児童扶養手当とは?支給要件や支給額、手続き方法について詳しく解説

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離婚後に子どもを育てていくのが不安、どのような公的支援があるのか知りたいという方は多いのではないでしょうか。

「児童扶養手当」という言葉を聞いたことはあるけれど、どういう制度か分からない、使えるかどうかを知りたいという方もいるかもしれません。

今回は児童扶養手当について、どういう場合にもらえるのかという支給要件や実際にもらえる支給額、申請するための手続きの方法について解説したいと思います。

1.児童扶養手当とは-児童手当の違いとは?他の手当との違いを確認


「児童扶養手当」とは、かつて「母子手当」と呼ばれていた手当です。
児童扶養手当は、18歳までの子どもがいる一定の所得以下の一人親家庭に支払われるものです。

子どもの人数や、前年の年収など条件によって決まった金額が地方自治体から支払われるものです。

ただし、所得制限があり、親などに一定の所得がある場合は手当が全額または一部が支給されない場合があります。

似た名前の手当で「特別児童扶養手当」があります。
これは、身体・精神に障害を持つ20歳未満の子どもを養育する保護者に対する手当てとして支払われるものです。

障害手帳の級によって手当の金額が変わり、1級の場合は月額51,450円、2級の場合は34,270円とされています。

児童扶養手当と同様に一定の収入を超えると支給されないという所得制限があります。

これらとよく似た名前の手当の制度として「児童手当」がありますが、これは以前「子ども手当」と呼ばれていたものです。

児童手当は、一人親家庭かどうかに関係なく0歳から中学卒業まで子どもがいる場合に、そのすべての家庭に支払われるものです。

児童手当の金額は、世帯の所得が一定額(約960万円)を超えると支給金額が一律月5,000円になりますが、それ以外の場合は子どもの年齢によって決められています。

このように、児童扶養手当・特別児童扶養手当と児童手当は異なる手当なので、条件によっては両方もらうことができます。

2.児童扶養手当がもらえる8つの条件

(1)児童手当がもらえる8つの条件とは

児童扶養手当はかつて「母子手当」という呼び名だったように、一人親家庭で子どもを育てている場合に支給されるお金です。

ただ、条件によっては必ずしも離婚や死別によって一人親家庭になった場合だけとは限りません。

児童扶養手当を受け取る事ができるのは、次の8つのどれか1つでも該当する0歳から18歳までの子どもについて、父親か母親、または祖父や祖母などの養育者が監護・養育している場合に支給されます。

  1. 両親が離婚した子ども
  2. 父または母が、死亡したか生死不明な子ども
  3. 父または母に、一定以上の重い障害がある子ども
  4. 父または母が、1年以上遺棄している子ども
  5. 父または母が、裁判所からDV(ドメスティックバイオレンス)保護命令を受けた子ども
  6. 父または母が、罪を犯すなどして1年以上拘禁されている子ども
  7. 未婚の母から生まれた児童
  8. 孤児など、両親ともにいるかいないかが明らかではない子ども

児童扶養手当は、もともと一人親家庭に支給されるものでしたが平成24年の改正によって、配偶者からの暴力(DV)で保護命令が出された場合にも受給できるようになりました。

(2)児童扶養手当が支給されない5つのケース

ただし、上記の8つの条件に当てはまるような場合でも、次の5つの場合には児童扶養手当は支給されないので注意してください。

  1. 子どもが、里親に預けられたり児童養護施設に入っている場合
  2. 子どもが、手当を申請していない側の親と同居している場合
  3. 子どもが、父または母の配偶者に育てられている場合
  4. 子どもが、日本に住所がない場合
  5. 両親が、内縁関係など事実上結婚しているといえる場合
  6. 両親のいずれか、または養育者が、日本に住所がない場合

3.児童扶養手当の支給額とは?当てはまる条件から目安額を知る方法


児童手当の支給額は、子どもの人数と、子どもを育てている監護者の所得の額によって目安が決められています。

(1)子どもが1人の場合

  • 全部支給 月額42,290円
  • 一部支給 月額42,280円から月額9,980円まで 所得に応じて10円単位で変わります。

(2)子どもが2人目の場合

  • 子どもが1人の場合の金額に、次の金額が加算されます。
  • 全部支給 月額9,990円加算
  • 一部支給 月額9,980円から月額5,000円まで所得に応じて10円単位で変わります。

(3)子どもが3人目以降の場合

  • 3人目の子どもから、子ども1人につき次の金額が加算されます。
  • 全部支給 月額5,990円
  • 一部支給 月額5,980円から月額3,000円まで所得に応じて10円単位で変わります。

なお、この基準になる金額については物価に合わせて支給額が変わる、自動物価スライド制が採用されています。

これにより、児童手当の金額は全体的に2017年4月分から0.1%引き下げが行われています。

4.児童扶養手当が止められたり減らされる2つの場合とは

(1)収入で手当てが停止・減額される場合

児童扶養手当には所得制限があり、一定の額を超えると児童扶養手当の支給が一部、または全部停止されることがあります。

まず、基準になる所得額は児童扶養手当を申請する人、または子どもを扶養する義務がある人について、次の計算式で求めます。

給与所得控除した後の金額+養育費の80パーセント+定額控除(一律8万円)+諸控除の額

なお、所得は、1月から6月までに申請する場合は前々年の所得、7月から12月までに申請する場合は前年の所得をもとに計算します。

諸控除の例としては、次のようなものがあります。

  • 障害者控除 270,000円(特別障害者控除は400,000円)
  • 勤労学生控除 270,000円
  • 寡婦控除 270,000円(特別寡婦控除は350,000円)
  • 老人扶養親族(父、母、または養育者) 100,000円

この他にも、医療費控除、配偶者特別控除などが、該当する金額に応じて控除されます。

これをもとに表にすると、次のように考えることができます。

扶養する親族の人数 本人 扶養義務者等の所得上限額
全部支給できる所得上限額 一部支給できる所得上限額
0人 190,000円 1,920,000円 2,360,000円
1人 570,000円 2,300,000円 2,740,000円
2人 950,000円 2,680,000円 3,120,000円
3人 1,330,000円 3,060,000円 3,500,000円
4人 1,710,000円 3,440,000円 3,880,000円

離婚した母が祖母と15歳の子どもと暮らし、収入が母のパート収入80万円と祖母の年金30万円だった場合を考えてみると扶養親族の人数は2人、母の収入が95万円より少ないので児童扶養手当の全部支給を受けることができることが分かります。

扶養義務者等の所得上限額は、祖母などに収入がある場合ですが、今回のケースでは超えないので児童扶養手当は支給されます。

この収入は、上記の計算式のように養育費も含まれます。
つまり、養育費をもらっている場合は、児童扶養手当が全額支給されないこともあるので注意しておきましょう。

(2)期間で手当てが停止・減額される場合

児童扶養手当は、所得制限だけでなく、認定を受けた後の期間でも減額されることがあります。

これは、児童扶養手当を受給してから次の5年か7年の期間が経過すると特別な事情がない限り手当を半分にカットすることで、自立を促そうとするものです。

  • 児童手当支給が開始した月の初日から5年(請求時に子どもが3歳未満の場合は、3歳になった月の翌月の初日から起算して5年)
  • 児童扶養手当の支給要件に該当する日に至った日の属する月の初日から7年(離婚後数年経過後に児童扶養手当を申請したようなケース)

上記の2つの条件のどちらか早い方で、役所から「一部支給停止適用除外事由届出書」が送られてくることになります。

とはいえ、働いていたり、求職活動をしていたり、ケガや病気で働けないという事情がある場合は、役所から届いた書類と添付書類を提出することで従来通り児童扶養手当を受給することができます。

5.児童扶養手当の支給時期とは


児童扶養手当を受給するには、申請して市長の認定を受けなければいけません。
認定されると申請が受理された翌月から計算して支給されます。

原則として、4月、8月、12月の年に3回、該当する月の11日に、それまでの4か月分の金額が指定した銀行口座に振り込まれます

申請してから、実際に入金されるまで数カ月かかることもあるので、離婚する際には当面の費用を用意しておくようにしましょう。

6.児童扶養手当の申請方法


児童扶養手当は、住んでいる地区の区役所の、児童家庭課などで行います。
申請する際は、次のような書類が必要になります。

  • 申請する人と、子どもの戸籍謄本
  • 申請する人と、子どもが載っている世帯全員の住民票の写し
  • 預金通帳
  • 申請する人の身元を確認できる書類(マイナンバーカード、運転免許証など)

必要書類が不足していたり不備があると月末などは特に支給額に影響することがあります。
申請する場合は、事前に区役所に電話をして確認しておくと安心です。

まとめ

いかがでしょうか。

児童扶養手当の支給には所得の制限があったり、必要書類を揃えなければいけなかったりするので面倒に思う方もいるかもしれません。

しかし、児童扶養手当は一人親家庭が受けられる優遇措置について、多くの場合に基準になっています。

児童扶養手当を支給されていることで定期券が割引になったり、銀行の優遇金利があるなど、様々なメリットがあるのでシンママ、シンパパには非常に心強い制度と言えるでしょう。

ただ、児童扶養手当は、申請してから支給までに時間がかかる場合もあります。

離婚を考えていてその後の生活が不安な方、離婚したけれど子育てにかかるお金に苦労している方などは、離婚や財産関係に強い弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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