者行為による傷病届や念書、事故証明書、事故発生状況報告書、納付誓約書などのことです。
ただし、これらの書類は、交通事故後直ちに提出する必要はありません。まずは、口頭(電話で可)で保険者に届け出ておき、後日正式な書類を提出すれば問題ありません。

まとめ

今回は、交通事故の場合に健康保険を使うために知っておきたい4つのことについて説明してきましたが、いかがだったでしょうか。
これをお読みの方の中にも、もしかしたら交通事故の場合には健康保険を使えないと思っていた方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、今回説明したように、交通事故の場合でも健康保険は使うことができますので、ご安心下さい。
ただし、繰り返しになりますが、健康保険を使う場合には、ご自身が加入している公的医療保険制度に「第三者行為による傷病届」などの書類の提出が必要になりますので、この点は忘れないようにして下さい。

今回の話が交通事故の場合に健康保険が使えるのかどうか悩まれていた方のご参考になれば幸いです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

Twitter・RSSでもご購読できます。