未払い残業代請求をしたい。
労働審判を利用したいので申立書の書き方を知りたい。
この記事をお読みの方の中にはそのようにお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
あなたが未払い残業代の問題で会社側と争っており、当事者同士の話し合いでは言い分が平行線のままなので裁判所という公平な第三者にジャッジを委ねたいと考えた場合、いくつかの方法が存在します。
その一つが、労働審判です。
今回は、労働審判の概要と申立てに必要な申立書の書き方を活用を解説するのでぜひ参考にしてください。
※この記事は2017年5月29日に加筆・修正しました。
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目次
1.労働審判とはどういった制度か
(1)労働審判制度の概要
労働審判は、労働者と使用者との間の労働関係の紛争を迅速かつ適正・柔軟に解決するために導入された制度です。
迅速かつ適正ということを保障するため、労働審判官と呼ばれる裁判官1名と労働関係に関する専門的な知識と経験を有する者として労働団体及び使用者団体から推薦された労働審判員2名で組織された労働審判委員会が、原則として3回以内の審尋で審理し解決を図るという制度です。
(2)労働審判で取り扱いの対象になる事件とは
労働審判で扱う対象となる事件は、「個別労働関係民事紛争」です。
つまり、個々の労働者と会社との間での民事に関する紛争ということになるので、例えば、個別の労働者の相談を受けた労働組合が申立てを行うことはできません。
また、行政関係、つまり公務員も対象外となります。
さらに、同僚や上司といった会社内の個人を対象とする申立てを行うことができません。
このような申立てが行われた場合は、不適法として却下されることになっています。
(3)スピード感が特徴、未払い残業代の申立ても可能
争いの内容については、原則として3回の審尋で決着してしまいます。
その点を納得して申立てる側が厳密な認定を望まず早急な解決を望むのであれば、どのような事案でも取り扱い可能です。
具体的には、解雇、セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、降格や配転の無効の争いなどがあるでしょう。
未払い残業代についても、話し合いで早期に解決したいと望むならば労働審判での解決は十分可能です。
2.労働審判の申立書の雛形ダウンロード
ここでは労働審判の申立書の雛形をダウンロードできるようにしました。
是非ご利用下さい。
3.労働審判の申立書の書き方
次は申立書の書き方についてご説明していきます。
お手元に雛形をご用意頂きながら読み進めて下さい。
(1)日付、裁判所名、原告・被告欄
それぞれ該当箇所に適切な事項を記載して下さい。
(2)申立ての趣旨
ここでは残業代として請求する金額を記載することになります。
(3)申立ての理由
ここでは、残業代請求の根拠を記載することになります。
たとえば以下のような内容です。
- 争いになるポイント(残業代の金額や、そもそも残業の事実の有無など)
- 争いになるポイントに関する証拠の有無
- 申立てに至るまでの当事者間での話し合いの経緯
4.労働審判申立書作成のポイント
労働審判はスピーディーに進んでいく点が一つの特徴です。
もっとも、これは裁判所側だけで実現できるものではなく、申立人及び相手方の協力が不可欠です。
そして、どれだけ入念な準備を行ったかは審尋の結果に反映してくることになります。
そのため、特に申立書の記載が重要となってきます。
申立人は申立書に、申立ての趣旨及び理由を書くだけでなく予想される争点及びその争点ごとの重要な事実や予想される争点ごとの証拠、さらには申立てが行われる以前に当事者間でなされた交渉の経緯や申立てに至る経緯をわかりやすく記載することが大切です。
5.労働審判の申立ての際に必要な書類
労働審判の申立てに必要な書類のうち、メインとなるのは申立書と証拠書類です。
裁判所によっては、証拠説明書が必要な場合もあります。
つまり、申立書の記述内容とそれを補完する証拠書類をいかに充実させるかが結果を左右するとも言えるでしょう。
申立書の記述内容については、先の記載例を参考にして裁判官や審判員といった第三者にわかりやすい記述を心がければよいでしょう。
ことさら感情的な記述を書き連ねるより、客観的な事実を証拠で補完しながら説明することを心がけましょう。
証拠書面としては、雇用関係を証明する雇用契約書、会社と労働者間のルールを定めた就業規則のほか、給与明細書、解雇通知書等があげられます。
まとめると、必要書類は以下の通りです。
- 申立書
- 争われると思われるポイントについての証拠書類→(雇用契約書、就業規則、給与明細書、タイムカード、その他残業していたことを証明する証拠)
- 申立手数料(収入印紙)及び郵便切手
- (相手方が法人の場合)商業登記簿謄本又は登記事項証明書等
6.労働審判の申立てに必要な費用
労働審判の申立てに必要な費用は大きくは
- 印紙代
- 郵券代(郵便切手代)
の2つです。
それぞれの金額は以下の通りです。
(1)印紙代
請求額(残業代)に応じて印紙代が決まります。
以下の図の赤字で囲った部分の通りです。
たとえば160万円の残業代を請求した場合、印紙代は6,500円となります。
(2)郵券代
郵券代は裁判所により異なります。
おおよそ2,000円前後です。
7.労働審判申立ての流れ
申立て及び申立て以降の流れは次のようになっています。
(1)管轄の裁判所に申立てを行う
管轄の裁判所は次のように定められています。
- 相手方の住所、居所、営業所もしくは事務所の所在地を管轄する地方裁判所
- 労働者と事業主との労働関係に基づいてその労働者が現に就業し、もしくは最後に就業していた職場の所在地を管轄する地方裁判所
- 当事者が合意で定める地方裁判所
2については、労働審判に管轄での特徴です。
職場を管轄している場所のほうが、いろいろと関係者その他もそろっているであろうということで設けられました。
管轄を間違って申し立てをした場合は、管轄の裁判所に移されることになっています。
申立ては、申立書及び必要書類を受付へ提出します。
その際に費用も納めます。
申立て費用は、民事調停と同一の額であり、1000万円までの申立の場合は、訴訟の場合の半額となっています。
実際には、申立書に印紙を貼る方法で納めることになります。
加えて郵便切手も納める必要があります。
これは、書類の送付の際に使われます。
(2)申し立てから第1回目の期日まで
申立て後は、まず、第1回目の期日が指定されます。
おおよそ申し立てから30~40日以内となっています。
裁判所と申立人の間で調整がなされた後、相手方に申立書が送付されます。
相手方は、申立書を受け取ったのち、相手方の主張を述べた答弁書を指定された日までに、裁判所と申立人に送付しなければなりません。
申立人は、答弁書に対する反論を準備して第1回目の期日を迎えることになります。
(3)第1回目の期日
申立人と会社側の人間が出席して第1回目の期日で審尋が行われます。
ここで、主張や争点の整理等が行われてしまうので大変重要なポイントです。
申立てをおこなったら、この第1回目の期日に向けて入念な準備を行わなければなりません。
そして、裁判官や労働審判員は双方に質問を投げかけていくことによって心証を固めていきます。
その上で最適な解決案を考えることになります。
第1回目の期日で審尋が終了する場合もあれば、2回目まで持ち越されることもありますが審尋が終了すれば、裁判官と労働審判員の合議が設けられ、調停案が当事者に示されることになります。
(4)調停及び審判
労働審判委員会が提示した調停案に双方が合意すれば、調停調書が作られることになります。
なお、調停調書の内容は裁判上の和解と同様の効力を有します。
反対に、双方あるいは一方が調停案を拒否すれば審判がなされることになります。
この審判の内容は、たいてい調停案と同一なのでこれに不服であり従いたくなければ、異議申立てをすることが可能です。
これは2週間に行わなければなりません。
そして、異議申立てがなされれば、通常の訴訟に移行することになります。
労働審判の申立書に関するまとめ
以上が労働審判を申立てる際のポイントとなります。
労働審判制度は、国民の立場に立ってスピード感ある使いやすい制度ということで設けられたものであるので、ぜひ活用してください。
ただ、その際は、くれぐれも入念な準備をしたうえで臨んでいただきたいです。
もし、不安な点があれば、労働問題に強い弁護士に相談をしたうえで進めていけば安心でしょう。