離婚時に相手が不貞(不倫や浮気のこと)をしていたりDVを受けていたりして、離婚慰謝料の支払いを約束することがあります。
また、裁判で離婚をしたとき相手に対して離婚判決が出ていることもあるでしょう。
このように、離婚慰謝料が発生していても相手が約束通り支払わないことがあります。
不払いになっている離婚慰謝料を請求するには、どのような方法があるのでしょうか?
今回は、相手が離婚慰謝料を支払わない場合の対処方法を解説します。
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目次
1.請求方法その1.まずは、相手に対し、任意の支払いを求める
離婚するときに、合意書を作って「慰謝料を支払う」と約束しても、その後不払いになってしまうことがあります。
特に分割払いにした場合などには、支払いが止まってしまうことが多いです。
判決によって慰謝料の支払い命令が出ても、相手が無視して支払をしないケースもあります。
このようなときには、まずは相手に連絡を入れて、任意で慰謝料の支払いを求めましょう。
相手と普通に連絡がとれる場合には、メールや手紙などで連絡を入れると良いでしょう。
相手が支払いを忘れていたり「支払いをするかどうか、どうしようかなぁ…」などと考えていたりする場合には、メールなどで督促することにより支払いが行われることがあります。
2.請求方法その2.内容証明郵便で請求する
メールや電話などの普通の連絡方法では離婚慰謝料を支払ってもらえない場合には、内容証明郵便により、支払いを請求しましょう。
内容証明郵便を送ると郵便局が書類の内容と送った日を証明してくれます。
このことにより、相手に対し「慰謝料支払い請求をした」証拠がはっきり残ります。
文面には「離婚慰謝料〇〇円が未払になっています。
〇〇までに支払って下さい。
支払いが無い場合には、給料や預貯金、不動産等を強制執行する可能性があります」などと書いておきましょう。
内容証明郵便は、ポスト投函ではなく書留式で相手が直接受けとることとなります。
また、書式も特殊なので、受けとった人にはインパクトが大きいです。
そこで、「強制執行をする」などと書いてあると、驚いて支払をしてくる人も多いです。
すぐには支払いがなくても、内容証明郵便後交渉を行うことにより支払いが行われることもあり効果的です。
また、「意外と簡単! 内容証明郵便を送る方法【雛型ダウンロード可能】」も併せてご参照ください。
3.請求方法その3.弁護士に請求を依頼する
自分で内容証明郵便を送って交渉をしても、相手が離婚慰謝料を支払ってくれないことがあります。
内容証明郵便を無視されてしまったり、交渉をしても「支払わない」と一蹴されてしまったりするのです。
この場合には、弁護士に交渉を依頼すると効果的な場合があります。
元配偶者が請求してきたときには「うるさいなぁ」と思って放置する人でも、弁護士が出てきたら「このまま放っておいたら本当に差押えされるかも」と思って支払いに応じるのです。
弁護士名で内容証明郵便を送ると支払いに応じる人もいますし弁護士が交渉をすることにより、支払いの合意ができることもあります。
4.強制的な慰謝料請求方法は、慰謝料の決め方によって異なる
以上が、任意に相手に慰謝料を支払ってもらう方法です。
しかし、相手によってはたとえ弁護士が交渉をしても、任意では慰謝料支払いに応じないこともあります。
その場合には、裁判所を使った強制的な方法により慰謝料を請求しなければなりません。
強制的な慰謝料請求方法は、離婚時に慰謝料を定めた方法によって異なってきます。
1つは、協議離婚をしたときに自分たちで作成した合意書しかないケースです。
もう1つは、協議離婚をしたときに、離婚公正証書を作成したケースや調停で離婚したケース、裁判で離婚したケースです。
公正証書や調停調書、裁判の判決書のことを「債務名義」と言います。
慰謝料の請求を行う場合、債務名義があるかどうかで、請求方法や請求の容易さ手間が変わってきます。
5.請求方法その4.裁判をする(当事者間で作った合意書しかない場合)
まずは、離婚時に当事者間で作った合意書しかないケースでの請求方法を説明します。
この場合、協議離婚合意書に「離婚慰謝料として〇〇円を支払う」と書いてあっても、その合意書によって相手の資産や給料等を強制執行(差押え)することはできません。
強制執行をするためには、債務名義が必要だからです。
そこで、まずは裁判を起こして債務名義をとらないといけません。
相手が慰謝料支払いに応じない場合には、相手に対し「慰謝料請求訴訟」を起こします。
この裁判は、地方裁判所に提訴します。
裁判所の管轄は、自分の居住地のところでも相手の居住地の所でもかまいません。
離婚の場合の「家庭裁判所」と異なり、管轄が「地方裁判所」になることに注意が必要です。
そして、協議離婚の際に作成した協議離婚合意書などを証拠として、相手に対する慰謝料請求権があることを主張立証していきます。
相手に有責原因があるならば、裁判所が相手に対し慰謝料の支払命令を出してくれます。
その判決書が債務名義となるので、後は、次の「債務名義がある場合」と同じ方法で相手の資産を差し押さえることが可能になります。
6.請求方法その5.強制執行を検討する(「債務名義」がある場合)
離婚公正証書、調停調書、離婚訴訟の判決書、離婚後に起こした慰謝料請求訴訟の判決書などの「債務名義」がある場合には、債務名義にもとづいて、相手の資産や給料等を差し押さえることができます。
相手の資産や給料を差し押さえると、相手が同意しなくても、強制的に、不払いになっている慰謝料の取り立てをすることができます。
(1)強制執行の対象
差押えは、強制執行の1種です。
強制執行とは、相手が裁判所の命令等に従わないときに強制的に権利を実現することです。
そして、相手が慰謝料を支払わない場合の強制執行には、3種類があります。
1つは債権執行、2つ目は不動産執行、3つ目は動産執行です。
債権執行というのは、相手が持っている債権を差し押さえることです。
たとえば、相手が銀行預金をしている場合や株券を持っている場合、投資信託を持っている場合などには、相手の銀行や株式発行会社などへの債権を差し押さえることができます。
相手が生命保険に加入している場合にも、その解約返戻金請求権を差し押さえることができます。
給料も、相手が勤務先に対して有している債権なので債権執行の方法によって差し押さえます。
不動産執行というのは、相手が所有している不動産を差し押さえることです。
たとえば、相手が自宅不動産や投資用の物件を所有している場合や親から相続した不動産を所有している場合などには、そういった資産を差し押さえることが可能です。
動産執行というのは、その他の相手の動産を差し押さえることです。
たとえば現金や骨董品、貴金属や絵画などは動産執行によって差押えをします。
(2)強制執行の対象資産を調べる
強制執行を行うときには、差押えの対象は、債権者側が調査する必要があります。
裁判所の方から「このような資産がありますよ」と提案してくれることはないためです。
そこで、まずはどのような資産があるのかを調べて把握することが必要です。
元夫婦であれば、相手の資産内容などある程度は把握しているはずです。
強制執行の場合、離婚の際の財産分与の対象にはならなかった相手の実家から相続した不動産や相手の独身時代からの預貯金、生命保険なども対象にすることができます。
不動産の場合、ローンがついているとまずはローン債権者に対して支払をしなければならないので、残ローンが高額な場合、差押えをしても意味がありません。
ローン残額が小さい場合で他に抵当権者がついていない不動産があると差押えをする価値が出てきます。
相手の資産を調査するときには、以下のようなものがないか調べましょう。
- 相手の勤務先(給与差し押さえをするのに必要です)
- 相手名義の預貯金
- 相手名義の生命保険(積立型)
- 相手が取引している証券会社
- 相手が出資している出資先(組合や医療法人など)
- 相手が所有している不動産
- 相手が所有している動産類(絵画、骨董品など価値のあるもの)
- 金庫の保管場所(現金が入っている可能性がある)
(3)送達証明書と執行文を取得する
強制執行を行うためには、送達証明書と執行文という書類を用意する必要があります。
これらは、債務名義を発行してくれた機関(公正証書や裁判所)に対し申請して取得します。
7.請求方法その6.債権執行を行う
相手の資産調査が終わったら、実際に強制執行を行います。
このとき、どの資産から強制執行すべきかが問題となりますが、債権執行がもっとも手早く効果が上がりやすいです。
相手が会社員や公務員の場合には、給与差し押さえが効果的です。
給与差し押さえをすると毎月の給料の一部を継続的に取り立てることができるからです。
給料のうち、差押えの対象になるのは以下の部分です。
- 給料から税金や保険料等を引いた手取り額が33万円以下の場合には、手取り額の4分の1
- 給料から税金や保険料等を引いた手取り額が33万円を超える場合、超える部分の全額
賞与も、給与差し押さえの対象となります。
また、給与差し押さえをすると裁判所から会社に連絡が来て差押えが起こっていることを会社に知られます。
そこで、相手が「任意で支払うから取り下げてほしい」と頼んでくることもよくあります。
相手がサラリーマンではない場合には、預貯金や生命保険を差し押さえるとまとまった金額を回収することができます。
8.請求方法その7.不動産執行を行う
相手が不動産を所有している場合には、不動産執行も有効です。
とくにローンや担保がついていない不動産を所有している場合、不動産を競売にかけることにより一気に慰謝料を回収できる可能性があります。
不動産の強制執行を行うときには、不動産競売の申立をします。
競売手続きが進むと不動産が売却されて、その売却金から慰謝料を回収することができます。
9.請求方法その8.動産執行を行う
動産執行は、どちらかというと最後の手段です。
動産執行をしても、執行場所にめぼしい動産がなければ不発に終わりますし無駄に保管費用などもかかってしまうおそれがあるからです。
ただ、現金などがあったら差し押さえることもできますし動産執行すること自体が相手へのプレッシャーとなり、任意で支払いを受けられるようになる場合もあります。
まとめ
以上、説明してきたように、相手が離婚慰謝料を支払わないとき請求の手段はいろいろとありますがケースによって適切な方法を選択する必要があります。
また、裁判所を使った手続きも多いです。
自分では適切な対応方法がわからない場合には、弁護士に相談すると良いでしょう。