もともと両親が住んでいた実家を相続してしまうと空き家の管理が大変です。
空き家を所有しているだけで、毎年固定資産税がかかってしまいますし管理費用もかかります。
それどころか空き家を放置していると固定資産税が大きく上がってしまうおそれもありますし、他人に損害を与えてしまうと賠償問題に発展する可能性もあるので深刻です。
今回は、今後少子高齢化社会が進んで行く日本において避けられない問題です。
根深い空き家問題について、年間の出費額や対処方法を中心に解説します。
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目次
1.空き家問題とは
最近「空き家問題」が大きな社会問題となっています。
空き家問題とは、特に地方部において人が居住していない空き家が増加している問題です。
ただ、ひと言で「空き家」と言っても、実はいくつかのパターンがあります。
- 二次的住宅(常時人が住んでいるわけではないが、時折使われている)
- 賃貸用住宅(賃貸に出そうとしているが、借り手が見つかっていない)
- 売却用住宅(売却に出されているが、買い手がついていない)
- その他(まったく使われていない、用途不明の状態)
特に問題なのは、4.の「その他」に分類される空き家です。
田舎の実家を相続してしまった場合などには、賃貸するのも売却するのも面倒ですから放置してしまい、4.のような状態になってしまう可能性が高くなります。
しかも、こうした空き家は年々増え続けています。
総務省統計局が5年ごとに住宅や土地についての統計調査を行って結果を公表しているのですが、その推移を確認すると昭和38年から平成25年までの間に、どんどん空き家が増え続けています。
最新の結果を見ると平成15年には659万戸だったものが、平成25年までの10年の間に820万戸にまで増加しています。
田舎の空き家を相続してしまって対応に困る、という状況は、決して他人事ではありません。
2.空き家の維持費用の内訳
空き家を相続してしまうと、費用的にも多くの負担が発生します。
以下で、空き家の維持費用の内訳を説明します。
(1)固定資産税
まずは、固定資産税の負担があります。
固定資産税は、自治体が地域内に存在する不動産の所有者に課す税金です。
固定資産税の税率は、不動産の評価額(固定資産税評価額)の1.4%です。
たとえば、1000万円の価値のある不動産の場合、年間14万円の固定資産税の負担が発生します。
(2)都市計画税
所有している空き家によっては、都市計画税という税金が課税される可能性があります。
都市計画税は、市街化区域内の不動産に対して課税される税金です。
都市計画税の税率は、一般的に固定資産税評価額の0.3%です。
たとえば1000万円の価値のある不動産の場合、年間3万円の都市計画税がかかります。
(3)火災保険
空き家を所有している場合、火災にそなえて火災保険にも加入していることが通常です。
保険に加入していないと火災が発生したときに何らの補償も受けられないことになってしまうからです。
火災保険の費用は、補償内容などによっても異なりますが年間数万円程度はかかるでしょう。
(4)光熱費
人が居住していない空き家であっても、たまに訪れて管理をしないといけないので、水道光熱費の契約を継続することがあります。
すると、最低限の基本使用料が発生してしまいます。
年間で2~3万円程度にはなるでしょう。
(5)修繕費用
空き家を放置していると傷んでくるものです。
瓦が落ちそうになったり雨漏りが発生したり、壁材がはがれ落ちたり、ベランダの支柱がさびてしまったりすることもあります。
このような場合、放っておくと危険なので修繕が必要です。
金額は、工事の内容によってさまざまですが、1回について数十万~数百万円の費用が必要となります。
(6)その他の管理費用
たとえば、庭木を剪定する場合に業者に依頼すると1回数万円はかかります。
豪雪地帯の空き家の場合、雪下ろしなどの作業をしなければなりませんが、これも業者に依頼すると1回数万円の費用が必要です。
(7)管理業者の費用
自分では空き家の管理ができない場合、業者に管理を依頼することも可能です。
金額は、依頼内容によって異なりますが月1回巡回してもらう場合には毎月7000円~8000円程度かかります。
(8)不法投棄されたごみの処分費用
空き家を放置しておくと、敷地内にごみを不法投棄されるケースがあります。
犯人が発見されない場合には、所有者が自己負担でゴミ処分する必要があります。
以上のように、空き家を放置しておくと、税金、保険料、光熱費、管理費用などだけで年間10万円近くかかることもありますし、修繕などを行うとそれだけで数十万円、数百万円がかかってしまうので非常に大きな負担になります。
3.空き家の固定資産税が6倍になる「空き家対策基本法」とは
(1)空き家に対する固定資産税軽減措置
空き家を所有している場合、固定資産税と都市計画税がかかりますが現在の時点では、こうした税金は軽減措置を受けています。
土地上に居住用の建物が建っている場合の軽減措置があるからです。
軽減の割合は、土地の面積によって異なります。
土地の面積 | 固定資産税 | 都市計画税 |
200㎡までの部分 | 6分の1に軽減 | 3分の1に軽減 |
200㎡を超える部分 | 3分の1に軽減 | 3分の2に軽減 |
たとえば、200平方メートル以下の土地で1000万円の価値がある場合、固定資産税は本来1.4%の14万円ですが、軽減措置によって23333万円となります。
都市計画税については、本来0.3%の3万円ですが軽減措置によって1万円となります。
(2)空き家対策基本法による「特定空き家」とは
ところが、最近、空き家対策基本法という法律ができて危険な空き家に対する制裁が導入されています。
空き家対策基本法では、周囲の環境に悪影響を与えるおそれのある「特定空き家」を指定し、特定空き家に指定された場合には、上記の軽減措置を適用しないこととしています。
特定空き家に指定されるのは、以下のようなケースです。
- 放置すると、倒壊が起こるなどして、保安上危険になるおそれがある
- 放置すると、著しく不衛生な状態が発生するおそれがある
- 空き家によって著しく周囲の景観が損なわれている
- その他、地域の生活環境を保全するために空き家の放置が不適切な状態
いったん特定空き家に指定されてしまったら、固定資産税や都市計画税が大きく上がってしまうので、毎年の税金負担額が大きくなります。
また、危険な特定空き家の場合、自治体が強制撤去してしまうこともあります。
その場合、撤去費用については自治体から所有者に対して請求されます。
4.空き家問題への対処方法
以上のように、実家の空き家を相続して何もせずに放置していると、今後はますます状況が厳しくなることが予想されます。
以下で、空き家問題の対処方法を説明します。
(1)売却する
1つは、空き家を売却することです。
売却してしまったら、その後の税金負担や管理費用の負担は一切ありません。
ただし、不動産を売却すると譲渡所得税がかかることは意識しておくべきです。
譲渡所得税とは、不動産を売却したことによって得られた利益にかかる税金です。
そして、相続した空き家を売却するときには、この譲渡所得税に特例が設けられています。
特例を受けると3000万円までの譲渡所得に対する税金が控除されます。
特例が適用される条件は、以下の通りです。
- 平成28年4月1日から平成31年12月31日までの期間に空き家を売却すること
- 相続発生から3年が経過する日の年の12月31日までに売却すること
- 昭和56年5月31日以前に建てられた一戸建ての建物(マンションなどには適用されません)
- 相続開始まで人が居住しており、相続によって空き家となった
- 相続が開始してからは、人が居住していない(賃貸に出したりしていない)
- 売却金額が1億円を超えていない
- 行政から証明書等の発行を受けている
また、売却の際、以下の条件を満たすことも必要です。
- 建物を壊して更地にする
- 建物を残したまま売却するときには、耐震リフォームを実施する(既に耐震性を有している場合には不要)
特に、相続発生から3年後の12月31日までという期限があることには、注意が必要です。
売却には時間がかかってしまうことも多いので、特例の適用を受けたいのであれば早めに空き家の売却活動を開始しましょう。
(2)賃貸する
空き家を売らずに賃貸に出す方法もあります。
賃貸に出して人が住んでいると自然と住居が管理されるので傷みが進むこともありませんし、特定空き家に指定されるおそれもありません。
近年では、地方移住に関心を持つ都市部の人も増えているので、場所によっては田舎でも賃貸需要はあります。
自治体の空き家バンクなどに登録して借り手を探すと良いでしょう。
(3)シェアハウスにする
空き家が広い住宅の場合には、パーテーションを区切ってシェアハウスにする方法もおすすめです。
田舎に一時滞在したい若者などの場合、家賃を節約するためにシェアハウスに住みたいという需要がありますし、シェアハウスにすると複数の人から賃料が入るので、効率的に収入を得ることができます。
(4)移住者の体験用住宅に提供する
地方移住を希望する人であっても、いきなり完全に移住することについては躊躇するケースが多いです。
そこで、空き家をそういった人のための体験用住宅として提供することが考えられます。
気に入ってもらえたら、そのまま賃借を続けてもらうこともできますし条件が合えば、売却することも可能となります。
(5)地域に提供する
空き家を売ることも賃貸に出すことも難しそうならば、地域に提供することも考えられます。
たとえば、地域住民のコミュニティの場として使ってもらうなどすれば、最低限の管理はしてもらえますし、犯罪に利用されたりするおそれはなくなります。
土地の場所や住宅の状態によっては自治体や各種の団体、法人などに寄付することができるケースもあります。
たとえば、自治体に寄付した古民家が文化財として公開されて活用されている事例などもあります。
(6)リフォームする
空き家をそのままでは活用できない(しにくい)場合、まずはリフォームをするのも1つの方法です。
たとえば、内装をきれいに整えたら賃貸に出せることもありますし、シェアハウス用にリフォームすることも可能です。
売却も容易になるでしょう。
自分で住むとしても、リフォームが必要なケースは多いでしょう。
リフォームによって、不動産の可能性は大きく広がります。
(7)建て替える
空き家の傷みが激しい場合などには、壊して建て替えることも考えられます。
一戸建てには限らず、賃貸アパートなどを建てるとたくさんの賃借人を募って収益を上げることも可能となります。
周辺の賃貸需要や賃料相場などを調べた上で、採算がとれるようなら検討すると良いでしょう。
まとめ
以上のように、空き家を相続するといろいろな費用が発生して大きな負担が発生しますが、意外とたくさんの活用方法があるものです。
ケースに応じた活用方法を選択して、賢く空き家問題を乗り切りましょう。