遺言書(自筆証書遺言)の書き方として知っておきたい6つのこと

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相続トラブルを防ぐ有効な手段といわれる「遺言」。

遺言書は主に
①自筆証書遺言
②公正証書遺言
③秘密証書遺言
の3種類が存在します。

そのうち、自作可能な遺言が「①自筆証書遺言」です。
けれども、作成の仕方を知らない方がほとんどだと思います。

そこで今回は、自筆証書遺言の書き方について解説していきます。

1.遺言を書くメリットは?

(1)相続トラブルの防止

遺言の何よりも大きなメリットが、相続開始時に起こりやすい相続人同士の問題を防ぐことができることです。

遺言がない場合は、相続人同士で遺産分割協議をしてまとまらなければならないのです。

相続人同士で協議をすると、感情的になったりするなどして問題が多く、さらに相続人全員の合否が必須ですので時間も多くかかるでしょう。

特に子ども達の仲があまり良くないときなどは、こうしたトラブルが大いに予想されます。
ですので、遺言を作成しておけば相続人同士の争いなどを防ぐことができます。

(2)相続人以外にも財産を遺せる

もし、被相続人が遺言を残さなかった場合は「法定相続人」に相続されることが法律で決まっています。

ですが、被相続人としては法定相続人以外に遺産を相続させたい場合もあると思います。

こうした場合に遺言を書いておけば、法定相続人以外にも遺産を遺すことが可能なのです(珍しいところだと、学校や公益法人等に寄付する、ということも可能です)。

(3)相続に被相続人の意向を反映させられる

被相続人にとって、遺産を残す相手は選びたいという方も多いかと思います。

結婚と離婚を何度かした方だと、「今の配偶者の子供に遺産を多く残したい」などの意向もあるかと思います。

「介護してくれた人により多く」といった希望もあるでしょう。
こうした場合でも、遺言がなければ基本的には法律で決まっている法定相続分により遺産分割が行われます。

ですが、前もって遺言を作成しておくことにより、被相続人の意向通りに遺産を分割することが可能です。
※「遺留分」などによる制限がある点は注意しましょう。

2.遺言書に記載する内容を決める

それでは、遺言書の書き方についての解説に移ります。

遺言書を書くにあたり、まずは遺言書に記載する内容を決めましょう。
つまり何を、誰に与えるのか、ということです。

遺される遺産の内容、自分と相続人となる相手の間柄や相続人同士の間柄を考慮して決めましょう。

また、相続人に認められている、遺言でも侵せない利益「遺留分」へのケアも考慮に入れるべきでしょう。

※「遺留分」に関しての詳細は「遺留分の計算方法は? 遺留分減殺請求をするために知っておきたいこと」をご参考にしていただくと良いでしょう。

3.遺言書作成の際に用意すべきものは?

記載内容を考えたら、次に以下の物を用意しましょう。

(1)必ず必要な物

①紙

当然必要になるのが遺言を書く用紙です。
長期間の保管も想定されるので、ペラペラな紙ではなく傷まない丈夫な紙がいいでしょう。

②筆記用具

ボールペンなど、消えないもので書きましょう。

③印鑑

自分が書いたことがきちんと分かるように、実印がお勧めです。

④朱肉

これがないと印鑑が押せないので、勿論必要です。

(2)あると良い物

①印鑑登録証明書

押された実印が本物であることを示してくれるものです。
遺言書と一緒に封入しましょう。

②戸籍謄本

相続人の正確な氏名を確認する為に必要です。

③封筒

書いた遺言書を封入します。

④のり

封入後に封印して、改ざんを防ぐために必要です。

⑤登記簿謄本

これがあれば、不動産を正確に記載できます。

⑥遺産目録

遺言に付しておくと、遺産の範囲が明確になります。

4.遺言書の雛形ダウンロード

子2人に預金、妻に自宅不動産及びその他財産を相続させるという典型的な事例を念頭に、雛形を作成したので参考にしてみてください。

遺言書の雛形のダウンロードはこちら

※ただし、後述するように、自筆証書遺言は全て直筆で書く必要があります。
雛形にそのままサインだけしても、法的に無効なので注意が必要です。

5.実際に作成する際に参考になる文例

(1)全ての財産を妻に渡したい場合

遺言書

遺言者に属する一切の財産を、妻 ●●(昭和●年●月●日生)に相続させる。

平成●年●月●日

遺言者 ●● ㊞

(2)内縁の妻に全ての財産を渡したい場合

※法定相続人でない者に「相続させる」ことは出来ません。
(1)の場合と異なり「遺贈する」との文言になることに注意しましょう。

遺言書

遺言者に属する一切の財産を、内縁の妻●●(平成●年●月●日生)に遺贈する。

平成●年●月●日

遺言者 ●● ㊞

(3)予備的遺言

※受遺者(財産を受け継ぐ者)が遺言者より先に亡くなった場合に備えた遺言のことです。
あり得ない話ではないから、予備的遺言の条項を付しておく方がいいでしょう。

遺言書

1.遺言者に属する一切の財産は、妻 ●●(昭和●年●月●日生)に相続させる。

2.遺言者の死亡以前に妻 ●●が死亡したときは、遺言者に属する一切の財産を、長男 ●●(平成●年●月●日生)に相続させる。

平成●年●月●日

遺言者 ●● ㊞

(4)遺言執行者の指定

※遺言執行者がいることにより、手続がスムーズになることが多いです。

上記雛形や文例に、以下のような条項を加えておくと良いでしょう(但し、遺言執行者は、遺言に記載されていることでも「やらなければいけない業務」「やることが可能な業務」「出来ない業務」があります)。

遺言者は、本遺言の執行者として、長男●●(昭和●年●月●日生)を指定します。

6.自筆証書遺言書作成の際の注意点は?

(1)全て直筆で!

タイトル、本文、日付、署名まで全て直筆で書かねば無効になるので、注意しましょう。

(2)タイトルは「遺言書」

タイトルが無くても法的に無効というわけではないですが、遺言であることを明確にするためこのようなタイトルを付けましょう。

(3)作成年月日をきちんと記入

何年何月何日に作成したかをきちんと書きましょう。記入が無ければ無効です。
「●月吉日」といった書き方は駄目です。

(4)押印をしっかりと

署名の横に、印鑑をきっちり押しましょう。

法律上は実印でなくても良いとされていますが、後で「本人が書いたのか」について争いとなることを防ぐため、実印とするのがベターです。

ちなみに、複数枚にわたっても契印は必要ありません。

(5)訂正について

自筆証書遺言の内容を付け加えたり、訂正する場合は下記を行います。
①遺言者がその場所を指示する
②これを変更した旨を付記する
③特にこれに署名する
④変更場所に印を押します

とはいえ、これはかなり面倒なので、場合によっては全て書き直した方がよいこともあります。

(6)財産は明確に

トラブルを防ぐため、不動産は登記の通りに書き、預金も通帳記載の通りに書くなど、明確な記載を心がけましょう。

(7)その他財産についても定めるべき

財産の書き漏らしがあった場合、結局亡くなった後にトラブルが生じてしまうおそれがあります。
雛形にあるように、その他の財産についても分け方を考えておきましょう。

まとめ

以上、遺言作成についてご理解頂けましたでしょうか。

とはいえ、財産が多い場合や複雑な分け方をする場合など、素人の方が1人で遺言を作成するのが難しい場合もあります。
そんなときは、弁護士等の専門家に依頼するのも手です。

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