借金がかさんで首が回らない状態になったら、自己破産手続きによって解決する方法が効果的です。
自己破産をすると、税金などの一部の債権をのぞいてすべての債務の支払が免除されるので、非常に助かります。
自己破産というとマイナスイメージも強いですが、自己破産にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
自己破産をするといろいろな制限がかかるイメージもありますが、具体的にはどのようなデメリットがあるのかも知っておく必要があります。
自己破産のメリットとデメリットを正しく理解することで、適切に借金問題を解決することができるのです。
そこで今回は、自己破産のメリットとデメリットを解説します。
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目次
1.そもそも自己破産とはどんな手続き?
借金問題に苦しんでいる場合には、自己破産が有効です。
自己破産とは、裁判所に申立をして、すべての債務の返済義務をなくしてもらう手続きのことです。
税金や健康保険料などの一部の支払い義務は残りますが、借金や滞納家賃などの一般的な支払はすべて免除されます。
債務整理と言うと、自己破産を思い浮かべる人も多いでしょう。
このように有名な自己破産ですが、意外と正確にそのメリットとデメリットが知られていないので、以下で説明します。
2.自己破産のメリット
自己破産には-イメージも強いですが、実はたくさんのメリットがあります。以下で具体的に見てみましょう。
(1)借金が0になる
自己破産をすると、借金返済義務が完全に0になります。
このことは、自己破産の大きなメリットです。
借金を整理するための債務整理手続には、任意整理と特定調停、個人再生と自己破産の4種類があります。
この中でも借金返済義務がなくなるのは、自己破産だけです。
その他の手続きでは借金や利息の減額はできても、根本的に支払を0にしてもらうことはできません。
このことは、最も大きな自己破産のメリットとも言えるでしょう。
(2)手続き後に返済が残らない
自己破産をすると、借金返済義務がなくなります。
このことによって、自己破産後には債権者への支払が残りません。
自己破産手続きを終えたら、完全に借金から解放されて0からのスタートを切ることができます。
この点、任意整理や個人再生などの他の債務整理手続の場合には、手続き後に数年間の支払が残ります。
その間、支払ができなくなったら債務整理手続に失敗して、また改めて別の手続きを利用しないといけなくなります。
それと比べると返済が残らない自己破産にはメリットが大きいです。
(3)利用できる人が多い
自己破産は、他の債務整理手続と比べて利用できる人の範囲が広いです。
まず、自己破産では手続き後の支払いが不要なので、収入が少ない人やない人でも利用できます。
生活保護受給者でも自己破産を利用して借金をなくしてもらっているケースがあります。
これに対して、他の債務整理手続では、手続き後に返済が残るので、その支払いに必要な最低限の収入は必要になってしまいます。
さらに、自己破産は個人だけではなく会社などの法人でも利用することができます。
このことによって、法人の代表者が経営していた法人と一緒に自己破産することなども容易にできます。
これに対して、たとえば個人再生の場合には、個人しか利用することができないという制限があります。
このように、自己破産は広くいろいろな人が利用できる点でもメリットがあります。
(4)借金の額に制限がない
自己破産をする場合、借金額に限度額はありません。
どれだけ多額の借金があっても自己破産手続きによって、すべて0にしてもらうことができます。
たとえば借金額が1億円でも10億円でも、すべての借金が0になるのですごい効果です。
これに対して、個人再生では借金額は5000万円までという制限があります。
任意整理や特定調停では、法律上の制限はありませんが、手続き後に借金額の返済義務が残ることから、実際には大きな金額の借金がある場合利用できないことが多いです。
たとえば3000万円の借金がある場合、基本的に手続き後に3000万円の支払が必要になります。
5年で返済をするとしても、月々の返済額は50万円になってしまいます。
このような支払は通常困難なので、借金が多額すぎる場合には任意整理や特定調停は難しいのです。
さらに、自己破産は、借金額が少なくても利用できます。
自己破産では、借金の金額よりも、その人がおかれた状況において、今後支払を継続していけるかということが重視されます。
そこで、借金額が少なくても、資力がなくて支払ができない状態なら自己破産が認められます。
たとえば、生活保護受給者などの場合には、50万円以下の借金でも自己破産して借金を0にしてもらっています。
このように、借金額に最高額や最低額などの制限がないことも、自己破産の大きなメリットです。
(5)手続きに反対する債権者がいても利用できる
自己破産をする場合、手続きに反対する債権者がいても利用できます。
自己破産では、借金を0にしてもらうための決定である「免責決定」をしてもらうことが目的です。
裁判所は、基本的に免責不許可事由がない限り免責を認めます。
自己破産手続きに反対している債権者がいても、免責不許可事由がない限りは免責によって借金がなくなるのです。
これに対して、個人再生の場合には、原則的な小規模個人再生手続きの場合、過半数の数か債権額の債権者の異議があると、再生計画案が認可されません。
こうなると、借金額の減額は認められず、手続きに失敗してしまいます。
また、任意整理や特定調停では相手方債権者と交渉や調停が成立しないと手続きが成功しません。
そもそも手続きに反対している債権者がいると、その借金については整理できないのです。
このように、自己破産以外の債務整理手続では、手続きに反対する債権者がいると、手続きを進めることが難しくなることが多いです。
債権者の意向に関わらず手続きを進めることができて借金をなくすことができる自己破産には大きなメリットがあります。
(6)債権者からの督促と返済が止まる
自己破産をする場合には、弁護士や司法書士などの法律の専門家に手続きを依頼します。
すると、弁護士などが債権者に対して受任通知を発送した段階で、債権者からの督促がストップします。
弁護士に手続きを依頼したら即日で債権者からの督促電話が止まることもあります。
これは、弁護士などが債務整理に介入した後は、債権者は債務者に直接連絡をとってはいけないことが貸金業法などの法律で定められているからです。
自己破産をしようという人は、すでに借金を滞納して債権者からの督促に悩んでいる人も多いので、督促がなくなることはとても助かります。
また、家族に借金を秘密にしている場合でも、債権者からの連絡が止まることによって、借金がバレる可能性がなくなって安心です。
さらに、弁護士に自己破産手続きを開始してもらったら、債権者への借金支払いも止まります。
このように、自己破産を開始して借金返済を止めて、債権者からの返済督促も止まることにより、その間に借金で崩れてしまった生活を立て直すことが可能になります。
このことも、自己破産手続きの大きなメリットとなります。
3.自己破産のデメリット
自己破産にはマイナスイメージがついてまわるものですが、具体的にはどのようなデメリットがあるのでしょうか?
以下で順番に説明します。
(1)ブラックリスト状態になる
自己破産だけに限った問題ではありませんが、過払い金請求以外の債務整理手続を利用すると、いわゆるブラックリスト状態になってしまいます。
ブラックリスト状態とは、ローンやクレジットカードなどを利用できない状態のことです。
債務整理をすると、信用情報機関が保管している個人信用情報に事故情報というネガティブな情報が登録されてしまいます。
事故情報のことをブラック情報などとも言います。
消費者金融会社やクレジットカード会社などの貸金業者や、銀行・信用金庫などの金融機関は、ローンやカードの審査をする場合に、この個人信用情報を参照します。
そこで、個人信用情報に事故情報などの問題のある情報が登録されていると、信用力の内人だと判断されて、審査に通らなくなってしまうのです。
このように、債務整理をすると事故情報が記録されることにより、その後一定期間ローンやクレジットカードが利用できなくなりますが、その状態のことを俗にブラックリスト状態などと言っています。
自己破産をすると、このブラックリスト状態の期間が比較的長く続きます。
消費者金融やクレジットカードの利用が再びできるようになるためには、手続き後5年~7年程度かかりますし、銀行や信用金庫のローンが再び利用できるようになるには、10年間程度の経過が必要になります。
このように、手続き後ローンやクレジットカードなどが利用できなくなってしまうことは、自己破産のデメリットの1つです。
(2)財産がなくなる
自己破産をすると、債務者の基本的な財産はすべて失われます。
たとえば債務者名義の預貯金や生命保険、株券、投資信託などの財産があれば、すべて現金化されて債権者に配当されてしまいます。
自宅などの不動産がある場合にも手放すことになります。
自己破産をする場合、債務者に一定以上の財産があると、破算管財人という人が選任されて、破産者の財産を現金化して債権者に配当する手続きをしてしまうからです。
このように、自己破産をすると基本的に財産がなくなることは大きなデメリットになります。
ただし、生活に最低限必要な財産は持ったまま破産することができます。
たとえば、預貯金や生命保険などの個別の財産については20万円以下のものなら持ったまま破産できますし、現金なら99万円までは持って破産できます。
破産手続き開始決定後入ってきた財産については自由財産として所持することが認められるので、破産手続き後の給料なども全額自分で管理して使うことができます。
よって、自己破産して財産がなくなるとは言っても、その後生活ができなくなってしまうおそれなどはないので安心しましょう。
(3)職業制限がある
自己破産をすると、一定の職業に就けなくなります。
また、財産管理能力のない人の財産管理をする職務である成年後見人になることもできません。
これは、自己破産をすると、資格制限という制限がかかるからです。
自己破産を申し立てて破産手続き開始決定があると、免責決定がおりるまでの間一定の職業に就いたり成年後見人になる資格を失ってしまいます。
このことを資格制限と言います。
資格制限によって就けなくなる仕事は、弁護士や司法書士、税理士や公認会計士、弁理士や土地家屋調査士、社会保険労務士などのいわゆる「士業」の資格や、不動産の宅建業、警備員や生命保険外交員、証券会社の外務員、質屋や産業廃棄物処理業者、特定非営利活動法人(NPO)の役員などさまざまです。
このような資格制限を受けることは、自己破産のデメリットです。
このような制限は個人再生などの他の債務整理手続にはありません。
個人再生をしても、どのような職業につくこともできますし、成年後見人の職務を果たすことも可能です。
ただ、自己破産をした場合でも、一部の制限を受ける職業以外の職に就くことは自由ですし、免責決定があれば復権して制限を受けていた職にも就くことができるので、さほど神経質になる必要はないでしょう。
(4)借金の原因が問題になる
自己破産をする場合には、免責決定を得ることによって借金返済義務を免除してもらう必要があります。
しかし、一定の事由があると、免責が受けられなくなってしまいます。
その事由のことを「免責不許可事由」と言います。
免責不許可事由があって免責が受けられないと、自己破産をしても借金がなくならないので借金問題を解決することができません。
免責不許可事由として代表的なものが、借金の主な原因が浪費やギャンブルによるケースです。
たとえば、パチンコやパチスロ、競馬などのギャンブルが借金の主な理由となっている場合には、免責不許可事由に該当して免責決定を得られなくなるおそれがあります。
このように、借金の原因によっては免責が認められなくなる可能性があることは、自己破産のデメリットです。
個人再生などの他の債務整理手続の場合、借金の原因は問題にならないので、たとえ浪費やギャンブルが原因の借金があっても、どのような場合でも手続きを利用できます。
ただ、自己破産で免責不許可事由があっても、必ずしも免責が受けられなくなるわけではありません。
自己破産には「裁量免責」とう制度があります。
これは、免責不許可事由があるケースでも、裁判所がその事案全体を見て評価したところ、裁量をもって免責を認めても良いと判断した場合には免責を認めるという制度です。
実際には、免責不許可事由があっても、特に1回目の破産の場合には裁量免責によって広く免責が認められています。
よって、浪費やギャンブルが原因で借金していても、必ずしも自己破産できないということにはならないので、覚えておくと良いでしょう。
(5)官報に情報掲載される
自己破産をすると、破産者の氏名や住所、破産事件の情報などが官報という機関誌に掲載されてしまいます。
このことを、「官報公告」と言います。
官報とは、法律の改正や破産、個人再生などに関する情報が掲載されている政府の機関紙のことです。
国が刊行している新聞のようなものだと考えるとわかりやすいです。
自己破産をすると、官報に2回氏名や住所、破産したという事実などが載ってしまいます。
このことによって、他人に自己破産した事実が知られる可能性がありますので、この点は自己破産のデメリットだと言えます。
ただ、実際には一般の人で官報を購読している人はほとんどいません。
よって、官報公告されることによって、家族や勤務先の会社に自己破産したことが知られるリスクはほぼないと言っても良いでしょう。
ただ、官報の破産者情報は、闇金などがチェックしていて、事件後借金の勧誘をしてくることがあります。
このことによって、たとえば、自己破産後自宅宛に闇金からDMが届くなどのことはよくありますので、注意が必要です。
また、不動産会社などは、破産者の売却不動産の仲介をしようと思って官報の破産者情報をチェックしていることがあります。
リサイクル業者や不用品の処分業者なども同じく、破産者の不用品の処分に関与するために破産者情報をチェックしていることがあります。
よって、もし個人的にこれらの業者と付き合いがあったり、これらの会社に勤めている場合には、官報掲載によって破産の事実を知られることがありえます。
ただ、そのようなことは極めてレアケースなので、あまり神経質になりすぎる必要はありません。
(6)手続きが複雑で費用がかかる
自己破産は、他の債務整理手続と比べて手続きが煩雑で専門的です。
裁判所に申立をするため、必要書類もとても多いですし、裁判所の指示に的確に従わないと、手続きをすすめられなくなります。
このように、手続きが複雑で難しいので、自己破産は債務者が自分ですすめることが難しいです。
弁護士や司法書士に手続きを依頼することがほとんど必須になりますが、その場合には、弁護士費用や司法書士費用がかかってしまいます。
また、自己破産には、財産があまりない人のための同時廃止手続きと、財産がある程度ある人のための管財手続きがありますが、管財手続きの場合には、最低20万円の高額な予納金が必要になります。
さらに、管財事件の場合、弁護士費用や司法書士費用も高くなることが多いです。
このように、自己破産では手続きが煩雑になる上、費用も高額になることがデメリットと言えます。
4.自己破産でよくある誤解
(1)自己破産には誤解が多い
自己破産をする場合にはいろいろなデメリットがありますが、その内容は概ね上記のとおりです。
世間では、これ以外にもいろいろなデメリットがあるかのような誤解がありますが、実際には間違ったイメージであることが多いです。
以下では、自己破産でよくある誤解について簡単に説明します。
(2)意外とデメリットの少ない自己破産
自己破産をすると、選挙権がなくなるという誤解がありますが、そのようなことはありません。
また、自己破産をすると仕事を辞めなければならないとか、将来就職出来なくなるなどの誤解もありますが、自己破産では上記で説明した資格制限以外に職業制限を宇蹴ることはありません。
さらに、賃貸住宅に居住している場合も家を出なければならないとか、将来賃貸契約ができなくなるなどの誤解もありますが、そのようなこともありません。
自己破産しても賃貸住宅に継続して住めますし、新たに賃貸契約することも自由です。
海外旅行ができなくなるという誤解もありますが、そのようなこともありません。
自己破産してもパスポートにも何らの記載もされませんし、海外旅行もできます。
さらに、自己破産をすると離婚しなければならないという誤解もありますが、それもありません。
自己破産して、その後結婚することも自由ですし、自己破産と結婚、離婚の手続きは無関係です。
さらに、自己破産すると必ず家族や勤務先、友人知人などにバレてしまうという誤解もありますが、それもありません。
弁護士に依頼して秘密で手続きをしてもらえば、家族や周囲に秘密にしたまま自己破産をすることは充分可能です。
このように、自己破産は、世間で考えられているよりもデメリットが少なく、むしろ借金が0になるという意味で大きなメリットがある手続きです。
借金問題を抱えて苦しんでいる場合には、是非とも検討してみると良いでしょう。
まとめ
今回は、自己破産のメリットとデメリットについて解説しました。
自己破産をすると、どれだけ多額の借金があっても完全に支払の必要が無くなるという点が最大のメリットです。
また、自己破産には悪いイメージもつきまといがちですが、そのデメリットはさほど大きくありません。
財産がなくなったり、資格制限を受けたりなどの問題もありますが、生活に最低限必要な財産は持ったまま破産できますし、資格制限も一部の職業について一時的に制限されるだけに過ぎません。
自己破産すると選挙権がなくなるとか、賃貸住宅に住めないとか、海外旅行できなくなるなどのたくさんの誤解もありますが、実際にはさほどの不利益はありません。
自己破産は、借金問題を根本的に解決するためにとても効果的な債務整理方法なので、借金問題に苦しんでいる場合には、弁護士などと相談をして検討してみると良いでしょう。