自損事故の治療費や車両の修理費用は増額可能?適正額を受け取る全手法

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自損事故でケガをしてしまったが、治療費の補償は受けられるのだろうか・・・

自損事故で壊れた車の修理費用は増額できるのだろうか・・・

自損事故とは、相手のいない交通事故のためご自身のケガや損害についてどの程度の補償を受けられるのか、納得できない場合に増額ができるのか、心配になる方もいるのではないでしょうか。

今回は、自損事故を起こした場合の治療費や修理費用の補償を受ける方法や、増額の可能性についてお話しします。

1.自損事故と保険の関係


自損事故とは、車の運転者が単独で起こした交通事故のことを言います。
具体的には、電柱やガードレールにぶつかったようなケースが一般的です。

しかし、自損事故でも、車に勢いがあったような場合には、運転者がケガをしたり、車が壊れることも少なくありません。

通常の自動車事故の場合、加害者が入っている自賠責保険や任意保険から、かかった治療費などの補償を受けることができます。

しかし、自損事故で運転者がケガをしたり死亡した場合でも、請求できる相手がいないので、自賠責保険を使って補償を受けることはできません。

では、自損事故の場合は生じた損害を全て自腹で負担しなければならないかというと、そういうことはありません。

任意保険に加入してれば、保険の種類や特約によって補償が受けられる場合もあります。
次の項目から、自損事故でも受けられる補償についてみていきましょう。

2.適正額を受け取る基礎になる自損事故でも使える5つの保険


自損事故でケガをしたり、物損が生じた場合、自分で加入している任意保険を利用して補償を受けることができます。

これらの保険をきちんと請求できるかどうかが、適正な補償を受けられるかどうかの基礎になるので、ぜひご自身の保険を確認してみてください。

(1)人身傷害補償保険

人身傷害保険は、交通事故でケガをした場合に、自分に生じた損害について補償を受けられるものです。

過失割合に関係なく支払われますが、故意、つまりわざと事故を起こした場合や重過失の場合、飲酒運転や無免許運転で事故を起こした場合は対象外となるのが基本です。

いくら支払われるかは、加入している保険契約によって異なるので約款を見て確認しましょう。

また、人身傷害補償保険は、契約者本人だけでなく、契約者の配偶者、契約者または配偶者と同居している親族や別居中の独身・未婚の子どもも補償を受けられる点が大きなメリットといえます。

(2)自損事故保険

自損事故保険は、対人賠償保険に自動的についてくることが多く「自損事故特約」と言われることもあります。

契約車両を運転中の単独の自損事故か相手の過失がゼロの事故が対象です。

補償金額の上限は、死亡の場合に1,500万円、後遺障害の場合に2,000万円と必要最低限の補償にとどまります。

自損事故特約でカバーされるのは、契約車両の保有者、運転者、同乗者で、人身傷害補償特約より狭いので注意しましょう。

(3)搭乗者傷害保険

搭乗者傷害保険は、加入している保険の対象になっている車の搭乗者が交通事故でケガをした際に保険金が支払われるものです。

いつからいつまでが搭乗中とされるかは、一般的に、乗車前に手足をドアなどにかけたときから、降りる際に車の外に両足をつく時までとされています。

搭乗者傷害保険は、契約車両の保有者、運転者、同乗者が補償の対象となり、運転席だけでなく、助手席や後部座席に座っていた人もカバーされます。

(4)車両保険

車両保険は、自分の車に損害が生じた場合に補償を受けられるものです。
具体的には、自損事故で駐車場の柱にぶつかり、自分の車が壊れたケースなどです。

他人の損害を補償する「対物賠償保険」に加入している人は多いのですが、車両保険は対物

賠償保険には含まれないので、ご自身が車両保険に入っているか確認してみてください。

(5)対物賠償保険

対物賠償保険は、契約車両が事故を起こして、他人が所有する車や隣家の壁といった他人の物を壊して、損害賠償金を支払わなくてはいけなくなった場合に補償を受けられるものです。

ただし、他人のものを壊した場合に限られるので、自損事故でよくあるガードレールの破損のケースでみると、ガードレールの修理費用には補償されますが、壊れた自分の車の修理費用には使えないので注意しましょう。

3.自損事故で補償を増額する方法

(1)自損事故で増額するために知っておきたい補償の内容

自損事故でケガをして治療費などがかかった場合、補償を増額できるか気になる方もいらっしゃることと思います。

この場合、人身傷害補償保険や自損事故保険でどこまで保障されるかがネックになってきます。

ただし、補償は増額できる部分とできない部分があります。
そこで、まず補償の内容についてみていきましょう。

自損事故でけがなどをした場合、次の3つの種類の損害が発生する可能性があります。

①積極損害

交通事故で支払うことを余儀なくされ、実際に支払うことで発生した損害で治療費、通院交通費、葬儀費用などを指します。

②消極損害

交通事故に巻き込まれなければ、得られたであろう利益で休業損害や逸失利益などが含まれます。

③慰謝料

交通事故の被害にあったことによって被った、精神的な苦痛に対して支払われる損害賠償で、後遺障害が残ったことについての慰謝料や死亡慰謝料などがあります。

これらの損害についてみるとまず、積極損害は実際に払った費用なので、増額することはできません。

次に、慰謝料は、人身傷害補償保険であっても、自損事故特約であっても任意保険の約款で上限金額が決められているために増額することはできなくなっています。

しかし、消極損害である逸失利益と休業損害については、増額できる場合があります。

(2)消極損害の補償を増額できる可能性

消極損害に含まれる休業損害とは、交通事故のために仕事ができなかったために得られなかった金額をいい、逸失利益とは、後遺症(後遺障害に認定されたもの)が残ったために将来的に得られなくなった金額のことをいいます。

どちらも、保険契約の約款では、計算方法などは記載してあるものの慰謝料に比べて曖昧な表記になっていることが多いのが実情です。

また、保険会社は、自社の利益を確保しなければならないので、できるだけ少ない金額で補償が住むような認定を行ってくるのが通常です。

そのため、交渉によって、休業補償や逸失利益の増額を目指すことが可能になるのです。

具体的には、現在の収入について争ったり、認定された後遺障害の等級に基づいた適正な逸失利益の計算のし直しを求めたり、働けない期間である労働能力喪失期間が本来ならもっと長期間に亘ることを争う等の方法で、増額を交渉していくことになります。

ただし、こうした交渉や、主張する金額については、専門的な計算が必要になるため、なかなか本人では難しいのが実際のところです。

自損事故を起こして、補償の増額をしたい場合には、弁護士に相談してみることをおすすめします。

4.自損事故で増額する場合にすべきこと

(1)警察への届け出は必ず行う

上記のように、自損事故で補償の増額を目指すためには、前提としてやっておいた方がいいことがあります。

それは、警察への報告です。
自損事故の場合、警察への報告は不要と考えている人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。

事故の発生日時と場所、損害の程度、事故後に行った安全確保のための行動、の3つを警察に電話で伝えましょう。

その後の対応は警察が進めてくれるので、特に心配する必要はありません。

(2)警察への事故届が必要な理由

自損事故を起こしてケガを負うなどした場合、上記のような保険を利用して補償を受ける場合に、事故証明の提出を要求されることがあります。

自損事故の直後に事故の届け出をしておけば、簡単に取得することができます。

また、事故届を出しておけば、道路に瑕疵あった場合には管理者に損害賠償を求めることができる場合もあります

反対に、事故届を出しておかなければ、警察が後々事故届を受理してくれなくなったり、保険会社から「やましいことがあるから警察に届け出なかったのではないか」などと、保険金詐欺を疑われるなどして補償が受けられない恐れもあります。

自損事故を起こした場合でも、警察への届け出は必ずすぐに行っておきましょう。

まとめ

いかがでしょうか。
自損事故の場合に利用できる保険の種類が意外に多いことに驚かれた方もいるかもしれません。

保険を適切に利用し、行うべき主張をきちんとすれば、自損事故であっても補償の増額が期待できる場合があります。

しかし、交渉の相手である保険会社は、交通事故対応になれており、交渉のプロです。
そのため、ご自身ではなかなか交渉を有利に進めるのは難しいのが実情です。

自損事故を起こすと、後悔の念が先にたって、なかなか交渉しようという気持ちが起きない

方もいるかもしれませんが、受け取るべき適正な補償を受け取ることに問題はありません。

まずは、信頼できる交通事故に強い弁護士にご相談ください。

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