派遣業者に必須!派遣法改正における事業主に課せられる5つの義務とは

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平成27年に「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)が改正・施行されました。

この改正は、派遣事業者、派遣労働者、派遣先のそれぞれに大きな影響を及ぼすことになったので、正確に理解することが必要です。

そこで今回は、平成27年の労働者派遣法の改正の要点を解説します。

1.法改正に伴い誰に何を義務付けるのか?


昨今の経済情勢における非正規雇用の増大に伴い、派遣切りや偽装請負など、派遣労働者をめぐって多くの社会問題が顕在化しました。

そこで、派遣労働者のいっそうの雇用の安定と保護を目的として、平成27年に労働者派遣法が改正されました。

このような経緯で改正されたため、改正法では主として派遣元や派遣先に対して、派遣労働者の雇用の安定のための措置や派遣労働者のキャリアアップのための措置をとることが求められています。

主な法改正の内容は、次のとおりです。

  1. 労働者派遣事業の許可制への一本化
  2. 労働者派遣の期間制限の見直し
  3. キャリアアップ措置
  4. 均衡待遇の推進
  5. 労働契約申込みみなし制度

それでは詳しく見ていきましょう。

2.労働者派遣事業の許可制への一本化

(1)今までの労働者派遣事業とは

平成27年改正前までは労働者派遣事業には、大きく分けて特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業の2種類がありました。

特定労働者派遣事業は、常時雇用する労働者のみを派遣するもので、厚生労働大臣への届出で足りるとされていました。

これに対し、一般労働者派遣事業はそれ以外の派遣事業で登録型の労働者派遣などを想定しており、雇用の不安定な労働者を派遣することから、厚生労働大臣の許可が必要とされていました。

(2)平成27年改正に特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業が一本化へ

平成27年改正により、特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業の区別が廃止され、すべての派遣事業が新たな基準のもとに許可制に一本化されました。

ただし、経過措置として、平成27年9月30日時点で届出により特定労働者派遣事業を営んでいる事業者は、平成30年9月29日までは、引き続き改正前の特定労働者派遣事業を営むことができるとされています。

3)改正後の許可基準

改正後に新たに追加された主な許可基準は、次のようなものです。

  • 派遣労働者のキャリア形成支援制度を有すること
  • 無期雇用派遣労働者を労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと、有期雇用派遣労働者については、労働者派遣契約の終了時に労働契約が存続している場合には、労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと
  • 労働契約期間内に労働者派遣契約が終了した派遣労働者について、次の派遣先を見つけられないなど使用者の責に帰すべき事由により休業させた場合には、労働基準法26条に基づく手当を支払う旨の規定があること

3.労働者派遣の期間制限の見直し

(1)今までの労働者派遣の期限

平成27年改正前までは、法令で定められた※26の専門的業務に関しては派遣可能な期間の制限がなく、それ以外の業務については、派遣期間は1年をこえ3年までの期間で定めることになっていました。

※26の専門的業務

  1. 電算機のシステム・プログラムの設計
  2. 機械等の設計・製図
  3. 放送番組等の制作のための映像・音声機器の操作
  4. 放送番組等の制作における演出
  5. 事務用機器の操作
  6. 通訳・翻訳・速記
  7. 秘書
  8. ファイリング
  9. 市場調査
  10. 財務処理
  11. 対外取引・国内取引の文書作成
  12. 高度の専門知識等を要する機会の性能・操作方法の紹介・説明
  13. 添乗・旅行者送迎
  14. 建築物の清掃
  15. 建築設備の運転・点検・整備
  16. 建築物・博覧会場の受付・案内等
  17. 科学に関する研究開発
  18. 事業の実施体制の企画・立案
  19. 書籍等の制作編集
  20. 商品・広告等のデザイン
  21. インテリアコーディナート
  22. 放送番組などの現行朗読・司会
  23. OAインストラクション
  24. テレマーケッティング
  25. 背0留守エンジニアの営業
  26. 放送番組等における大道具・小道具等の製作・設置等

(2)平成27年改正により26の専門的業務区分を廃止

平成27年改正により、上記の業務による区別は廃止され、すべての派遣事業に対して同一の期間制限が課されることになりました。

①派遣事業所単位の期間制限

同一の事業者に対して派遣可能な期間は、原則として3年が限度とされました。

3年を超えて派遣を受け入れるには、派遣先の過半数労働組合等(過半数労働組合または過半数代表者)から意見を聴かなければならないとされています。

②派遣労働者個人単位の期間制限

同一の派遣労働者を派遣先の事業所における同一の組織単位(いわゆる課、グループなど)に派遣できる期間は3年が限度となります。

別の組織単位に異動すれば(例えば庶務課から人事課に異動するなど)3年をこえて同一の派遣労働者を受け入れることができますが、別途、事業所単位の期間制限がありますので、事業所単位の期間制限が延長されていることが必要になります。

(3)期間制限の例外

次のような場合には、例外的に期間制限がありません。

  • 60歳以上の派遣労働者を派遣する場合
  • 派遣元事業主に無期雇用される派遣労働者を派遣する場合
  • 納期が明確な有期プロジェクト業務に派遣労働者を派遣する場合
  • 日数限定業務(1か月の勤務日数が通常の労働者の半分以下かつ10日以下であるもの)に派遣労働者を派遣する場合
  • 産前産後休業、育児休業、介護休業等を取得する労働者の業務に派遣労働者を派遣する場合

(4)雇用安定措置

派遣元事業主は、一定の場合に派遣労働者の雇用安定措置を講じなければならなくなりました。

雇用安定措置とは、

  1. 派遣先への直接雇用の依頼
  2. 新たな派遣先の提供
  3. 派遣元事業主による無期雇用
  4. その他雇用の安定を図るために必要な措置

のことで、派遣元事業主に課される義務の内容は派遣労働者ごとに異なります。

具体的には、同一の組織単位に継続して3年間派遣される見込みがある派遣労働者の場合、1.~4.のいずれかを講じる義務がありますが(ただし、①を講じても直接雇用が実現しなかった場合、追加で2.~4.のいずれかを行う必要があります)、1年以上3年未満の見込みである場合には、1~4のいずれかを講じる努力義務があるにとどまります。

さらに、これら以外で派遣元事業主に雇用された期間が通算1年以上の場合には、2~4のいずれかを講じる努力義務が課されます。

4.キャリアアップ措置


平成27年改正により、派遣元事業主は派遣労働者のキャリアアップのため教育訓練と希望者に対するキャリア・コンサルティングを行うことが義務付けられました。

2.(3)で解説した新たな許可基準のうちキャリア形成支援制度が教育訓練の実施計画を定めることやキャリア・コンサルティングの相談窓口を設置していることなどを内容とするものであり、これらの措置を講じなければ許可の基準を満たすことができないのです。

教育計画は、

  1. 全ての派遣労働者を対象とするものであること
  2. 有給かつ無償で行われるものであること
  3. 派遣労働者のキャリアアップに資する内容のものであること
  4. 入職時の教育訓練が含まれたものであること
  5. 無期雇用派遣労働者に対する教育訓練は、長期的なキャリア形成を念頭に置いた内容のものであること

が必要とされています。

また、派遣先の企業も派遣元事業主から教育訓練の実施についての要望があった場合には、派遣労働者がその教育訓練を受けることができるよう可能な限り協力することが求められています。

5.均衡待遇の推進

(1)派遣元事業主が講じる措置

従前、派遣元事業主は、派遣先で同様の業務に従事する労働者との均衡を考慮しながら、派遣労働者の賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生の実施を行うよう配慮する義務を負っていました。

平成27年改正により、これに加えて、派遣労働者から求められた場合には、派遣元事業主は、派遣先で同様の業務に従事する労働者との均衡を図るために考慮した内容について、説明をする義務を負うことになりました。

(2)派遣先が講じる措置

また、派遣先にも次のような義務が課されることになりました。

・賃金水準の情報を提供する配慮義務
・教育訓練の実施についての配慮義務
・福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)の利用に関する配慮義務
・派遣料金の決定に関する努力義務(派遣料金の額の決定にあたって、派遣労働者の賃金水準が、派遣先で同様の業務に従事する労働者の賃金水準と均衡の図られたものであるよう努める)

6.労働契約申込みみなし制度


厳密には平成24年に改正されたものですが、施行時期が平成27年10月1日であるため、あわせてご紹介します。

これは、派遣先が一定の違法な派遣を受け入れた場合に、その時点で、派遣先が派遣労働者に対して派遣労働者の派遣元の労働条件と同じ労働条件で労働契約の申し込みをしたとみなすという制度です。

みなし申込に対して派遣労働者が承諾の意思表示をすれば、派遣先と派遣労働者との間で労働契約が成立することになります(派遣先の直接雇用となります)。

ただし、派遣先が違法な派遣であることを知らず、かつ、知らなかったことに過失がなかった場合は、この限りではありません。

一定の場合とは、次のような場合を指します。

  • 労働者派遣の禁止業務(港湾運送業務、建設業務、警備業務、医療関連業務、弁護士などの士業)に従事させた場合
  • 無許可の事業主から労働者派遣を受け入れた場合
  • 期間制限に違反して労働者派遣を受け入れた場合
  • 偽装請負(労働者派遣法の規制を免れるために、請負などの形式で契約を締結すること)の場合

まとめ

改正労働者派遣法について解説しましたが、ご理解いただけたでしょうか。

派遣労働者のために雇用安定措置やキャリアアップ措置を講じることが義務付けられるなど派遣元、派遣先ともに責任が重くなっており、適切な対応が求められます。

派遣労働者についての問題でお悩みの企業は、労働問題に詳しい弁護士に相談することを検討するといいでしょう。

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