過去に「武富士」から借金をしていた方は、たくさんおられたことでしょう。
一時には「サラ金と言えば武富士」というくらい、超有名なサラ金会社でした。
ところが、武富士は経営不振に陥り、2010年には会社更生法を申請して現在は完全に消滅してしまっています。
このことで、武富士から借金していた人は、どのような取扱いとなったのでしょうか?
今後、サラ金やカードローンを利用するときの参考に知っておきましょう。
今回は、武富士の事例をもとにしてカードローン借入と過払い金請求で気をつけなければならないことを考えてみましょう。
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目次
1.武富士とは
武富士は、有名な消費者金融会社です。
一昔前までは「消費者金融といえば、武富士」と思うくらい、超有名で大手のサラ金会社でした。
1966年に設立された会社で以後倒産するまで50年間くらい、貸金業者としての営業を継続してきました。
テレビCMなども大々的に行っていたので、まさか倒産するとは誰も考えていなかったでしょう。
しかし、実際には経営不振に陥り2010年9月28日、会社更生の申立をして、倒産状態に陥りました。
そして、2017年3月17日、すべての精算手続きを終えて武富士は消滅しました。
2.武富士が倒産した理由
あれほど隆盛を極めていた武富士が、どうして倒産してしまったのでしょうか?
それは「過払い金請求」の影響です。
ご存知の通り、2008年頃より以前には、たくさんの消費者金融会社やカード会社が、利息制限法の制限利率を超える高い利率で貸付をしていました。
消費者金融会社は、利息制限法を超過する利率が適法であるとするため「みなし弁済」という規程の適用を主張していました。
みなし弁済が適用されない場合、利息制限法を超過した利率による貸付が認められないので、高い利息の支払いが無効となります。
すると、利息の支払いすぎ部分が発生し過払い金請求が認められることになるのです。
そこで、消費者側は「みなし弁済」は成立しないとして業者に対して多くの過払い金請求訴訟を起こし全国の裁判所において、熾烈な争いが繰り広げられていました。
そのような中、決定的な判決が降りました。
2006年(平成18年)1月13日における最高裁判所の判断です。
その事件で最高裁は「みなし弁済の適用を、ほぼ100%認めない」という趣旨の判決を下しました。
このことにより、消費者金融やカード会社に高い利息を支払っていた人は、ほぼ間違いなく過払い金請求できることになったのです。
そこで、これまでより多くのサラ金利用者が、ものすごい勢いで過払い金請求をしました。
訴訟もたくさん起こりました。
いわゆる「過払い金バブル」です。
このように、全国各地の消費者が過払い金請求をしたため、多くの消費者金融やカード会社が経営不振に陥りました。
特に苦しかったのは、やはり利息制限法を超過した貸付事業に特化していた消費者金融会社です。
武富士も、2000年代後半頃から経営が苦しくなり、ついに2010年、経営を維持できなくなって倒産状態に陥りました。
2010年9月28日、東京地方裁判所に会社更生の申立をしています。
3.武富士がとった会社更生法とは
さて、会社更生法というのは、どういった手続きをいうのでしょうか?
これは、基本的には会社が再生するための手続きです。
比較的大規模な会社が選択する方法で更生計画を認可してもらい、その計画を実行することにより会社は存続します。
更生手続は、裁判所から選任された「更生管財人」という人が主導して進めます。
武富士の場合にも更生管財人が選任されて手続きを進めていましたが、手続き中に会社分割を行い、貸付事業を「ロプロ」という会社に承継させました。
武富士自身は、事業の売却代金や法人税の還付金などを債権者に配当することとして手続を進めていました。
なお、武富士という社名は、2012年3月1日に「TFK株式会社」に変更されています。
そして2017年2月28日、武富士は会社更生による計画弁済を終えて解散し精算手続きをして、3月17日に消滅したのです。
4.武富士の配当率
武富士に対して過払い金請求権を持っていた人たちは、武富士に対する「債権者」となります。
そこで、武富士が会社更生手続きの中で「配当」を受けています。
過払い金請求権者たちは、どのくらいの配当を受けることができたのでしょうか?
結果的には3.3%です。
過払い金額の3%あまりしか返ってこなかったということです。
また、武富士に対する過払い金請求権者が、全員配当を受けられたというわけでありません。
配当を受けた人は、きちんと期限内に更生管財人に対し、債権届出をした人だけです。
武富士が会社更生手続をしていることに気づかなかった人や連絡を受けたのに債権届出をしなかった人などは、過払い金の返還を受けていません。
また、今から武富士に対して過払い金を請求しようとしてもできません。
武富士は、もはや世の中から完全に消滅してしまっているからです。
ホームページも電話もありませんし責任者もいません。
コールセンターも閉鎖されていますし、過払い金についての相談窓口などもなくなっています。
武富士に対する過払い金請求権者は、もはやあきらめるしか無い状態となっています。
5.武富士への借金返済は不要になっていない
武富士に対して過払い金が発生していた人は、武富士の会社更生にもとづいて、わずかながらも配当を受けることができました。
これに対し武富士から借金をしていて、倒産時に借金残高が残っていた人はどうなったのでしょうか?
武富士が倒産したことにより、借金は免除されたのでしょうか?
そのようなことはありません。
倒産会社から借金していた場合、借金は免除されませんし減額もありません。
倒産の手続が、民事再生でも会社更生でも破産でも同じです。
全額返済する必要があります。
武富士の場合には、貸付事業がロプロという会社に承継されたため借金をしていた人は、そちらの会社に返済を継続しています。
なお、ロプロは今は日本保証という会社に変わっています。
つまり、消費者金融やカード会社を利用されていた方は、業者が倒産すると「過払い金はほとんど返ってこないのに、借金は全額返済しなければならない」状態となります。
不公平なように感じますが、これが現実なのです。
6.武富士の事例から学べること
このような、武富士の倒産事例から学べることは、どのようなことでしょうか?
(1)過払い金請求は早めに行う
まず、過払い金請求権があるならば、できるだけ早く請求をすべきということです。
武富士の最終的な配当金は3.3%でしたので、過払い金請求権者は3.3%の過払い金しか受けとっていません。
しかし、武富士が会社更生手続に入る前、早めに過払い金請求をした人は全額の返還を受けた人もたくさんいます。
会社更生法が適用されると個別の債権者が権利を行使して、債権回収することができなくなるのですが、そういった倒産手続きが始まる前なら裁判してでも回収することができるからです。
過払い金請求をするとき、裁判をすると過払い金の元本だけではなく年率5%の過払い利息を支払ってもらうこともできます。
そこで、昔、消費者金融やカード会社のキャッシングを使っていて「過払い金請求ができるかもしれない」と考えているなら、とにかく早めに請求を開始することが重要です。
業者が倒産したら、ほとんど返ってこなくなる可能性が高いです。
(2)必ず債権届を提出する
もう1つ、重要なことは「必ず債権届を提出する」ことです。
消費者金融会社などに対して過払い金請求ができるケースでも、業者が倒産手続きに入ってしまったら、個別に権利行使することができなくなります。
裁判を起こしても、強制執行(差押え)などをすることが認められません。
そこで、配当を待つしか無い状態となります。
その配当を受けるために「債権届」が必要となります。
債権届には、通常期間が設けられて期間を過ぎるともはや届出すらできなくなってしまいます。
武富士の場合の債権届出期間は、2011年2月28日でした。
それ以後に「会社更生しているなら、自分も届出をしたい」と考えても、基本的に配当を受けることはできません。
そこで、過去に消費者金融がカード会社を利用していて、その業者が倒産手続きに入ったら必ず債権届を提出しなければなりません。
何もしなくても、会社の帳簿や顧客リストにもとづいて、債権届出の案内が来ることもありますが必ずしもそうとは限りません。
倒産手続きが進んでいることを知らなかったとしても、期限を過ぎたら配当を受ける権利がなくなります。
常にニュースなどの情報に注意して、自分が利用していた業者が倒産手続きに入ったと知ったら、裁判所や管財人などの担当者に連絡を入れることをお勧めします。
(3)大手でも過信しない
今回、事例としてご紹介した武富士は超大手の消費者金融会社で、誰も武富士が倒産するなどとは考えていませんでした。
実際、1990年代に「武富士が約10年後に倒産する」などと言う人がいたら、おかしな人だと思われたはずです。
しかし、実際には、武富士が倒産して過払い金請求権者が不利益を受けています。
このことからわかるのは「大手だからといって、安心できない」ということです。
武富士と同様にノンバンク系の大手消費者金融である「アイフル」も、過払いバブルが起こった頃に経営不振となって、私的整理をした経緯があります。
アイフルは倒産せずに済みましたが、今後はどうなるかわかりません。
銀行系の消費者金融は、比較的安心感が高いですがいつグループ関係を解消するかもわからないことです。
そこで、「大手だから」とか「銀行系だから」などという理由で安心することなく、やはり早めに過払い金請求をすることが得策です。
7.過払い金請求をするなら、弁護士に依頼するのが良い
これから過払い金請求をするのであれば、自分で請求をするよりも弁護士に依頼することをお勧めします。
自分で請求すると、業者と交渉をするときに、不当に減額されてしまうことが多いからです。
「経営不振」「無理を言われると、倒産してしまう」などと言って、3割やそれ以下の返還を主張してくる業者もたくさんあります。
しかし、そういった業者でも、現在倒産していない以上、最終的に裁判をすれば満額の返還を受けることも可能なのです。
弁護士に依頼したら、8~10割の返還を受けられる業者が圧倒的に多いです。
弁護士費用を支払っても、自分で請求するより弁護士に依頼した方が得です。
まとめ
過去に消費者金融やクレジットカードを利用していたのであれば、できるだけ早めに弁護士に過払い金請求の相談に行きましょう。