近年、「B型肝炎訴訟」の話を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
「B型肝炎訴訟」とは、国による集団予防接種等で、注射器が連続使用されたことにより、幼少期にB型肝炎ウイルスに持続感染したとされる人が、国に対して損害賠償を求めている訴訟のことです。国が定めているB型肝炎の感染原因や病状に該当する人は、訴訟をおこして国から給付金を受け取ることができるのです。
B型肝炎訴訟を起こして給付金が受け取れるようになったのは、平成24年以降と古い話ではなく、まだ一般的に認知されているとは言い難い状況です。そのため、「ご家族に該当者がいるが、どう対応したらいいかわからない」「B型肝炎訴訟を起こしたいが、何から始めたらよいかわからない」など、不安に思われる方も少なくないでしょう。
現在、日本国内では約45万人の人がB型肝炎に感染しているといわれています。平成26年の厚生省の発表によると、そのうちB型肝炎訴訟を起こして実際に和解したのは、提訴者数15,456人のうち、和解者数7,900人といわれている。このように、実際にB型肝炎訴訟を起こしても、和解に至る割合は約半数というのが実情で、和解に時間がかかるというのが理由の一つとなっています。
他方で、B型肝炎訴訟で国からの給付金を受け取るには時間的制約があります。もし、ご自身やご家族がB型肝炎訴訟の対象になる場合は、早めの対応が望ましいです。今回は、B型肝炎訴訟で和解するための手続きについて解説します。
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目次
1.B型肝炎訴訟で和解して給付金をもらえる人とは?
(1)B型肝炎が和解給付の対象にはなるケースとは
血液検査でB型肝炎に感染していると判明しても、すべての人が国が定める給付金がもらえるわけではありません。B型肝炎で国の給付金の対象となるのは、B型肝炎の感染に国の過失責任が認められた場合に限られます。
昭和23年以降、日本では予防接種法という法律に基づいて、幼少期の集団予防接種が全国民・住民に義務付けられていました。ところが、この集団予防接種などで、国から注射器を交換する旨の指導がなされていなかったために、多くの人がB型肝炎ウイルス(HBV)に感染しました。国が指導不足だったという過失を認め、B型肝炎ウイルスに罹患した対象者に救済措置がとられることになったのが、B型肝炎訴訟の内容です。
以下の条件にあてはまる方は、B型肝炎訴訟の和解給付金対象になる可能性があるので、まずは確認してみてください。
- B型肝炎ウイルスに感染している、または感染していた方
- 昭和16年7月2日~昭和63年1月27日までに生まれた方
- 7歳に集団予防接種等を受けた方 (昭和23年から昭和63年までの間に限る)
- B型肝炎を発症していないが集団予防接種を受けた方
- 母親が集団予防接種などで感染し母子共にB型肝炎に感染した方
- B型肝炎ウイルスが原因で亡くなられた方の相続人
(2)感染原因で異なる、給付対象の条件と必要書類とは
B型肝炎に感染する原因として、日本では「垂直感染(胎児が母親の体内にあるB型肝炎ウイルスからの感染)」と「水平感染(不衛生な注射針の使用などの医療事故による感染)」の2つのルートが考えられています。
国が定めているB型肝炎訴訟で救済の対象となるのは、B型肝炎ウイルスに持続感染しており、さらに、集団予防接種の注射器の連続使用などでB型肝炎に感染した一次感染者、または一次感染者の母親から垂直感染を受けた二次感染者でなければなりません。
①B型肝炎の一次感染者と証明する条件とは
集団予防接種などが原因でB型肝炎の一次感染者となったことを証明するには、以下の5つの条件を満たす必要があります。
- B型肝炎ウイルスに持続感染していること
- 満7歳までに集団予防接種(もしくはツベルクリン反応検査)を受けていること
- 集団予防接種などにおいて注射器の連続使用があったこと
- 母子感染ではないこと
- 集団予防接種など以外で感染した原因が一切ないこと
また、一次感染したことを証明するためには、以下のような書類の準備が必要です。
- B型肝炎ウイルスの持続感染を証明する血液検査結果の書類
- 満7歳までに集団予防接種を受けた証明となる書類
- 母子感染していないことを証明する書類
- 集団予防接種など以外で感染原因がないことを証明する書類
- 病状や亡くなった原因を示す書類
②B型肝炎の二次感染者と証明する条件とは
母体にいる間に、胎児が一次感染者である母親の体内にあるB型肝炎ウイルスから母子感染したことで二次感染をしたことを証明するには、以下の3つの条件を満たす必要があります。
- 二次感染者の母親が「一次感染者だと証明するために必要な5つの条件」をすべて満たしていること
- B型肝炎ウイルスに持続感染していること
- 母子感染であること
また、二次感染したことを証明するためには、以下のような書類の準備が必要です。
- 母親が一次感染者の条件をすべて満たしていることを証明する書類
- B型肝炎ウイルスの持続感染を証明する血液検査結果の書類
- 母子感染であることを証明する書類
- 病状や亡くなった原因を示す書類
このように、一次感染したか、二次感染したかによって、必要な書類が異なります。いずれの場合でも、詳細な書類が必要になるので、不明な場合は弁護士に相談して準備をすすめましょう。
2.B型肝炎訴訟で和解するための手続きの流れとは?
B型肝炎に感染したことで国から給付金を受け取るためには、裁判をおこさなければいけません。具体的には、以下のような流れで準備を進めていくことになります。
(1)準備
まずは自身が、B型肝炎訴訟に該当するかどうかを調査する必要がありあす。上記のチェック項目にあてはまるか確認し、不明な場合などは専門家である弁護士などに相談して、該当するかどうかチェックしてみてください。
(2)書類の収集・請求内容の調査
B型肝炎訴訟を起こすには、まずは自身が和解給付金の支払いを受ける要件を満たしているかどうかを証明する書類をそろえる必要があります。そろえるべき書類は、一次感染したか、二次感染したかによっても異なる上、必要となる血液検査の種類なども多岐にわたります。ご自身で簡単にそろえられる書類ばかりではないので、B型肝炎訴訟の実績のある弁護士に相談するなどして、書類の収集を進めるとよいでしょう。
(3)裁判
弁護士に依頼した場合、弁護士が国に対して和解給付金を請求する訴状という書面を策せし、収集した書類と合わせて裁判所に提出します。これらは、ご自身でも行うことができます。訴状の提出により、裁判手続きが開始し、和解手続きが行われることになります。
(4)和解成立
病状に応じた金額で和解が成立すると、その内容に基づいて和解調書が作成されます。和解調書とは、国と被害者の間で合意した給付金の支払いに関する内容が記載された書面のことです。この和解調書を社会保険診療報酬支払基金という担当所に提出することによって、和解で合意した金額の給付金を受け取ることが可能になるのです。
なお、B型肝炎にり患した被害者が訴訟を起こし、給付金支給による救済認定を受け、和解後に支給される支給金の中には、特定B型肝炎ウイルス感染者であることを確認するための検査費用のほか、弁護士費用(給付金額の4%に相当する額)追加支給される場合があります。
B型肝炎訴訟は、個人でも起こすことはできますが、感染経路を立証する資料を揃えるために医療機関に度々通ったり、裁判所とも継続的なやり取りをする必要があり、相当な負担がかかることが予想されます。裁判の相手、つまり被告となる国は専門知識を持っているので、公平な立場で交渉するためにも、不安な場合は弁護士を間に入れて交渉をすることを検討することをお勧めします。弁護士を間に入れた場合、和解が成立するまでにかかる期間の目安は、特に問題がなければ早くて6カ月程度、長くて1年程度で和解が成立することが多いといわれているので、参考にしてみてください。
3.症状・病態によって異なる、B型肝炎訴訟の和解給付金額とは?
(1)病態によって異なるB型肝炎給付金の金額とは
B型肝炎の給付金は、病態によって給付される金額が異なります。なお、発症から20年という期間(除籍期間)が、給付金の金額や受給要件の一つの区切りとなるので注意が必要です。具体的には、以下を参考にしてみてください。
①死亡・肝がん・肝硬変(重度)の場合
- 発症後20年経過していない方(肝がんが再発した場合は再発時から起算):3,600万円
- 発症後20年経過している方(肝がんが再発した場合は再発時から起算):900万円
②肝硬変(軽度)の場合
- 発症後20年経過していない方:2,500万円
- 発症後20年経過している方で、現在肝硬変の方、治療経験がある方:600万円
- 発症後20年経過している方で、治療経験がない方:300万円
③慢性B型肝炎の場合
- 発症後20年経過していない方:1,250万円
- 発症後20年経過している方で、現在慢性肝炎の方、治療経験がある方:300万円
- 発症後20年経過している方で、治療経験がない方:150万円
④無症候性キャリア(特定無症候性持続感染者)の場合
- 感染後20年経過していない方:600万円
- 感染後20年経過した方:50万円
B型肝炎訴訟での和解に関するまとめ
いかがでしたか?B型肝炎給付金、B型肝炎訴訟という言葉を耳にしたり、ご自身や家族が対象になるかもしれないと思っても、実際にどうしたらよいか悩まれる方は多いのではないでしょうか。B型肝炎の和解給付金の申請には時間的期限もあります。心当たりがある方は、まずは弁護士などの専門家に相談されることをお勧めします。