刑事事件の保釈手続きはどのようになっているのだろうか・・・?
この記事をお読みの方にはそのようにお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
犯罪の嫌疑をかけられて警察に逮捕されたり、勾留されて裁判になった場合には、基本的には被疑者や被告人の身柄は警察署内の留置所や拘置所に入れられることになります。
この場合、被疑者や被告人が社会に出て活動することは、一切できないのでしょうか。
実は、裁判になった後の被告人の場合には、保釈と言って社会に出て活動することができる手続きがあります。
保釈手続きとはどのようなもので、どのような方法で認められるのでしょうか。
このことを正しく知っておかないと、自分や家族などが刑事被疑者や被告人になった場合に適切に保釈請求ができず、不利益を受ける可能性があります。
そこで今回は、刑事被告人の保釈手続きについてご説明いたします。
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目次
1.逮捕された場合の基本的な流れ
犯罪の嫌疑をかけられて警察に逮捕されてしまったら、その後の流れはどのようになるのでしょうか。
保釈が認められるタイミングがいつになるのかという問題と関連するので、まずは手続きの基本的な流れを確認しておきましょう。
警察に逮捕されると、逮捕後48時間以内に釈放するか検察に送られるかが決まります。
検察に送られると、その後24時間以内に、逮捕に引き続いて勾留をして身柄拘束を続けるかどうかが決定されます。
勾留をする場合には、検察官が裁判所に勾留請求をして、その後最大20日間身柄を拘束されてしまいます。
こうなると、その20日間の勾留期間中は被疑者は外に出ることは一切できません。
20日が経過して勾留期間が切れるタイミングで、検察官は被疑者を起訴するかどうかを決めます。
起訴されると、被疑者は刑事裁判にかけられて裁判所から有罪か無罪かの決定を受けます。
起訴されなかった場合には、勾留期間が切れるタイミングで釈放されることになります。
2.裁判になったらどうなる?
犯罪の嫌疑がかけられて、検察官から起訴されてしまい、刑事裁判になってしまった場合には、その後どのような運命をたどるのでしょうか。
犯罪が軽微で被告人に逃亡の恐れなどがない場合には、在宅起訴といって、被告人が社会生活を送りながら裁判をすすめることができますが、多くの場合には在宅起訴にはなりません。
在宅起訴になるのは、交通事故事案などの場合です。
在宅起訴にならなかった場合には、引き続き身柄を拘束されたまま刑事裁判がすすみます。
この場合、被疑者という呼び名が被告人に変わります。
また、身柄拘束場所も警察の留置所から拘置所へと移送されます。
そして、基本的には取り調べはなくなります。
刑事裁判の期日はだいたい月に1回程度開かれますが、そのたびに拘置所の護送車によって裁判所に送られることになります。
刑事裁判が終わるまでには、半年~1年以上かかることが普通です。
刑事裁判が終わったら判決が下されて、その判決内容に応じた刑罰を受けます。
もし無罪判決や罰金の判決、執行猶予判決が出たら社会復帰できますが、懲役刑や禁固刑の実刑判決が出てしまった場合には、そのまま刑務所に行かなければなりません。
この場合、逮捕されてから刑の執行が終わるまで、一切社会生活に戻ることができなくなるのです。
このように、いったん警察に逮捕されると、その後何年もの間一度も社会に戻れない可能性が出てきます。
そこで、刑事裁判中に一時的に身柄を社会に戻すことができる方法が保釈手続きです。
3.保釈手続きとは
犯罪の嫌疑をかけられて刑事裁判になった場合、原則的に身柄は拘置所に拘束されたままです。
しかし、刑事裁判中に一時的に身柄拘束を解いて、被告人が社会に戻ることが可能です。
この手続きのことを保釈手続きと言います。
刑事被告人は、無罪の推定が働いているので、証拠隠滅などの問題がないのであればその間は仮に身柄の自由を認めようという制度です。
保釈手続きが認められるのは、刑事裁判にかかった後の刑事被告人のみです。
刑事裁判になる前の被疑者段階では保釈はありません。
この段階では、警察による取り調べや証拠の収集などの捜査が続いており、被疑者の身柄を拘束しておく必要性が高いからです。
警察に逮捕されると、その後検察に送致されて、勾留が20日程度続くことが多いですが、この間は保釈手続きはできないということです。
その後検察官によって起訴されて初めて保釈の申請ができるようになります。
4.保釈手続きの利用方法
保釈手続きを利用すると刑事被告人が一時的に社会に出ることができます。
よって、自分や家族が身柄拘束された場合には、刑事裁判がはじまった時点ですぐに保釈申請をすることが重要です。
保釈手続きを利用するにはどのような方法をとるべきなのでしょうか。
この場合、弁護人に依頼するのが普通です。
刑事被告人になったら、国選弁護人をつけることができますし、被疑者段階からでも私選や国選の弁護人がついていることも多いです。
そこで、起訴されたらすぐに弁護士と相談して保釈申請を出してもらいましょう。
このとき、特に問題がなければ裁判所によって保釈が認められて、社会に出ることができます。
5.保釈手続きが認められる要件
刑事裁判になった後に弁護士に依頼して保釈申請を出してもらっても、必ずしも保釈申請が通るとは限りません。
裁判所によって保釈申請が却下されてしまうこともあります。
保釈が認められない場合は、以下の通りです。
まず、一定の重罪の刑事事件の被告人の場合には、保釈が許可されません。
この場合には、被告人の権利よりも保釈による危険性の回避が優先されます。
たとえば殺人や強盗などの事件の被告人の場合には、保釈は認められません。
次に、その被告人が過去にも同じ種類の事件を起こして前科がついている場合にも、保釈は認められません。
この場合、再犯に及ぶ可能性が高いと考えられるからです。
さらに、保釈をすると被告人が逃亡したり、証拠隠滅をするおそれがある場合にも保釈は認められません。
証人を威迫(脅すこと)するおそれがある場合にも、同様に保釈は認められません。
刑事事件で被疑者や被告人を身柄拘束する目的は、主に逃亡や証拠隠滅を防ぐためなので、保釈によってこれらの恐れがある場合にはリスクが高いと判断されるからです。
さらに、被告人が住所不定の場合にも保釈は認められません。
この場合も、被告人が行方不明になってしまうおそれがあるからです。
このように、保釈にはいくつかの条件がありますが、基本的にこれらの問題がない場合には保釈が認められます。
保釈は被告人の権利ですので、被告人から申請があった場合に問題がなければ、基本的には認めないといけないことになっています。
6.保釈によって罪が許されるわけではない
保釈申請をする際に、一点注意すべき点があります。
それは、保釈が認められたからと言って、罪が許されたわけではないということです。
もちろん無罪になったという意味もありません。
(1)保釈中はまじめに生活する
保釈は、あくまで刑事被告人に認められた仮の身柄釈放の権利です。
このとき、有罪か無罪かという判断は行われていません。
よって、保釈が認められても、後に刑事裁判が進むと有罪判決を受ける可能性は充分にあります。
また、保釈されている最中に問題を起こすと保釈が取り消されて拘置所に戻らないといけなくなることが多いです。
保釈されたからと言って罪が許されたと感じて羽目を外しすぎると、非常に問題があります。
保釈中は、くれぐれも自分が刑事被告人であるという立場を忘れず、節度をもってまじめに社会生活を送る必要があります。
(2)保釈中の生活態度が情状に影響することも
保釈中の生活態度も、刑事裁判の行方に影響を及ぼします。
保釈中にまじめに生活をしていて、仕事もきちんとしていたり、刑事裁判後の就職先を見つけたりしていると、刑事裁判での情状も良くなります。
これに対して、保釈中も自堕落な生活をしていると、情状が悪くなって罪が重くなる可能性もあります。
このように、保釈中の生活が刑事裁判の判決にかかわることもあるので、保釈中の生活はきちんと規則正しく送る必要があるのです。
7.保釈に条件がつけられることもある
刑事被告人となって保釈申請をすると保釈が認められることがありますが、この場合、保釈に条件がつけられることがあります。
たとえば、被告人に共犯者がいたり、事件の関係者がいる場合などには、保釈中もその共犯者や関係者に接触してはいけないという条件がつけられることが多いです。
この場合、弁護士を介してであれば接触が認められることがあります。
もし保釈中に条件を破って禁止された人に接触してしまうと、保釈が取り消されて拘置所に戻されることになります。
すると、保釈保証金が没取されてしまうおそれもあります。
よって、保釈が認められた場合にその保釈に条件がつけられた場合には、必ずその条件を守ることが重要です。
どうしても事件の関係者に連絡を取りたい場合には、弁護士に相談をして弁護士を介して接触するようにしましょう。
8.保釈保証金が必要
保釈申請をする場合には、保釈保証金というお金が必要です。
このことは、一般的にもニュースなどでよく報道されているので、何となくイメージできることが多いでしょう。
以下では、保釈保証金について説明します。
(1)保釈保証金とは
保釈保証金とは、保釈を認めてもらうための担保金です。
刑事被告人は刑事裁判中の不安定な身分です。
逃亡の恐れなどがないとは言っても、絶対にリスクが0であるとは言い切れません。
そこで、一定のお金を積ませることによって、そのリスクを担保するのです。
保釈中に刑事被告人が逃亡したり問題を起こすと、保釈保証金は裁判所に没収されてしまいます。
このことにより、被告人に対して逃亡や問題行動を起こさないようにプレッシャーをかけることができます。
(2)保釈保証金を納付しないと保釈されない
保釈の申請が通っても、保釈保証金を裁判所に納付しない限りは保釈が実行されることはありません。
弁護士に保釈申請書を書いてもらって裁判所が保釈を許可しても、お金が用意出来なければ実際には保釈によって外に出ることはできないということです。
この意味で、保釈を利用するには、最低限のお金は必要だと言うことになります。
自分のお金がなくても、家族などが保釈保証金を用意してくれるなら保釈で外に出ることができます。
(3)保釈保証金の金額
保釈保証金の金額はいくらくらいなのでしょうか。
これについては、個別のケースによってかなりの差があります。
まず事件の軽重や種類によっても異なります。
重大な事件であればあるほど保釈保証金は高くなりがちです。
また、経済犯などの場合にも保釈保証金は高くなることが多いです。
さらに、刑事被告人の資力による影響も大きいです。
保釈保証金は、それを積むことによって刑事被告人が逃亡などをしないようにプレッシャーをかける必要があるものです。
よって、その刑事被告人が没収によるプレッシャーを感じる程度に大きな金額である必要があります。
そこで、資力のある被告人の場合には保釈保証金は高くなりますし、資力の少ない被告人の場合には保釈保証金の金額は安くなります。
まとめ
今回は、保釈手続きについてご説明いたしました。
保釈手続きとは、犯罪の嫌疑をかけられた人が刑事裁判になった後に認められる、一時的な身柄釈放の手続きです。
刑事裁判になった後の被告人にのみ認められるもので、それ以前の被疑者段階では保釈は認められません。
保釈が認められるためには、いくつかの要件があります。
刑事裁判になって保釈申請をするには、ついてもらっている弁護人に手続きを依頼しましょう。
保釈をしてもらうためには保釈保証金が必要です。
保釈保証金を支払わないと実際に保釈されることはありませんし、保釈の条件を破ったり逃亡すると、保釈保証金が没収されてしまうリスクがあります。
保釈中の生活態度が判決に影響を及ぼすこともあります。
刑事事件になった場合には、刑事裁判が起こるとすぐに保釈申請をして、身柄が釈放されたらその間はまじめに規則正しく生活を送ることが重要です。