自転車で道路を走っていると急に車が左折してきて怖い思いをしたという方は少なくないのではないでしょうか。
左折事故は、自転車が巻き込まれやすい典型的な事故類型といえます。
また、左折事故を起こす車は、大型車が多いという統計が出ています。
そのため、左折巻込み事故の場合、重大な被害を生じさせてしまう可能性が高くなるということができます。
このような巻込み事故に遭った場合、過失割合がどの程度認められることになるのか慰謝料がいくらになるのか、どうやって計算すればいいのか気になる方も多いでしょう。
今回は、左折巻込み事故に遭った場合に、過失割合はどうやって算定されるのか慰謝料の金額がどうやって計算するのかについて説明したいと思います。
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1.左折巻込み事故の状況と現状とは
左折巻き込み事故とは、直進してきた二輪車等と左折中の車両とが衝突する交通事故をいいます
車両の種類によって左折巻込み事故の発生しやすさに特徴があり、特にトラックによる左折巻込み事故の割合が高い傾向にあります(「平成27年度版交通統計」公益財団法人交通事故総合分析センター)。
具体的には、トラックと人・自転車との事故のうち、左折事故は全体の17パーセントを占め、そのうちの更に89パーセントが巻き込み事故になっています。
中でも大型トラックによる左折巻込み事故が大半を占めており、被害者側としては自転車が対象となるものが80パーセントを占めています。
このような、大型トラックと生身の人間がむき出しの自転車との巻込み事故が多い状況をみると生じる被害が大きくなりがちということがいえるでしょう。
2.左折巻込み事故の具体的ケースと過失割合
(1)左折自動車に直進バイクが巻き込まれるケース
①先行・左折自動車、後続・直進バイクの場合
前方を走っている自動車が左折する際、後から直進してきたバイクが車に衝突してバイクが巻き込まれたケースです。
この場合、自動車とバイクの基本の過失割合は80:20となるとされています。
直進者が優先されるという原則などから、自動車が先行する場合でも自動車に高い過失割合が認められます。
②先行・直進バイク、後続・左折自動車の場合
前方を走っているバイクを、後ろから来た自動車が追い越しながら左折した際に車に衝突して、バイクが巻き込まれたケースです。
この場合、自動車とバイクの基本の過失割合は90:10となります。
自動車には、交差点の30メートル以内は追越禁止の原則違反や、バイクの進路妨害などが認められるため、自動車の過失割合が高くなります。
また、「交通事故の過失割合とは?不満がある場合の対処方法」と「具体的な事例で見る交通事故の過失割合」も併せてご参照ください。
③過失割合の修正
上記の基本過失割合に、自動車やバイクの状況に応じて、過失割合に修正が加えられることになります。
直進バイクの過失割合がプラスされる要素
- バイクの著しい前方不注意(+10%)
- バイクの速度違反(+10~20%)
- バイクの著しい過失や重過失(+10~20%)など
直進バイクの過失割合がマイナスされる要素
- 自動車の合図遅れ(-5%)
- 自動車の大周り、合図なし、徐行なしなど(-10%)
- 自動車の重過失(-20%)など
(2)直進自動車に左折バイクが巻き込まれるケース
①先行・左折バイク、後続:直進自動車の場合
前方を走るバイクが左折をする際、後ろから来た直進自動車が衝突してバイクが巻き込まれたケースです。
この場合、自動車とバイクの基本の過失割合は40:60となります。
左折するバイクに、大回り左折をしているなどの違反があるためにバイクの過失割合が高くなります。
②先行・直進自動車、後続:左折バイク
交差点の手前で、前方を走る自動車をバイクが右側から追い越して左折した際に衝突してバイクが巻き込まれたケースです。
この場合、自動車とバイクの基本の過失割合は20:80となります。
バイク側に、追い抜いて大回りで左折する左折方法の違反等が認められるのでバイク側に高い過失割合が認められます。
③過失割合の修正
上記の基本過失割合に、自動車やバイクの状況に応じて過失割合に修正が加えられることになります。
直進バイクの過失割合がプラスされる要素
- バイクの左折合図が遅かった、著しい過失(+5%)
- バイクの左折合図なし、重過失(+10%)
直進バイクの過失割合がマイナスされる要素
- 自動車の著しい前方不注意、著しい過失(-10%)
- 自動車の速度違反(-10~20%)
- 自動車の重過失(-20%)など
(3)共通する過失割合の修正要素や自転車の場合
これに加えて、共通する過失割合の修正要素として、バイクの運転手が高齢者の場合はバイク側の過失割合が-10%程度マイナスされるなどの修正がくわえられます。
また、バイクが自転車だった場合は、自転車側の過失割合がバイクの場合よりも少なくなります。
具体的には、直進自転車に左折自動車が衝突して巻き込まれたと言ったケースでは、バイクの場合は20:80でしたが、自転車の場合は10:90が基本過失割合となると言った違いが生じます。
ただし、これらの過失割合はあくまで目安となることに注意が必要です。
過失割合は、事故が発生した時間や交差点の状況など、交通事故が発生した事情を総合的に考慮して判断するため個別の事故毎に検討していく必要があるためです。
3.左折巻込み事故の過失割合に納得できない場合の対処方法
(1)過失割合の決め方とは
上記のように、過失割合は交通事故が発生した際の全状況を踏まえて判断されます。
しかし、個別の事故によって過失割合に差が出て不公平にならないように、交通事故のケースに応じて過去の裁判例をもとに基準となる過失割合が定められています。
基準は、主に次の3つの本を参考にして決められます。
①「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(判例タイムズ社)」
裁判所や弁護士などの実務でよく利用している本で、裁判や弁護士が示談をする際にはこの本の基準がベースとなるのが通常です。
交通事故の状態、道路状況などに応じて類型化され、昨今の交通事故事情に応じて定期的に更新されています。
ほとんどの交通事故を当てはめて過失割合の見通しが立てられるようになっています。
②「交通事故損害額算定基準(日弁連交通事故相談センター本部)」
通称「青本」と呼ばれる本で交通事故の損害賠償について金額の目安が定められています。
過失割合に加え治療費、後遺障害、慰謝料などについて多くの情報が掲載されています。
③「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(日弁連交通事故センター東京支部)」
通称「赤い本」と称される本で東京地裁の実務をベースにして、上記の青い本よりも専門的な基準が示されています。
過失相殺といった過失の問題に加え、治療費、後遺障害、慰謝料などの基準と東京地裁での裁判の傾向などが、二冊組で網羅されています。
都道府県によっては「緑本(大阪)」「黄色い本(愛知)」など、独自の冊子をまとめているところもありますが、青本と赤い本がスタンダードと言えるでしょう。
(2)注意すべき過失割合が変わるケースとは
上記のように、過失割合は、過去の裁判例などをもとに検討されるのが基本です。
しかし、これはあくまでも弁護士が間に入った場合や裁判になった場合です。
当事者や保険会社との交渉で過失割合の検討がされると上記の基準とは大きく異なった割合が認定されることがあります。
なぜなら、保険会社は自社の利益を確保するために、自分の会社に加入している加害者側の過失割合は低く抑えたいのが通常です。
そのため、保険会社は被害者の過失割合を高めに提示してくることは少なくありません。
また、保険会社同士で示談交渉などが進められると業界慣習や馴れ合いで、適正な過失割合が認定されない恐れもあります。
保険会社のいうことなら間違いないだろうとうのみにせず、過失割合の内容をしっかりと聞いて確認するようにしましょう。
(3)過失割合に不満がある場合の対処法とは
上でお話ししたように、保険会社から提示される過失割合は、状況をきちんと反映した物とは言えないこともあります。
とはいえ、過失割合の認定について専門に扱う保険会社を相手に交渉するのは個人ではなかなか大変です。
しかし、諦めてはいけません。
まずは、インターネットで「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」を入手して、掲載されている事故の状況から導かれる過失割合と、保険会社が提示してきた過失割合を比べてみましょう。
納得がいかない場合は、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」を保険会社に示して、合理的な過失割合の認定を求めましょう。
そうは言っても、保険会社の交渉力に負けそうな場合は、弁護士に相談してみるだけでも気持ちがかなり変わってきます。
交通事故は、弁護士が扱う業務の中でもかなり高い専門性を必要とする分野です。
相談は無料で乗ってくれる弁護士事務所も多いですし、最後まで依頼するとしても、得られる保険金の増額部分から弁護士費用が十分ペイできたり、ご自身が加入している保険に弁護士費用特約が付いていれば、弁護士費用が掛からず頼める場合もあります。
保険会社との交渉がストレスになり、治療に悪影響が出てはいけないので、心配な場合はできるだけ早く弁護士に相談してください。
なお、事故直後の現場の状況が分かる写真などがあれば、過失割合の認定に有利になることがあります。
事故に遭った直後はそれどころではないかもしれませんが、余裕があればぜひ状況を写真に撮っておくなどの対応をおすすめします。
4.左折巻込み事故の慰謝料計算方法とは
(1)交通事故被害に遭った場合にもらえる慰謝料とは
慰謝料は、交通事故被害に遭った場合に、請求できる損害賠償の中のひとつの種類です。
そこで、まず、左折巻込み事故をはじめとして、交通事故に遭ってケガをした場合にどのような請求ができるか見ていきましょう。
交通事故被害に遭った場合、かかった実費、将来的に得られなくなった利益、精神的なダメージの3つについて請求することができます。
①実際にかかった費用に対する賠償(積極損害)
- 治療費、付添看護費、入院雑費等
②将来的に得られなかった利益に対する損害(消極損害)
- 休業損害
- 後遺障害による逸失利益
③精神的な損害に対する賠償(慰謝料)
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
- 死亡慰謝料
- 近親者の慰謝料
このように、慰謝料は、被害者が被った損害の中でも、特に精神的な苦痛に対する賠償を指すのです。
上記の3つの損害をトータルして、実際は事故の状況に応じて次のように計算します。
損害賠償額=(積極損害+消極損害+慰謝料)×相手側の過失割合
(2)慰謝料の計算方法とは
上記のように、請求できる賠償は大きく分けて3つの種類がありますが、慰謝料は、金額が大きく変わる可能性があるものといえます。
というのも、実費は実際にかかった費用なので認められる範囲が確定できれば特に争いようがありません。
将来的に得られなくなった利益も、現在の収入などをもとに計算する方法が決められているので、特別な事情がない限り問題になりにくいと言えるでしょう。
しかし、慰謝料はどういう基準で計算するかで、被害者が受け取る金額が大きく変わる可能性があるのです。
慰謝料の算定には、3つの基準があります。
①自賠責基準
自賠責基準とは、自賠責保険が補償して払ってくれる保険金の基準で、入通院した日数、後遺障害の等級認定を受けた後遺症の程度など、状況別に計算方法や上限金額が決まっています。
②任意保険基準
任意保険基準とは、保険会社が会社ごとに独自に決めている支払基準で、現在は実際の金額は公表されていません。
自賠責保険基準に比べると高額になりますが、次の裁判所基準よりは低額になります。
③裁判所基準
裁判所基準とは、裁判で慰謝料について争う場合に裁判所が基準にするものです。
上で出てきた、「赤い本」「青本」などを目安にして算定され、自賠責基準、任意保険基準に比べて通常は高額になります。
(3)弁護士に頼むと慰謝料が増額する理由とは
上記のように、3つの基準のどれに基づいて慰謝料が計算されるかによって、実際に受け取る慰謝料は変わってきます。
相手方の保険会社は、自社基準の慰謝料額を提示してくるので、裁判になれば本来受け取ることができた慰謝料がもらえない可能性もあります。
しかし、弁護士を間に入れて保険会社と交渉すれば、裁判にならなくても適正な慰謝料金額が受け取れるように交渉を頼むことができます。
また、過失割合に納得がいかない場合は、一連の流れから対応を依頼できるので負担が大きく軽減しご本人は治療に専念することもできます。
また、必要に応じて「休業損害はいくらもらえる?交通事故での休業損害の計算方法について」と「交通事故被害を弁護士に相談すべき理由と「慰謝料が増額するしくみ」を解説」も併せてご参照ください。
まとめ
いかがですか。
左折巻込み事故の場合、事故の状況によって過失割合が大きく変わることがあります。
過失割合に納得ができない、保険会社が提案してきた慰謝料などの損害賠償額に納得できないという場合に、ご自身で保険会社と交渉するのは本当に大変です。
弁護士費用が心配で二の足を踏む方もいるかもしれませんが、入っている保険によっては弁護士費用がカバーできることもあるので、左折巻込み事故の被害に遭った場合には、交通事故に詳しい弁護士が頼りになることを、ぜひ覚えておいてください。