「お金を回収したい!少額訴訟という制度があることを聞いたけどどのような制度なんだろうか・・・」
この記事をお読みの方の中にはそのようにお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「お金を回収したい」という理由の中には、
- 「お金を貸してほしい」と友人・知人から頼まれ、断り切れず貸してしまったものの、その後一向にそのお金が返ってこない
- 取引先からお金を回収したい(債権回収したい)
- 勤めていた会社が給料を支払ってくれない
など、様々なものがあるでしょう。
そうした場合に、効果的なのが「少額訴訟」という制度です。
少額訴訟とは、取り戻したいお金が少額(60万円以内)の場合に簡単に裁判をしてお金を回収できる制度のことです。
今回は、少額訴訟について説明していきます。
参考になれば幸いです。
※この記事は2017年4月18日に加筆・修正しました。
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目次
1.少額訴訟とは?債権回収の流れは?
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(1)少額訴訟とは?
そもそも「少額訴訟」とは、60万円以下の少額の金銭の回収を目的とする裁判のことです。
通常の裁判の場合には、手続きがやや複雑であるため弁護士に依頼しなければならないことも少なくありません。
そのため、時間だけでなく費用もかかることから利用しづらい傾向があり、少額のお金の回収を諦めて泣き寝入りしてしまう人が多数出てきてしまいます。
そこで簡単な手続きで、しかも時間も費用もかけずにお金の回収を可能にする趣旨で創設されたのが少額訴訟制度です。
(2)少額訴訟は費用があまりかからない!
費用について詳しくは後で説明しますが、基本的には1万円前後で申し立てることができます。
(3)少額訴訟は時間もかからない!
通常の裁判の場合には、2~3年ほどかかってしまいますが、少額訴訟の場合には1回の審理(裁判所での主張のやり取り)の後ですぐに判決が出されるためあまり時間がかかりません。
(4)少額訴訟で債権回収するまでの7つのステップ
実際に少額訴訟で債権回収をするステップは、以下の通りです。
- 少額訴訟をするために必要な書類を揃える
- 管轄裁判所へ必要書類を提出
- 裁判所からの期日の連絡
- 事前聴取
- 法廷で審理
- 判決
- もし支払ってくれなければ強制執行!
(5)少額訴訟でお金を回収するための手続きのチェックリストダウンロード
きちんとお金を回収するためにはもれなくスムーズに手続きを進めることが重要になります。
そのために、チェックリストをダウンロードできるようにしたのでぜひ活用してみてください。
ではいよいよ、具体的な手続きについて説明していきます。
2.少額訴訟をするために必要な書類を揃える
(1)必要書類は?
まず、裁判所に提出する必要書類は、具体的には以下の通りです。
①訴状
②訴状副本
③(相手が法人の場合)登記事項証明書
④証拠
それぞれについて具体的に説明していきます。
①訴状
少額訴訟を含めて裁判は訴状を提出することで始まります。
訴状は、裁判をするために不可欠の書類です。
具体的な作成方法については後で詳しく説明します(「1-(2)訴状の書き方」参照)。
②訴状副本
「副本」とはコピーのことです。
訴状の内容は裁判所だけでなく訴えられる被告も確認する必要があります。
そのため、被告にも送るために副本が必要になります。
③(相手が法人の場合)登記事項証明書
相手が法人の場合には、登記事項証明書が必要になります。
登記事項証明書は全国の法務局で取得することができます。
なお、印紙代の600円が必要となります。
④証拠書類
以上に加えて裁判で勝つためには証拠が必要となります。
この場合の証拠は、訴えを提起した原告の「お金を請求する権利」を証明するものです。
具体的には以下のようなものが証拠になります。
- 契約書
- 請求書
- 見積書
- お金を支払う権利がある旨について書かれたメール文のコピー
- お金を支払う権利がある旨について言及された電話の録音
もし、これらの証拠がなければ請求が難しくなってしまう可能性があるから是非揃えておきましょう。
(2)訴状の書き方
次は、少額訴訟の訴状の書き方について説明していきます。
流れについては、以下の通りです。
①訴状をダウンロード
②訴状の記載項目を把握する
③記載例を参考に書いてみる
以下で詳しく説明していきます。
①訴状をダウンロード
まずは訴状をダウンロードしてください。
以下の文字をクリックすると少額訴訟の雛形をダウンロードすることができます。
上記雛形の参照元URL:http://www.takuro.info/archives/646
②記載項目を確認する
次は記載項目を確認しましょう。
少額訴訟の訴状は2枚になっていて、それぞれに記載する項目は以下の通りです。
1枚目
- 事件名(お金を請求する権利の名前。例えばお金を貸した場合は貸金請求事件)
- 原告の情報(訴えた側の名前や住所など)
- 被告の情報(訴えられた側の名前や住所など)
2枚目
- 請求の趣旨(原告が被告にいくら請求するか、など)
- 請求の原因(原告がなぜお金を請求できるか、お金は現時点でどのくらい支払われたか、などについて)
- 添付書類(契約書などの証拠となる書類について)
③記載例を参考に書いてみる
以上を踏まえ、「1-(3)訴状の記載例」を参考に実際に訴状を書いてみましょう。
(3)訴状の記載例
では、実際に記載例を参考に訴状を書いてみましょう。
以下の記載例は、支払ってもらうお金の種類によって内容が異なります。
①貸したお金を返してもらいたい場合の記載例
具体的にイメージしてもらうために、貸したお金を返してもらいたい場合の記載例のみ裁判所の記載例を引用して画像を掲載します。
少し字が小さいので、詳しくは裁判所のホームページで見てください。
下記にリンクを貼っておきますので、詳しくはそちらを確認してください。
その他の場合のそれぞれの記載例は以下の通りです。
②販売した商品の代金を支払ってもらいたい場合の記載例
③未払いの給料を支払ってもらいたい場合の記載例
④敷金を返してもらいたい場合の記載例
⑤その他、一般的にお金を支払ってもらいたい場合の記載例
3.管轄裁判所へ必要書類を提出。提出先の裁判所は?
訴状を含めた必要書類が準備できましたら、相手の住所地を管轄する簡易裁判所へそれらを提出することになります。
管轄とは、どの事件をどの裁判所が担当するかという振り分けのことをいいます。
少額訴訟の場合にはお金を支払わせたい相手の住所地の裁判を引き受ける簡易裁判所が管轄裁判所となります。
下記裁判所のページより相手の住所地を管轄する簡易裁判所を探すことができます。
4.裁判所からの期日の連絡
訴状を含めた必要書類が準備できましたら、相手の住所地を管轄する簡易裁判所へそれらを提出することになります。
管轄とは、どの事件をどの裁判所が担当するかという振り分けのことをいいます。
少額訴訟の場合にはお金を支払わせたい相手の住所地の裁判を引き受ける簡易裁判所が管轄裁判所となります。
下記裁判所のページより相手の住所地を管轄する簡易裁判所を探すことができます。
5.事前聴取
訴状を提出すると裁判所から期日の連絡があります。
期日とは、裁判官の前で原告と被告がそれぞれの主張をぶつけ合う日時のことです。
テレビで見る裁判のシーンのようなイメージです。
6.法廷で審理
事前聴取の後はいよいよ本番となる法廷での審理です。
(1)審理とは
審理とは、裁判で、争い内容に関する事実関係などを詳しく調べてはっきりさせることです。
審理の参加者は原告、被告、裁判官、書記官らで、主に原告と被告が双方の主張をぶつけ合うことになりますです。
具体的には、どちらの主張が正しいかを裁判官が判断できるように原告と被告が提出した書類を調べたり、呼び出した証人の話を聞いたりすることになります。
(2)所要時間
審理は、30分~2時間程で終了します。
(3)場合によっては和解解決
場合によっては、審理の場での話し合いによって和解が成立する可能性があります。
和解とは、原告と被告がお互いに譲り合って妥当なラインで争いを終わらせる約束をすることです。
例えば、「60万円支払え!」と主張する原告と「1円も支払う義務がない!」と主張する被告が30万円支払うということでこの争いを終わらせる約束をする場合です。
7.判決
審理が終われば、いよいよ判決となります。
裁判所としてどちらの主張が正しいかを判断した上で、「被告は原告に対し◯円支払え」という内容の判決をすることになります。
そして、後日、判決の内容について書かれた判決書がもらえます。
8.もし支払ってくれなければ強制執行!
ここで注意したいのは、裁判に勝ったとしても必ずしもお金を支払ってもらえるとは限らないということです。
裁判によって、法律上は「お金をもらえる権利があること」が確定したことにはなりますが、だからといって即座にお金をもらえるということにはならないのです。
あくまでも相手が自主的に支払う必要があるのです。
そのため、相手が自主的にお金を支払ってくれない場合には、別途「強制執行」をする必要があります。
強制執行とは、差押えのことです。差押えの対象としては銀行口座や給料が一般的です。
差押えをすることで、銀行口座や給料から優先的に支払うべきお金を獲得することができます。
少額訴訟の場合の強制執行としては、「少額訴訟債権執行」という制度があります。
9.重要!少額訴訟のリスク!
最後に、少額訴訟のリスクについて説明します。
(1)少額訴訟はできる回数が限られている?
少額訴訟は、年間10回しかできないという回数制限があります。
(2)通常訴訟へ移行してしまうかもしれない?
少額訴訟は、相手(訴えられる側)が通常訴訟を希望すれば通常訴訟へ移行してしまうというリスクもあります。
少額訴訟に関するまとめ
今回は少額訴訟で債権回収する方法について説明しましたが、いかがだったでしょうか。
今回の話がご参考になれば幸いです。