引っ越し時に敷金を満額返還させるための全手順(テンプレ付)

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新年度を迎え、何かと引越しが多くなるこの時期。

引越し作業は無事に終わったものの、貸主側から「修繕費を差引く」などと言われてしまい、前に住んでいた部屋の敷金が返ってこないというトラブルもしばしば起こり得ます。

しかし、普通に部屋を使っていただけなのに、敷金が返ってこない場合には敷金を返してもらえる可能性があります。

そこで、今回は敷金返還の方法について説明します。

現在敷金が返ってこなくて困っている人はもちろん、近々引越しを予定している人も次回の引越しに備えて参考にしてください。

また、敷金返還請求権の時効は賃貸借契約の終了から5年であるため、以前引越しをした際に敷金が満額返ってこなかった人も引越しから5年以内であればまだ敷金を回収できる可能性があります

敷金を変換してもらう際にご参考になれば幸いです。

※この記事は2017年4月12日に加筆・修正しました。

目次

1.敷金返還をスムーズに実現するために!チェックリストをダウンロード

まずは、敷金返還をスムーズに進めてもらうためのチェックリストを用意しました。
是非、ダウンロードして利用してください。

2.不動産管理会社への解約通知


借りていた部屋の退出の手続きは、不動産管理会社に賃貸借契約の解約通知を送ることからです。

引越しのタイミングが決まり次第、不動産管理会社に連絡しましょう。

賃貸物件を明け渡す際には1ヶ月前に告知することになっていることが多いので、このタイミングで不動産管理会社と話し合って1ヶ月後以降で明渡日を決めることになります。

そして、明け渡す前に退去の立ち会いがあり、その時に部屋の中に汚れやキズがないかを調べることになります。

そのため、敷金を満額回収するための事前の対策としては、引越し作業終了後の立ち会いのタイミングで部屋を綺麗にしておくことが重要です。

この点については、「4.部屋の清掃」で説明します。

3.国土交通省のガイドラインを手に入れる


敷金を満額回収するためには、不動産管理会社への退去通知後引越し前までに国土交通省のガイドラインを手に入れておきたいです。

(1)国土交通省のガイドラインとは?

ガイドラインとは、法律と同様に決まり事ではあるものの、法律とは異なり「必ずその通りにしなければいけない」というものではありません。

その点で、絶対的なものではなくあくまでも目安にすぎません。
国土交通省のガイドラインはこちらからダウンロードできるようにしてあるのでぜひ参考にしてください。

(2)国土交通省のガイドラインに書かれている内容は?

ちなみに、このガイドラインには、基本的な方針として「通常の使用の範囲内での劣化・汚れについての修繕・清掃については基本的に貸主が責任を負う」とされています。

そのため、普通に使用している限りは借主が修繕費用や清掃費用を負担することはありません。
つまり、基本的には敷金は満額返ってくることになります。

記載されている内容は、例えば以下の通りです。

①借主が修繕費用&清掃費用を負担すべき場合

借主が負担すべき場合 床のキズ・汚れ キャスター付きのイス等によるフローリングのキズ・へこみ
カーペットに飲み物等をこぼしたことによるシミ カビ(シミ・カビに至らない通常の清掃で綺麗にできる汚れは借主が負担する必要はありません)
引っ越し時の畳・フローリングへの引っかきキズ
壁・天井のキズ・汚れ 壁のくぎ穴 やネジ穴
タバコのヤニによる壁の変色で通常のクリーングでは綺麗にならないもの
備え付けのクーラーから水漏れし、借主が放置したため壁が腐食してしまったもの
台所の油汚れ
ペットが壁につけてしまったキズ・汚れ
ガラス・柱のキズ・汚れ ペットが柱につけてしまったキズ ・汚れ
設備・その他のキズ・汚れ 鍵穴を破損した場合や、鍵を紛失した場合の鍵の交換
台所や風呂、トイレなどの水垢、カビの清掃

②貸主が修繕費用&清掃費用を負担すべき場合

貸主が負担すべき場合 床のキズ・汚れ フローリングのワックス掛け
畳の裏返し表替え
畳の変色
家に貼ったポスターや絵画の跡
カーペットについて家具の跡や凹み
壁・天井のキズ・汚れ テレビ 冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ
エアコン(借主所有)設置による壁の穴
日光による壁紙クロスの変色
ポスターや絵画を壁に貼ったことによる壁紙クロスの変色
タバコのヤニによる壁の変色で通常のクリーングによって綺麗になる程度のもの
壁の画びょう穴やピンの穴
ガラス・柱のキズ・汚れ 地震で割れてしまったりヒビがはいったガラス
その他網戸の張替え(破損等はしていないが次の入居者確保のために行うもの)貸主入居者の入れ替わりによる物件の維持管理上の問題であり、貸主負担とする
設備・その他のキズ・汚れ 通常の鍵の交換
台所やトイレなどの水回りの消毒
ハウスクリーニング 退去時のハウスクリーニング費用

4.引っ越し作業


次は引っ越し作業です。
以下の手順で進めましょう。

  1. インターネットなどで引っ越し業者を探す
  2. 引っ越しの日程を決める
  3. 国土交通省のガイドラインの事例をチェックして引っ越し作業のタイミングで傷や汚れがつかないように注意する
  4. 引っ越し作業

ポイントは「3.国土交通省のガイドラインの事例をチェックして引っ越し作業のタイミングで傷や汚れがつかないように注意する」です。

家具を搬出する際に部屋の中を傷つけてしまうことは少なくありません。
ガイドラインの事例をチェックして注意しながら引っ越し作業をしましょう。

5.部屋の清掃


引越し作業をして家具などの搬出が終わって部屋に荷物が無くなったら次は部屋の清掃です。

まずは、部屋の中に目立った汚れや傷がないかをチェックしましょう。
なければ敷金は満額返ってくるはずです。

次に、お風呂や洗面所、トイレ、流しなどの水回りの掃除をしっかりやっておきましょう。
そして、台所の油汚れを掃除してしっかり落としておくことが大切と言えるでしょう。

6.退去後点検


部屋の清掃が終われば、敷金から差引く清掃費や修繕費が必要かをチェックするため、不動産管理会社の担当者が部屋の中をチェックすることになります。

もし、清掃費や修繕費が必要な汚れや傷がある場合には、どのような原因で発生したかをきちんと伝えておきましょう。

そして、もし、退去後点検の担当者が指摘した汚れやキズが入居前からのものである場合には、きちんとその旨伝えましょう。

7.敷金返還金額の見積りが送られてくる


退去点検が終わると、敷金返還金額の見積りが送られてきます。

もしかしたら退去点検時に担当者から話があるかもしれませんが、この時点で敷金が満額返ってくるかどうかが分かります。
もし全額返ってこないとの見積りであれば、次のステップに進みましょう。

8.まずは直接敷金を全額返還して欲しいと伝える!


見積りに納得がいかなければ、直接「敷金を全額返して欲しい」と大家さんや管理会社に伝えましょう。

直接言って返してくれるのであれば一番手間がかからないのですが、なかなかそれは難しいでしょう。

9.内容証明郵便を作る


もし、直接または電話で見積りに納得がいかないことを伝えても敷金が全額戻ってこなかった場合には、内容証明郵便を送りましょう。

(1)内容証明郵便とは?

そもそも、内容証明郵便とはどのようなものなのでしょうか。
内容証明郵便とは、以下の内容を郵便局が証明してくれる郵便のことです。

  • 誰が出したか
  • 誰宛に出したか
  • どのような内容が書かれているか
  • 手紙をいつ出したか

(2)内容証明郵便の効果は?

では、なぜ普通の郵便ではなく、内容証明郵便で送ることが必要なのでしょうか。

それは郵便の内容を郵便局が証明してくれるため、裁判になった場合に証拠としての価値が高くなるからです。

また、内容証明郵便は形式が決まっているために公的な郵便の雰囲気があることから、相手に心理的なプレッシャーを与えることができるのもその理由です。

もっとも、内容証明郵便を受け取り慣れてる弁護士などには心理的プレッシャーを与えることは難しいです。
なお、内容証明郵便の法律上の効果は普通の郵便と同じです。

(3)内容証明郵便の形式

内容証明郵便は普通の郵便とは異なり形式が決まっています。
具体的には以下の通りです。

なお、作成はパソコン・手書きのどちらでも可能です。

  • 紙1枚につき520字以内
  • 1行20字以内
  • 1枚26行以内
  • 日本語(漢字/ひらがな/カタカナ・数字)で書く (ただし会社名などの固有名詞を除く)

(4)内容証明郵便のテンプレのダウンロード

内容証明郵便を一から作るのは大変なので、今回は雛形を用意しました。
是非、ダウンロードしてください。

(5)内容証明郵便の書き方は?

次に、内容証明郵便の書き方について説明します。
敷金を回収するために内容証明郵便を送る際に書くべきことは主に以下の14の事柄です。

  1. 相手(大家さん)の名前・住所
  2. あなたの名前・住所
  3. 賃貸借契約の締結日
  4. 借りていた部屋の住所と部屋番号
  5. 住み始めた日時
  6. 支払った敷金の金額
  7. 契約終了申し入れが承諾された日
  8. 契約終了日
  9. 建物明け渡し日
  10. 敷金返還額の見積書の作成日
  11. 敷金返還額の見積書の金額
  12. 国土交通省のガイドラインに基づくと借主が負担すべき費用がないこと(ハウスクリーニングについて詳しくは「11.最後に参考にしたい! 〜「ハウスクリーニング特約により敷金返還額を減額します」と言われたら?〜」をご参照下さい)
  13. 請求する金額
  14. 支払い口座

それぞれの項目について雛形の中で上記番号に合わせてコメントしているので、それらの指示に従って書いてください。

10.内容証明郵便を出す


次は、いよいよ内容証明郵便を発送してみましょう。
以下の流れで進めていくことになります。

(1)必要な資料を揃える
(2)費用を持参する
(3)郵便局で必要資料を提出

以下、詳しく説明していきます。

(1)必要な書類を揃える

まずは必要な書類を揃えましょう。
具体的には以下の通りです。

  • 内容証明郵便の書面3通(3通の内容は全く同じ)
  • 相手の住所地を記載した封筒1通

その他に、印鑑も用意してください。

なお、同じ書面が3通必要となるのは、

  • 相手に送る用
  • 郵便局が保管する用
  • 送り主用

が必要になるからです。

(2)費用も持参する

内容証明郵便を送るのにかかる費用は大体2,000円前後と考えておくと良いでしょう。
詳しくは、以下の通りです。

なお、4や5は必須ではないですが、いつ届いたかを記録するために4は付けておくことをお勧めします。

  1. 通常郵便物の料金 82円(定型25グラムまで)
  2. 内容証明料 430円(※内容証明の文の用紙1枚の場合)
  3. 書留料 430円
  4. (もし配達されたことを証明したい場合)配達証明料 310円
  5. (もし速達にする場合)速達料 280円

※2の内容証明料については用紙が2枚以上の場合、1枚増えるごとに250円加算されます。

(3)郵便局で必要書類を提出

最後に、郵便局で「内容証明郵便を出したいんですが」と伝えて必要書類を提出することになります。

11.もし内容証明郵便を出してもお金が返ってこなければ少額訴訟!


内容証明郵便を出してもお金が返ってこない場合には、少額訴訟をしてもよいでしょう。
ここでは、簡単に少額訴訟について説明したいと思います。

なお、詳しくは「【訴状の雛形付き】少額訴訟とは?簡単にお金を回収する方法」を参考にしてください。

(1)少額訴訟とは

①少額訴訟とは

少額訴訟とは、60万円以下の少額債権の請求を求める裁判のことです。

②かかる費用は

少額訴訟にかかる費用は、通常の裁判をするよりも比較的安く1万円もかかりません。

そのため、敷金をきちんと回収できれば少額訴訟をすることにもメリットがあるといえます。
しかも1回の期日で判決が出るため、時間もかかりません。

(2)少額訴訟に勝つためには何と言っても証拠!

少額訴訟に勝って敷金を回収するために重要なのは、何と言っても証拠です。
具体的には以下の通りです。

  • 賃貸借契約書
  • 敷金返還額の見積書
  • 国土交通省のガイドライン
  • 大家さんや不動産管理会社側が修繕費や清掃費がかかると主張する箇所の写真を数枚
  • (内容証明郵便を送った場合)内容証明郵便のコピー

(3)どのような主張をしたらいいか?

①具体的な主張の内容は?

では、具体的にはどのような主張をすれば良いのでしょうか。

具体的には、「大家側や管理会社側が主張する箇所について『国土交通省のガイドライン』を踏まえると貸主側が負担すべきものである」と主張することになります。

②どのような方法で主張する?

そして、上記主張を訴状に記載することになります。
詳しく説明する前に、まずは、少額訴訟の訴状をダウンロードできるようにしたので、ぜひダウンロードしてください。

③実際の書き方

雛形のダウンロードをすると「請求の趣旨(その他の参考事項)」の項目があると思います。

そこには、「被告は、『◯◯部分の清掃・修繕が必要なので敷金からその清掃費・修繕費を差し引きます』と主張しています。

しかし、現在の証拠と国土交通省のガイドラインを踏まえるとこれは貸主側が負担すべき費用である」と予め記載されていますが、そこの「◯◯」の部分に大家さんや管理会社が清掃費・修繕費が必要だと主張する部分を記載してみてください。

例えば、管理会社が部屋のカーペットが凹んでいると主張している場合には、「被告は『部屋のカーペット部分の清掃・修繕が必要なので敷金からその清掃費・修繕費を差し引きます』と主張しています。

しかし、現在の証拠と国土交通省のガイドラインを踏まえるとこれは貸主側が負担すべき費用である」と記載することになります。

なお、くれぐれもその部分の写真を証拠として提出することを忘れないようにしましょう。

(4)少額訴訟の訴状の作成方法は?

上記以外に書くべきことは以下の通りです。

1枚目

  • 事件名(敷金返還請求事件)
  • 原告の情報(あなたの名前や住所など)
  • 被告の情報(大家さん側の名前や住所など)

2枚目

  • 請求の趣旨(請求する敷金の金額、など)
  • 請求の原因(賃貸借契約の内容、などについて)
  • 添付書類(契約書などの証拠となる書類について)

具体的な書き方はテンプレの中でコメントしています。
その他、細かい部分は裁判所の記載例を確認して頂きたい。

(5)少額訴訟の必要書類は?

裁判をするのに必要なのは訴状だけではありません。
具体的には、以下の書類が必要になります。

  1. 訴状
  2. 訴状副本
  3. (相手が法人の場合)登記事項証明書
  4. 証拠(賃貸借契約書など、詳しくは「(2)少額訴訟に勝つためには何と言っても証拠!」をご参照下さい」)

(6)必要書類を揃えたら裁判所へ!

次はいよいよ訴状を含めた必要書類を簡易裁判所に提出しましょう。

提出先となる裁判所は相手の住所地を管轄する簡易裁判所になります。
地域ごとの裁判所は以下の通りです。

(7)裁判の流れは?

裁判の流れは以下の通りです。

  1. 期日決定
  2. 審理
  3. 判決

その他、少額訴訟について詳しくは、「【訴状の雛形付き】少額訴訟とは?簡単にお金を回収する方法」を参考にしてください。

12.最後に参考にしたい! 〜「ハウスクリーニング特約により敷金返還額を減額します」と言われたら?〜


最後に、ハウスクリーニング特約について説明していきます。
実際の賃貸借契約の多くでは、特約としてハウスクリーニング特約を結ぶことが多いです。

そのため、管理会社側から「最初に『ハウスクリーニング特約』を締結しているからクリーニング代は差し引かせて頂きます」と言われてしまうことがあります。

この場合には、「ハウスクリーニング特約」自体は有効な契約であるため、基本的にはクリーニング代が差引かれてしまうことになってしまってもやむを得ません。

もっとも、仮に「ハウスクリーニング特約」が契約書に明記されていたとしても、必ずしもクリーニング費用を負担しなければならないわけでもありません。

退出時にきちんと清掃しておいてハウスクリーニングが不要な場合には、大家さんもしくは管理会社に「自分で清掃したので綺麗だからハウスクリーニングは不要じゃないですか?」と伝えて、それでもハウスクリーニング費用を負担しなければならないかを確認すると良いでしょう。

国土交通省のガイドラインにある「通常の使用」には一般的な普段の掃除も含まれますが、そのような清掃をきちんとしていたのであれば、ハウスクリーニングの特約があっても費用を負担しなくて済むケースもあります。

敷金の返還に関するまとめ

今回は、敷金を満額取り戻す方法について説明しましたがいかがだったでしょうか。
今回の話がご参考になれば幸いです。

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