雇い止めとは?非正規雇用の方が知っておきたい判断基準と対処法

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雇い止めについて詳しく知りたい、どのような場合に雇い止めになるのか、雇い止めされてしまった場合の対処法とは。

この記事をお読みの方の中にはそのようにお考え中の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

契約社員やアルバイト、パートなどの非正規労働者として働いている場合、正社員よりも雇用を切られる可能性が高いです。

もともと期間を区切って労働契約をしているので、期限が来ると、当然に契約を終了されてしまうのです。

しかし、これまで何度も契約を更新してきたのに、突然更新が認められなかった場合などには、労働者が大きな不利益を受けてしまいます。

上記のような「雇い止め」が問題です。

「雇い止め」の有効と無効に関してはどう判断されているのでしょうか。

また、不当な雇い止めに遭ってしまった場合の対処方法も知っておく必要があります。

そこで今回は、非正規雇用の労働者の雇い止めについて、その判断基準や争い方などを解説します。

※この記事は2017年4月24日に加筆・修正しました。

目次

1.雇い止めとは


今、日本でも多くの非正規雇用の労働者がいます。
パートやアルバイト、契約社員などの労働期限のある労働者などが、非正規雇用の代表例になります。

これらの非正規労働者は「雇い止め」に遭ってしまう可能性が高いです。

聞いたことがあるかもしれない「雇い止め」という言葉ですが、いったいどのような意味なのでしょうか。

そこで、まずは雇い止めの意味や内容について説明します。

(1)そもそも雇い止めとは

そもそも雇い止めとはどのようなことなのでしょうか。

雇い止めとは、有期雇用の労働者に対して契約期間の終了時に契約の更新を止めて、雇用関係を終了してしまうことです。

そのように聞くと、「契約期間が終わったなら雇用関係が終わっても仕方がないのではないか?」と思われるかも知れません。

しかし、実際には、非正規労働者であっても正社員と実質異ならない業務内容を行っている人もいます。

ですが、過去何度も契約の更新があったのに、突然会社側の都合で契約が更新されない場合、労働者側は「今回もきっと更新してもらえる」と思っていた期待を裏切られて多大な不利益を被ってしまいます。

さらに、当初の契約時に会社と労働者との間で、「有期労働契約とするけれども、継続的に更新していくことを前提とする」という合意ができている場合もあります。

有期雇用であっても、雇用期間が長くなって、雇用者側からも継続を前提とした言動が繰り返される場合などもあります。

上記の場合、契約期間が終了のみの理由で契約の更新がされないと、労働者側はとても大きな不利益を受けます。

会社はそれまで、契約更新を臭わせながら、非正規雇用労働者を使って正社員と同じような作業をさせていたにもかかわらず、都合が悪くなったら突然会社都合で契約を更新しないということになり、労働者を都合良く切ることを認めることになりますし、実質的には正社員の解雇と変わらない状態になります。

そこで、このような不当な雇い止めは、制限する必要があります。

厚生労働省が雇い止めについての基準を定めていますし、裁判でも雇い止めを無効とする判断基準を明らかにして、雇い止めを無効としている判断なども出ています。

(2)雇い止めの具体例

雇い止めは、具体的にどのような事例で問題になるのでしょうか。
イメージしやすくするために、具体例を見てみましょう。

ある労働者(Aさんとします)が契約社員(契約期間6ヶ月)として雇用されました。

その後、社内ではAさんは、それなりにスキルもあったので他の正社員たちと同様の内容の業務をしていました。
会社からも、「これからもよろしく」などと言われ、契約の更新や継続を前提とする言動がありました。

また、契約の更新を前提として難しいプロジェクトを任されたり、時間のかかる作業をしていたこともありました。

実際に、契約は4回更新されてAさんの会社での雇用期間は通算すると2年半になっていました。

それまでの更新の際も、Aさんと会社との間では更新が前提になっていたので、更新後すぐに更新の契約書を作らず、後ほど会社から契約書を渡されて提出する、というようになっており、更新手続きについて厳格な運用はありませんでした。

ところが、5回目の更新字その時点で会社側から「今回は更新がない」と言われてしまいました。

Aさんにしてみれば、当然今回も更新してもらえると考えていたのに、その期待を裏切られて大変困惑しました。

このような場合にまでAさんは「単に契約期間が終了した」というだけの理由で雇い止めを受け入れなければならないとすると、Aさんには不利益が大きすぎます。

このような場合には、雇い止めに関する法理によって、Aさんの雇い止めが無効になる可能性が高いです。

(3)有期労働契約の期間

雇い止めは、有期労働契約の期間が満了する際に行われるものですが、そもそもその有期労働契約の期間は具体的にどのくらいになるのでしょうか。

この点、有期労働契約の1回の期間には上限がもうけられていますが、その長さは労働者の労働の種類によっても異なります。

有期労働契約の期間に関しては、 労働基準法第14条で定められています。
まず、一般的な原則として有期労働契約の期間の上限は「3年」です。

ただし、労働者の労働期間が1年を超えると労働者側からはいつでも退職を申し出ることができます。

次に、公認会計士や弁護士、医師や一級建築士、税理士、博士や特許を取得している発明者、ベテランのシステムエンジニアやデザイナーなどの高度の専門知識を持つ労働者の場合には、労働期間の上限は5年です。

次に、満60歳以上の労働者が有期労働契約をする場合の期間の上限は5年です。
さらに、期限のある建築工事のように、契約自体に一定期間や期限が設定されているタイプの労働契約があります。

この場合に有期労働契約を締結する場合の期間の上限は、その建築工事にかかる期間となります。

2.雇い止めに関する4つの基準


雇い止めを自由に認めると、会社都合で労働者を身勝手に解雇できるようになり、労働者が大変な不利益を被ります。

そこで、雇い止めについては会社の自由に認める事はせず、制限をする必要が高いです。

厚生労働省は、不当な雇い止めを防止するために、4つの基準を設けています。
そこで以下では厚生労働省の雇い止めに関する4つの基準を確認していきましょう。

(1)契約時に更新の有無を明らかにする

雇い止めに関する4つの基準の1つ目として、期間が決まっている有期労働契約を行う場合、会社は雇い入れる労働者に対し契約で定められた労働期間が満了したときに更新に関して確かにしなければいけません。

契約を行う際に契約期間が存在するのですが、更新されるかどうかがわからないと労働者は更新に期待して良いのかどうかがわからず不利な立場に追い込まれます。

また、契約時に更新の有無を明示していれば、会社側が後になって「更新するとは言っていない。」などの弁解も回避できます。

契約において更新があると決める場合、雇用者は労働者に対して、その契約更新を行わない場合の判断基準を明らかでなくてはならないと決められています。

このことによって、労働者はその基準に該当することがあれば更新がなされないことを予測できますし、逆にその基準に該当することがなければ更新されると期待することができます。

さらに、雇用者が契約更新の基準を変更する場合には、速やかに労働者にその内容を告げなければならないことになっています。

(2)雇い止めの予告

次に、雇用者は雇い止めをする場合、労働者に対して雇い止めの予告が必要になるケースがあります。

それは、その有期労働契約が1年以上の場合や、1年以内であっても3回以上契約更新を行っている場合に雇い止めを行う場合です。

このような場合には、有期労働契約の中でも労働者の保護の必要性が高まります。

雇用者は、もし更新をしないなら少なくとも契約が終了する日の30日前までに更新をしない旨の予告をしなければなりません。

このように、きちんと予告をさせることによって会社による雇い止めに制限をかけると同時に、労働者に対しても雇い止めへの対応を検討するための猶予を与えています。

(3)雇い止めの理由を明らかにする

雇い止めに関する基準の3つ目として、会社が雇い止めをする場合に労働者が会社に請求したら、会社は労働者に対して、契約の更新を行わない理由に関して説明をした「文書」や「証明書」の発行を行わなければいけません。

上記の理由に関しては、「契約期間が終了した」というだけでは足りず、別の理由が必要です。

例えば、下記の理由などです。

  • 前回の契約更新時に、 次の契約は更新しないと合意していた
  • 当初の契約の際に更新回数の上限を設定していたが、 今回の契約でその上限を超えてしまった
  • 労働者が会社で行っていた業務が終わってしまった
  • 会社がその事業規模を縮小する必要がある
  • 労働者の勤務不良行為があった場合(たとえば無断欠勤したり、契約違反の行為を行うなど)

上記のようなきちんとした理由がない限り、雇い止めを認めないという扱いにして、雇い止めを制限しているのです。

(4)契約期間についての配慮

最後に、雇用者が有期期間契約を更新する場合には、契約期間について配慮することも求められます。

具体的に、「1回以上」更新を行っているか1年以上勤務している労働者と契約更新する場合に適用します。

上記の雇用者は、契約更新の際に、労働者の希望や会社と労働者との関係性によって、更新後の契約期間を可能な限り長く設定することが大切です。

このように、厚生労働省ではいろいろな手法で不当な雇い止めが行われないように制限をしています。

3.雇い止めが無効になることがある


国は、不当な雇い止めが行われて労働者が不利益を被ることを防止しようとしていますが、それでも不当な雇い止めが行われることはあります。

実質的には正社員の解雇と変わらないような不当な雇い止めが行われた場合には、その雇い止めが無効になることがあります。

その際、雇い止めについての判断基準があり、その判断基準にもとづいて、その事案によって個別に雇い止めの効力が判断されます。

そこで、以下では判例による雇い止めに関する判断基準を見てみましょう。

(1)業務内容が正社員に近いか

まず、その労働者が会社でどのような業務内容をこなしていたかが問題になります。

労働内容が、非正規雇用とは言いながらも正社員とほとんど同様であるなどの場合には、雇い止めが認められにくくなります。

また、その労働者の地位がその会社の中で基幹的か逆に嘱託・非常勤など臨時的なものかも問題になります。

基幹的な労働者であれば雇い止めは認められにくくなりますし、臨時的な立場であれば雇い止めが認められやすくなります。

(2)契約更新の回数が多いか

雇い止めの有効性を判断する際には、それまでの契約更新の回数も判断要素になります。
それまでの契約更新の回数が多いほど雇い止めは認められにくいです。

契約が何回も更新されていると、労働者としては、「今回も更新してもらえる」という期待が大きくなるので、それを保護する必要性が高まるからです。

(3)通算勤続期間が長いか

雇い止めの有効性判断に際しては、通算労働機関も考慮されます。
通算労働期間とは、その労働者がその会社勤務していた期間の合計です。

たとえば、3年働いていても、その間に3ヶ月などの休業期間がある場合には継続していないこともありますが、その場合には休業期間をのぞいて労働期間を合計した通算労働期間を計算します。

具体的には、先の例では、3年-3ヶ月=2年9ヶ月になります。

そして、この通算労働機関が長くなればなるほど、雇い止めは認められにくくなります。
労働期間が長くなると、労働者側の更新への期待が大きくなるためです。

(4)契約更新手続が厳格か

その会社において、これまでの更新の際に契約更新手続きがきちんと行われていたか、適当に行われていたかによっても雇い止めの有効性の判断が変わります。

たとえば、更新を前提としているような場合には、契約期間が満了してもしばらく更新契約書を交わさずに放置しており、しばらくしてから後で契約書を作成することもあります。

逆に、契約更新を厳格に運用しており、必ず契約期間満了前にきちんと次の契約についての話し合いをして契約書を交わしているようなケースもあります。

このうち、前者のように契約更新手続きがルーズな場合には、雇用者も労働者も契約の更新を前提としていたと考えられるので、労働者保護の必要性が高く、雇い止めは認められにくくなります。

反対に、契約更新手続きが厳格な場合には、雇い止めが認められやすくなります。

(5)雇用継続に関する使用者の言動

雇い止めの効力を判断する場合には、採用時や日常における雇用者の言動も重視されます。

具体的には、雇用者側が、労働者に対して雇用の継続を期待されるような発言や行動が多ければ、雇い止めは認められにくくなります。

この場合、労働者としては当然「次回も契約を更新してもらえる」と期待するものだからです。

反対に、契約当初からきちんと「更新はない可能性が高い」と言っており、普段の業務においても契約更新がないことを前提にした言動が多かった場合などには、労働者としても契約の更新を期待しないでしょうから、その期待を保護する必要がなく、雇い止めが認められる可能性が高くなります。

(6)他の労働者の更新状況

雇い止めの効力の判断の際には、他の労働者の更新状況も考慮されます。
1つの会社では、同じような非正規労働者が複数人働いていることが多いです。

このような場合に、他の非正規労働者の更新状況がどのようになっているかによって、雇い止めの効力の判断に影響があります。

たとえば、他の非正規労働者の多くは普段から更新されていないなどの状況があれば、雇い止めが認められやすいです。

反対に、他の非正規労働者の多くは普段から更新されているにもかかわらず、その労働者だけが雇い止めにあった場合などには、その雇い止めは無効になる可能性が高くなります。

4.雇い止めの4つの類型


以下では判例にもとづいた雇い止めの4つのタイプと、それぞれについて雇い止めが認められやすいかどうかを説明します。

(1)純粋有期契約タイプ(雇い止めが認められやすい)

まず、有期労働契約の1つ目の類型として、純粋有期契約タイプがあります。
これは、定められた期間の終了によって当然に契約が終了するタイプの労働契約です。

労働者側も、更新を期待することが少ないだろうと考えられるような類型です。

純粋有期契約タイプでは、原則どおり契約期間が終了することによって当然に契約が終了して雇い止めの効力が認められることが普通です。

純粋有期契約タイプの具体例として、たとえば、その労働者の業務内容が臨時的な場合や臨時社員の場合など、労働者の立場が臨時的な場合があります。

また、労働者側も期間満了によって契約関係が終了するとはっきり認識していることが多いです。

さらに、それまでの契約更新の手続は厳格に行われており、同じような非正規労働者については過去に更新してこなかったという場合も多いです。

(2)期待保護(反復更新)タイプ

反復継続して契約を更新してきた実態があるために、労働者が更新を期待するタイプの有期労働契約です。

この場合、会社の経営状態が悪化したことなどによって雇い止めが行われることなどがありますが、会社側の経済的事情による雇い止めについては、正社員の整理解雇ほど厳格な基準が適用されるわけではないという理由で雇い止めを認めた判例が多いです。

期待保護(反復更新)タイプの具体例は、たとえば、その労働者の業務内容が恒常的なものであって、それまでの更新回数が多い場合、業務内容が正社員と同一ではない場合であったり、 同じような非正規労働者が過去に雇い止めされた場合があります。

(3)実質無期契約タイプ

有期労働契約のタイプとして、実質無期限タイプもあります。

これは、期間の定めのない契約(正社員などの無期限の契約)と実質的に変わらないと認められるような契約のことです。

実質無期限タイプの場合には、ほとんどの場合で雇い止めの効力は認められていません。
実質無期限タイプは、たとえば以下のような場合です。

まず、業務内容が恒常的なものであって、契約の更新手続は形式的な扱いをされているケースが多いです。

さらに、契約の更新や雇用の継続を期待させるような雇用者側の言動があったり、同じような他の非正規労働者については、過去にほとんど雇い止めの例がないケースも多いです。

このような場合には、実質的に無期限の労働契約と同視されて、雇い止めの効力は否定されます。

(4)期待保護(継続特約)タイプ

雇用契約の更新への期待の理由について、当初の契約締結時の際の事情などから生じている場合のことです。

(1)の期待保護が「反復継続」による期待であったところ、こちらの(4)は「継続するという特約」への期待である点が異なります。

この場合には、その契約に特殊事情があるとして、労働者の期待を保護する必要があるので雇い止めの効力を認めない事案が多いです。

期待保護(継続特約)タイプは、更新回数が少ない傾向があり、契約を締結した経緯等が特殊なケースです。

たとえば契約時に会社が「臨時社員の契約は例外なく更新されている」と言われたり、「正社員に欠員があったら、臨時社員の中から希望者を正社員として登用してきた」などと説明して労働者を雇い入れた場合などには、労働者の契約更新への期待を保護すべきとして雇い止めの効力が否定される可能性が高いです。

5.不当な雇い止めに遭わないための注意点


有期労働契約の非正規労働者が、不当な雇い止めに遭わないようにするためにはどのようなことに注意すれば良いのでしょうか。

この場合いくつかの注意点があるので、以下で順番に説明します。

(1)自身の契約期間、契約内容をしっかり確認する

まずは、自分の契約期間や契約内容をしっかり確認することです。

有期契約でも何度も更新を繰り返していて勤続年数が長くなってくると、自分の契約内容がどうなっていたか忘れてしまうことが増えてきます。

このような場合にいきなり雇い止めをされると、対応に戸惑います。

そこで、自分と会社の契約期間や契約の更新に関する判断基準をしっかり確認しましょう。
このことによって、対処しやすくなります。

(2)契約更新の際に、次回の更新の有無を確認する

「有期契約」の労働者は、契約更新の手続きを行うことがあります。
上記の契約更新の場合、会社に対して、次回の更新についての考えを会社に聞きましょう。

このような場合の会社の言動によって、後の雇い止めの効力が変わってくることもあるからです。

「今はまだ、わからない。」などと言われることも多いでしょうけれど、「おそらく、次回も更新すると思う。」などと言われると、有利になります。

この場合には、次回の更新も期待できますし、もし更新されずに雇い止めにあってしまった際は、このときの会社の言動を理由として雇い止めを争うこともできます。

(3)契約期間を延ばしてもらう

2の(4)でも説明しましたが契約の更新が1回以上あるか、1年以上勤務してきた労働者は、会社に対して契約期間を延ばす配慮をしてもらえます。

よって、同じ会社で1年以上勤務してきた場合には、この権利を行使して契約更新の場合には、契約期間を延ばしてもらうように配慮してもらうよう求めましょう。

契約期間を延ばせば更新の回数を減らせます。
そうすると、その分雇い止めに遭うリスクを軽減することができるのです。

6.不当な雇い止めに遭ったら


どんなに注意していても、不当な雇い止めに遭ってしまうことはあります。
実際に雇い止めにあってしまったら、どのように対処すれば良いのでしょうか。

以下では、不当な雇い止めに遭った場合の対処法を解説します。

(1)証拠を集める

まずは雇い止めについての証拠を集めることが重要です。
会社と話し合いをするにしても、裁判手続きを利用するにしても、こちらに証拠がなければ対処ができません。

そこで、まずは証拠を集めましょう。
具体的には、以下のような書類を集めます。

会社との雇用契約書(更新の有無や更新理由、判断基準などが書いてある)、会社による雇い止めの理由提示証明書などは必須です。

雇用契約書の内容と異なる内容の更新拒絶理由などがあるかどうかもチェックしましょう。

また、これまでの会社による契約更新を期待させるような言動があったことについてわかるものがあれば用意します。

さらに、これまでの勤続年数や更新回数、更新状況がわかる更新の際の書類なども用意しましょう。

他の労働者の更新事情がわかる書類などもあれば有用です。
資料のないものは自分でメモや表を作成しましょう。

(2)退職を前提とした行動は控える

雇い止めを争う場合には、自分の態度にも注意しなければなりません。
雇い止めを争うのですから、退職を前提としたような言動は控える必要があります。

たとえば退職金を請求したり、有給買い取りの手続きをすると本人も退職を納得していると受け止められてしまいます。

もし、「退職金」や「解雇予告手当」が自分の口座に振り込まれた場合、受け取らずに会社に返還するようにしましょう。

(3)雇い止め後の生活を準備する

雇い止めを争うとしても、雇い止めが有効になる可能性もあります。
その場合、仕事が完全になくなることは不安です。

そこで、雇い止めを争うのと同時進行で、雇い止め後の生活の準備もしておきましょう。
たとえば再就職先の目処を立てておく等すると安心です。

(4)会社と交渉する

証拠がある程度そろったら、会社との間で雇い止めの撤回を求めて交渉をします。

会社側も雇い止めについての基準を把握していないことがあるので、もし会社の理解が低い場合には、きちんと制度や法律があることを説明して、雇い止めの撤回を求めましょう。

このとき、会社に内容証明郵便で通知書を送ってもかまいません。

その場合には「会社で働く意思があること」「雇い止めが無効であること」をきちんと書き込みます。

会社と話し合いを進める際には、たとえば、「2ー(2)」で説明したように「30日前に雇い止めの通知をしていたか」、過去契約更新を期待させる言動がなかったかなどを追求することが可能です。

また雇い止めの理由が明確になっていない場合には、その理由を明確にしてもらいましょう。

他の労働者が契約を更新しているにもかかわらず、自分だけが更新拒絶された場合にも、その理由を明確にしてもらう必要があります。

(5)労働基準監督署に相談する

雇い止めの無効について会社と交渉しても会社が応じてくれない場合には、労働基準監督署に相談することができます。

雇い止めが違法な場合には、労働基準監督署から会社に対して指導してもらうことができます。

(6)弁護士に相談して法的手続きをとる

不当な雇い止めに遭った場合、会社と直接交渉をしても会社が撤回してくれないことが多いです。

また、労働基準監督署に相談しても指導してもらえるかどうかはわかりませんし、指導があっても会社がこれに従わないこともあります。

このような場合には、弁護士に相談して法的な手続きをとらないといけません。
雇い止めを争う方法としては、労働審判と労働訴訟があります。

そこで、以下では労働審判と労働訴訟に分けて説明します。

①労働審判を利用する

雇い止めを争う方法として、労働審判を利用することができます。

労働審判に関しては、裁判所で「労働者」と「会社」の間で起きる「労働問題」を解決するために行う手続きです。
雇い止めに遭った場合にも、会社に対して労働審判の申立ができます。

労働審判では、労働審判員が会社と労働者の間に入って、調停による話し合いができないか調整が行われます。

審判期日は3回まで開くことができ、その間に話し合いがつけば調停が成立して問題が解決できます。

もし3回の審判期日に話し合いができない場合には、裁判官が雇い止めの効力について審判によって判断してくれます。

労働審判は、労働訴訟と比べてもとても手続きにかかる期間が短いです。
だいたい70日程度で終了します。

また、労働審判では、解決ができる可能性が非常に高いです。
労働審判で問題が解決できた事例は、労働審判の利用事例の中で80%にもなっています。

また、労働審判員が間に入って話し合いによって解決する道もあるので、柔軟な解決をはかりやすいメリットもあります。

ただし、労働審判で審判が出ても、その内容に問題があれば異議申し立てができます。
異議申し立てが起こると、「通常の労働訴訟」へ移行してしまい、終局的に問題の解決が不可能になります。

②労働訴訟を起こす

雇い止めについて争う場合に労働審判でも解決できない場合には、労働訴訟(裁判)によって争う必要があります。

労働訴訟とは、裁判所で裁判を申し立てる方法です。
訴訟を起こすと、担当の裁判官が雇い止めが有効かどうかなどを判断してくれます。

裁判所による判決は終局的な判断になります。
労働審判の場合のような異議申し立てをすることはできません。

よって、裁判を利用すれば、雇い止めに関する問題を完全に解決することが可能です。

また、訴訟を起こす場合には、証拠が極めて重要になります。
これまで集めてきた証拠を効果的に提出して勝訴判決を勝ち取りましょう。

ただ、労働訴訟には非常に時間がかかります。
一審だけでも1年以上かかるケースもあります。

また、労働訴訟を起こす場合には弁護士に依頼することがほとんど必須になりますが、そうなると高額な弁護士費用がかかってきます。

このように、訴訟には時間や時間がかかるので、裁判をするかどうかを検討する際には、費用対効果などを慎重に判断することが大切です。

契約社員やアルバイト、パートなどの非正規労働者として働いている場合、正社員よりも雇用を切られる可能性が高いです。

もともと期間を区切って労働契約をしているので、期限が来ると、当然に契約を終了されてしまうのです。

しかし、これまで何度も契約を更新してきたのに、突然更新が認められなかった場合などには、労働者が大きな不利益を受けてしまいます。

上記の場合、「雇い止め」が問題です。

雇い止めは状況によって無効になる可能性があります。
では、雇い止めの「有効」と「無効」はどう判断されているのでしょうか。

また、不当な雇い止めに遭ってしまった場合の対処方法も知っておく必要があります。

そこで今回は、非正規雇用の労働者の雇い止めについて、その判断基準や争い方などをご説明いたします。

7.2013年(平成25年)の労働契約法改正


非正規労働者の雇い止め問題を考える際に、是非とも知っておきたい法律改正の問題があります。

それは、2013年(平成25年)の「労働契約法改正」です。

有期労働者の場合でも、同じ会社で契約更新を行って「通算5年以上」勤務を行ってきた場合、労働者の希望があれば、会社はその労働者を無期限の労働者として登用しなければならないことになりました。

5年にもわたって同会社で働いてきた場合、労働者側は正社員と同様に労働契約が継続すると期待するはずなので、労働者側の期待を保護しようという考えから制定されました。

労働者は、通算5年以上同じ会社で働いた場合、更新時に無期限の労働契約を申しこむかどうかを決定します。

もしこのときに無期限の労働契約を申しこめば、会社はこれを否定することはできず、その後は労働者と会社との間に無期限の雇用契約が成立します。

上記の場合、雇用契約の条件に関しては、会社と労働者のお互いが条件変更に合意を行わない限り、それまでの有期労働契約の内容と同様です。

上記のように法改正した平成23年から5年後の平成28年から、法律の適用により、労働期間が5年を超えた労働者が会社に対して、無期限の労働契約の締結を求めることが可能になります。

今後は、この法律の適用によって、有期労働契約から無期労働契約への変更が行われる事例が増えてくることが予想されます。

この制度の利用によって無期雇用契約に変わった後は、期間の満了よって労働契約が終了するという雇い止めを心配する必要はなくなります。

無期限の労働者を解雇しようとすると、会社は厳しい解雇要件を満たす必要があるので、有期労働者を雇い止めする場合よりも、非常に難しくなります。

よって、立場の安定しない非正規労働者にとっては、5年を超えた時点で無期労働契約に変更してもらえることは、大きなメリットとなります。

雇い止めに関するまとめ

今回は、非正規労働者に多い雇い止めの問題について解説しました。

労働者が契約更新に期待をしている場合に雇い止めを認めると、労働者が大きな不利益を被る恐れがあります。
そこで、国や法律は雇い止めに制限をしています。

例えば、有期労働契約を行う場合、更新の有無や基準の明確化を求めたり、雇い止めを行う際に雇い止めの理由を明らかにする必要があったり、雇い止めの30日前には雇い止めに関する予告が必要になるなどの規制があります。

また、不当な雇い止めがあった場合には、雇い止めの効力が認められません。たとえば、実質的には正社員と同様の場合に会社の都合だけで雇い止めをされた場合などには、雇い止めは無効になります。

不当な雇い止めに遭ったら、まずは雇い止めについての証拠を集めて、会社に対して雇い止めの撤回を求めて交渉をしましょう。

労働基準監督署に相談することも出来ます。
これらの方法では解決できない場合には、労働審判や労働訴訟を利用して問題を解決しましょう。

今回の記事を参考にして、なるべく不当な雇い止めに遭わないように注意して、もし雇い止めに遭ったら、しっかり正しく対処して不利益を受けないように賢く振る舞いましょう。

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