相手の信号無視で交通事故になったのに、自分にも過失割合があると言われた・・・
不注意で信号無視をして交通事故を起こしてしまったが過失割合が気になる・・・
信号無視が交通事故につながるケースは少なくありませんが、過失割合がどの程度認められるかはケースや事故の当時の状況によって異なります。
信号無視による人身事故の過失割合の基本的な認定方法や納得のできない過失割合が認定された場合には交渉することができるのか気になる方も多いことでしょう。
今回のテーマは、信号無視で交通事故が発生した場合に過失割合がどのように認定されるのか、また納得でいない場合に交渉をすることができるのかについてです。
万が一交通事故の当事者になった場合に、少しでもお役に立てば幸いです。
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目次
1.信号無視の交通事故と過失割合の関係とは
(1)過失割合が損害賠償の金額に影響する理由
信号無視が原因の場合に限らず、交通事故にあいケガをするなどの被害を被ったような場合には、運転手など事故の相手に対して損害賠償の請求をすることができます。
ただ、その時に、被害者側であったとしても自身の過失割合分は減額して請求できる損害賠償の額が計算されることになります。
それだけに、過失割合は、交通事故にあった場合に損害賠償額を決める上で重要な要素となるのです。
信号無視が原因で交通事故が発生した場合、信号無視をした側の過失割合は高くなります。
しかし、車を運転する側からすると、例えば交差点で信号無視をした車に衝突されたとしても過失割合が50対50で認定されることもあるのです。
また、必要に応じて「交通事故の過失割合とは?不満がある場合の対処方法」も併せてご参照ください。
(2)信号無視の交通事故でも過失割合が100対0にならない理由
上記のように、相手が交差点で信号無視をしたために交通事故になったとしても、過失割合が50対50などで認められ示談金の計算の際も、この過失割合が適用されることがあります。
こうしたケースでは、実は実務では少なくありません。
これは、信号無視をした側がその事実を認めない限り、相手の信号無視を証明する客観的な証拠がなければ、信号無視があったということを認めてもらえないからです。
具体的な客観的証拠の例としては、ドライブレコーダーに相手が信号無視をしている様子が映っている画像などがこれにあたります。
反対に、どれだけ鮮明な記憶があったとしても、当事者の言い分だけでは客観的な証拠としては認められません。
そこで、過失割合を争って、紛争処理センターや裁判で争うことになった場合に、客観的な証拠がない限り、本人の主張は完全には信頼できないと考えられ、50:50など、相手に100の過失割合は認められないということになるのです。
では、具体的に信号無視でどの程度の過失割合が認められるか、自動車と自動車同士の事故のケース、自動車対バイクの事故のケース、自動車対自転車の事故のケース、自動車対歩行者の事故のケースに分けて見ていきたいと思います。
また、必要に応じて「交通事故の証拠にも使える?ドライブレコーダーの種類と活用方法!」や「具体的な事例で見る交通事故の過失割合」、「過失割合が100:0(10:0)になるのはどんな交通事故?保険会社との示談で被害者がやるべきこととは」も併せてご参照ください。
2.自動車対自動車の信号無視による交通事故のケース
(1)直進自動車と直進自動車の交通事故のケース
信号機が設置されている交差点で、直進する自動車同士が信号無視が原因で交通事故になった場合の過失割合は次のようになっています。
①片方の信号が青信号、他方が赤信号の場合
車は信号に従うというルールが日本にはあるので、信号機がある交差点では信号機の状況が過失割合の認定に絶対的に影響します。
そこで、この場合の過失割合は、「青信号の自動車:赤信号の自動車=0:100」となるのが原則です。
②片方の信号が赤信号、他方が黄信号の場合
赤信号と黄信号では、危険性に大きな違いがあるとされ、「赤信号の自動車:黄信号の自動車=80:20」と判断されます。
これは、運転者の感覚としても、黄信号は青信号に近いと捉えられていると考えれていることも影響しています。
ただし、黄信号で交差点に入った直後に赤信号に変わったようなケースでは、黄信号の側に10パーセントが加算されて修正され「70:30」と認定されます。
③両方の信号が赤信号の場合
赤信号同士の事故の場合は、危険性に違いはなく、「赤信号の自動車:赤信号の自動車=50:50」とされます。
ただし、上記の過失割合は、個別の事情を排除した基本の過失割合です。
青信号の車の方に安全の不確認や前方不注意、携帯電話で通話中だったことなどの過失がある場合には、10パーセントの修正要素が加えられることになります。
もし、居眠り運転や酒酔い運転、30キロ以上のスピードオーバーがあったような場合は、さらに悪質と判断されて修正要素は20パーセントとなります。
(2)右折自動車と直進自動車の交通事故のケース
片方の自動車が右折する場合、左方優先とするのが法律のルールです。
ただし、実際には車がきちんと減速していたかどうかによって、過失割合が変動することに注意が必要です。
①直進車が黄信号、右折車が交差点に進入した時は青信号で右折時は黄信号だった場合
この場合、「直進車:右折車の過失割合は70:30」となります。
ただし、直進車に速度違反や交差点内での停止などの違反行為があった場合には、10~20パーセントの修正要素が加えられます。
右折車の修正要素としては、徐行義務違反、右折合図なし、早回り右折、大回り右折などの違反行為や右折車が大型車であるなどの事情があった場合に5~10パーセントの事情が加えられて判断されます。
②直進車が赤信号、右折車が交差点に進入した時は青信号だったが右折時は赤信号だった場合
この場合、直進車が黄信号だった場合に比べて、直進車が優先される程度を減らして考えることになります。
従って、「直進車:右折車の過失割合=90:10」と考え、事情に応じて上記のような修正要素が考慮されます。
③両方とも黄信号の場合
直進車も右折車も両方の自動車が信号違反とされるため、「直進車:右折車の過失割合は50:50」とされます。
上記同様に、直進車、右折車の状況に応じて修正要素が加えられます。
④両方とも赤信号の場合
直進車も右折車も、両方の自動車が信号違反とされるため、「直進車:右折車の過失割合は50:50」とされます。
①に記載した内容と同様に、直進車、右折車の状況に応じて修正要素が加えられます。
3.自動車対バイクの事故のケース
自動車とバイクの交通事故の場合、基本的に過失割合は同程度と考えます。
ただし、バイクの方が死傷の結果を生じやすいため若干バイクに有利になるケースもあります。
ただし、バイクがノーヘルメットで運転していたような場合は、信号無視の過失割合にさらに修正要素として過失が加えられることがあります。
(1)片方が赤信号、片方が青信号の交通事故の場合
自動車が赤信号、バイクが青信号の場合は、信号機の状況が絶対的に過失割合の判断に影響するため、過失割合は「自動車:バイク=100:0」と認定されます。
バイクが赤信号、自動車が青信号で交差点に進入して事故が起きた場合も同様に、信号の状況が重視され、「自動車:バイク=0:100」の過失割合となります。
(2)片方が赤信号、片方が黄信号の場合
自動車が赤信号、バイクが黄信号の場合、自動車の場合と同様に黄信号は青信号に近く認識するというドライバーの意識が反映され、黄信号の側に認められる過失割合はさほど大きくありません。
この場合は、「自動車:バイク=90:10」と認定されます。
ただし、黄信号で入ったバイクの側がすぐに赤信号に変わったような場合は、過失割合が増やされる方向で修正されます。
自動車が黄信号で、バイクが赤信号で事故が発生した場合の過失割合は「自動車:バイク=30:70」で認定されます。
自動車を運転する側からすると赤信号で交差点に進入したバイクの側に過失がもっと認められても良いのではないかと思われるのではないかと思います。
これは、バイク事故は、自動車に比べて、交通事故に遭った場合に亡くなったりケガをするリスクが高くなるため、自動車側により重い過失割合が設定されるためです。
(3)両方とも赤信号の場合
上記で、バイク側の過失が低く設定されることをお話ししましたが、その理由から双方赤信号であっても過失割合は50:50になりません。
この場合は、「自動車:バイク=60:40」で基本の過失割合が認定されることになるのです。
4.自動車対自転車の事故のケース
自動車が自転車と接触するなどして交通事故につながった場合、バイクの場合以上に自転車側の過失が低く設定される傾向にあります。
バイクの場合と同様、自動車よりも自転車の方が、交通事故で死傷する可能性が高いためです。
信号機のある交差点で発生した、信号無視による交通事故では、具体的には以下のように基本の過失割合が認定されることになります。
(1)片方が赤信号、片方が青信号の場合
自動車が赤信号、自転車が青信号の場合は、信号機の状況が絶対的に影響するため「自動車:自転車=100:0」で認定されます。
自転車が赤信号、自動車が青信号の場合は、自転車が死傷事故につながりやすい点が考慮され赤信号でも過失割合100とはなりません。
たとえ自動車が青信号だったとしても、「自動車:自転車=20:80」で自動車側に2割の過失が基本の過失割合として認定されることになります。
(2)片方が赤信号、片方が黄信号の場合
自動車が赤信号、自転車が黄信号のケースでは、自動車側に高い過失が認められ「自動車:自転車=90:10」と認定されます。
逆に、自転車が赤信号、自動車が黄信号のケースでは「自動車:自転車=40:60」として、自動車側の過失割合が高く認定されるのが基本です。
(3)両方赤信号の場合
双方の信号が赤の場合でも、基本の過失割合は「自動車:自転車=70:30」と自転車側の過失は低く認定されます。
5.自動車対歩行者の事故のケースに
自動車と歩行者の間で交通事故が発生したような場合、歩行者は交通弱者として扱われ過失割合の認定でも基本的に優先されます。
その上で、横断歩道上の事故か否かが検討され、横断歩道の信号が青信号のケースでは過失相殺はされないのが原則です。
自動車と歩行者の信号無視による交通事故の場合の過失割合は、自動車側の前方不注意などが大きく認められる傾向にあります。
(1)片方が青信号、片方が赤信号の場合
自動車が赤信号で、歩行者が青信号で横断しているような場合は「自動車:歩行者=100:0」で基本の過失割合が認定されます。
他方、歩行者が赤信号で信号無視をしており、青信号で進んだ自動車が衝突して事故を起こしたようなケースでは「自動車:歩行者=30:70」とされています。
(2)片方が赤信号、片方が黄信号の場合
自動車が赤信号で、歩行者が黄信号で交差点を横断しようとしている時に事故が起こったようなケースでは「自動車:歩行者=90:10」と歩行者の過失はとても低く認定されます。
反対に、歩行者が赤信号で信号無視をしているところに、自動車が黄信号で進入して事故を起こした場合には過失割合は、基本的に「自動車:歩行者=50:50」と認定されます。
自動車側からすると厳しい過失割合ですが自動車と歩行者では、歩行者の過失が低く認定されるのが実務の運用です。
(3)両方とも赤信号の場合
自動車も歩行者も赤信号で渡るという信号無視をして事故が発生すると基本の過失割合は「自動車:歩行者=80:20」と認定されます。
上記と同様に、歩行者の過失割合は、同等の条件でも低く認定されるためです。
6.過失割合に納得できない場合の交渉方法
交通事故において過失割合をどう決めるかは、以下のような要素が考慮されます。
- 当事者(自動車、バイク、自転車、歩行者、年齢など)
- 交通の条件(道路の広さ、信号の有無、右折か左折時の事故かなど)
- 特殊な事情(信号無視があったか、飲酒運転があったかなど)
過失割合に納得ができない場合は、事実と法的知識をもとにきちんと適正な過失割合を認定してくれるよう主張していくことができます。
事実については、警察が作成した実況見分調書などの刑事記録をベースに評価されます。
他方、法的知識については、これまでの裁判例や過失が認定される仕組みなどがもとになります。
判例と過失割合については、「別冊判例タイムズ 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という本にまとめられた内容が一つの基準とされています。
とはいえ、実際に刑事記録を取り寄せ、判例をもとに過失割合を交渉していくのは、極めて高い法的スキルや交渉術が必要になります。
ご自身の交通事故で過失割合に疑問がある場合は、まずは弁護士にご相談下さい。
また、必要に応じて「交通事故の過失割合とは?不満がある場合の対処方法」も併せてご参照ください。
まとめ
いかがですか。
同じ信号無視による交通事故でも、当事者の状況によって過失割合が大きく変わることに驚いた方もいるのではないでしょうか。
特に、黄色信号で交差点に進入したケースでは、自動車か自転車や歩行者かといった条件によって過失割合がかなり変わってきます。
車社会の今日では、ご自身が信号無視をして交通事故に発展した場合だけではなく、相手の信号無視で交通事故になることも考えられます。
そのような場合の過失割合に納得できない場合は、弁護士を通して交渉を進めていくことが有効な方法と言えるでしょう。