刑事事件を起こしてしまった・・・相手方との示談をまとめるにはどのように話を進めたらよいのだろう・・・?
この記事をお読みの方にはこのようにお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
飲み会でたまたまいつも以上に飲んでしまって、酔いの勢いで人に怪我を負わせてしまって警察沙汰ということもあります。多くの方にとって、刑事事件に巻き込まれることは他人事とは言い切れません。
そんな時のために知っておきたいのが「示談」です。
おそらく、テレビ等でも「被害者と示談が成立した」などということは聞いたことがあるのではないでしょうか。
今回は、刑事事件で示談するメリットとその具体的な方法について説明していきます。
ふとした過ちから刑事事件を起こしてしまったが、できるだけ大事にならずに話をまとめたい、という方のご参考になれば幸いです。
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目次
1.刑事事件における「示談」の意味は?
そもそも示談とは、裁判手続によらずに話し合いで紛争を解決することです。
そして刑事事件における示談とは、裁判外での合意のことで、その目的は刑事事件の被害者の救済にあります。
簡単に言えば、加害者は被害者に対してお金を支払い、被害者は、その見返りとして「告訴(起訴を求めること)しない」などと約束することをいいます。
2.示談のメリットは?
(1)示談できる犯罪は?
示談はどんな犯罪でもできるわけではありません。
示談できるのは「被害者がいる犯罪」に限られている。具体的には以下の通りです。
- 窃盗罪
- 詐欺罪
- 暴行罪・傷害罪
- 痴漢行為(迷惑防止条例違反)
- 強制わいせつ罪
- 強姦罪
(2)示談するメリットは?
では、示談するメリットはどこにあるのでしょうか。
具体的には、以下の点が挙げられます。
- そもそも逮捕されることを避けることができる(被害届や告訴状が出されることを避けられる)
- 逮捕されても釈放される可能性が高まる
- 逮捕されても裁判にかけられる可能性が下がる(不起訴になりやすくなる)
- 裁判になっても執行猶予がつく可能性が高まる
- 裁判になっても刑罰が軽くなる傾向がある
- 被害者からそれ以上損害賠償請求されることがなくなる
このように、示談をすることでそもそも逮捕されることを回避できたり、裁判にかけられる可能性が下がる(不起訴になりやすくなる)というメリットがあります。
「裁判にかけられることを回避できる」というだけではそのメリットはあまり分からないかもしれませんが、日本の刑事裁判の有罪率が99%以上であることを踏まえると、「裁判にかけられる=有罪」となることから、そのメリットが大きいことが分かるでしょう。
(3)もし、前科が付いてしまった場合のデメリットは?
次に、前科が付いてしまった場合のデメリットについて説明していきます。以下の通です。
①前科が付くとなれる職業が制限されてしまう
まず、前科が付いてしまった場合のデメリットとして、「なれる職業が制限されてしまう」ということが挙げられます。
前科が付くと、以下のような職業は停止となります(資格が剥奪される)。
- 国家公務員
- 地方公務員
- 弁護士
- 建築士
- 警備員
②前科が付くと本人や家族、親族が就職する際に不利益に働く可能性がある
次に、前科が付いてしまった場合のデメリットとして「就職する際に不利益に働く可能性がある」ということが挙げられます。
例えば、就職の面接時、企業は面接に来た者の身辺調査をすることがあります。
そのため、前科が付いていることが企業に知られてしまう可能性があります。
また、企業は家族や親族に前科者がいないかも調査することがあります。
そして、もし家族や親族に前科者がいると、企業としては面接者を不採用にしてしまうこともあります。
そのため、不利益に働く可能性があるのは前科が付いた本人だけでなく、家族や親族にも当てはまるのです。
③前科が捜査機関に記録される
さらに、前科が付いてしまった場合のデメリットとして、過去に犯罪をしたことが捜査機関に記録されてしまうということが挙げられます。
そのため、再び犯罪を犯してしまった場合、それがたとえ軽い犯罪であったとしても起訴されて再度有罪になってしまうという不利益があります。
3.示談交渉は弁護士に依頼した方がいい?弁護士に依頼するメリットは?
次は示談交渉は弁護士に依頼した方がいいのか否か、弁護士に依頼するメリットについて記載していきます。
(1)そもそも示談交渉は弁護士でなくてもできる?
では、示談交渉は必ず弁護士に依頼する必要があるのでしょうか。
「交渉」というとなんだか敷居が高くて弁護士に依頼しなければならないようにも思えますが、示談交渉自体は当事者同士(加害者と被害者)でもできます。
(2)示談交渉を弁護士に依頼するメリットは?
具体的に、弁護士に依頼するメリットは以下の通りです。
①当事者同士で示談交渉が難しい場合でも交渉が可能になる
被害者としてはできるだけ加害者に会いたくないと思っていることが少なくありません。
そのため、そもそも被害者は加害者に連絡先を教えてくれない可能性があります。
しかし、そのような場合でも、弁護士に依頼していれば被害者は「加害者に教えないこと」を条件として弁護士には連絡先を教えてくれることがあります。
つまり、弁護士に示談交渉を依頼することで、当事者同士では難しかった交渉自体が可能となるのです。
②弁護士が間に入ることで冷静に交渉を進めることができる
基本的に、被害者は加害者に対して良い印象を持っていません。
そのため、当事者同士が直接に交渉をすると火に油を注ぐこととなってしまい、結果として示談がまとまるどころか、より関係性が悪化してしまうことがあります。
これに対して、もし第三者である弁護士が間に入っていれば、交渉が冷静に進みやすくなるため、結果として示談もまとまりやすくなります。
③知識と経験豊富な弁護士に任せることで示談がまとまりやすくなる
弁護士は、一般的に法律と交渉のプロといわれています。
そのため、弁護士がその知識と経験をフルに活用して示談交渉をすることによって示談もまとまりやすくなるといえます。
(3)弁護士に依頼するデメリットは?
他方、弁護士に依頼した場合のデメリットは、弁護士費用がかかるということです。
弁護士に依頼した場合にかかる弁護士費用の相場は、犯罪名やそれぞれの犯罪の悪質さの程度等によって異なるが、おおよそ以下の通りです。
- 着手金 30万円(税別)
- 成功報酬 30万円(税別)
なお、着手金とは、弁護士に依頼した時点でかかる弁護士費用をいいます。
また、成功報酬とは、望ましい結果(例えば示談成立、不起訴、無罪など)を獲得した際にかかる弁護士費用のことをいいます。
4.刑事事件の示談金の相場は?
そもそも、示談金の相場とは、おおよそいくら支払えば示談が成立するかという金額のことをいいます。
(1)示談金の金額は決まっている?
示談金の金額は、一律には決まっていません。
あくまで当事者同士の話し合いで決まることになります。
そのため、同じ痴漢事件に関する示談でも、20万円で示談が成立することもあれば、1,000万円でも和解が成立しないこともあります。
やはり、被害者がどうしても加害者を許せないとなってしまう場合には、示談は難しいです。
また、以下のような場合には示談金額が高額になる傾向があります。
- 犯罪による被害の程度が大きい(傷害事件でも全治一週間より全治一カ月のケースの方が示談金が高額になる傾向がある)
- 加害者の社会的地位が高い
とりわけ、2の場合、例えば加害者が上場企業の役員だったりする場合には、犯罪の事実が世間一般に知れ渡ると加害者は仕事を辞めなければならなくなります。
そうならないためにも、被害者が犯罪の事実を公表しないことを条件とすることから、示談の示談金が高額になる傾向があります。
(2)示談金の相場は?
あくまで大まかな目安に過ぎませんが、示談金の相場は以下の通りです。
①窃盗罪や詐欺罪などの財産を不当に獲得する犯罪
奪った財産の金額+30万円程
②暴行罪
10~30万円程度(治療費や休業補償と慰謝料を合計した趣旨)
③傷害罪
10~100万円程度(治療費や休業補償と慰謝料を合計した趣旨)
④痴漢事件(迷惑防止条例違反)
20~40万円程度
⑤強制わいせつ罪
30~100万円程度
⑥強姦罪
200~600万円程度
5.刑事事件の示談書の書き方は?
最後に刑事事件の示談書の書き方について見ていきましょう。
(1)そもそも示談書とは?
そもそも示談書とは、示談が成立した際に作成する書面で、示談の内容(事件の内容、示談金の金額)などを記載します。また、示談金の他に加害者に支払い義務がない旨の記載(清算条項)が入ることが多いです。
さらに、加害者が被害者に再び近付かないことの約束(接近禁止条項)を盛り込むこともあります。
なお、作成の際の紙の種類は問いません。
示談書は示談が成立したことを証明する証拠になるため、後々争いになってしまうことを回避するために重要です。
(2)刑事事件で示談書に書くべき内容は?
刑事事件の示談書に書くべきことをまとめると以下の通りになります。
ただし、必ずしも全部を記載する必要はなく、あくまで示談で決まった内容を記載することになります。
- 事件の内容(事件が起きた日時や行為の内容)
- 示談金の金額
- 示談金の支払い方法(手渡しか口座振込か、など)
- 示談金の支払い時期
- 示談金の他に加害者に支払い義務がないことの確認(清算条項)
- 加害者が被害者に再び近付かないこと(接近禁止条項)
- 被害者は犯罪の事実について口外しないこと(口外禁止条項)
- 被害者が「加害者を許す」こと
- (強姦罪等の親告罪においては)告訴しないこと、もしくは告訴を取り消すこと
まとめ
今回は、刑事事件で示談するメリットとその具体的な方法について説明しましたが、いかがだったでしょうか。
今回の話で、少しでも刑事事件における示談についてのイメージを持って頂けたら嬉しいです。