再就職の際に、必ず問われるのが、前の職場を自己都合で退職したのか、会社都合で退職を余儀なくされたのかということです。
その違いが、あまりわからない方も多いと思います。
そこで今回は、自己都合退職と会社都合退職の違いについて、わかりやすくご説明いたします。
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目次
1、自己都合退職と会社都合退職の違い
ここではまず、自己都合退職と会社都合退職の違いについて、ご説明いたします。
自己都合退職とは、自ら退職をすることです。
自主退職とも呼ぶこともあります。
いっぽう、会社都合退職とは、会社の一方的な都合により、退職を余儀なくされることです。
解雇とも言いますし、その方がイメージしやすいと思います。
(1)自己都合退職になる場合
「もっと給料や待遇のいい会社に移ろう」や、「他の職種に転職しよう」という理由などで、従業員の方から、退職を願い出た場合は、自己都合退職ということになります。
この場合は、退職届を提出し、「一身上の都合により」と記載することになります。
(2)会社都合退職になる場合
会社都合退職とは、その名のとおり、会社側の一方的な都合により、退職を余儀なくされた場合の退職をいいます。
なお、ここでいう会社の都合には、主に、以下のような事項が当てはまります。
①会社が倒産してしまった(破産、民事再生、会社更生等の手続の申立てに入った)
②会社の事業所が廃止になった
③事業所の移転によって、通勤が困難になった
④普通解雇により離職
⑤労働条件が当初の契約内容と大きく違った
⑥賃金が支払われない(2か月以上連続して賃金の3分の1を超える額が支払われない)
⑦賃金が当初の85パーセント未満に下がった、もしくは下がることになった
⑧労働基準法に抵触する時間外労働(月45時間)や、劣悪な環境下での労働を強いられているのに、それが是正されない
⑨職種を変更したのに、それに対する会社側からの配慮がない
⑩上司や同僚からハラスメントを受けた
⑪会社側から、直接的ないしは間接的に、退職勧奨を受けた
⑫会社側の都合による休業が3か月以上続いている
⑬会社が法令違反をした
会社都合退職というのは、このように様々なケースが当てはまります。
2、自己都合退職と会社都合退職の違いが重要となる場面とは
自己都合退職と会社都合退職の違いは、上記の通りですが、この二つの退職理由の違いが、重要となる場面があります。
それは、失業保険に関してです。
実は、自己都合退職か、会社都合退職かによって、失業保険の受給額が大きく違ってきます。
受給内容が手厚いのは、会社都合退職の場合です。
なぜなら、自分の意思で自主的に退職した人より、会社の都合で、思いがけなく、退職を余儀なくされ生活の糧を失った人の方が、前者よりもより手厚く保護されるべきという考えからなのです。
(1)失業保険における一般受給資格者とは
失業保険の受給資格には、一般受給資格と特定受給資格の違いがあります。
一般受給資格者は、自己都合で退職して、失業保険の受給資格を得た人が含まれます。
その他には、定年での退職者も含まれます。
(2)失業保険における特定受給資格者とは
会社の都合で、退職を余儀なくされて、失業保険の受給資格を得た人のことを言います。
つまり、会社都合退職の人はこちらに該当します。
なお、この中には懲戒解雇となった人は含まれません。
特定受給資格者は、一般受給資格者と比較して、給付日数が多めになっています。
なお、特定受給者にあたるかどうかは、離職理由に基づき、公共職業安定所が判断することになっています。
会社側や退職した人の一方的な言い分だけで決められるわけではありません。
3、もらえる失業保険の受給内容の違い
それでは、自己都合退職と会社都合退職における失業保険の受給内容の違いを見ていきましょう。
(1)基本手当の算出方法
失業した人が受け取る手当を基本手当と言い、これは、一日あたりの基本手当(基本手当日額)の額に所定の給付日数を乗じて算出することになっています。
なお、基本手当日額については、労働者が雇用保険の被保険者として勤めていた期間の最後の6か月間に支払われた賃金の総額を180で割った金額(賃金日額と言います)に、所定の給付率を乗じた金額となります。
そして、所定給付日数とは、基本手当を給付できる日数のことです。
これが、自己都合退職か会社都合退職かによって、大幅に違ってくるので、受け取ることができる失業手当の総額にも大きな違いが出てくるのです。
(2)自己都合退職の場合の給付日数
自己都合退職の場合は、給付日数に関しては、本人の年齢に関わらず、退職前の雇用保険の加入期間によって決められることになっています。
給付日数は、一番短い場合で90日、一番長い場合で150日となります。
(3)会社都合退職の場合
会社都合退職の場合は、自己都合退職の場合と違い、退職前の雇用保険の加入期間という条件に加えて、離職時の年齢によっても違いが出てきます。
例えば、離職時の年齢が45歳以上60歳未満で雇用保険に加入していた期間が20年以上であれば、330日の給付日数となります。
この年代は、ライフステージ的にも、家計を背負う立場にある場合が多く、また、再就職先を見つけるのも時間がかかる場合が多いですから、手厚い給付が受けられるように配慮されています。
つまり、自己都合退職となる場合と比較すると、給付日数で倍以上の差があることになります。
これは、受け取る金額に大きな違いとなって反映されますので、特に中高年世代は、自己都合退職か会社都合退職というのは、生活設計上、とても重要なことになります。
4、会社都合退職から自己都合退職にされそうになったときの対処法
ここまでお読みになってくださった方は、自己都合退職よりも、会社都合退職の方が失業保険に関してのメリットが大きいことがお分かりいただけたと思います。
ところで、会社によっては、会社の方から退職を求めてきているのに、会社都合退職ではなく、自己都合退職を求めてくる場合が少なくありません。
例えば、「解雇という形でやめると、あなたの今後に差しさわりが出るので、自主的に辞表を出してくれれば、自己都合退職にすることができる。」などと言われることがあります。
これをきちんと断ることができれば、問題ないのですが、会社が何とか自主退職に持ち込もうとしてきた場合は、どう対処すればよいのでしょうか?
(1)懲戒解雇に該当する場合
もし、あなたが懲戒解雇に該当する場合であれば、再就職のことを考慮すると、懲戒解雇となるよりも、自主的な退職の方がよいと考えられます。
ただ、懲戒解雇にあたるかどうかは、法律の専門的な知識が必要ですし、普通解雇に比べて、会社側としても、ハードルが高いものですから、会社の一方的な言い分を聞いてしまうのではなく、まずは、弁護士といった専門家に相談なさることをおすすめいたします。
会社から、退職届にサインをするように求められても、その場ですぐに応じることはしないでください。
(2)普通解雇の場合
では次に、懲戒解雇に該当するわけではない、普通解雇の場合で、自主的な退職、つまり自己都合退職にされそうな場合についてみていきます。
普通解雇の場合は、法律上、30日の解雇予告期間(または解雇予告手当の支払い)が定められています。
また、失業手当も3か月待つことなく、給付を受けることができます。
このような経済的なメリットがあるのですから、通常は、自己都合退職よりも会社都合退職でやめた方がよいでしょう。
もし、会社都合退職の場合は、退職届を提出する必要はないのですから、もし、会社側から退職届の提出を求められた場合は、それを拒否するのがよいでしょう。
退職届が提出されなければ、会社側が、解雇自体を取りやめる可能性もあります。
まとめ
自己都合退職と会社都合退職の大きな違いは、失業手当の給付の面で大きく表れます。
経済的なことは、ご自身だけでなく、ご家族の生活にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
会社から自己都合退職を迫られてお悩みの場合は、お一人で悩まれることなく、まず一度、労働問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめいたします。