犯罪をしてしまい、刑事事件の容疑者になって警察に逮捕されてしまったら、その後は身柄を拘束されて警察官や検察官による取り調べを受けることになります。
取り調べには、どのような意味があるのでしょうか。
取り調べを受ける際の注意点についても知っておく必要があります。
このことをきちんと理解していないと、取り調べ時に話した内容によって、後に不利益を受ける可能性があります。
また、取り調べはどのような流れで行われるのでしょうか。
テレビドラマなどのように、乱暴な取り調べが行われることがあるのかも気になるところです。
そこで今回は、刑事事件の取り調べの意味や注意点、取り調べの流れについてご説明いたします。
※この記事は2017年10月16日に加筆・修正しました。
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目次
1.刑事事件の取り調べとは
刑事被疑者(容疑者)になると、警察や検察官から取り調べを受けることになります。
取り調べには、どのような意味があるのでしょうか。
以下で具体的に見てみましょう。
(1)取り調べの意味
取り調べとは、警察や検察官などの捜査機関が犯罪についての捜査を進めるために、被疑者(犯罪を行ったのではないかと疑われている人)から供述をとることです。
取り調べが行われる場合には、被疑者が供述した内容が供述調書として作成されます。
捜査機関が被疑者を逮捕した当初の段階では、まだ捜査はほとんど進んでおらず、事件の全容が解明されていないことが普通です。
そこで、事件に最も関与が深いと考えられる被疑者から事情を聞くことによって、捜査をすすめていくのです。
これが被疑者の取り調べの意味です。
よって、被疑者の取り調べが行われる場合には、犯罪(事件)に関連することが順番に聞かれていくことになります。
(2)取り調べで聞かれる内容
取り調べが行われる場合、具体的にはどのような内容が聞かれるのでしょうか。
取り調べは、勾留期間中行われますので、何日も継続することになります。
被疑者の勾留期間は原則10日ですが、20日まで延長することができるので、この間ずっと取り調べが続くこともあります。
取り調べが行われる場合、まずは、被疑者自身の身上や経歴(今までどのような生活をしてきたか)や前科などが聞かれます。
そして、その後は事件の具体的な内容について聞かれていくことになります。
被疑者は、いろいろなことを徐々に思い出しながら捜査官に対して供述をしていきます。
捜査官は、その話を聞いて、供述調書という書類にその内容をまとめていきます。
また、「勾留質問とは?どのような流れで何を聞かれるのかを解説!」も併せてご参照ください。
2.取り調べでの供述内容が後で重要になる
取り調べが行われると被疑者の供述内容が記録されますが、この供述調書による記録内容は後に重大な意味を持ちます。
被疑者の供述調書は、刑事裁判になった場合の証拠に使われるからです。
捜査段階で被疑者が自分に不利益な供述をしていると、基本的にそれらの書類が裁判に提出されてしまいます。
よって、取り調べで不利益な供述をしてしまうと、それによって裁判官が有罪の心証をとるので、後に裁判で不利になってしまうおそれがあります。
たとえば、取り調べ時に自白をするなどして、有罪であることを認めてしまったら、裁判になった後いきなり無罪を主張し始めても、なかなか認めてもらえなくなります。
このように、取り調べ時に何を話すかによって、後々の刑事裁判の有利不利が変わってくるので、取り調べには慎重に対応する必要があります。
また、必要に応じて「刑事事件で作成される供述調書とは?作成方法や注意点を解説!」も併せてご参照ください。
3.取り調べを受ける際の注意点
取り調べを受ける際には、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。
以下で具体的に見てみましょう。
(1)虚偽の自白をしない
取り調べを受ける際には、そこで話した供述内容が後に刑事裁判で利用される可能性があることを常に意識する必要があります。
まず、虚偽の自白をしないことが最も重要です。
虚偽の自白とは、やってもいない犯罪をやったと自白してしまうことです。
通常の状態であれば、虚偽の自白などするはずがないと思う人が多いですが、実際に取り調べを受けて、精神的に参ってきたり、疲れてくると冷静に判断ができなくなります。
このようなときに捜査官から誘導を受けたりすると、いつのまにか自白をしてしまうこともあるのです。
よって、取り調べを受ける際には、捜査官から何を言われても意思を強くもって、虚偽の自白だけは絶対にしないことが重要です。
(2)取り調べの記録を残す
取り調べを受ける場合、一日中になることが多いです。
午前中から取り調べが開始されて昼休憩をはさみ、また午後から取り調べが続行されるということです
このような取り調べが何日も続きます。
このように、取り調べはとても負担が重く、被疑者が疲弊するものです。
ただ、取り調べの方法にも制限があります。
きちんと昼食などの休憩をとらないといけないとか、昼夜を問わない長時間の取り調べが禁止されるなどです。
このような取り調べのルールにきちんと捜査官が従っているかどうかをチェックするためには、被疑者側が取り調べの記録を残しておく方法が効果的です。
弁護士に依頼する場合には、被疑者ノートなどの差し入れをしてくれることがあります。
弁護士に正式に依頼しなくても、当番弁護士を呼べば被疑者ノートを差し入れてくれることが多いです。
被疑者ノートには、取り調べの時間や内容などが記載出来ますので、取り調べが行われたらその時間帯や内容を記録しておきましょう。
被疑者ノートが手元になくても、自分のメモなどで取り調べの記録を残しておくことが大切です。
もし違法、不当な取り調べがあれば、後に裁判になった場合に弁護士が争ってくれる材料になります。
(3)不当な取り調べがあったら弁護士に言う
取り調べの際には、捜査官は何をしてもよいというわけではありません。
たとえば暴力的な取り調べや休憩をとらない長時間の取り調べがあれば、違法になることもあります。
このような違法、不当な取り調べがあった場合には、すぐに弁護士に言いましょう。
すると、弁護士は警察などに抗議をしてくれるので違法・不当な取り調べが止むことが多いです。
また、違法・不当な取り調べがあった場合にはなるべく証拠を残しておくことが大切です。
そのためにも取り調べの記録を残しておくことが大切になります。
日記などをつけていても良いでしょう。
4.取り調べの流れ
取り調べを受ける場合、実際にはどのような流れになるのでしょうか。
取り調べについてはテレビドラマなどでもよく放送されていますが、実際とは異なる点があるのかなどについて、以下でご説明いたします。
(1)テレビドラマのイメージとの違い
取り調べが行われる場合、テレビドラマのイメージだと捜査官が2人部屋に入っています。
そして、その2人から取り調べを受ける設定が多いです。
2人のうち1人が威圧的な態度で接してきて自白を求めてきますが、もう1人はやさしく接してきて被疑者を落とそう(自白させる)としてきたりします。
実際に、このようなことは行われるのでしょうか。
この点、実際の取り調べとテレビドラマにはかなりの違いがあります。
まず、取り調べが行われる場合、暴力的な方法がとられることは通常ありません。
捜査官が被疑者に暴力を振るうことは違法なので、そのような取り調べが行われたことが明らかになると、後に裁判になったときに検察官側が不利になってしまうからです。
被疑者の人権保障の観点からも問題があるので、暴力的な取り調べは禁止されています。
よって、普通は捜査官が被疑者を殴ったり抑え込んだりするなどの取り調べ方法はありません。
ただし、声を荒げるとか乱暴な言葉遣いがあったり、脅迫的な言動くらいはよくあります。
また、取り調べが行われる場合、担当捜査官は必ずしも2名とは限りません。
1名の警察官が取り調べを行うケースもあります。
2名の取調官が関与する場合であっても、必ずしも1名が威圧的でもう1名が優しいというわけではありません。
警察で特にこのような組み合わせで被疑者に自白をさせるというようなマニュアルがあるわけではないのです。
取り調べの方法については、各捜査官の裁量に任されているところが大きいです。
よって、どのような取り調べが行われるかは、その捜査官の個性に大きく影響されます。
(2)黙秘権の告知が行われる
取り調べが行われる際、重要なことがあります。
それは黙秘権の告知です。
黙秘権とは、言いたくないことは言わなくても良いという権利です。
黙秘権を行使したことによって、そのことが不利益に評価されることもありません。
言いたくない質問には答えなくても、そのことをもって有罪だとは認定されません。
よって、取り調べを受ける場合には、自分の言いたくないことは一切話す必要はありません。
場合によっては、取り調べ時中、ずっと黙っていても良いのです。
この場合には、供述調書は1枚も作成されません。
刑事裁判になった場合には、捜査時の供述調書が1枚もない状態で裁判手続きが進められる形になります。
そうなると、裁判所で話したことが被告人の主張内容としてはすべてになります。
もし、捜査官に話をすると不用意なことを言ってしまいそうな場合には、取り調べの最中に黙秘権を行使して黙っているのも1つの方法です。
(3)意外と和やかなこともある
取り調べと聞くと、捜査官から高圧的な態度で自白を迫られるイメージがありますが、実際には取り調べは案外和やかなムードで進むこともあります。
取り調べが行われる際、捜査官による雑談から開始することなどもあります。
たとえばよく眠れているかとか、食事はできているかなどの他愛のない内容を聞かれたりします。
これらの雑談の内容には特に深い意味はなく、苦情を言っても待遇が改善されるわけではありませんが、取り調べの雰囲気としては、少し緊張感を和らげる効果があるでしょう。
(4)休憩はきちんととられる
取り調べが行われる場合には、被疑者に負担をかけすぎる長時間の取り調べは禁じられています。
たとえば昼食や夕食の時間帯をはさんでいるのに、食事をとらせずにぶっ続けで取り調べをするなどの方法は認められていません。
被疑者を眠らせずに取り調べを行うことも認められません。
このような無理な取り調べをすると、疲れ切った被疑者が虚偽の自白をしてしまうおそれがあります。
実際に、過去にはこのような無理な取り調べや暴力的な取り調べによって、数多くの虚偽の自白が行われました。
それによって、無実の罪を着せられた人もたくさんいます。
このようなことへの反省と、被疑者の人権保障や真実を発見するという刑事手続きの目的からして無理な取り調べは禁止されるに至ったのです。
よって、取り調べを受ける際には、基本的に休憩をきちんととってもらえます。
また、昼食時間帯にはいったん取調室を出て留置場に戻ることができます。
(5)弁護士の接見があると中断される
取り調べが行われている最中に弁護士が警察にやってきて、被疑者との接見を申し出ることがあります。
この場合にも、取り調べは中断されます。
被疑者の人権保護のために、弁護士との接見は被疑者取り調べよりも優先されることになっているからです。
もし長時間の取り調べが続いていて疲れている場合や、取り調べに対して何と答えて良いかわからなくなっている場合などには、弁護士が接見に来て取り調べが中断すると非常に助かります。
この意味で、被疑者段階で弁護士に弁護人を依頼することには大きな効果があると言えます。
まとめ
今回は取り調べとその意味、取り調べを受ける際の注意点や取り調べが行われる方法などについてご説明いたしました。
取り調べが行われると、その結果が後の裁判で利用されます。
よって、取り調べ時には、絶対に虚偽の自白をしないことが重要です。
また、取り調べの実際の進行方法は、テレビドラマなどのイメージとはかなり異なる部分があります。
実際には捜査官による暴力的な取り調べはほとんどありませんし、長時間に及ぶ取り調べも禁止されています。
不当な取り調べがあったら、弁護士に言って抗議をしてもらいましょう。
今回の記事を参考にして、適切に取り調べに対処し、後に裁判になったときに不当な不利益を被らないようにしましょう。